Vol.37 合唱の師との出会い 2011年7月号 PDFファイル

NJP メンバーの宝物
―メンバーが大切にしている秘蔵の品、それにまつわる思い出を紹介するコーナー
Vol.37
合唱の師との出会い-渡辺玲雄(コントラバス)
小学校 3 年から通った東京都港区の神明小学校は、とても合唱の盛んな小学校でした。そこで
合唱団の顧問を務められていた丸山先生に出会い、音楽を体いっぱいで表現して声を重ねあい気
持ちを重ねあい、歌うことの喜びと面白さを学びました。その経験は、その後の自分の音楽体験
いしずえ
の 礎 になっています。
先生の指導はいつもとてもユニークでした。声の出し方も、例えば「頬骨をあげて歌うと 顔も
音も笑顔になって、嬉しそうに音が飛んでいくのですよ」と言って、良い表情をする生徒をみん
なの前に出し、生徒に生徒のいいところを発見させる。すると、みるみるうちに影響の連鎖で生
徒達の表情と発声が変わっていくのです。また、息の続かない長いフレーズを歌うときには、生
徒同士でお腹を触らせ、腹式呼吸で歌うことをわかりやすく教えてくれました。
言葉についての指導も印象的です。合唱曲の歌詞は子どもには難しいものも結構あるの ですが、
先生は歌詞を丁寧に表現することを大切にしていました。「外はしんしん夜が更ける、足音消し
て雪が降る」という歌詞を歌うときに、大雪を知らない子どもたちには「しんしん」や「足音消
して」という歌詞の意味がわかりにくかったと思いますが、目を閉じてイメージを統一し、情景
を心に映し、なおかつ子音を丁寧に話して寒さを表現する練習をしました。自然の空気感を表現
するために、この歌詞の出だしに細心の注意を払うことを忘れないようにと何度も何度も練習し
たのを覚えています。
高校から始めたコントラバスも、どこかに合唱で学んだ経 験を感じながら練習を重ねた結果、
今こうしてオーケストラで演奏するという夢をかなえたことにつながったと感じています。心の
中の宝物をこれからも大事に演奏していきたいと思います。
(2011 年 7 月号)