第5章 1 民間保育施設・幼児教育施設・在宅子育て等の支援のあり方 民間保育施設・幼児教育施設・在宅子育て等に対する市の基本的な考え方 市内には、保育施設として、公立保育園以外に、私立保育園、認証保育所、定期利用保育施設、 家庭福祉員(保育ママ) 、東村山市保育室などがあります。また、幼児教育施設としては、私立幼 稚園、東村山市幼児教室があります。このほか、保育と幼児教育の両機能を併せ持った施設であ る幼保連携型認定こども園もあり、様々な保育・幼児教育制度のなかで、市内の子育て家庭を支 援しています。 当市では第2章の「保育施設等の状況」のとおり、公立保育園のみならず、多くの民間事業者 による多様な施設運営により市内の保育・幼児教育の環境が支えられているといえます。それゆ え、公立保育園の今後の設置・運営を見直すに際しては、これら民間事業者の運営する施設への 影響を考慮する必要があります。 市では、民間事業者の運営する施設が積み重ねてきた実績・取り組みに配慮し、今後も市が運 営する公立保育園との連携・支援体制の維持・強化に努めるとともに、次世代に適応できる運営 体制の整備に対し支援を行い、より良い協力関係のなかで保育環境の充実化を図っていきます。 また、施設を利用せずに家庭において子育てを行う在宅子育て家庭が、未就学児童の約38% を占める現状に配慮し、市内における子育て支援のニーズに合った施策の充実化に努めます。 2 民間保育施設への支援のあり方 民間の保育施設には様々な制度形態があり、それぞれの制度により市の支援方法は異なります。 市では、これまで保育環境の維持向上につながる支援制度として、補助金交付を中心とした施設 の整備・運営支援を行ってきたところですが、今後は、子ども・子育て支援関連3法の制定によ り保育制度が大幅に変わっていく状況を考慮し、市の支援形態についてもこれらの制度変更を視 野に入れた実効性のある支援制度に見直していくことが求められます。 (1) 施設整備への支援 待機児童の解消のために最も効果のある施策は、施設を整備し、定員を増員することです。 しかし、施設の整備には、土地や建物の確保、土地の造成や建物の設計・工事・解体撤去等を 行うために多額の資金が必要になるため、整備の促進には補助制度の充実が求められるほか、 一度補助金等を活用して整備した施設には使用用途や財産の処分に制限(※47)があり、運営者 に対しても原則として数十年単位の長期的な運営が求められます。 - 53 - ア 賃貸物件による小規模施設整備への方向転換 当市では今後、年尐人口の減尐傾向に伴い保育需要も徐々に減尐していくことを視野に 入れ、大型の認可保育所の新規開設は抑制し、1歳・2歳の待機児童が特に多い等の地域 需要に効果的に対応できる保育所分園等の小規模な保育施設を賃貸物件により整備してい く取り組みを中心に支援します。 イ 既存施設の老朽化・劣化等に対する対応の支援 民間老朽施設等に対する改修及び耐震化対応等の支援制度は、国及び東京都において整 備されていることから、これらの支援制度に係る情報提供を速やかに行い、民間保育施設 の安全・安心な保育環境の整備を支援します。 ウ 国都助成制度に依存しない新制度の構築 国や東京都の補助制度に依存した支援(P39 図表2-30参照)が多いなか、当市の地 域特性を活かした施設整備が進められるよう、保育に関する良好な実績と運営能力を有す る多様な事業主体による保育環境の整備を可能とする制度など、独自の施設整備支援策の 創設にも取り組みます。 (2) 施設運営への支援 市内の民間事業者等の運営する保育施設では、多くの子どもが保育を受けており、これら の施設の安定かつ充実した運営は、市内の保育環境の整備に欠かせないものとなっています。 こうした民間保育施設には、設置根拠となる制度形態ごとに運営に対する公的支援が行われ ていますが、その経営状況は、施設形態や法人規模等により様々です。そのようななかでも、 運営主体の経営努力等により様々なニーズに対応する取り組みが実施されていますが、運営 費に占める割合の特に大きい人件費は、抑制しすぎると保育士等の低賃金化を引き起こす可 能性があるなど、労働者の生活安定や今後の人材確保のための処遇改善が重要視されていま す。また、認可保育所と認可外保育所との比較では、補助制度の充実度に大きな差があり、 保育を必要とする子どもの保育環境の充実化を図るためには、こうした制度間格差を埋めて いく取り組みが必要です。 ア 人的支援 認可保育所では、児童福祉法に基づく人員基準に基づき、一定数の保育士が配置されてい ますが、基準を上回る体制を確保するために無資格の補助者を追加配置している施設もあり ます。また、全国の都市部にみられる急速な待機児童対策により、施設整備に伴う保育士の 不足も課題となっています。 - 54 - これらの課題を踏まえ、国や東京都の事業も活用しながら保育士の確保のための資格取得 支援や就業継続支援、一度職を離れた資格所有者の再就職支援等の取り組みを行います。ま た、保育士の処遇を改善するための取り組みも並行して行います。 イ 物的支援 認可外保育所等は、小規模の施設が大半であり、設備面において園庭やプール等が設置さ れていない状況があります。また、保育イベント等においては備品等の購入が施設運営の規 模から困難となることがあります。 これらの状況を踏まえ、公立保育園を始めとする認可保育所との設備の共用等に取り組み ます。 ウ 緊急時支援 小規模の民間保育施設の場合、人員体制や施設・設備の体制において緊急時に備えた体制 を整えることが困難であることが多いのが現状です。また、災害等に限らず、インフルエン ザ感染等により職員体制が確保できない場合等も想定されますが、これらの状況へ安定的に 対応できる体制の確保が求められます。 