多治見市環境基本条例(平成 10 年9月 24 日条例第 20 号) 逐条解説

多治見市環境基本条例(平成 10 年9月 24 日条例第 20 号) 逐条解説
多治見市環境課
この条例は、題名にあるとおり「基本条例」です。多治見市としては「基本条例」はこれが最初
の条例です。
基本条例には、審議会や環境基本計画等の具体的な規定も含まれていますが、大部分は、環境の
保全と創出に関する基本的な考え方や施策の方向性を示す規定で占められています。この条例の基
本的な考え方に基づき、具体的な手続条例としての「環境保全条例(美化条例)」や「環境影響評
価条例」等が制定されることとなります。つまり、この条例は、これら手続条例の上位条例であり、
第4条第2項の規定と相まって、市の環境行政における上位条例という位置を占めています。
この条例は、「口語体」で書かれています。多治見市としては「口語体」で書かれた条例も、こ
れが最初の条例です。できる限り易しい言葉で、できる限り多くの人に、環境に関係した基本的な
事項を知ってもらうために口語体にしました。
<前文>
わたしたち多治見市民は、周囲の緑を自ら育て、市街地を東西に貫流する土岐川に親しみな
がら、個性ある文化を育んできました。
しかし、今日の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済活動や、物質的な豊かさを求める
生活様式は、自然の生態系に影響を及ぼし、わたしたちを取り巻く環境を地球規模で大きく変
え、人類の生存さえも危うくしようとしています。わたしたちは、自身も生態系の一員であり、
享受できる環境には限りがあるとの認識に立つ必要があります。
今こそわたしたちは、わたしたちの置かれている環境を保全する努力にとどまらず、さらに
豊かで快適な環境を創り出し、環境と共生する社会の実現に努めなければなりません。
ここに、すべての市民の参加と協働により、豊かで快適な環境を保全するとともに創出し、
将来の世代へと引き継いでいくため、この条例を制定します。
【 趣 旨 】
環境基本条例制定に至る時代的・社会的背景の認識と保全・創出に努力する決意を明らかにした
うえで、条例制定の目的を述べています。この前文は、条例の全体的な認識を示しており、解釈・
運用のものさしとなります。
【 解 説 】
周囲の緑を自ら育て、個性ある文化を育んできました………多治見市の周囲の丘陵地は、陶磁器産
業や戦後の物不足時代の薪採取などのため伐採され、またその薪の確保等のため多数の人々が植
樹する等の努力により豊かな緑が、守られ・育てられてきました。市街地を取り囲む緑は自然に
与えられたものであり、また市民が自ら育んできたものです。そうした土地で陶磁器産業を中心
にした個性ある文化も、また育まれてきたのです。
今日の生活様式………環境問題は、当初公害を発生させる企業と被害を受ける住民という構図の
「公害問題」として認識されました。しかし、今日の大量生産・大量消費・大量廃棄という生活
スタイルは、住民もまた加害者になるという構造を作り出しました。
環境を地球規模で大きく変え………それは、環境問題が「公害問題」のように一部地域に限られず、
地球規模の問題として認識されるようになったためです。また、一度生じた環境破壊は、たやす
く回復されない(緑を育てるのに何十年も、何百年もかかるように)長い時間を要する問題とし
ても認識されるようになりました。
1
環境を保全する努力にとどまらず、さらに豊かで快適な環境を創りだし………したがって、単に今
ある環境を守るだけでなく、積極的により良い環境を創り出していくことが必要です。
すべての市民の参加と協働により………環境を保全し、創出するのは、市民や事業者や行政が、個
人であると団体であるとを問わず、みんなが、自身持っている能力と熱意を分担しあって、一緒
に行わなければなりません。
将来の世代へと引き継いでいく………その保全し、創出する努力の結果としての環境は、私たち自
身が享受するだけでなく、私たちに続く世代へと引き継いでいくべきものです。
(目的)
第1条 この条例は、環境の保全と創出についての基本的な考え方を定め、市、事業者と市民の
責任と義務を明らかにするとともに、環境の保全と創出に関係する施策の基本的な事項を定め
ることによって、現在と将来の世代の市民が環境と共生しながら健康で文化的な生活を営むこ
とができるようにすることを目的とします。
【 趣 旨 】
本条は、環境基本条例に規定している事項(基本的な考え方、市民・事業者・市の責任と義務、
環境の保全と創出に関する施策の基本的な事項等の推進)をまとめて記述し、この条例の究極目的
として、現在と将来の世代の市民が健康で文化的な生活を営むことができるようにすることを掲げ
ました。
【 解 説 】
環境の保全と創出………なぜ、保全と創出なのかは、前文の解説で述べましたが、人間の活動が活
発になればなるほど、環境への負荷が増大し、自然の回復能力を越えるようになりました。その
結果、本来維持されていた良好な環境が損なわれることになったのです。このため、自然の回復
能力を越えた環境への負荷を低減させるだけではなく、創出の努力が必要になります。
保全と創出の基本的な考え方は、第3条に書いてあります。多治見市に特徴的な「環境の保全
と創出」については、天然記念物、保存樹、名木等の保存も含めた、周辺緑地の確保や里山の保
全と同時に、「風の道構想」で示される市街地緑化の施策や、三ツ池公園のビオトープ化による
環境の再生等であり、守り維持していくに留まらず、新たな環境の創出を目指すことです。
市、事業者と市民の責任と義務………第4条から第6条に書いてあります。
施策の基本的な事項………第9条から第 15 条に書いてあります。
現在と将来の世代………前文の解説でも述べたとおり、今日の環境問題は、地球環境という空間的
な広がりと、将来世代にわたる影響の時間的な広がりを持つ問題になっています。現在の世代が
良好な環境を享受できるようにするとともに、将来の世代にこれを引き継いでいくことを目的と
する必要があるため明記しました。
健康で文化的な生活………憲法第 25 条第1項に規定する「健康で文化的な生活」を確保する上に
おいて、環境の保全と創出を図ることがきわめて重要であることを明示し、これをこの条例制定
の目的としました。
【 参
考 】
2
環境の保全と創出の範囲………「環境」という用語は、かなり包括的な概念を示す言葉で、様々
な法律や文献で、いろんな意味に使われています。もともと、環境をめぐる社会的なニーズや
市民意識の変化につれて、
「環境」の意味も移り変わっていくものと考えられます。ここでは、
大気・水・土壌等の物理的、動植物等の生物学的な自然構成的要素によって構成された自然環
境(地域的な、あるいは地球規模の)と、そのうえに構築されたシステムとしての生活環境と
とらえ、これを保全し、創出すること、つまり人にとって良好な状態にすることが、「健康で
文化的な生活」を確保することにつながると考えています。
(定義)
第2条 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動によって環境に加えられる影響で
あって、環境を保全し、創出するうえで支障の原因となるおそれのあるものをいいます。
2 この条例において「地球環境の保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化やオゾン層
の破壊の進行、大気・海洋の汚染、野生生物の種の減少、放射性物質や化学物質による汚染
その他の地球規模の環境に影響を及ぼす事態に対する環境保全であって、人類の福祉に貢献
するとともに、市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいいます。
3 この条例において「公害」とは、環境を保全し、創出するうえでの支障のうち、事業活動
