インドネシア - 職業能力開発の政策とその実施

インドネシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 12 月 15 日
3.1
職業能力開発の背景
公的教育制度は文部省の担当であり、以下はその概要である。
・義務教育:初等(6 年間)
・中等教育:中学(3 年間)、高校(3 年間)
(高校は普通教育と職業高校の 2 種類に分けられる)
・職業専門学校(1∼3 年間)
(ポリテクニック、アカデミと呼ばれる 2 種類がある)
・大学
(学士、修士、博士の学位が授与される)
表 3‐1 インドネシアの教育レベル別労働者数(2008 年)
教育レベル
男
性
女
(単位:人)
性
合
計
6 年間の小学校
34,258,590
24,202,931
58,360,521
中学校
14,170,254
7,392,684
21,562,938
高等学校
16,123,986
7,854,325
23,978,311
職業専門学校
1,577,634
1,602,839
3,180,473
大学
2,694,617
1,700,587
4,395,204
68,825,081
42,652,366
111,477,447
合
計
*出典:Ministry of Manpower and Transmigration, http://www.nakertrans.go.id/
表 3‐2 インドネシアの業種別労働者数(2008 年)(単位:人)
工業セクター
合
計
42,669,635
専門職
経営
1.062.309
管理
12,440,141
207,909
マーケティング
4,733,679
サービス
農業
20,684,041
林業
6,013,947
狩猟
1,440,042
漁業
12,778,154
合
102,049,857
計
*出典:Batavia Prosperindo Sekuritas, http://www.bps.co.id/
広範囲の職業訓練プログラムが、若者、失業者、現職労働者、そしてインドネシアにお
ける職業訓練学校の指導員に与えられている。職業訓練学校には、中央政府(労働移住省)
直接管轄のもの、地方政府管轄のもの、民間の職業訓練センターのもの、そして個々の企
業の訓練施設が含まれる。正確なデータはないが、民間の訓練施設は約 3 万 2,000 あると
いわれている。
1
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中央政府管轄下の国家レベル(労働移住省)では、研修センターが 7 つの技術分野にお
ける研修プログラムを提供している。これらのプログラムは、中学、高校卒業者のみなら
ず、失業者、在職者も対象となる。
(a)メカニカルエンジニアリング
(b)電子産業
(c)溶接
(d)農業
(e)商業(IT とコンピューター関連分野を含む)
(f)建設
(g)その他(サービス業等)
技術専門家養成コースや職人養成コースなどといった、数年間の研修を必要とするコー
スもある。技術専門家養成コースには、メカニカルエンジニアリング、電子産業、溶接の
三つの分野があり、職人養成コースには、溶接の研修がある。一方、基本コースのように、
600∼700 時間の比較的短時間で終了するコースもある。その他のコースとしては、専用
車で赴き、郊外で教育を行う「移動研修コース」、個々の企業のニーズと労働者のニーズに
合わせた「オーダーメイドコース」などがある。すべてのコースが政府の補助金の対象と
なる。
若者のための研修プログラムには、5 つの研修施設(Rembang の研修施設を除く)が提
供する技術専門家養成コースが含まれ、中央政府(労働・移住省)の直接の管轄下に置か
れている。このプログラムは、メカニカルエンジニアリング、電子産業、溶接の分野で必
要とする知識と技能を持つ技術専門家を養成するのが目的である。このコースの期間は 3
年間(6 学期)、又は 5,200 時間以上である。
表 3‐3
若者のための研修プログラムのカリキュラム例
学年
コースの内容
理論:576 時間
初年度
(一般理論 96 時間と技術課題 192 時間を含む)
実務:1,344 時間
理論:960 時間
2 年目
(168 時間の一般理論と 312 時間の技術課題)
実務:960 時間
理論:1,152 時間
3 年目
(240 時間の一般理論と 336 時間の技術課題を含む)
実務:776 時間
