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「平成23年度伊達市経営に関する説明会」発言録
日 時:7月27日(水)
午後7時~8時30分
会 場:伊達福祉センター
出席者:11人
市
長:(あいさつ、今年度の主な取り組みについて説明)
この説明会は、当初は5月に開催予定であったが、東日本大震災の影
響で開催が延期された。震災により補正予算を4度設定し当初予定して
いた事業の中には変更を余儀なくされたものもある。今後も放射能対策
に取り組んでいかなければならないが、当初の経営方針に基づき、本来行
うべき事業についても取り組んでいかなければならない。
平成23年度は、合併してから6年目である。合併してからの4年間で基
礎固めを終え、5年目となる平成22年度は市の体制が整ったことから、「発
展期」として、本格的な取り組みを始めた年であった。また、昨年度は、財
政経営の見通しも立ったことから、新市建設計画の見直し(当初250億円で
あった合併特例債事業を平成20年度に150億円に減額していたが、70億円
増額し220億にした)を行ったところであった。今年度は、発展期の2年
目として、新しい取り組みもいくつか計画していた。
しかし、年度当初から、震災の災害対策に追われる状況であった。当市の
地震被害としては、保原小学校と梁川小学校が使用不能になってしまった。
保原小学校の児童は、旧泉原小学校、松陽小学校、桃陵中学校に分散して通
っている。梁川小学校については、梁川中学校、梁川高校を借りて授業を行
っている。保原小学校は、新校舎を建築中であり来年2月には完成し、子ど
もたちの分散は解消される。梁川小学校については、新市建設計画で耐震上
の問題から新校舎の建設・移転が決まっており、これから5年以内に着工す
る段階にあるが、完成までの間仮設校舎を建設することについて一般会計補
正予算(第4号)で予算を計上し、議会の承認を得ている。
また、一般住宅については、4,000戸以上が屋根瓦が落ちるなどの被害を
受けた。そして深刻なのは、福島第一原発の爆発による放射能被害である。
放射能については、当初は原発から約60キロ離れていることから、市で
は放射能による影響は少ないものと考え、浜通りからの避難者を受け入
れる一方であった。約1,800人を市内8カ所の避難所で受け入れ、伊達地域
でも、伊達中学校、ふれあいセンターに避難所を開設した。伊達地域の皆さ
んには、避難者に対してご支援をいただき感謝申し上げる。
隣の飯舘村や川俣町では、計画的避難地域の指定に伴い避難が行われ、当
市でも、放射線量の高い地区(ホットスポット)があるということが分かり、
霊山町の石田宝司沢地区に対して計画的避難地域に準じた対応をしてきたと
ころである。これは強制避難ではなく、避難の希望をお聞きして「避難した
い」という人へ支援を行う。44世帯中14世帯が、市内の市営住宅などに避難
している状況である。
また、霊山町上小国、下小国地区、月舘町月舘字相葭地区の113世帯が、
国の「特定避難勧奨地点」の該当となった。この特定避難勧奨地点は、年間
放射線量が20ミリシーベルト以上になると推計される地点であり、今回、世
帯単位でその該当となった。指定については、地元から集落ごとの指定を求
める声もあるなど、いろいろなご意見があるのは承知している。
我々としても集落ごとの指定を国に要望し、国も大分考慮してくれたもの
の、同じ集落内で該当になった世帯とならなかった世帯が出たようだ。この
制度は、集落全体ではなく放射線量の高い地点を定期的に測定し、世帯に個
別に対応していくというものである。避難を希望しているのは、113世帯中
77世帯ということだが、具体的には、明日5世帯が避難する。皆さん、迷い
が出るようで、避難を希望していたがやめた世帯もあるという。迷うのは当
然であり、個別に対応していく。この制度は国の制度なので、市内だけでな
く希望すれば市外への避難も可能である。
しかし、この避難措置は一時的なものであり、根本的解決には至らない。
放射線の値が安全なレベルになるまでは家には戻れない。放射性物質で残っ
ているのは放射性セシウムである。このセシウムの半減期は30年といわれて
おり、300年経たないとゼロにはならない。人為的に除染を行いセシウムを
取り除いていく必要がある。除染については、放射線アドバイザー(除染・
土壌対策)として、原子力委員会の委員も務めた、その道の権威である田中
俊一先生から指導を受けている。
田中先生が除染の実証を行った富成小学校では、校庭の表土だけではなく、
法面や通学路の除染も行った。プールについては、除染後放射線量が大幅に
下がり、子どもたちが泳げるまでになった。田中先生の弟子やNPOなど50
名ほどにご協力いただいている。先週は小国地区の民家3軒を除染し、一定
の成果を挙げている。一方、このように表土を剥いだり、コンクリートを削
ったり、雨どいの落ち葉を集めたりすると、高濃度の放射性物質を含んだ廃