その他の人の活動に伴って生じる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤
の沈下、悪臭、光害によって、人の健康や生活環境に関係する被害が生じることをいいます。
【 趣 旨 】
本条は、この条例で使っていることばで、今まで一般的にはあまり使われなかったことばや、重
要な概念を表していることばの意味を説明しています。環境基本法第2条に定めることばの意味を
おおむね引き継いでいます。
【 解 説 】
環境への負荷(第1項)………人間の活動は、環境から有用物を取り入れ、環境に不要物を捨てな
がら成り立っています。人間社会の規模が大きくなるに従い、有用物の取り入れと不要物の廃棄
が自然の回復力を超え、環境が損なわれる原因となっています。この状況を「環境への負荷」と
定義しました。具体的には、大気汚染物質の排出、生活排水の河川への放出、野生生物その他自
然物の損傷、自然景観の変更、土地の形質の変更などが含まれます。
①人の活動によって………保全の支障の原因には、人為的なものと自然現象によるものとがありま
す。ここで定義される「環境への負荷」は、人為的な原因に基づくものに限られ、地震や台風な
どの自然現象に基づく被害は含んでいません。人の活動には、個人の生活に限らず、人類の活動
全般を含みます。
②環境に加えられる影響………「環境への影響」のうち、個別の活動によって環境に新たに加えら
れる影響の部分(例えば、新たな汚染物質の排出や、影響が今まで以上に増加したりする部分)
を示す概念です。
③環境を保全し、創出するうえで支障の原因となる………有害物質の環境への放出のように直接・
単独で支障を引き起こすものだけでなく、集積することによって支障を引き起こすもの(例えば
二酸化炭素のように自然の営みの中で蓄積されるもの)を含んでいます。
地球環境の保全(第2項)………今日の環境問題の特徴が、地球規模への影響と意識の広がりにあ
ることは、これまでも述べてきたとおりです。したがって、この条例でも第3 条、第4条と第
19 条で「地球環境の保全」について特に規定しています。そこで、その 定義について規定しま
した。
①人の活動による………「地球環境の保全」も第1項の「環境の保全」の中に含まれるものであり、
ここでも問題となるのは人為的な原因であることは変わりありません。
3
②地球全体の温暖化~化学物質による汚染………地球環境問題を例示したものです。
・「地球温暖化」………大気中の二酸化炭素・メタン等の温室効果ガスの濃度上昇により地球が温
暖化することを言います。温室効果ガスとは、太陽から地球への光をほとんど全て通すのに、地
表から宇宙に逃げる赤外線放射を吸収して、大気の温度を上昇させる効果を持つ気体のことです。
・「オゾン層の破壊」………フロンの大気中への排出に伴い、成層圏のオゾン層が破壊され、有害
紫外線の地表面への到達量が増大し、皮膚ガンが増える等の健康への影響や生態系への悪影響が
もたらされる等の結果が生じることをいいます。
・「大気・海洋の汚染」………硫黄酸化物・窒素酸化物等が大気中に放出され健康への影響が生じ
たり、タンカー事故による油流出、富栄養化による海洋生物・海洋資源・快適性などに有害な結
果が生じることをいいます。
・「野生生物の種の減少」………現在科学的に明らかにされている野生生物の種の数は約 140 万種
とされていますが、推計上の生存種の数は 500 万~1,000 万種とも言われています。これら野生
生物が、人間の活動に伴い歴史上かつてないスピードで絶滅しつつある状況を指しています。
・「放射性物質や化学物質による汚染」………事故や人為的なミスにより放射性物質や化学物質
(例えば、ダイオキシンのような内分泌かく乱物質等)が、大気・水・土壌を汚染し、生物の健
康や遺伝機能に悪影響を与えたり、海洋の持つ自然浄化能力に障害を与えたりすることを指して
います。
・「酸性雨」………石炭・石油等の化石燃料の燃焼等によって硫黄酸化物・窒素酸化物等が大気中
に放出され、これらが化学変化し、最終的に強い酸性を示す降雨や乾いた粒子状物質として降下
することをいいます。これに伴い、湖沼の魚の死滅や森林障害、歴史的建造物などへの被害が生
じています。
・「砂漠化」………乾燥地域、半乾燥地域、乾燥半湿潤地域において、気候変動や人間の活動を含
む様々な要因により土地が劣化することをいいます。砂漠化の要因には自然的なものと人為的な
ものがあります。このうち人為的な要因として、家畜の過放牧、過耕作、薪炭材の過剰採取など
により、その土地の再生能力を超えた負荷が加えられることが挙げられます。
・「熱帯林の減少」………薪炭材の過剰採取、耕作地の拡大、商業用伐採などが原因とされていま
す。これにより、土壌流出、生活用エネルギーの枯渇など熱帯林諸国の問題だけでなく、気候変
動や野生生物種の減少などの影響があります。
③人類の福祉~生活の確保に寄与するもの………地球規模で影響を及ぼす事態であることだけで
なく、人類共通の課題であるとともに、市民自身の現在及び将来に係る問題との観点から、条例
の重要な対象分野として取り上げられる問題であることを明らかにするものです。
公害(第3項)………この条例で保全し、創出しようとしている生活環境(第4条第1項第1号)
に対して重大な損傷・支障を与える「公害」の定義を明らかにしておくものです。
①事業活動その他人の活動に伴って生じる………人為的な原因に基づくものに限られ、自然現象を
原因とした健康や生活環境の被害は含みません。
・「大気の汚染」………大気中に汚染物質が持ち込まれる状況を言います。汚染物質には、降下ば
いじん、浮遊粉じん、硫黄酸化物、窒素酸化物、それに自動車排ガスに含まれる一酸化炭素や炭
化水素等多くのものが含まれます。
・「水質の汚濁」………正常な水に汚濁物質が混入されることですが、その他にも水温の著しい変
化やヘドロの堆積も含まれます。
・「土壌の汚染」………土壌中に汚染物質が持ち込まれることをいいます。原材料の流出や廃棄物
の埋め立てにより直接土壌中に混入する場合の他、水質汚濁や大気汚染を通じて二次的に持ち込
まれることもあります。土壌の場合、大気や水質は違って影響が長期間にわたって継続するとい
う特徴があります。
・「騒音」………本来は好ましくない不快な音という意味で、主観的なものですが、社会生活を阻
害する音や多数の人々に健康被害を与える音は、主観的な段階を離れて規制すべき「騒音」です。
この条例でもそのような意味で使われます。
・「振動」………航空機の衝撃波等のように空気を伝わるものと、建設工事や大型車両の通行によ
る道路の振動等のように土地を伝わるものがあります。
4
・「地盤の沈下」………地下水の採取等により地中の粘土層に収縮を生じて周辺の地層が陥没した
りする現象です。
・「悪臭」………臭いも騒音と同様に主観的な要素が強いのですが、頭痛や吐き気を起こしたりす
る臭気は「悪臭」として規制の対象となります。
・「光害」………強度の夜間照明により睡眠が妨害される等の健康に対する障害や居住の快適性が
阻害されること、植物の育成に変化が生じること、都市照明で星が見えない等の状況をいいます。
②生活環境………ここで言う生活環境には常識的な意味での生活環境のほか、農漁業の対象となる
植物や魚類など人の生活に関係する動植物や、その生息環境などを含みます。第4条第1項第1
号ではもっと広い意味で使われています。
③被害………被害の内容には、騒音・悪臭のような感覚的な被害から人の生命に関わるものまでを
含みます。
(基本的な考え方)
第3条 環境は、積極的に保全し、創出する働きかけを行わないと失われやすいものであると
いう認識に立って、その保全と創出の活動が行われなければなりません。
2 環境の保全と創出は、人と自然とが共に生きる社会において、市民の良好な環境を享受す
る権利を守り、将来の世代へ引き継いでいくことを目的に、行われなければなりません。