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若年者研修プログラムは高校卒業から 21 歳までの若者を対象としている。プログラム
に参加するためには、候補者は高校で良い成績を修め(10 段階の評価で 7 以上)、記述試
験(英語、数学、化学または物理)に合格し、さらに面接、適正試験、健康診断に合格す
ることが条件となる。訓練生の数は不明であるが、受入可能人数は各研修所で年間最大 216
人であり、同研修センターは国内に 5 つ(農業訓練センターを除く)あるため、全国で毎
年約 1,000 人の技術専門家が養成されていると推定される。
プログラムの費用は 6 カ月(または 1 学期)で総額 700 万ルピア 1であるが、そのうち
訓練生が負担するのは 100 万ルピアであり、残りの 600 万ルピアは中央政府が負担する。
3.2
職業能力開発を進めるための国の政策
労働力に関する 2003 年新労働法第 13 号第 9 条に基づき、政府は国家職業訓練政策とし
て以下 3 点について早急に確立させることを目標としている。
・ 職業訓練調整機関
・ 国家職業訓練制度
・ 国家技能認定制度
1 つ目の「職業訓練調整機関」とは、職業訓練活動を調整し、国家全体の職業訓練の方
向性を決めるための研修プログラムを評価する機関である。この機関は、中央政府、従業
員組合、職業訓練センターが参加し、内閣の範囲を超えて、効率的な職業訓練を提供する
ために共同作業を行う。
2 つ目の「国家職業訓練制度」に関連し、中央政府は地方自治に関する 2004 年の法令
32 条と 2000 年の法令 22 条に基づき、権限を地方政府に移管している。現在中央政府は、
実際の職業訓練プログラムを提供し、地方政府と共に、職業訓練に関するルールとガイド
ライン作りを行っている。中央政府は教師不足のような職業訓練に係わる問題を地方政府
に提起している。
3 つめの「国家職能認定制度」に関しては見直しを行うものである。能力の高い労働者
が、国内又国外で仕事を見つけることができるよう、労働者の職能をより適切に評価する
ための制度へと改善することを目的としている。
職能認定とその証明書の発行は、政府認定機関である、職種別検定機関(LSP)が行って
いる。現在インドネシアには 7 つの LSP がある。
職業訓練ができるその他の機関は文部省である。文部省認定の職業訓練組織として多く
の大学と教育機関がある。また各省が独自の職業訓練を実施している。
以下は職業訓練に関する他の規定である。
(1) 職務認定国家機関に関する 2004 年政令第 23 号
政府は、ほかの機関からは独立した、インドネシア共和国大統領直轄の特命を受けた職
能資格認定機関を設立させるとしている。
1
1,000 インドネシアルピア=9 .5127 円(2009 年 12 月 15 日現在)
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(2) 国家職業訓練制度に関する 2006 年政令第 31 号 9 条
職業訓練は、労働者の能力、生産性、生活の質を向上させるために、職業能力開発を推
進するものである。
(3) 国家職業認定庁に関する 2004 年の政令第 23 号
(4) 職業訓練認可機関の組織及び業務形態に関する 2003 年インドネシア共和国労働移住
省決定第 225 号
職業訓練認可機関の組織及び業務形態に関しての決定は以下のとおりである。
・ 職業訓練とは、階級、役職もしくは職務に従い、特定の能力及び技能レベルにおいて、
職務能力、生産性、規律、勤務態度及び労働倫理の修得、向上、開発のためのあらゆ
る活動をいう。
・ 職業訓練認定とは、定められた基準に基づき職業訓練認可機関が評価を行い、職業訓
練機関が実施する能力別職業訓練プログラムを認定することをいう。
・ 職業訓練機関とは、職業訓練を実施するための条件を満たす政府機関、法人もしくは
個人をいう。
(5) インドネシア領域外における見習制度プログラム手続きに関する 2003 年インドネシ
ア共和国労働・移住省決定第 226 号
「インドネシア領域外徒弟訓練制度」とは、インドネシアの領域外で実施される特定の
技能もしくは能力を習得するため、企業の製造ラインもしくはサービス提供分野で、指導
者又はより経験豊富な労働者の指導及び監督下で、直接労働すること、また職業訓練機関
での訓練を組み合わせた職業訓練制度の一部をいう。