棄物が出る。校庭の表土などは、現在穴を掘って一時的に埋めている状態だ
が、いずれは、仮置きではなく最終処分場できちんと処分しなければならな
い。除染の結果生じる放射性廃棄物をどのように管理し、処分するのか今後
の課題である。
市としては、このように、市全域(265.1平方キロメートル)について、
田畑も山林も含め、何年かかろうとも除染していく方針である。
また、一方においては、安心して暮らせる「健幸都市」の実現のために取
り組んでいく。
放射能に対しては、先進的に取り組んでいるという評価を受けているが、
我々は、評価を受けようと思ってやっているわけではなく、除染を何とかし
てやり遂げねば伊達市の将来はないと思っている。放射能に汚染された福島
県にはそれしか道がないのである。
また、避難している人への支援、妊婦や子どもたちなどへの線量計の配布
など、健康管理の面でも取り組んでいく。
現在、長野県を中心に子どもたちがサマースクールに行っている。子ども
たちが、少しでも放射線量の低い場所でのびのびと過ごせるように、1,800
人の参加者を予定している。
財務部長:(別紙「平成23年度予算のポイント・平成23年度補正予算の概要」により
説明)
建設部土木課長:(別紙「富成小学校・幼稚園の放射能除染」により、放射能除染実
証実験の説明)
<質 疑>
市
民:補正予算で原発災害関係の予算を取っているようだが、東京電力や国へ賠
償請求はするのか。
財務部長:災害の経費は2種類あり、通常の災害にかかる経費は国の補助がある。放
射能関係の経費については、国や県から補助金はもらっているが、補助を除
いた市の負担分については、最終的に東京電力に請求することになるだろう。
市
民:一般会計補正予算(第4号)放射能除染対策事業の「町内会除染活動支援
補助金」について、除染について具体的にどういうことをやればいいのか。
市民生活部長:この事業は県の補助を受け、町内会などで除染を行う団体に50万円を
上限として助成するもので、現在要綱を作成中である。4,000万円のうち、
2,000万円については、市で専門機械を買うなどの費用に充てる。そのほか、
補助金50万円を50団体分として予算計上した。町内会でできることは、通学
路や側溝、集会所などの清掃に限られると思う。個人住宅については、この
補助金の対象外である。なお、町内会には、世帯が多いところと少ないとこ
ろもあるので、補助金の配分については内部で検討中である。
市
長:この50万円について補足すると、この補助金は、県からの補助だが、もと
は国からきている。昨日首相官邸に呼ばれ、福山官房副長官に除染の取り組
みについて聞かれたが、この交付金について「額が少なすぎるし町内会だけ
で除染しようがない」と発言してきたところである。
市では、市民の皆さんに除染をお願いするということではなく、基本的に
市が行うつもりである。自分の家などをできる範囲で除染していただくのは
かまわないが、基本的には業者に委託して除染を行うつもりである。
今後は、除染のマニュアルをつくり費用を積算し業者へ発注していきたい。
国に対しては、そういった面でもっと予算をつけてほしいと要望してきた。
除染の重要性についても理解が得られたと感じている。
市
民:毎年、町内会で側溝の掃除をしているが、今年は放射能の問題もあって中
止した。このような補助金をもらえれば、側溝の泥上げや通学路の掃除もで
きるのではないかと思う。
市
長:基本的に業者にやってもらうといっても、その地区に住んでいる人しか分
からない細々としたところは、業者に任せっきりにはできないので、この補
助金を活用していただければと思う。なお、先日の市のクリーンアップ作戦
で側溝の泥上げをしなかったのは、放射線量が高いことが分かっており、泥
を上げても持っていく場所がないからである。除染で出た放射性廃棄物の処
分方法が今後の大きな課題であると田中先生も言っている。今の日本の原子
力行政は「トイレなきマンション」と非難されているように、最終処分場が
決まっていない。早急に決めてもらわななければならない。
市では、放射性廃棄物の「管理型仮置き場」の設置を検討している。
「伊
達市の放射性廃棄物は市内に仮置きすべきである」と田中先生も言っている
が、仮置きではあるものの5年や10年放射性廃棄物を保管しておいても大丈
夫な管理をしていく。市民の皆さんのご理解をいただきながら、人があまり
近づかない場所、例えば山林の中などに仮置き場を造らなければならないと
考えている。明日発行する、だて市政だより災害対策号第20号にその主旨の
文章を載せているので、ぜひ読んでいただきたい。
市
民:以前の「わかりやすい予算書」は一度めくれば二度と見たくない内容だっ
たが、今年配布された「伊達市事業説明書」は、非常に見やすく分かりやす
いので、時々開いて見たくなるよう。
また、毎週木曜日に配布される「だて市政だより災害対策号」についても、
非常に良い取り組みである。町内会でも6月と7月に線量計を借り、22カ所