3 環境の保全と創出は、すべての者が自主的に、しかも積極的に取り組むことによって行わ
れなければなりません。
4 地球環境の保全は、すべての事業活動と日常活動において積極的に推進されなければなり
ません。
【 趣 旨 】
本条は、この条例全体の基本的な考え方を規定しています。
第1項は、環境への基本的な認識を表しています。
第2項は、「環境の保全と創出」が行われる最終目的「環境を享受する権利」と「将来へ引き継
いでいくこと」を、前文と第1条に重ねてもう一度規定しています。
第3項と第4項は、環境に関する施策を進めるうえで特に必要となる考え方を規定しています。
【 解 説 】
環境は、積極的に保全し、創出する働きかけを行わないと失われやすい(第1項)………環境には、
自ら浄化・回復する能力があり、かつて人はその能力の範囲内で生活することができました。そ
のため、人間が環境から取り入れる有用物の量や捨てられる廃棄物の環境の許容量は無限である
かのように考えられていました。けれども人間社会の規模が大きくなり、その限度を超えると、
「環境の保全と創出」について人間が努力しないと環境を損なうことが意識されるようになりま
した。一度失われた環境を取り戻すためには、膨大なエネルギーと時間が必要になります。また、
失われた環境が思わぬところで大きな影響を引き起こすこともありえます。こうしたことを認識
の前提としています。
人と自然が共に生きる社会(第2項)………人間も生態系の一員であるとの認識に立って、取り巻
く自然環境とバランスのとれた共生関係が成立し、持続的発展が可能となる社会をいいます。
市民の良好な環境を享受する権利(第2項)………この条例では、市民一人ひとりが基本的に、良
好な環境を享受する権利を有すると考えています。従って、市は環境の保全及び創出のため、一
層の努力が求められます。
将来の世代へ引き継いでいくこと(第2項)………環境を享受する権利は、現在の世代だけでなく、
5
将来の世代にも認められなければなりません。
すべての者が自主的に、しかも積極的に取り組む(第3項)………市民の持つ環境を享受する権利
を守っていくためには、市民はお互いにその権利を尊重しあわなければなりません。また、市民
が享受できる環境は限りがあるものとの認識に立てば、すべての者(市・事業者・市民の各主体)
が、自主的に、積極的に環境の保全と創出に努力しなければなりません。
地球環境の保全(第4項)………地球環境の保全は、市民生活と遠くかけ離れた問題として無視で
きるものではありません。地球環境の破壊は、地域における無秩序な環境破壊の積み重ねの結果
であり、地球環境の保全は、すべての者が個々の分野で行う努力の積み重ねの結果である、との
認識を持ち、積極的に地域における環境の保全及び創出に取り組むことで実現されると考えます。
【 参 考 】
環境権………「環境権」については、法的権利としての性格について未だ定説がなく、判例もあり
ません。具体的な権利内容についても不明確ですから、この条例でも直接「環境権」ということ
ばは使っていません。しかし、人間が健康で文化的な生活を営むためには良好な環境を欠くこと
はできません。また、現在だけでなく将来の世代でも健全で恵み豊かな環境を享受することが不
可欠です。そのことを端的・簡潔に「良好な環境を享受する権利」と表現しました。
(市の責任と義務)
第4条 市には、環境の保全と創出を実現するため、次に掲げる事項についての施策を総合的
に、しかも計画的に推進する責任と義務があります。
(1)公害の防止、廃棄物の削減・再利用と適正処分、水の循環構造の保全、省資源と省エネ
ルギー、歴史的文化的資産の保存、景観の保全、快適な居住環境の整備等生活環境に関係す
ること。
(2)森林の保全と活用、河川・湿地等水辺環境の保全、緑化の推進、野生動植物の生態とそ
の多様性に配慮した自然保護等自然環境に関係すること。
(3)地球温暖化の防止、酸性雨の防止、オゾン層の保護等地球環境に関係すること。
2 市は、事業を立案したり、施行したりするときは、この条例の基本的な考え方に従って、
環境の保全と創出に配慮して行わなければなりません。
【 趣 旨 】
環境基本法第7条の「地方公共団体の責務」の規定を受けて、本市が行うべき国の施策に準じた
施策と本市の自然的社会的条件に応じた施策を規定しています。第5条の事業者・第6条の市民の
規定と併せて、第3条第3項に規定された「すべての者」(各主体)の責任と義務を規定すること
になります。
本市の責任と義務を、生活環境・自然環境・地球環境の三つの環境に関係する施策に分けて掲げ
ました。これが第7条で策定を規定している環境基本計画の骨格となります。
また、第2項は、市の事業は、この条例の考え方に従うことを規定し、この条例が「基本条例」
として、市の施策の根本理念を定めていることを表しています。
【 解 説 】
生活環境に関係すること(第1項第1号)………次に掲げるそれぞれの施策が、良好な生活環境を
保全し創出することを目的に実施されるよう基本計画の中で取り上げられることとなります。
①公害の防止………公害の防止に関しては、大気環境の保全・水環境の保全・土壌や地盤環境の保
全・騒音と振動対策・新たな環境汚染の防止・苦情処理等の課題が、規制措置の実施、監視指導
の充実、関係機関との連絡調整、広域的な連携等の方法によって実現されるよう計画します。
6
②廃棄物の削減………廃棄物の削減に関しては、ごみ減量化・資源化・リサイクル対策等の課題が、
分別の徹底、資源回収の拡大、回収拠点の整備、生ごみ堆肥化の推進、ごみ減量協力店の拡大、
啓発活動の強化等の方法により実現されるよう計画します。
③廃棄物の再利用と適正処分………廃棄物の再利用と適正処分に関しては、適正な処理対策が、②
の廃棄物の削減を受け、最新の技術に基づく新焼却場の建設、焼却灰及び飛灰の溶融化による有
効利用、最終処分場の検討、廃棄物適正処理の監視指導の強化、関係機関との連絡調整強化等の
方法により実現されるよう計画します。
④水の循環構造の保全………ヒートアイランド現象の解消、緑化の促進等の課題が、透水性舗装、
利用可能なオープン水路等の方法により実現されるよう計画します。
⑤省資源と省エネルギー………省資源対策・省エネルギー対策・グリーン購入の推進等の課題が、
環境共生型施設の調査研究、アイドリングストップ運動の推進、資源回収の拡大を受けた再生商
品利用の推進、環境にやさしい商品に関する情報の収集と提供等の方法により実現されるよう計
画します。
⑥歴史的文化的資産の保存………歴史的な建造物や生活に潤いをもたらす風俗風習の保存等の課
題が、保護保存・有効活用運動の展開等の方法により実現されるよう計画します。
⑦景観の保全………景観の保全に関しては、町並み景観の保全・創出等の課題が、景観条例の制定、
市街地景観保全区域の検討、建物形態の指導、屋外公告物の適正化等の方法により実現されるよ
う計画します。
⑧快適な居住環境の整備………快適な生活環境の整備・アメニティーの創出等の課題が、総合的な
都市計画の基に、快適な道路・歩道空間や公園の整備、交通体系の整備、環境美化運動の推進、
街路樹やポケットパークの市民参加による管理、環境美化条例の制定等の方法により実現される
よう計画します。
自然環境に関係すること(第1項第2号)………次に掲げるそれぞれの施策が、良好な自然環境を
保全し創出することを目的に実施されるよう基本計画の中で取り上げられることとなります。
①森林の保全と活用………森林の保全及び活用に関しては、市街化調整区域の範囲において、森林
の適正管理・森林の公益的機能の有効利用等の課題が、絶滅危惧種及び貴重種の保護、広葉樹林
の保全、林道の改良、森林資源の高度利用、森林火災の未然防止、関係機関との連絡調整の強化
等の方法により実現されるよう計画します。