(6) 2003 年インドネシア共和国労働移住大臣令第 229 条、職業訓練機関許可及び登録方
法に関する法令
職業訓練は、政府の職業訓練機関、民間の職業訓練施設あるいは民間企業によって実施
される。
(7) 2007 年インドネシア共和国労働移住大臣規則第 21 号
職業能力基準の策定方法を定めたものである。
(8) 2007 年職業訓練・生産性開発総局長通達第 297 号
すべての職業分野での、国内の職業能力基準策定に関与する者にとってのガイドライン
となる、国家職業能力基準の策定方法について述べられている。
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3.3
政府及び関係団体の制度、組織、機能
【職業訓練についての労働移住省の行政】
職業訓練は 2 つの機関によって監督されている。
(1) 国内雇用促進局
6 地域の職業訓練センターの運営を監督する。これら地域の訓練センターは、中央政府
の政策を地方政府の監督下にある職業訓練学校に伝える義務を負う。
・ ランバン農業訓練センター
・ セラン工業研修センター
・ スマトラメダン工業研修センター
・ マカサール工業研修センター
・ サマリンダ工業研修センター
・ スラバヤ工業研修センター
国内雇用促進局はさらに以下のとおり 5 部門に分かれている。
・ 資格の標準化と認定部門
・ 雇用と訓練促進部門
・ 生産性向上部門
・ 雇用促進と改善部門
・ 人材の利用と供与部門
過去には中央政府の監督下、153 の職業訓練学校が運営された。現在は中央政府の地方
分権化政策により、これらの学校の大部分が地方政府の監督の下に運営されている。
(2) 訓練生産局
訓練生産局もいくつかの部門に分かれ、下記訓練センターの運営を行っている。
・ 国外労働者研修センター
・ 製造とサービス業のための雇用訓練センター
・ 労働生産センター
これらは、職業訓練学校の教師や、上級技術を必要とする労働者、そして公務員に職業
訓練を提供している。
3.4
予算と財源
労働移住省の 2000 年会計年度の予算は約 9,000 億ルピアであり、この総予算の約 620
億ルピアが国内雇用促進長官に割り当てられた。その予算の大部分は、研修プログラムの
推進、訓練施設の運営、講師の費用、広報活動(情報の開示)に使われる。通常の状況下
では、職業訓練の国家予算は、中央政府の他の省と局、そして民間の職業訓練に割り当て
られる。現時点でのその詳細は不明である。
5
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3.5
外国・国際機関からの援助
現在、職業訓練の分野において、ドイツ、スイス、オランダ、日本、韓国からの支援が
ある。職業訓練に関して支援している国際機関は以下のとおりである。
・ 米国国際開発庁(United State of America Agency for International Developmen t:
USAID)からのバンダアチェの支援(米国)
・ 国際協力機構(Japan International Cooperation Agency:JICA)からの南スラウェ
シマッカサルにおける職業訓練の支援(日本)
・ 韓国国際協力団(Korean International Cooperation Agency:KOICA)からのブカ
シ職業訓練センターにおける支援(韓国)
3.6
職業能力開発の政策評価
職業能力開発の政策評価は、職業訓練の認定ガイドラインに関する職業訓練認定機関の
長による 2005 年決定第 3 号に基づいて運営されている。職業訓練に対する評価項目は以
下のとおりである。
(1) 設備
各施設は以下の設備を保有するものとする。
・ 事務所スペース:庶務作業、ファイリング作業、マーケティング、広報及び管理活動
を行うために必要な標準的広さのあるものとする。
・ 座学のための教室:訓練生の人数に見合う、訓練に必要なものが完備された適切な空
間を確保する。
・ 実習教室:能力別クラスの実習に見合うだけの、質的及び量的にも訓練設備が完備さ
れた教室を提供する。
・ 図書館、図書室:能力別クラス分けに見合うだけの蔵書数を備えた図書室を設置する。
(2) 組織
・ 職業訓練機関とは、適切に職業訓練を実施する政府の機関、民間企業もしくは民間団
体のことを指す。
・ 職業訓練には、未来像、使命及び目標達成のための明確な作業計画がなければならな
い。
