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法政天文研究会学習会資料
2006 年 5 月 26 日
神話
担当:増田香苗
1、 始めに
現在、プラネタリウムなどで星座を説明される時、必ずその星座についてある“神話”が
説明される。それはお姫様を王子様が助けたというような話から、物語に至るまで構成さ
れていないものまで、様々である。今回は神話全般についてではなく、星座と関係する神
話について取り扱いたい。
2、 神話と星座の結び付き
以上のように神話には様々なものがあるが、星座の成立過程上、現在存在する88星座の
神話の主だった部分はギリシャ神話である。
《ギリシャ時代》
そもそも神話として伝えられていたギリシャ神話がメソポタミアから伝わった星と星と
を結び付けて星座を作るという文化と重なって星座に神話がついたのである。そのため、
ギリシャに星座の文化が伝わる前にできた星座にはギリシャ神話に出てくるような固有名
詞がついていることはほとんどない。メソポタミアが牧畜の文化だったため、牛飼いなど
の生活に結び付いた素朴な星座がそれらにあたる。このギリシャ神話はゼウスを中心とし、
神が人間味溢れる所に特徴がある。
《ローマ時代》
その後大きな勢力を持ったローマでもギリシャとローマの神を同一視することによって
広まっていった。ローマが建国された頃はギリシャ文化最盛期を迎えており、その文化を
吸収するにあたってその神話もローマに移植されたことは当然の流れであった。また、ロ
ーマが支配するようになる前からイタリア半島にはギリシャ文明の影響が及んでおり、そ
のこともギリシャとローマとの文化的融合を促進したと考えられる。この後、強大な力を
誇るローマ帝国にギリシャ神話は取り込まれていったために、この神話と星座が現在に至
るまで残っているとも考えられる。
※ 星座の成立過程
メソポタミア 始まりはメソポタミアの古代文明。紀元前7世紀のアッシリア王、アッ
↓
シュール・バニ・パルの記録に36星座がみとめられるといわれる。こ
の36星座が現在の黄道12星座に相当するものを始めとしていて、現
在使われている星座の元になっている。
1
フェニキア
↓
その後、地中海の貿易に従事したフェニキア人が航海の目印として星座
重要視する。
ギリシャ
そしてギリシャに伝わる
3、ギリシャ神話
すでに述べたように星座の神話はギリシャ神話が主である。ただ、その神話も一気にでき
たというようなものではなく、徐々に様々な言い伝えが系統立てられていったのであった。
《紀元前9世紀頃 ホメロス》
特にその中でも最古の文献とされているのがホメロスの叙事詩「イリアス」と「オデュ
ッセイア」である。そもそも、叙事詩としても最古のものなのだが、この中でギリシア神
話のうちの主要なものが大部分触れられていて、そのほかにもいくつかの星座が挙げられ
ているので星座や神話に関する最古の文献と言われる。
ギリシャ神話―Wikipedia―より「ホメロス」
《紀元前6世紀頃》
その後、紀元前6世紀頃にかけてギリシアの詩人が扱う神話の数が次第に増えてくる。
この頃の人でエピメニデスという人によって有名なオリオン座の神話が書き残されていて、
同時にオリオン座が沈むとさそり座があがってくるという現在の神話が残されている。
《紀元前5世紀頃》
エウクテモンが天気の変化との関係性から星座について記している。同様の時代にヘシ
オドスも「仕事と日々」の中で農業の目安としての星座について触れている。そしてアラ
トスの星座詩とヒパルコスによる誤りの指摘を経て、有名なプトレマイオスの「アルマゲ
スト」で現在の星座がほぼ決まり、それと同時に星座に関する神話も定着する。
※ ギリシャ神話と星座の神話
「星々は水夫たちのために力あるものとしてゼウスによってつかわされた」(参考資料の
「星座と神話」p.8,l.2)とホメロスによって書かれているようにギリシャ神話と星座はな
2
かな切り離せないものであり、トレミーの48星座のほとんどがギリシャ神話に関係を持
っている。しかし、そのギリシャ神話は世界の起源・神々の物語・英雄たちの物語と大き
く三つに分けられ、星座と関係性を持つギリシャ神話は全体の一部にすぎない。
4、中国の神話
もともと日本で使われていたのは中国の星座である。それが明治維新によって西洋天文
学が導入され、中国星座は使われなくなってしまった。この中国の星座は西洋式の星座と
は異なり、特に神話というものは存在しない。唐の司馬貞が『史記』 天官書の註の中で「人
間に官位があり、上下があるように星座に尊いものと卑しいものがある」と書いてあるよ
うに、北極点を天帝とし、それから遠ざかるにつれて庶民的になるようにされている。一
つの星で星座を作ることがあることも特徴的である。
5、終わりに
星座を見るということは当たり前の行為であったが、それが特にギリシャにおいて発展
したものであり、星座と神話という形で結び付いて物語的になっていることが珍しいこと
に今回改めて気がついた。と同時に、星座名とそれに付随する神話がほぼ全て西洋のもの
であることも意識しておくべきではないだろうか。ともあれ、もともと神話を物語として
読むことが好きで、そこから入って星座を覚えた人間としては物語を覚えてしまえば星座
もずっと覚えやすいので、神話と星座を結び付けてくれた古代ギリシャの人々に感謝した
い。
6、参考資料
「星座の神話」 原 恵著 恒星社厚生閣出版
「中国星座への招待」
http://www.sci-museum.kita.osaka.jp/~kazu/chinaseiza/chinaseiza.html#one
「ギリシャ神話―Wikipedia―」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83
%A3%E7%A5%9E%E8%A9%B1
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