②河川・湿地等水辺環境の保全………公害の防止に関する水環境の保全に係る施策と連携しつつ、
豊かで多様な生物相を有する湿地の詳細な調査・適正な保全・貴重種の保護、水辺環境の整備・
河川環境の活用等の課題が、環境に配慮した河川整備、親水事業の推進、保護活動団体との連携、
関係機関との連絡調整強化等の方法により実現されるよう計画します。
③緑化の推進………「風の道構想」をその中心的柱としつつ、緑地の適正な保全・貴重な樹木の保
護・緑地の再生等の課題が、緑のマスタープランの推進、緑化基本計画の策定、公共施設の周辺
緑化、緑化団体の育成、市民参加による植栽事業の拡大、緑化意識の普及啓発等の方法により実
現されるよう計画します。
④野生動植物の生態とその多様性に配慮した自然保護………自然保護に関しては、野生動植物の本
来の生態と、その多様性の維持に配慮しつつ、自然景観の保全も含める広い視野に立って、里山
の保全・動植物の保護・貴重種の保護・自然保護意識の高揚等の課題が、希少動植物の保護活動
の推進、保護活動団体との連携、自然学習事業の拡大等の方法により実現されるよう計画します。
地球環境に関係すること(第1項第3号)………次に掲げるそれぞれの施策を、地域から実践でき
る地球環境保全の取り組みとして基本計画の中で取り上げられることとなります。
①地球温暖化の防止………公害の防止に関する大気環境の保全に係る施策と連携しつつ、本市にお
ける温暖化ガス排出量の削減に向け、市民・事業者・市が取り組むべき施策に必要な調査、情報
の収集、啓蒙啓発等に努めるよう計画します。
②酸性雨の防止………公害の防止に関する大気環境の保全に係る施策と連携しつつ、地球温暖化防
止に関する施策と同様に、必要な調査体制の整備、情報の収集、啓蒙啓発等に努めるよう計画し
ます。
7
③オゾン層の保護………フロンの製造中止及び代替フロンの使用制限等により、これ以上のオゾン
層破壊物質の増加はないため、現在使用されているフロンの適正な回収について、本市における
回収体制の強化、回収フロンの処理方法の確立等に努めるよう計画します。
この条例の基本的な考え方に従って(第2項)………第1項で示した施策の体系に基づき、市が具
体的な事業及び計画を立案し、かつ実施する場合、環境の保全及び創出について、率先して配慮
していく旨を規定しています。この条例が施策・手続を定めた他の条例に対して理念的上位条例
であることを表しています。
(事業者の責任と義務)
第5条 事業者には、事業活動を行うときは、公害を発生させないようにするとともに、環境
を適正に保全するため、自らの負担において必要な措置をとる責任と義務があります。
2 事業者は、事業活動に関係する製品、原材料その他のものを使用したり、廃棄したりする
ことによる環境への負荷を少なくするよう努力するとともに、省エネルギーとリサイクルを
推進すること等により、資源が有効に利用されるように努力しなければなりません。
3 事業者は、事業活動を行うことによって公害を発生させたり、環境を破壊したりしたとき
は、自らの責任と負担においてこれを補償したり、原状回復したりしなければなりません。
4 前3項に定めるもののほか、事業者には、その事業活動を行うときは、環境の保全と創出
に自ら努めるとともに、環境の保全と創出に関係して市が実施する施策に協力する責任と義
務があります。
【 趣 旨 】
本条は、第3条第3項の基本的な考え方を受けて、事業者の責任と義務を明らかにしました。事
業者は、事業活動のすべての段階において、環境の保全及び創出に配慮しなければなりません。環
境への負荷の原因者としては、事業者に限らず、市民も生活排水や家庭ごみなどの例から原因者の
一人と考えられますが、市民と比較して、環境に与える負荷の量が格段に大きいこと、事業活動の
促進のための組織を保持しており、環境の保全及び創出のための措置を実施しうる能力が、市民の
レベルとはおのずと異なるため、市民の責務とは異なる規定を設けたものです。
【 解 説 】
公害の防止と自らの負担による措置(第1項)………ここでは、事業者が行う事業活動において、
いわゆる「公害」と定義されている環境への負荷を防止するだけでなく、積極的に環境の保全及
び創出に努めることを求めています。
①事業者………反復継続して一定の行為を行うことを業務とする者を指します。従って営利事業を
行う者だけでなく、公共事業を営む者も「事業者」です。つまり、国、県、市町村、住民も、事
業を営む主体であれば「事業者」です。市役所の建設工事などでもマニフェスト(Manifest 管
理票:元々積み荷目録・荷送状のこと)による廃棄物管理が適用されることとなります。ただし、
第4項の「事業者」には、市は含まれないことになります。
②自らの負担において………「公害」の防止においては、現行の各種規制法により原因者負担の原
則が確立されています。ここでは、さらに環境の適正な保全のためにも事業者が自らの負担にお
いて積極的に取り組むことを求めています。
負荷の減少の努力と資源の有効利用(第2項)………第1項の責任と義務を全うするため、事業者
はその事業活動において、物の製造、加工、販売等で製品その他の物が使用される過程と、廃棄
される過程の両面において、環境への負荷の低減に努めることが規定してあります。また、事業
者の取り組みは、市民の日常生活のレベルにおける積み重ねに比較すると、格段の有効性を持っ
ているため、市民と同様な省エネルギー、リサイクルの推進、資源の有効利用等への寄与につい
8
ても規定しています。
補償と原状回復(第3項)………事業者が、その事業活動の結果として、公害を発生させ、又は環
境を破壊してしまった場合、自らの責任と負担においてこれを補償又は原状回復することは原因
者としての当然の責務であるため、ここに明記したものです。
施策への協力(第4項)………事業者の責任と義務は、その事業活動で取り組むべき環境の保全と
創出の努力にだけではなく、市が実施する環境の保全及び創出に関する施策への協力が求められ
ています。
(市民の責任と義務)
第6条 市民は、その日常生活の中で、環境の保全と創出に積極的に努力するとともに、環境
への負荷を少なくするよう努力しなければなりません。
2 市民は、その日常生活から排出される廃棄物の減量と分別、生活排水の改善に努力すると
ともに、省エネルギーとリサイクルを推進すること等により、資源が有効に利用されるよう
に努力しなければなりません。
3 前2項に定めるもののほか、市民には、環境の保全と創出に関係して市が実施する施策に
協力する責任と義務があります。
【 趣 旨 】
本条は、第3条第3項の基本的な考え方を受けて、市民の責任と義務を規定しました。今日取り
組むべき環境問題は、事業者の活動のみならず、市民の日常生活に伴って発生する環境への負荷の
集積が目立つようになっています。例えば、自動車交通等による大気汚染、生活排水等による水質
汚濁、廃棄物の排出量の増大などです。
このような問題の解決には、市民一人ひとりの努力の積み重ねがきわめて重要であるとの認識の
立った、積極的な取り組みが必要です。
【 解 説 】
日常生活における積極的取組(第1項)………まず、市民がその日常生活において、環境の保全及
び創出に努め、環境への負荷の低減に努めることが大事であることを規定しました。
廃棄物減量等の努力と資源の有効利用(第2項)………この項では、第1項の規定を実現するため、
より具体的な問題として廃棄物の減量と分別、生活排水の改善、省エネルギー、リサイクルの推
進、資源の有効利用等、市民が日常生活で寄与しなければならないことを規定しました。
施策への協力(第3項)………市民の責任と義務は、その日常生活で取り組むべき環境の保全と創
出の努力だけでなく、市が実施する環境の保全及び創出に関する施策への協力が求められていま
す。
(環境基本計画)
第 7 条 市長は、環境の保全と創出に関係する施策を、総合的に、しかも計画的に推進するた