・ 職業訓練機関は、その機関の責任者、プログラムの責任者、事務管理の責任者達をサ
ポートできる組織でなければならない。
(3) 人的資源
・ 職業訓練機関は、職業訓練を行うための適切な能力を有する人材から組織されるもの
とする。
・ 職業訓練機関は、各プログラムにおいて適正な能力のある講師を配置できるものとす
る。
・ 職業訓練機関は、人材開発を実現させるものである。
6
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(4) 管理
・ 総務:職業訓練機関への入所許可に関すること、人事記録を含む書類を取り扱う。
・ 職業訓練の管理:訓練記録等の事務管理、訓練の結果及び受講者の個人情報に関する
書類を取り扱う。
・ 業務計画、プログラム:活動の業務計画を策定する。
・ 財務:職業訓練機関の財源は参加者からのものや他の適法な資金によるものであり、
透明性があり、説明できるものでなければならない。
・ 研修プログラム:職業訓練機関は、能力に応じた研修プログラムを提供しなくてはな
らない。
(5) 他機関との協力
・ 国内外の産業界との相互協力体制
・ 他の国内外の職業訓練機関との相互協力
・ 政府もしくはビジネス界との協力
3.7
職業能力開発の実施概況
「国内職業訓練制度に関する 2006 年政令第 31 号」に基づいて、政府により職業能力開
発は管理運営されている。労働局が設立する職業訓練センターは、有効な登録証を整備し
なければならない。また、民間の職業訓練センターは、地域の地方事務所から許可を得な
ければならない。
3.8
公共職業能力開発実施機関
政府が設立した公共職業能力開発機関は 26 の州にあり、地域労働事務所により運営さ
れている。
各訓練機関の所在地については、下記のウェブサイトを参照。
・Ministry of Manpower and Transmigration of the Republic of Indonesia
http://www.nakertrans.go.id/alamat.html,bblk
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表 3‐4
州名
職業
訓練総数
自動車
建築
ウエイター
地域・部門別訓練者数、講師数
電気
電子工学
金属
スペシャ
ハウスキ
リスト
ーピング
観光
農業
講師総数
受講者数
15
0
0
0
0
0
0
2
3
0
0
0
0
北スマトラ
493
57
4
368
1
27
12
188
125
50
8
304
0
ブンクル
146
113
92
3
0
3
47
0
1
3
0
0
0
ジャンビ
75
7
4
62
5
1
4
26
0
0
4
175
0
リアウ
48
6
0
21
0
0
0
1
6
1
6
625
8,345
西スマトラ
94
0
0
70
0
6
0
18
0
0
0
0
0
南スマトラ
147
18
2
139
1
24
1
24
11
16
0
248
0
ランプン
144
30
3
89
2
6
1
78
27
5
0
387
0
バンカブリトン
125
3
1
113
0
7
1
8
0
2
0
317
0
6
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
バンテン
178
17
0
154
2
2
1
21
53
2
0
258
0
西ジャワ
787
27
0
590
0
177
138
13
0
0
0
304
0
ジャカルタ
441
43
9
236
18
23
6
50
383
33
4
1,348
0
中部ジャワ
716
198
4
498
6
56
19
315
171
34
1
2,874
1,077
東ジャワ
854
120
3
795
10
31
14
209
158
45
5
741
0
ジョグジャカルタ
118
23
2
84
1
11
0
86
6
18
3
657
0
西カリマンタ
138
8
1
104
0
1
2
25
1
0
0
0
0
南カリマンタン
175
19
4
189
0
7
2
25
1
0
0
590
1,690
51
3
0
52
0
0
0
7
0
1
0
16
1,085
129
34
1
172
0
7
4
37
10
8
0
653
0
アチェ
リアウ諸島
中部カリマンタン
東カリマンタン
*出典:Data base of Vocational Training in Indonesia 2007.
