おいしさよ、よみがえれ!

NHK総合テレビ 毎週水曜日・午後8時から放送中
http://www.nhk.or.jp/gatten/
2012年03月14日放送
今やわたしたちの暮らしに欠かせない、冷凍の食材。
毎日買い物に出られなくてもいつも豊富な食材で料理ができ、忙しい主婦の強い味方です。
でも、いざ食べるときに「解凍で失敗した」という経験はありませんか?
室温解凍、流水解凍、冷蔵庫解凍、電子レンジ解凍…世間一般で行われている方法は、
実はどれも家庭でやると失敗がつきものなのです。
そこで今回のガッテンでは、失敗知らずのうれしい解凍ワザを徹底研究。
スピーディーで衛生的で経済的、肉も魚もOKで、もちろんおいしさもよみがえっちゃうという
すごい新ワザを見つけちゃいました!!
カギを握るのは、「解凍」のイメージとはかけ離れた意外なアイテム。
常識をくつがえす解凍の新ワザ、必見です!!
おいしさよ、よみがえれ!
いつも冷凍庫がパンパンの我が家。
正しい解凍方法がわからないまま、冷凍食材は長年適当に解凍して料理してきました。
そんな適当さがあだとなるのが、冷凍のいただきものをしたとき。
特に故郷から送られてくる魚介類はもとのおいしさを知っているだけに、
解凍で失敗したときには 本当に悔しい思いをしてきました。
同じような経験のある人に喜んでもらいたいという思いで作ったのが今回の番組です。
誰も教えてくれなかった「解凍」の極意を台所で役立ててもらえたら幸いです。
1/6
冷凍の食材を解凍したら、なんだか水っぽくなってしまった、中だけ凍ったままだった、
一部だけぐちゃぐちゃになってしまった…そんな経験がある方は意外と多いようです。
でも、一体どうしてこうなってしまうのでしょうか?
実は、一般的に行われてきた解凍方法は、家庭でやるとどれも失敗がつきものなんです。
まず、電子レンジの場合、時間の調整がうまくいかなければ食材の一部だけ煮えてしまうなどの
加熱ムラが起こることがあります。(※お使いの機種にもよります)
流水解凍では、急激な温度変化で細胞が壊れて、ドリップと呼ばれる液体が出ることがあります。
さらに室温での解凍は衛生面に問題がある上に、
外側と中心部に激しい温度ムラができやすいんです。
では冷蔵庫解凍ならば良いのかというと、必ずしも そういうわけではありません。
冷蔵庫はとにかく時間がかかるだけではなく、
その間に細胞が壊れてドリップがたくさん出やすくなることがあるんです。
もちろん食材を扱うプロならば、それぞれの方法でも温度や時間を徹底管理して
上手に解凍できるのですが、それを台所でまねするのは至難のわざ。
わたしたちが失敗なくおいしく解凍するためには、一体どうすればいいんでしょうか?
冷凍の食材を上手に溶かすにはどうすればいいのでしょうか?
意外な達人がこのヒントを教えてくれました。
氷彫刻の職人さんです。
氷の彫刻を完成させるとき。
表面の凸凹をなくすために一気に表面だけ溶かすという作業があるそうです。
このときに「凍ってるものが一気に溶けるアイテム」を使っているんだそう!
そのアイテムとは「アルミニウムの板」。アルミニウムの板を氷の上にのせると、
す~っと表面が溶けて一気にキレイになるんです。
ワザのカギをにぎるのが、アルミニウムの熱伝導率。
アルミニウムは、熱伝導率が高い=熱が伝わる力が大きい材質なんです。
2/6
あたたかい熱はもちろん、冷たい熱だってどんどん伝えることができます。
だから、氷にくっつけると冷たさがどんどん板のほうに伝わっていくため、
結果的に氷の温度があがって速く溶かすことができるというワケ。
この原理を利用してアルミニウムの鍋やバットの上に冷凍の食材を置いておけば、
お皿の上に置いたときよりも圧倒的に速く溶かすことができます。
でも、問題は厚みのある食材。冷凍のカニのようなものは板との接触面が少ないため、
なかなか溶けません…。
オールマイティーな解凍ワザにたどりつくためには、もう一歩、工夫が必要なようです。
冷凍の食材を上手に溶かすために、他にヒントはないのか。
もうひとりの達人が、大切なことを教えてくれました。
冷凍のカツオを大量に解凍しているという、カツオ節工場の研究者です。
このカツオ節工場では、冷凍カツオの解凍をするとき、解凍が終了するときの食材の温度、
つまりゴールの温度を設定するようになってからカツオ節の品質が一気に良くなったそうです。
そのゴールの温度とは、なんと「―2℃付近」。
マイナスの温度帯ならまだ凍ってるんじゃないかと思ってしまいますが、
ここにわたしたちの大きな勘違いがあるそう。
実は、食材が凍る温度は0℃ではないんです。
0℃で凍るのは水。
食材の場合は「ー3℃から0℃」の間に、凍り始める(=溶け終わる)本当の境界線があります。
食品業界では「氷温(ひょうおん)」と呼ばれている温度帯です。カツオの場合、溶ける温度はー2℃。
つまりこの工場では、必要最低限の解凍だけを行うことで、
温度が上昇して品質が劣化するのを防いでいたんです。
このことを考えれば、わたしたちが日常的に行っている解凍には、大きなムダがあるということ。
むやみに温度を上げるのではなく、溶けるぎりぎりの温度帯をゴールに効率よく解凍すれば、
時間短縮できて衛生的で品質が劣化もなくなります。
3/6
氷職人が教えてくれた「熱伝導率の高いもので」
カツオ節研究者が教えてくれた「ゴールの温度を超えずに」
効率よく解凍するにはどうすれば良いのでしょうか?