め、環境基本計画を定めます。
2 市長は、環境基本計画を定めようとするときは、あらかじめ市民の意見を反映するために
必要な措置をとるとともに、多治見市環境審議会の意見を聞かなければなりません。
9
3
市長は、環境基本計画を定めたときは、できる限り速く、これを公表しなければなりませ
ん。
4 環境基本計画を変更するときにも、前2項に定められた手続きによります。
【 趣 旨 】
本条は、本市における環境の保全及び創出に関する基本的な計画として、環境基本計画を定める
べきことを規定したものです。環境基本計画は、本条例の目的を達成するため基本的考え方にのっ
とり、環境の保全及び創出に関する施策の総合的、計画的な推進のための中心的な仕組みであると
いえます。
【 解 説 】
環境の保全と創出に関係する施策(第1項)………第4条で規定した市の担うべき責任と義務とし
て示された、三つの環境に係るそれぞれの施策のことです。
総合的に、しかも計画的に(第1項)………環境基本計画のなかで定められる施策は、環境行政を
担当する部局だけでなく、市の組織全体で相互に連絡をとりながら、進められるよう計画されな
ければなりません。また、最終的な多治見市としての達成すべき目標と、達成するための長期(5
年・10 年)的な計画が示されなければなりません。
市民の意見を反映するために必要な措置(第2項)………基本計画素案の策定の段階で開催される
基本計画策定懇話会、地区懇談会、広報による意見聴取等を指します。
あらかじめ(第2項)………市民参加は、計画素案の策定段階で実施されなければなりません。環
境審議会への諮問時期については、市民意見の聴取実施後で素案等が策定された時点と考えられ
ます。
多治見市環境審議会の意見(第2項)………広い視野・専門的な知識に立った多角的な面からの検
討が必要であることから規定されています。
できる限り速く、これを公表し(第3項)………第3条第3項の基本的考え方にのっとりすべての
者が自主的に積極的に取り組むためには、計画の公表が不可欠です。告示、関係者への印刷物の
配布のほか、市民用パンフレット又は広報を通して実施することになります。
【 参 考 】
基本構想と環境基本計画………「環境基本計画」は、環境基本法第7条と第 15 条の規定により策
定されるもので、地方自治法第2条第5項の規定に基づく「基本構想」の一部、環境分野の詳細
版と考えられます。基本構想に「環境の保全と創出」という視点で横糸をとおす計画と考えても
よいでしょう。多治見市では、平成12年3月「環境基本計画」が策定されました。また、福祉・
都市計画・緑化等についての専門的な計画についても、この環境基本条例の基本的な考え方にの
っとって策定されなければなりません(第4条第2項)から、環境基本計画との整合性が保たれ
ていなければなりません。
(年次報告)
第8条 市長は、市の環境の現状や、環境の保全と創出に関係する施策等について年次報告を
作成し、これを公表します。
10
【 趣 旨 】
本条は、環境の現状並びに環境の保全及び創出に関する施策を公表することを定めています。方
法としては、「多治見市の環境」の作成と公表によることとなります。
今日の環境問題に対応していくためには、すべての者が自主的かつ積極的に取り組むことによっ
て行なわなければなりませんが、環境白書の作成・公表は、環境の現状に対する理解と認識を深め、
環境の保全及び創出に関する行動をより促進することになると考えられます。
【 解 説 】
年次報告………その時期については特に定めていませんが、毎年一定時期に公表することを前提と
しています。
環境の現状………大気汚染の状況、水質汚濁の状況、自然環境の状況等この条例が対象とする「環
境」の全てを指しています。ただし、当然多治見市の区域内の現状が中心的に取り上げられるこ
ととなります。
環境の保全と創出に関係する施策………環境基本条例に規定する環境の保全と創出に関する施策、
それにこれらを具体化した個別の施策を示します。また、環境基本計画に示された目標の達成状
況も、評価・検討・修正のため報告される必要があります。
(経済的負担に関係する措置)
第9条 市は、環境への負荷を少なくする目的で、市民や事業者に対して経済的な負担を掛けよ
うとするときは、十分な事前調査と研究を行ったうえで、必要な範囲内の措置をとります。
【 趣 旨 】
今日の環境問題を解決していくためには、規制的措置のみでは十分ではなく、経済的手法の活用
を検討していかなければならない事態もあり得ます。そのとき、市民や事業者に安易に負担を求め
ることがないように、事前調査等の必要性を本条で規定したものです。
【 解 説 】
経済的な負担………ここでは、環境への負荷の低減を図るため、使用料・手数料の引き上げ、新た
な料金の設定や、環境保全のための新たな基金への寄附等を想定しています。多治見市では既に
導入しましたが、指定有料ゴミ袋制度もこれに含まれます。国では、デポジット制度の導入、環
境税や炭素税の付加などが話題になっています。
十分な事前調査と研究………環境への負荷の低減を図るためであっても新たに経済的負担を課す
には、市民や事業者に納得してもらえ、さらに進んで協力してもらえるだけの正当な背景を持っ
たものでなければなりません。そこで、施策の妥当性・代替案の検討・負担を求める額等につい
て、市民意向の把握を含めた十分な事前調査と研究を行う必要があります。
必要な範囲内の措置………第1条の「参考」にも書いてありますが、環境問題も時代とともに変化
していきますし、市民や事業者の環境への認識も変化していくものです。また、自治体が抱えて
いる課題や問題点には、それぞれの特性があることなどを踏まえ、必要な範囲内で、もっとも適
切な手法を選択していくことが重要になります。
具体的には、十分な事前調査と研究にもとづき、必要にして最小限の額と、市民に大きな負担
とならない方法を決定すること、十分な期間の事前周知を行うこと等が考えられます。
11
(財政上の措置)
第 10 条 市は、環境の保全と創出に関係する施策を効果的、継続的に推進していくため、必
要な財政上の措置をとります。
2 市は、市民、事業者、市民や事業者が構成する団体が行う、環境への負荷を減らすための
設備、施設の整備その他の環境の保全と創出に役立つ自発的な活動が促進されるよう財政的
に支援します。
【 趣 旨 】
本条は、基本計画によって具体化する様々な環境の保全及び創出に関する施策を効果的に、また
継続的に推進できるよう必要な財源を確保することを規定し、その財源の中で市民や事業者が自主
的に行う環境の保全及び創出に関する活動を促進するための支援等の措置をすることを規定して
います。
【 解 説 】
効果的、継続的に推進(第1項)………限られた財政状況にあって、施策の実施にあたっては、な
によりも効果的な執行が求められるが、一方、今日の環境問題は、一時的な手当てで解決できる
ものではないため、中長期的な展望に立った継続的な推進が求められます。 そのため、第7条
に規定する環境基本計画とこれに基づく各種施策が計画的に、また継続的に策定されなければな
りません。
市民や事業者が構成する団体(第2項)………自然保護団体や環境NPO等環境の保全に関する活
動を目的とする団体のみではなく、業界団体等事業者が組織する団体、町内会のような自治組織、
PTA、婦人会等市民が組織する団体やその連絡協議会など、市民や事業者が参加して組織する
団体を幅広く含むものです。
環境への負荷を減らすための設備、施設の整備(第2項)………特に環境への負荷を伴う活動を行
う事業者が、自ら負荷の低減に努めるため、公害防止施設の整備や施設の改善を行うことを指し
ています。
その他の環境の保全と創出に役立つ自発的な活動(第2項)………自発的に行われる廃棄物減量活
動、啓発活動や学習活動などで環境の保全及び創出に結びつくものをいいます。
