第 61 回 アセアン経済共同体(AEC)と大メコン圏(GMS)の経済回廊

「海外ビジネスコラム(第 61 回)
」
(公財)富山県新世紀産機構 環日本海経済交流センター
鹿野健・海外販路開拓支援マネージャー
第 61 回 アセアン経済共同体(AEC)と大メコン圏(GMS)の経済回廊について
今注目されているアセアン経済共同体と大メコン圏の経済回廊について触れて
みたいと思います。また 2015 年 2 月 24 付日本経済新聞にはこれらに関連する
記事が載りましたのでそれを簡単に紹介したいと考えます。
1)アセアン経済共同体(AEC=Asean Economic Community)
1.この共同体は、2003 年に Asean で創設の合意がなされ、2007 年の「セブ
宣言」で調印され、本年(2015 年)末までの発足を目指している。
2.参加国は次の 10 カ国であり、人口は合計で 6 億人超の一大経済圏である。
インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ
+カンボジア(C),ラオス(L),ミヤンマー(M),ベトナム(V)
3.設立の目的は、域内の関税の撤廃、貿易の円滑化、投資の自由化、知的所
有権の保護、インフラ開発等であり、これらが行程表に記載されている。但し、
EU との大きな違いは、統一通貨を設けないということである。インドシナ半島
の CLMV4 カ国を含めたアセアン 10 カ国の経済発展を目指した、いわば「ソフ
ト面」での方策と言えよう。
2)大メコン圏(GMS=Greater Mekong Subregion)の経済回廊
1.図1の当センター作成の地図を参照願います。中国、タイ、CLMV(カン
ボジア、ラオス、ミヤンマー、ベトナム)が絡む大メコン圏経済開発プログラ
ムが進捗しており、その中心はメコン川流域を陸路で縦横に走る幹線道路イン
フラ(「経済回廊」=Economic Corridor)の整備である。AEC は上述通り「ソ
フト面」でのアセアン経済発展策であるに対し、この経済回廊はアセアンの中
で特に GMS の経済発展を狙う「ハード面」での経済発展策と言えよう。
2.各経済回廊の概要は以下通り。
①南北回廊 2013 年 12 月完成
北端は中国の昆明であり、ラオス及びミヤンマー経由でタイのバンコクまで
の一貫走行
が可能。また、昆明~ハイフォン(ベトナム)間も走行可能。
②東西経済回廊 2006 年 12 月完成
ベトナムのダナンを東端とし、ラオス、タイ経由で西端はミヤンマーのモー
ラミャインである。
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③南部経済回廊 2015 年中に完成予定
ベトナムのホーチミンを東端として、カンボジア経由で西端のタイのバンコ
クまでのルートである。現在カンボジア国内のメコン川渡河橋工事の完成待
ち。
④南部海岸経済回廊(南部経済回廊の補助幹線)2009 年 4 月完成
ベトナム南部のナムカンを東端として、カンボジア経由で西端のタイのバ
ンコクまで。
図1
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鹿野健・海外販路開拓支援マネージャー
3.これら経済回廊の経済効果。
①経済回廊は AEC の理念に沿った域内全体としての経済発展を実現するため
の動脈であり、各国の製品の流通が容易になることによって、各国の経済発
展の相乗効果が期待
できる。
②具体的な例としては、タイ或いは CLMV にある母工場と子工場の間での部
品や半製品の流通が容易である。つまり、労働集約的な製造過程は賃金の安
い国の工場に置いて、高度な技術が必要な製造過程は技術力の高い国の向上
に置くという分業が可能になる。
③各国の経済発展により国境を越えての人の交流が盛んになれば、其々の国
での小売業や観光産業等の第三次産業が潤うことになる。
3)3 月 24 日付日経記事の概略。
タイ流通大手の「セントラル」がタイ国内で、従来のバンコク及び周辺都市
の施設に加えて、経済回廊沿いの国境付近の都市に近年大型商業施設を建設
したという内容である。タイと国境を接する CLM(カンボジア、ラオス、ミ
ヤンマー)との国境付近が対象であり、AEC によって期待される CLM との
ヒト・モノ・カネの流れの活発化を取り込むことを狙っているとのこと。こ
れら新規開店の県名を別添の地図に X 印でプロットして示すが、上記 2)
3.③で述べた経済効果と軌を一つにする。
以上
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