8
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3.8.1
目的、組織、施設など
(1) 指導員訓練センターCEVEST(DIKLAT INSTRUCTOR CEVEST、
現在の B2PLKN - CEVEST:海外研修センター)
CEVEST は、職業訓練に必要な設備を広げ改良し、国民の技術能力向上を目指すという
使命の下、多くの職業訓練を担う指導員を輩出し続けている。職業訓練指導員の養成は雇
用分野において政府の最重要課題の 1 つであり、第 3 回 5 カ年計画(1979∼83 年)及び、
第 4 回 5 カ年計画(1984∼89 年)にも盛り込まれている。現在では、CEVEST は職業訓
練指導員の能力開発においてバンドンの訓練校と並んで中心的役割を果たしている。一方
で、失業者のため職業訓練や地場の企業の要請に見合った職業訓練も実施しており、また、
海外派遣前の労働者に対する事前研修の場としても門戸を開いている。
CEVEST で実施している職業訓練指導員養成のための訓練コースについては、下記のと
おりである。
(a)能力開発コース(2 年コース)
求人に応募した新規指導員候補者に対し、訓練技術及び実践技術についての授業が行
われる。(スキルは問わない)
(b)能力発展向上コース(3 カ月コース)
(a)を修了した者に対して指導員としての技術と知識のスキルアップが図られる。
(c)民間職業訓練機関指導員養成コース(2∼3 カ月)
民間職業訓練機関で指導員をする人を対象に、教授法に基づく実践技術及び最新技術
を教える。
(d)ASEAN 地域内講師養成コース(1 カ月)
ASEAN 地域内の公共職業訓練機関の講師を対象に、技術向上のための実践訓練を行う。
(e)管理者コース(3 カ月コース)
国内の公共職業訓練施設の管理運営のための実践的運営管理方法を指導する。
(2) VECD(Vocational Education Center of Development:職業教育開発センター)Malang
人材開発の推進及び地域レベルでの人材開発への貢献を目的とした機関であり、約 9 ヘ
クタールの面積に 75 の教室、300 台のインターネットに無料接続可能なコンピュータを
備えている。図書室にはインドネシア語、英語、ドイツ語の蔵書が 2 万 2,000 冊ある。実
習場面では、ワークショップの授業がある。その他にも、230 部屋の宿泊施設、運動施設、
音楽機材、ガムラン(ジャワの伝統的楽器)等がある。受講者数は 1 カ月最大で 1 万 1,000
人であり、講師は 191 人が在籍、そのうち 125 人が学士号を、57 人がさまざまな有名大
学の博士号を持つ。さらにその 85%が国際的資格を有し、70%がドイツ語が堪能である。
情報及び技術、自動車、オーディオ製品製造、金属製品製造、エレクトロニクス、環境の
分野では、海外との提携プログラムも行っている。プログラムの提携先は以下のとおり。
CISCO Academy、MSW Switzerland、Jayaboard Gypsum Australia、SEAMEO
Brunei Darussalam、Gotevot Kingdom of Saudi Arabia、Bosch、Rexroth、SIEMENS、
LEYBOLD、Inwent、Fraunhofer Institute Magdenburg、Berufsakademie Stuttgart、
FHD Darmstad、ETS Tettnang 等
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そのほか、以下のプログラムがある。
i) 職業訓練校統合及び発展のためのその他 14 地方政府との提携プログラム
ii) 教育省又は労働移住省との合同プログラム
iii) コミュニティ開発(Comdev)プログラム
Comdev は、民間企業と提携して地域社会の発展を目指すもので、Prima Coal East
Kalimantan、BP Indonesia、Bintuni、Papua、Freeport、Sampurna Pandaan east
Java 等と提携している。
iv) 大学提携プログラム
Navy Academy、Institute of technology、Gajah Mada University、ITS Surabaya、
ITB Bandung、State University of Malang 等
(3) 石油ガス教育センター(東ジャワ、セプ)