の放射線量を測定したところ、災害対策号で公表されている伊達総合支所な
どの値と大体同じであった。災害対策号を見れば大体の目安になるというこ
とが分かった。毎週発行なので班長は配達が大変だが、大事なことなので理
解してもらっている。これからも、除染の計画や進捗状況などを、分かりや
すくこまめに広報してほしい。
福島市では、支所だよりを発行しているが、大変良いことである。伊達地
域にはケーブルテレビがあるが、民法の番組と番組が重なっているし、内容
は瞬時に消えてしまうので、お知らせが徹底しない。紙媒体は保存しておけ
るので大変重宝である。総合支所で地域の身近な情報を掲載した支所だより
を発行してもらえればありがたい。地域のための地域の広報に努力すれば、
合併当初のキャッチフレーズであった「分散型合併」にもつながるのではな
いか。
市
長:
「伊達市事業説明書」について、ありがたい言葉をいただき感謝申し上げ
る。どうやったら皆さんに分かりやすくお知らせできるのか考えながら作成
した。今後も、市の情報を皆さんに分かりやすくお知らせしていきたい。
災害対策号の配達については、班長さんのご苦労は承知している。しかし、
今は非常事態であり、状況は刻々と変わっていくので、情報を早く知らせな
ければならない。しばらくは継続して発行していくつもりなので、ご理解い
ただきたい。
なお、支所だよりについては、霊山地域と月舘地域では発行している。地
域の細かい情報は市政だよりでは網羅できないので、伊達支所でも発行を検
討してもらいたい。
市
民:4点質問がある。1点目は除染についてだが、富成地区の実証実験の詳細
を聞き、マンパワー(労働力)が非常に必要だと認識した。各地域の除染を
行う場合、マンパワーをどのように調達していくつもりなのか。2点目は、
農産物の応援プロジェクトについてだが、こういった状況下で必要なのは、
市長のアピールである。もっとメディアに出演し伊達市の農産物を食べるア
ピールをしてほしい。3点目は、太陽光発電システムの補助金についてだが、
非常に良い制度であるので、既存の設備についても補助の対象としてほしい。
4点目は、我々は3月から放射能を浴び、内部被ばくを受けている。今後、
全市民向けに、放射能対策の面での健康診断を定期的に実施してもらいたい。
市
長:除染には相当な人数と費用がかかる。田中先生によると、1軒の家を除染
するのに、50~60人で1日かかるということだ。基本的には業者が主で行う
が、地域のことが分かる人も必要なので、市民ボランティアもお願いしたい
と思っている。これは、決して市民の皆さんに負担をかけようとするもので
はない。原発問題の責任は東電と国にあり、我々にはない。費用も、東電や
国に請求していくつもりだ。なお、学校の校庭の表土除去については、当初
文科省では、毎時3.8マイクロシーベルト以上の場合に補助金を出す考えで
あったが、市で陳情を行い、毎時1マイクロシーベルト以上で補助がもらえ
るようになった。現在、すべての校庭の表土除去に取り組んでいるところで
ある。今後、除染については、手持ち資金でやれるうちは事業をやっていく。
農産物の風評被害については、県などと一緒にPR活動を行っている。先
日も北海道に「福島県くだもの消費拡大委員会」として桃のPRに行ってき
た。市場関係者に農産物の安全性を説明し、桃の試食会や配布を行ってきた。
また、東京などにも行って農産物の安全性をアピールしているところである。
総務企画部長:
(太陽光発電について)昨年度、市では環境基本計画を定め、クリー
ンでエコなエネルギーである太陽光発電を導入するため、1軒につき12万円
を上限として太陽光発電システムの設置助成に取り組んでいる。補助事業の
性格上、すでに設置されているものは補助の対象とはならないので、ご理解
いただきたい。
健康福祉部次長:
(全市民対象の健康診断について)6月23日に県から「県民健康管
理調査」の実施について通知があり、県民200万人を対象に健康調査を30年
間実施するということである。また、県内の18歳以下の子ども36万人に対す
る甲状腺がんの検査を生涯にわたって行っていくとのことである。市では、
これらを基本に、県の動向を見極めながら実施していきたいと考えている。
市
長:
(御礼のあいさつ)市長として、この未曾有の災害をなんとか乗り切り、
本来市が目指すべき「高齢社会になっても安心して暮らせるまちづくり」に
向けての取り組みを同時に行っていくつもりである。今回の災害を通じて職
員の間では強い一体感ができたと思っている。この力を通常業務にも反映で
きるのではないかと思う。なお、現在、浜通りへの道は、国道114号が通れ
ないため国道115号しかない状況である。国では、東北中央自動車道を10年
以内に完成させると言っている。その道路は市内を通る予定なので、市の発
展につながるものと大いに期待している。「災い転じて福となす」というが、
この災害に対してやるべきことをきちんとやり、今後も、市の発展に向けて
取り組んでいく考えである。