実は、どんな家庭にもあるアイテムを使えば、この両方のことを同時に実現することができるんです。
そのアイテムとは「氷水」。
氷水は空気よりも熱伝導率が圧倒的に高いうえに、
1℃付近の低温を保ち続けるという性質があります。
このなかに食材を入れておけば、 スピードを保ちながら温度をムダに上げることもなく、
非常に効率的に解凍することができるのです。
氷水につけておいても冷凍食材は溶けないような気がするかもしれませんが…
実際は冷蔵庫解凍よりも室温解凍よりも速く解凍できます。
さらに、この方法を研究している東京海洋大学の食品冷凍学研究室によりますと、
氷水解凍だと他の解凍方法よりもドリップが激減するそうです。
まさに常識をくつがえす驚きの解凍方法です。
【氷水解凍法】
1. ボウルに氷水をつくる
2. 密閉できる袋に食材を入れて沈める
※食材にラップはまかない
※袋の空気はよく抜いておく
※浮いてくるときは重しをする
※袋に氷の膜が張ったら はがす
3. 食材が溶けたら終了
4/6
氷水解凍法
ボウルに氷水を入れる→密封できる袋に食材を入れて沈める
(※袋の空気は抜く・ラップはまかない・浮いてきたら重しをする・袋に氷の膜がついたらはがす)
冷凍モノをいきなり焼く!裏ワザ
フライパンとフタを使って、蒸気がもつ大きな熱を効率よく使いながら
冷凍のモノを一気に焼き上げるというワザです。
(参考:2011年7月27日放送 「暑さも光熱費も激減!時短ミラクル料理革命」)
冷凍肉・魚がいきなり焼ける裏ワザ調理法
いきなり!鶏もものソテー
【材料】
冷凍した鶏もも肉(すじを切って薄く広げて冷凍しておく)…300g
水…大さじ2
【作り方】
1. 冷たいままのフライパンに冷凍の鶏もも肉を入れる
2. 大さじ2の水を肉のまわりにかけてフタをする
3. 強火6分
4. 火を消して5分待てばできあがり
いきなり!牛肉のステーキ
【材料】
冷凍した牛肉(厚み1.5cmくらいのもの)
【作り方】
1. 冷たいままのフライパンに冷凍の牛肉を入れる
2. フタをして強火2分
3. ひっくり返してフタをして中火2分
4. 火を消して3~5分待てばできあがり
いきなり!ぶりの塩焼き
【材料】
冷凍したぶりの切り身(厚み1.5cmくらいのもの)
小麦粉…適量
【作り方】
1. ぶりの両面に小麦粉をはたく
2. 冷たいままのフライパンに入れる
5/6
3. フタをして強火2分
4. ひっくり返してフタをして中火3分
5. 火を消して3分待てばできあがり
注意点
今回使用したフライパンは 鉄製で口径26cmのものです。
(サイズ(mm):深さ/60 板厚/1.6 底径/190 重さ/1.0kg 柄長/255 電磁対応のもの)
フタの大きさは、フライパンの口径のあったものを使ってください。
フライパンの種類、コンロの火力によって調理時間が異なります。
ご家庭にあわせて調節してください。
火力が強すぎて途中で水分がなくなると、空だきになってしまいます。
火を使っている間は、コンロのそばを離れずに十分にご注意ください。
空だきを防止するために、次の3つを必ず使用してください。
!中に水が残っているかどうかが確認できるガラスのフタ
!火力が強すぎないコンロ
(コンロが複数ある場合は弱い方で)
!キッチンタイマー
※火力が強すぎて途中で水がなくなったら、すぐに火を消してください。
Copyright NHK (Japan Broadcasting Corporation) All rights reserved.
許可なく転載することを禁じます。
6/6