財政的に支援(第2項)………融資制度の整備、交付金又は補助金の交付等の制度が考えられます。
(環境調査と環境監査等)
第 11 条 市は、環境に影響を与えると認められる施策についての計画を策定したり、実施し
たりしようとするときは、環境への配慮が十分されているか、環境の観点から望ましい選択
であるか等についての調査を行います。
2 市は、環境への負荷を少なくするため、自らの行政活動について環境に与える影響の評価
や監査等を行うことができるように必要な措置をとります。
3 市は、前2項に定める環境調査や環境に与える影響評価の結果、施策を実施すると環境に
負荷を与えると判断された場合は、多治見市環境審議会に相談して、その施策の変更か修正
を行います。
4 市は、環境への負荷を少なくするため、市民や事業者が自らその活動について環境監査等
を行うよう必要な措置をとります。
12
5
市は、環境の保全と創出のため必要と認めるときは、市民や事業者に対して助言、指導等
を行うことができます。
【 趣 旨 】
環境面から見ると、市は最も大きな消費者であり、そして事業者であると言えます。環境の保全
及び創出に関しては、最大の努力が求められる主体ということになります。このため、市が環境に
影響を及ぼすと認められる施策を策定し、実施するにあたって、環境調査、環境監査や環境影響評
価を行うことで、環境に対して配慮が十分できるよう規定したものです。
第4条第2項で市の施策が環境の保全と創出に配慮しなければならないと規定されたのを受け
て、その具体的方法の一つとして定められました。
また、市民や事業者が、自らの活動について環境監査等を行うように、さらに、その他にも必要
な助言や指導ができることを規定しています。
【 解 説 】
環境調査(第1項)………市が策定し、実施していく施策のなかで、環境に影響を与えると認めら
れるものについて、あらかじめ環境調査を実施することで、環境への十分な配慮と選択の正当性
を確認すべきことを規定しました。
①影響を与える………環境調査は、全ての事業・施策について行わなければなりません。そのうえ
で、どんな項目を調査すべきか、どんな程度をもって「影響を与える」とするかについて判断す
るのに必要な仕組みを設けることが必要になります。従って、事業施行の前に記入作成するチェ
ックリスト、記入されたリストをチェックする内部監査体制の整備も必要になります。
②環境への配慮………第4条第2項の規定を受け、環境調査が最初に求めるものは環境への十分な
配慮ということになります。環境への影響は、工事施工中の短期的な騒音・振動等から、構築物
の建設に伴う日照への影響など長期的なものまで、様々な形で現れます。
③望ましい選択………市が行う施策は、様々な要因によって策定されます。ここでは環境の観点に
立って、いくつもの案を比較検討した上での選択であることを求めています。
影響評価と環境監査(第2項)………ここでは、第1項の環境調査の結果に対する影響評価や現に
行っている施策に対しての環境監査について規定してあります。
①行政活動………第1項のこれから行う施策に加えて、開始された、あるいは現に行われている施
策(例えば、竣工後の維持管理)を含んでいます。
②影響の評価………環境への影響を評価するためには、現況の調査・事業の環境へ及ぼす影響の予
測に基づき、あらかじめ設定した環境目標値が守られているか、関係地域への影響は最小限に止
められているか等について、総合的にまた専門的に将来の環境の状態を勘案することが必要とな
ります。この手法を具体化させるには、事業区分・評価の方法・環境項目等を定め、必要な技術
指針を整備しなければなりません。
③環境監査………環境の保全等への取組が一定の基準に合致しているか、市の定めた環境保全方針、
環境目標に向けてしっかりしたシステムがあるか等を監査することを言います。具体的には、国
際的にその導入が急務とされている ISO14000 シリーズへの取り組みを想定しています。多治見
市では、平成 13 年 2 月 ISO14001 の認証を取得しました※。
※その後 10 年間、国際規格に基づく環境マネジメントの取組みを継続し、その仕組みが定着した
ことから、平成 23 年 3 月末に外部認証を返上し、市独自の環境マネジメントシステムに移行し
ました。
④必要な措置………市役所をエコ・オフィス(環境に配慮した執務室)とするため各部署に検査・
監査のための「環境マネージャー」や、そのリーダー会議等の組織を整えること等が考えられま
す。
施策の変更・修正(第3項)………前2項で規定した環境調査や影響の評価を実施した結果として、
その施策を実施すると環境に負荷を与えると判断された場合には、市が施策を修正するか、変更
13
するべきことを規定しています。また、この判断にあたっては、公平中立な立場に立った多治見
市環境審議会に相談することとしました。
①環境に与える影響………当然、どの程度の影響かどうかを判断するための、環境目標値や基準を
整備する必要があります。また、ここでいう環境への影響には、自然環境の破壊だけではなく、
関係地域の住民の生活環境に及ぶ影響も含まれると理解されます。
②施策の変更か修正………環境調査や影響の評価によって、その施策を変更又は修正していくこと
は、その時期を遅らすと、かえって行政活動を硬直化させ、事業の執行を遅延させることにつな
がることがあります。このため、市は特に重要な事業を立案するにあたって、時期を失すること
なく事前に判断するとともに、常に複数の案を用意し、その選択肢に柔軟性を持たせる手法を率
先して取り入れることが求められます。
市民や事業者の環境監査等(第4項)………このように、行政自らが施策の実施に環境面に厳しい
立場を取ることで、市民や事業者に対する模範となることを前提とし、市民や事業者が、自主的
にそれぞれの活動に係る環境監査等を行うよう、必要な措置を講じていくことを規定しています。
①市民………市民が取り組める環境監査の活動としては、環境家計簿やエコライフチェック等があ
り、これらの普及啓発に努める必要があります。
②事業者………事業者が取り組めるものとしては、ISO14000 シリーズの認証取得があります。平成
10 年3月現在で、全国 861 件の取得が報告されていますが、規模の小さい事業所では取得は難し
いと思われます。しかし、事業者が自ら率先して環境に配慮することは、この条例の基本的な考
え方ですから、小規模事業所でも取り組める手法の研究が求められます。また、市もこれに対し
て積極的に支援する体制を作らなければなりません。
③必要な措置………上記の支援体制の他、本来は環境影響評価条例の制定などの措置を採ることが
考えられます。ただし、こうした条例はすぐに制定できるものではありませんので、当分の間は、
開発指導要綱の中に関係規定を設けることで対応したいと考えています。また、環境監査の方
法・対策などを積極的にPRすることも必要な措置のうちであると考えています。
助言、指導等(第5項)………ここではさらに、市民及び事業者に対して、環境の保全及び創出の
ために必要と判断したときは、法や条例の範囲外であっても、助言や指導等を行うことができる
ことを規定しました。
助言・指導………環境への負荷の軽減のための知識(例えば、生活排水を浄化するためにはどんな
方法があるか)や環境保全のための知識(例えば、どんな種類の樹木が大気浄化能力が高いか)
を伝えたり、一定の指針・ガイドラインに基づいて指導する事などを指します。
(環境教育等の推進)
第 12 条 市は、市民が環境の保全と創出についての理解を深めるために、それぞれの年齢に
応じて、適切な環境教育が受けられるよう必要な措置をとるとともに、市民や 事業者が、
これらについての学習活動を自発的に行うことができるような措置をとります。
【 趣 旨 】
本条は、今日の経済活動や日常生活に起因する多くの環境問題に対応するため、今後の経済活動