公務員の資質向上と、より良い政府の実現を目的とする。石油ガス産業の人材の能力開
発及び市場のメカニズムを通して競争力向上を図る。
以下の ISO を取得している。
・ ISO 17024 - 2003(民間認定機関)
・ ISO 17202(石油ガス検査部門)
・ ISO 9001(石油ガス訓練センター部門)
・ ISO 9606(溶接部門)
・ ISO 1725(実験室)
・ ISO 14001(環境マネジメント部門)
石油ガス教育センターの組織は、エネルギー鉱物資源省の管轄下である。エネルギー鉱
物資源大臣の指揮下に、エネルギー鉱物資源教育訓練機関があり、石油ガス教育センター
はその機関の指揮下に置かれる。また、秘書業務、エンジニアリング、ファイリング作業
といった機能的支援が中央訓練センターより得られる。研修センターの下に、4 つの部(研
修部、実験実習部、製造部、管理部)があり、さらに研修部には、研修準備課、実施課が
ある。また、製造部の下には、製造課と公益事業課がある。管理部には、人事課、経理課、
内部事務管理課がある。
(4) ポリテクニック CALTEX(Polytechnic CALTEX Riau)(スマトラ島)
スマトラ島のあるリュウ地区自治体と P.T. Caltex Pacific Indonesia and Oil and Gas
会社が合同で開発し、2001 年 8 月 31 日より機能している。その目的は国際競争力のある
人的資源、製品及びサービスの創造を図ることであり、職業教育制度を創設した。教育訓
練のほかに、労働市場調査、市場調査、環境保護調査を行っている。1 万㎡に 3 階建の建
物で、25 の教室、23 の研究室、図書室、事務室、生徒の活動スペース、講堂、劇場、モ
スク、運動施設を備えている。ここで取り扱われるプログラムは、電気技師、電気通信技
師、コンピュータ、機械、会計の 5 つである。講師は常勤で 60 人、非常勤で 20 人が在籍
している。2010 年には財政的に自立することが期待されている。
10
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(5) 産業職業訓練センター(Industrial Vocational Training Makassar:BLKI)
1972 年日本政府の援助により設立、職業能力開発を目的とし、労働市場の需要に適した
労働者の能力開発及び技術向上を最優先としたプログラムを取り扱う。産業分野での労働
者の職業能力評価や、講師及び関係者の訓練の実施及び開発を行っている。
3.8.2
主要教材、予算と財源、訓練コース、訓練方法
職業教育開発センター(VECD)による、訓練プログラムは以下のとおりである。訓練
を受けるには、高卒以上が条件となっている。
・モーター制御
・AM ラジオ受信機
・漏電制御
・FM ラジオ受信機
・電力工学
・AM ラジオシステム
・空気圧
・FM ステレオシステム
・電空
・テープレコーダー
・プログラマブルロジックコントローラ(PLC)
・デジタル
・ビデオデッキ
・基礎アナログ通信
・先端デジタル電子
・基礎デジタル通信
・基礎電子
・アンテナ式テレビシステム
・電子回路
・マルチアクセス・テレビ
・応用電子
・白黒テレビ
・マイクロプロセッサー
・カラーテレビ
・マイクロコントローラ
・VCD(ビデオ CD)
・演算増幅器(オペアンフ)
・モノラル・オーディオ
・線形電力供給
・PCM(パルス符号変調)
・ステレオ・オーディオ
・CB トランシーバー
3.8.3
代表的なカリキュラムとその開発方法、教材とその開発方法、指導員、訓練生の募
集、訓練生に対する優遇措置
以下は、民間会社により実施される職業訓練プログラムの 1 つである自動車整備に関す
るカリキュラムの一例である。自動車整備訓練は 6 カ月の期間を要し、高等学校教育修了
者である 14 人によりクラスが編成される。
(1) 訓練の目的
・自動車分野あるいは産業において起業家(事業主)となること
・自動車モジュール(規格構造)についての高度な能力を習得すること
・自動車販売店舗の展開に関する基本知識を習得すること
・自動車整備店舗の運営・管理の信頼を得ること
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インドネシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 12 月 15 日
(2) 訓練教材
(a) 理論訓練教材
1) 自動車エンジン
・エンジンの基礎
・従来型燃焼システム