今後、民間保育施設における緊急時の保育体制を確保するための支援として、市内の保育 施設間の情報共有を目的とした基幹的なネットワーク等の連絡体制を構築するとともに、公 立保育園を含む施設間連携体制の構築を目指した取り組みを行います。 (3) 新法に基づく新制度対応に向けた支援 ア 制度移行のための支援 子ども・子育て支援法を始めとする新法に基づく制度施行後は、現在の保育所に対する 都道府県知事の認可制度のほか、小規模保育所等の地域型保育事業に対する市町村長の認 可制度(※48)が加わる予定となっています。新しい認可制度下の施設に移行することによ り、新制度による給付体系の対象となることが予定されていることを踏まえ、施設の安定 運営及び施設基準等の充足による保育環境の充実化を目指し、原則として新制度施設への 移行支援に取り組みます。 イ 切れ目のない保育実施のための支援 認可外保育施設の多くは、受入対象を0歳から2歳までとしていることから、3歳以後 に継続利用できる保育施設を探さなければならない状況があります。新しい制度のもと、 3歳以後、優先的に入所できる保育所や認定こども園との連携体制の構築に取り組みます。 - 55 - 3 幼児教育施設への支援のあり方 幼児教育施設は、主に幼稚園となりますが、平成18年に新しい制度として創設された認定こ ども園は、保育機能とともに幼児教育機能を併有する施設として重要な位置づけの施設です。 それぞれの制度により市の支援方法は異なります。市では、これまで保育環境の維持向上につ ながる支援制度として、補助金交付を中心とした施設の整備・運営支援を行ってきたところです が、今後は、子ども・子育て支援関連3法の制定により教育・保育制度が大きく変わっていく状 況を考慮し、市の支援形態についてもこれらの制度変更を視野に入れた実効性のある支援制度に 見直していくことが求められます。 (1) 幼稚園に対する支援 幼児教育施設である幼稚園に対しては、幼児教育の機会提供の拡充の観点から、施設運営の 支援を引き続き推進するとともに、幼稚園の預かり保育(※49)が実質的な保育支援として機能 している状況を踏まえ、待機児童解消のための支援施策の一環として、認定こども園化の促進 と連動した新たな支援に取り組むこととします。 (2) 認定こども園に対する支援 認定こども園へ移行するなど、保育の必要な子どもに対する支援に積極的に取り組む施設に 対しては、移行に伴う支援のほか、運営に対する支援を行います。認定こども園には、制度形 態が4形態存在しますが、当市の幼児教育施設への支援としては、幼保連携型及び幼稚園型の 認定こども園への移行支援を重点的に取り組みます。 4 在宅子育て家庭への支援のあり方 施設によらない子育て支援としては、子育てひろば事業、乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは 赤ちゃん事業) (※50)における専門家との連携、子育て預かりサポート事業(たんたんの家) 、子 育て支援総合センター(ころころの森) 、ファミリー・サポート・センター、おひさま広場などの 場や取り組みがあり、市の直営のほか、委託や指定管理者制度等を活用し、在宅子育て向けの支 援として取り組んでいます。 (1) 既存の在宅子育て支援の継続 第2章の「保育事業の状況」で示したとおり、既に実施されている在宅子育て支援に向けた 取り組みについては、今後においても適宜、利用者のニーズに対応した見直しを行うとともに、 維持・向上に向けた取り組みを行います。 - 56 - (2) 新しい在宅子育てに対する支援 自宅で子育て中の家庭が、その状況に応じて必要な支援を受けるためには、どのような施設 や事業が存在し、どのような手続を行うことで支援を受けることができるのかを知る必要があ ります。市では、これまで市報や市ホームページ、チラシなどにより、情報の提供に努めてき たところですが、今後は、子育て関連情報の拠点となる総合窓口等の設置や保育園関係情報を 取りまとめた冊子の改善、地域イベント等への積極的な参加等を通じた情報提供などの取り組 みを行います。 5 地域の保育資源への支援のあり方 市内には、様々な制度に基づく保育施設がありますが、一方では国や東京都、市の保育制度に よらずに地域で子育てを支援する取り組みが行われています。 これらの取り組みは、子育て家庭にとっては身近に保育等のサポートを受けられる資源であり、 重要な存在となりますが、市ではこれらすべてを把握しているとはいえないのが現状です。 今後は、市が法令や自治体の制度によらない取り組みについて把握し、運営者の意向に応じて 指導・改善を図るほか、サポートを必要とする子育て家庭に広く周知する等の情報発信を支援し、 市内の保育環境の充実化を図ります。 6 施設利用者への支援のあり方 保育施設には児童福祉法に基づく認可保育所と、同法に基づかない認可外保育施設があり、認 可外保育施設には、東京都や当市の制度に基づく施設(認証保育所、定期利用保育施設、保育マ マ、認可外保育室)とそれ以外の施設があるなど、同じ保育施設でありながら様々な制度に基づ き運営されています。これらの施設は、運営制度や運営者の理念等により、開所時間や施設設備 の充実度、規模、契約期間、利用料金等において大きな差があります。 近年の雇用環境の多様化に伴い、保護者の就労状況も多様化しており、保護者には、必要とす る保育条件に合った施設を選択することが求められます。しかし、現状では、認可保育所と認可 外保育施設の利用者負担の差が大きく、このことが保護者の施設選択の幅を狭めている大きな要 因となっているものと推察されます。 当市では、今後、保護者の子育て環境に応じて、必要なサービスが受けられる施設を選択でき るよう、施設の状況に応じて利用者負担の差が縮小されるような支援に取り組みます。 - 57 -
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