の在り方や、市民のライフスタイルの見直し等を求めるために、環境との関わりなどについての教
育や学習を拡充することなどを規定したものです。
【 解 説 】
環境の保全と創出についての理解………環境の保全に支障となる問題や課題、保全しなければなら
ない環境の現況、問題解決のための具体的な取り組み、生態系と我々市民とのつながり等々に関す
14
る情報を、適切に提供していくことで環境の保全及び創出に関する理解を深めることを規定してい
ます。
それぞれの年齢に応じて………幼児教育、学校教育のほか、生涯学習としての市民講座、高齢者講
座、リカレント教育等を指します。
環境教育が受けられるよう必要な措置………環境の保全と創出についての理解を教育として受け
ることができるよう必要な教育課程・内容をプログラムとして用意しておくこと、それを自由に
利用できる体制を整備しておくことを指します。
学習活動を自発的に行うことができるような措置………市民及び事業者が、環境の保全及び創出に
関する具体的な活動をやろうとする気持ちを起こさせるまでの措置を規定しています。ここでの
学習活動は、受ける教育ではなく、例えば自然とふれあうことなど環境と関わる自らの活動を通
じて自発的に行われる「学習」であると思われます。
措置………具体的には、学習館や公民館などでの資料の提供・広報活動の利用・施設の整備・人材
の確保、「お届けセミナー」その他の機会の確保等が考えられます。また、学校では環境教育に
使う副読本の作成なども方策の一つと考えています。
(環境情報の提供)
第 13 条 市は、環境の保全と創出に役立つよう、環境の状況その他の環境の保全と創出に関
係する情報を、適切に提供するよう努めます。
【 趣 旨 】
本条は、第8条で規定した年次報告による定期的な情報提供にとどまらず、市民が自らの意志で、
環境の保全及び創出に関する具体的な取り組みを実施していくために必要な情報を適切に提供す
ることを規定したものです。
【 解 説 】
環境の状況………原則として第8条の解説で説明したとおりですが、この条では、多治見市の範囲
内の状況に限定されません。
その他の環境の保全と創出に関係する情報………リサイクル等に関する各種行事や事例の紹介、環
境にやさしい商品の情報、環境保全に関するイベント等の紹介、環境保全団体に関係する情報等
を指しています。
適切に提供するよう努めます………環境の保全と創出に関する活動意欲を増進するために、市は環
境について最新の情報を収集するように努め、時機を失することなく市民に提供しなければなり
ません。ただし、必要な情報を提供することとしていますが、持っていない情報は当然提供でき
ないため「努めます」と表現されました。
【 参 考 】
情報………この条でいう環境に関する「情報」には、環境を観測することによって、またその結果
を分析することによって得られる環境モニタリングデータと、環境に関する客観的かつ体系化さ
れた環境関連知識とがあります。また、環境情報を保有する主体としては、行政機関(モニタリ
ングデータや制度・法令の文書情報を保有することが多い。)、民間企業(事業所からの排出物に
関するデータ、製品に関する情報、使用する化学物質の毒性データ等を保有している。)と非政
15
府・非営利組織や学術機関(環境汚染に関する事業の監視情報や専門知識等を保有している。
)
の3種類に分類されます。
情報公開………この条でいう「情報の提供」は、多治見市情報公開条例第 16 条に規定する任意的
公開にとどまらず、市が積極的に情報を市民に提供しようとするものです。これは、従来、環境
情報については公表が遅れて問題になるケースが多く、この点の対応としてむしろ積極的に公表
しようとするものです。また、不用意に情報を流出させて、市民に過剰な反応を引き起こさせな
いよう、市民が情報の意味や、汚染・危険への対処方法を的確で、しかも正確に理解できるよう
な方策を配慮しなければなりません。
(市民活動等の支援)
第 14 条 市は、市民、事業者、市民や事業者が構成する団体が行う、環境の保全と創出のた
めの自発的活動に対し、積極的に支援します。
【 趣 旨 】
今日の日常生活に起因する環境問題に対処するため、市民や事業者が組織的に環境保全活動を行
うよう、促進するための積極的な支援を規定した。
【 解 説 】
市民や事業者が構成する団体………第 10 条第 1 項の解説で説明しました。
自発的活動………環境の保全及び創出に取り組む際の、最も一般的で、しかも最も必要とされる「自
ら進んで」行う活動を言い、行政の誘導的な関与がなくとも行われる活動を示します。
積極的な支援………知識の普及、望ましい活動の奨励、指導と助言等により、活動の自発性が損な
われることのない範囲で、財政的支援以外の方法で積極的に支援していくことを指しています。
また、ここで「支援」としたのは、活動の主役は、あくまで市民や事業者であるため、第 12 条
と同様に、市が行う措置の位置付けは、手助け(バックアップ)であると理解しているからです。
(市民の参加)
第 15 条 市は、環境の保全と創出のための施策を推進するため、市民等の参加その他の必要
な措置をとります。
【 趣 旨 】
環境の保全及び創出に係る施策の推進を、市が一方的に行うのでなく、前文や第7条第2項にも
あるとおり、市民等の参加や協働を求めつつ進めることで、市の行う施策に十分な理解と協力が得
られ、より円滑に施策が実施できるとの認識に立って、市民参加に必要な措置を講ずることを規定
したものです。
【 解 説 】
市民等の参加………参加の方法には様々なものがあります。例えば、市長への提言・市民アンケー
ト・懇話会委員への参加・環境保全ワークショップへの参加・緑化事業への参加(風の道構想)・
環境美化活動への参加等が考えられます。もちろん、市主催の事業への参加だけでなく、市民活
16
動やNPO活動への参加という形態によるものも盛んになってきています。
その他の必要な措置………市民以外でも市内に通勤・通学する人は多いので、これらの人々にも参
加の機会を与えるとともに、インターネットなど通信手段を通じてさらに広範な参加を考慮しま
す。
(多治見市環境審議会)
第 16 条 環境基本法(平成5年法律第 91 号)第 44 条の規定によって、多治見市環境審議会
(以下「審議会」といいます。
)を設置します。
2 審議会は、市長の相談に応じ、次の事項を調査審議し、意見を述べます。
(1) 環境の保全と創出に関係する基本的事項や重要事項
(2) 環境基本計画を定めるときと変更するときの意見に関係する事項
(3) 第 11 条に規定する環境調査等の結果に関係する事項
(4) その他環境の保全と創出に関係して市長から意見を求められた事項
3 審議会は、環境行政に関係する重要事項について必要があると認めるときは、市長その他
関係機関に助言や勧告をすることができます。
【 趣 旨 】
本条は、環境基本法第 44 条の「市町村は、その市町村の区域における環境の保全に関して、基
本的事項を調査審議させる等のため、その市町村の条例で定めるところにより、市町村環境審議会
を置くことができる。」という規定に基づいて、多治見市にも環境審議会を置くことを規定したも
のです。
【 解 説 】
設置(第1項)………趣旨でも説明しましたが、
「多治見市環境審議会」が環境基本法第44条の
規定に基づくことを明記しました。環境審議会は、「条例で定めるところにより」設置されるこ
とから、地方自治法第 138 条の4第3項に規定する市長の附属機関と考えられます。従って組織
などについては同法第 202 条の3の、委員会委員の報酬については同法第 203 条の2の規定の適
用を受けます。
所管事項(第2項)………地方自治法第 202 条の3第1項の規定により、審議会が調査審議し、答
申する事項について規定しています。
