この地に伝えるために - 学校法人東洋英和女学院

2014年11月11日
カナダ宣教師墓前礼拝説教
「この地に伝えるために」 詩編67:2-4
小学部 山本香織
今年ほど、わが東洋英和ゆかりの宣教師の先生方のことを私たちが心に思った年は、近年なかっ
たのではないかと思います。
まず何といっても今年は、宣教師の先生方への、カナダの教会への、カナダの皆様への、感謝の
思いをきちんとした形にして伝えることができました。
「
『桜プロジェクト』―ありがとうを桜に託
して― 」です。同窓生の皆様の篤い思いから、募金活動を伴う計画が2011年から精力的に進め
られ、ついに今年6月にすべてが整い、深町院長先生と同窓生の皆様ご一行23名が、カナダの地
を訪ねてくださいました。私自身もできれば参加したかったです。そうすれば宣教師の先生方が、
あの時代日本の地にいらっしゃる…、それがどういうことなのかきっと実感することができ、また
それは知らなければならないことであると思ったからです。しかし6月に小学部の仕事をお休みす
ることはとてもできないので、いつの日か訪ねることを夢見て待つことにしました。
このプロジェクトにより桜の木が、カートメル先生ご出身のソロルド市には、新たにカートメル
ウェイと名づけられた道沿いに60本、先生を送り出してくださったセンテナリー教会のあるハミ
ルトン市には、公園に先生を覚えるプレートと共に37本が、それぞれ贈られました。植樹式が行
われ、その様子は地元でも報道されるところとなったそうです。
またこの機会に、ゆかりの6名の宣教師の先生方のお墓を訪ね、祈りをささげられたそうです。
私どもは毎年創立記念日の翌週、ここ青山霊園に眠っていらっしゃる宣教師の先生方を訪ね、こう
してそれぞれのお名前を挙げて祈りに覚えておりますが、その拡大版。ついにカナダ本国の宣教師
の先生方のお墓を、直接訪ねてくださったのです。こうした祈りは今回だけで終わるのでなく、継
続していかなければならないと思います。この墓前礼拝は毎年行われていますが、カナダのほうも
是非何年かに一度は、桜の成長を見ながら、宣教師の先生方への感謝を伝える旅が企画され、私の
ような者もいつかは参加できるようにしていただけたらと思っています。
さて、今年ほど宣教師の先生方を思ったことはなかった訳の2番目。それはもちろんNHK連続
テレビ小説「花子とアン」の放映でしょう。年史等の記述と、何葉かの白黒写真とによって漠然と
知るしかなかった宣教師の先生方が、カラーで、動いて、お話されているのを私たちは初めて見る
ことができたのです。昔の東洋英和、を見たのです。これはとても嬉しかったです。もちろん脚色
されたドラマの中でのことであり、歯がゆかったり、憤慨したりもいたしました。でも全国の朝ド
ラ視聴者は少なくとも、東洋英和にはかけがいのない伝統があり、宣教師の先生方は厳しいながら
も豊かな愛に包まれた方であったことを知ったことと思います。しかし願わくはもっともっと、二
度と故郷に帰らないくらいの覚悟で海を越えてきてくださった先生方の、深い神様への信仰と祈り
と、篤き思いを描いてほしかったです。それでも学院創立130周年を祝し、合わせてくださった
かのようなこの一大企画によって、私たち改めて「東洋英和」を知ることができ、また「東洋英和」
が一つにされたと思っています。
「花子とアン」
によってもたらされた意味は大きかったと思います。
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今年こうして特に私たちは、宣教師の先生方と出会いました。それはその尊いお働きを覚え、お
声に耳を傾けよ、と改めて問いかけられ、課題を与えられている、ということではないでしょうか。
宣教師の先生方は過去の方々で、お会いしたこともありません。しかし先生方の祈り、意志、行い
は、過去に終わったものではなく、今も生きて働き続けている・・・。そのことの表れではないでしょ
うか。神様がこの東洋英和をお立てになったときに企てられた計画は、今も続く現在進行形です。
そして未来にも続く、大いなる物語だと思っています。お一人お一人の宣教師の先生方の思想、生
き方を通じて語られているのは、神様の大いなる物語なのです。まさに『カナダ婦人宣教師物語』
です。そしてその物語は過去のお話として「聞く」ものであるだけではありません。神様の救いの
歴史は終わっていないのですから、未来に向かって今も進んで行っています。
そこで私たち学院に仕える者たちに、今年も改めて使命が与えられたと思っています。
学院標語「敬神奉仕」のもととなった申命記の御言葉は、よく聞きます。
「聞け、イスラエルよ。我々の神、主は唯一の主である。あなたは心を尽くし、魂を尽くし、力を
尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。
」
(申命記6:4,5)です。これに続く部分は、あまり
読まれることはないですが、
この大切な約束を忘れないためにどうするべきかが教えられています。
「子どもたちに繰り返し教え、家に座っているときも道を歩くときも、寝ているときも起きている
ときも、これを語り聞かせなさい。
」
(6:7)
私たちには「物語」を語り続け、未来に伝える、という使命があるのではないでしょうか。
小学部では3年生の社会科の授業の中で「わたしたちの学校のあゆみ」と題して、東洋英和の歴
史を一通り学びます。そして社会科のまとめ、学年末のハイライトは2月に行う校外学習「港区め
ぐり」です。東京タワーの上から港区を眺めたり…、の見学の最後に、この青山霊園の宣教師墓地
を訪ねるようになって10年ほどが経ちます。80名の3年生児童が、ラージ先生のお墓と、カナ
ダ合同教会墓地の前に並び、代表の児童がお花をささげ、同じく代表の児童がお祈りをします。こ
ういう祈りです。
「神さま、今日わたしたちを、ここにおみちびきくださってありがとうございます。
ここには、宣教師の先生がたが、ねむっていらっしゃいます。
昔、たくさんの宣教師の先生がたが、日本に神さまのことを伝えるために、来てくださいました。
その先生がたのことをいつも心におぼえさせてください。
とくにラージ先生と、ストーン先生は、日本人のために命をささげてくださいました。
日本を愛し、東洋英和を愛して、多くの苦しみとたたかってくださった、たくさんの宣教師の先
生がたのおかげで、今の東洋英和があることを知りました。わたしたちにあたえられた、神さま
の大きな愛に感謝します。
東洋英和の子どもとして、いつも神さまにつながって、神さまを愛し、となり人を愛することが
できるよう、これからもおみちびきください。」
先ほどお読みいただいた詩編の御言葉から分かることがあります。宣教師の先生方が太平洋を渡
り、命がけでこの地に来てくださったのは何のためかです。
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「あなたの道をこの地が知り 御救いをすべての民が知るために。
」
(詩編67:3)
ただこの一事を目的として、日本のために、東洋英和のために尽くしてくださった宣教師の先生方
の祈りを受け継ぐ者となる力を、神様に求めていきたいです。
(祈り)
神様、今年も神様が備えてくださり、このように私たちをこの場に集めてくださりありがとうござ
います。私たちは宣教師の先生方の前、ひいてはあなたの御前に立っています。宣教師の先生方の
祈りを受け継ぐ者とならせてください。この地があなたの道を知るために、あなたを証する力を、
私たちにお与えください。
130年間、私たちの学院を愛してくださった神様が、次の時代にもますます東洋英和を祝福し、
その歩みをお導きください。 イエス様のお名前によってお祈りいたします。 アーメン
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