①基本的事項………本市が環境を保全し、創出していく上で、基本となる事項であって、環境基本
計画の策定で示される基本方針を含むとともに、基本計画の推進にあたっての、進み具合の確認
もここに含まれます。
②重要事項………市域内における環境への負荷の発生や、環境の大規模な改変等、この条例の理念
に抵触するような事項を指します。
③環境基本計画………第7条第2項の規定に基づき、基本計画の策定に対し多角的な視野から意見
を述べることも任務のうちです。
④環境調査と環境監査等………第 11 条第3項の規定に基づき、市が行う施策の変更又は修正につ
いて意見を述べることとなっています。
⑤その他………第1号から第3号までに規定した事項以外で、市長が必要と認めた事項に ついて
も、審議会に諮問できることとしました。
その他関係機関(第3項)………教育委員会・選挙管理委員会・公平委員会・監査委員等の執行機
関や、その付属機関のほか、市が出資している財団などの法人を指しています。
17
助言・勧告(第3項)………本項では、審議会の機能として市長の諮問を受け、必要な事項につい
て調査審議した後、答申を行うことに止まらず、審議会が必要と認めた事項について、その発意
により関係機関に対し、助言又は勧告ができることとしました。これで、審議会に環境の保全及
び創出に関する監視機能を持たせたことになります。
【 参 考 】
市民の審議会への意見提出………審議会は市長の附属機関ですから、本来は市長からの諮問に応じ
て調査・審議することとされています。しかしながら、この条例では審議会が必要と認めれば助
言勧告ができるとしていますから、原則的に市民、あるいは事業者、またはその団体が直接環境
審議会に意見を提出して審議・調査を依頼することは可能です。
審議会規則の制定………審議会の公開や、市民による意見提出のルールなどを定めた「多治見市環
境審議会規則」が制定されました。
(組織)
第 17 条 審議会は、10人以内の委員で組織します。
2 委員は、生活、自然、社会や地球環境問題について知識や意見を持っている者の中から、
市長が委嘱します。
3 委員の任期は2年で、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とします。ただし、再任を
禁止するものではありません。
4 審議会に、会長と副会長を1人ずつ置き、委員が互選します。
5 会長は、審議会をまとめ、会議の議長となります。
6 副会長は、会長を補佐し、会長に病気その他の支障があるときや会長が欠けたときは、そ
の職務を代理します。
【 趣 旨 】
本条は、多治見市環境審議会の組織について、委員の人数や任期等について規定しました。特に、
審議会には専門的で、広範で、しかも多角的な視点を持たせるため、その人選にあたっては、生活、
自然、社会と地球環境のそれぞれに係る問題や課題に対応できる者を対象としました。
【 解 説 】
組織(第1項)………国の設置した中央環境審議会のように、いくつもの専門部会から構成される
ものも想定されましたが、本市においては、充分な議論を円滑に進めるための最低限の人員とし
ました。
委員(第2項)………審議会には、学識経験者による専門委員会形式と、市民や事業者代表も含め
た形式があります。ここでは、形式を規定せず、生活、自然、社会及び地球環境に識見を有する
者を選任することとし、その人選に充分な配慮をもって行うこととしました。
任期(第3項)………委員の任期と補欠委員の在任期間について定めました。再任は禁止されない
こととなっていますが、各種委員の任免に関する要綱第5条に定める「委員の選任の基準」(3
期又は 10 年以内等)が適用されます。
役員(第4項~第6項)………会長・副会長について、選任方法・任務について定めてあります。
(推進と調整体制の整備)
18
第 18 条 市は、環境の保全と創出に関係する施策を総合的に推進したり、調整したりするた
め、環境調整会議を設ける等必要な体制を整備します。
【 趣 旨 】
本条は、環境の保全及び創出に関する施策を推進するためには、単に環境部局のみではなく、市
の行政組織全体で取り組まなければなりません。そのため、総合的な調整や推進に必要な体制を整
備することとしました。
【 解 説 】
環境調整会議………環境に関する施策を単に環境部局のみではなく、市の行政組織全体で取り組む
ため、各部の長で構成する総合調整会議を設けることとしました。具体的には現在組織されてい
る「政策会議」にこの役割を担ってもらう予定です。
必要な体制………ここでは具体的な組織の設置については言及していませんが、環境の保全及び創
出に関する施策を総合的に推進するためには、環境調整会議の下に必要であれば課長クラスの
「調整部会」を設けたり、現在活動している実務者クラスで構成された「多治見市環境行政推進
会議」のような組織をそのまま継続させるほか、各課に環境マネージャーを置いてエコオフィス
の実現に取り組んだり、そのリーダー会議を設けたり等の体制が考えられます。
【 参 考 】
環境調整会議………環境調整会議を条例中に規定することとしたのは、そうすることによってこの
会議の存在と役割をある程度確実にしようとしたためと、存在すれば市民からの情報公開の対象
となって、環境行政の意思決定の過程がある程度透明化されるのではという期待からです。
(広域的連携)
第 19 条 市は、地球環境の保全その他の広域的な取組を必要とする施策を実施するときは、
国際機関、国、他の地方自治体、民間団体等と協力して、その推進に努力します。
【 趣 旨 】
本条は、環境基本法第 40 条の「国及び地方公共団体の協力」に規定された「国及び地方公共団
体は、環境の保全に関する施策を講ずるにつき、相協力するものとする」を受け、さらに発展的に
国際機関や民間機関も対象として、協力の必要性を規定しています。これまで、何度も述べたよう
に環境問題は、空間的には地域を超えて地球規模にまで広がりを持っています。こうした広がりの
ある問題に対しては他の団体との協力を欠くことができません。
【 解 説 】
地球環境の保全………第4条第1項第3号に定められた、地球環境に関係して地域で実践できる保
全の取組を指します。
その他の広域的な取組………河川浄化のように流域全体を対象として保全の取り組みが必要とさ
れるものを指します。
(委任)
19
第 20 条
この条例の施行について必要な事項は、市長が定めます。
【 趣 旨 】
本条は、この条例の規定を実際に働かせようとしたとき必要になる事項で、この条例に定められ
ていない事項については、市長が定める旨の規定です。
【 解 説 】
必要な事項………基本計画策定手続における市民の意見の反映方法(第7条)、年次報告の様式や
公表方法の決定(第8条)
、基本的施策の実施に伴う基準・要綱や組織の編成(第9条~第 15 条)、
環境審議会の運営細則(第 17 条)、それに推進体制の具体的規定等があります。
(附
則)
1
2
この条例は、規則で定める日から施行します。
多治見市非常勤の特別職職員の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和 52 年条例第3号)の
一部を次のように改正します。
別表中「公害対策協議会委員」を「環境審議会委員」に改めます。
【 趣 旨 】
附則では、この条例が実際に効力を発揮する日を市長が規則で定めること、この条例の施行に伴
い関係する条例として多治見市非常勤の特別職職員の報酬及び費用弁償に関する条例を改正して
審議会委員に報酬を支払うことが規定されています。
【 解 説 】
この条例が実際に効力を発揮する日を市長が規則で定めることとしたのは、基本的施策の実施に
伴う基準・要綱や組織の編成にある程度の期間を必要とするため、これらの準備が整ってから、条
例の効力を発揮させようとするためです。実際には、平成 11 年 4 月 1 日施行しました。
20