・プレミアム燃料システム
・エンジンオーバーホール
・ディーゼルエンジンシステム
2) 車台、パワートランスミッション
・ステアリングシステム
・パワートランスミッションシステム
・ブレーキシステム
・タイヤ・ジオメトリー
3) 自動車電気システム
・電気基礎及びバッテリー
・標準的な電気システムの車体
・エアコンシステム
・エンジン始動システム
・充電システム
・電子点火システム
・プレミアム燃料用エンジン燃料噴射システム
(b) 実地訓練教材
1) 自動車エンジン
・従来型燃焼システム
・プレミアム燃料システム
・エンジンオーバーホール
・エンジンチューンアップ
・ディーゼルエンジンシステム
2) 車台、パワートランスミッション
・ステアリングシステム
・パワートランスミッションシステム
・ブレーキシステム
・タイヤ・ジオメトリー
3) 自動車電気システム
・標準的な電気システムの車体
・エアコンシステム
・エンジン始動システム
・充電システム
・電子点火システム
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インドネシア(調査大項目 3:職業能力開発の政策とその実施状況)
作成年月日:2009 年 12 月 15 日
・プレミアム燃料用エンジン燃料噴射システム
訓練は、時間及び費用により個別的に各モジュールに分類することができる。以下はそ
のいくつかの分類したモジュールである。
1) エンジンオーバーホール
この訓練の目的は、参加者にエンジンのオーバーホールを行うこと、シリンダーヘ
ッド及びバルブシートの修復を行うことを工業レベルで可能にさせることにある。10
日間(80 時間)の訓練で、75 万ルピアの費用で行われる。その機能、構造、手順に
ついて多数のカリキュラムがある。
2) プレミアムエンジンのチューンアップ
この訓練の目的は、参加者に多様なプレミアムエンジンのチューンアップを行うこ
とを工業基準で可能にさせること。6 日間(48 時間)の訓練で、60 万ルピアの費用
で行われる。その機能、構造、手順について多数のカリキュラムがある。
3) クラッチシステム
この訓練の目的は、クラッチ制度とその点検、修理、調整、そしてテストについて
理解すること。5 日間(40 時間)の訓練で、50 万ルピアの費用で行われる。これに
ついての多数のカリキュラムがある。
4) 従来型トランスミッション
この訓練の目的は、パワートランスミッションの原理を理解すること。トランスミ
ッションの作動原理と機能の構築、そして問題の診断、修理とテストである。この訓
練は、5 日間(40 時間)の訓練で、50 万ルピアの費用で行われる。これについての
多数のカリキュラムがある。
5) エンジン始動システムと充電
この訓練の目的は、エンジンスターターとオルタネータの構造と作動原理を理解す
ること、電器部品の検査と修理とテストである。この訓練に 5 日間(40 時間)と 50
万ルピアの費用を要する。これについての多数のカリキュラムがある。
6) プレミアムエンジンのインジェクションシステム
参加者はエンジンのインジェクションシステムの作動原理と構造を理解し、問題の
分析と解決、修理を理解し、インジェクションシステムとその部品のテスト方法を理
解する。訓練機関は 6 日間(48 時間)で総費用は 60 万ルピア。これについての多数
のカリキュラムがある。
7) ディーゼルエンジンのインジェクションシステム
この訓練の目的は、ディーゼルエンジンのインジェクションシステムの構造と作動
原理を理解し、問題の分析、修復、解決を可能にすること。訓練機関 10 日間(80 時
間)、総費用は 75 万ルピアで、種々のカリキュラムがある。
8) ステアリングとパワーステアリング
この訓練の目的は、パワーステアリングシステムの構造と作動原理を確認し、問題
の診断と解決修理ができるようになること。訓練機関は、5 日間(40 時間)、総費用
は 50 万ルピアで種々のカリキュラムがある。
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作成年月日:2009 年 12 月 15 日
9) ロッドアクティベータとディファレンシャルギア
この訓練の目的は、ロッドアクティベータとディファレンシャルシステムを確認し、
問題の診断、修理、解決ができるようにすること。訓練期間 5 日間(40 時間)総費用
は 50 万ルピアで、種々のカリキュラムがある。
10)カーエアコンシステム
この訓練の目的は、エアコンスステムの構造と基本原理を理解し、カーエアコンシ
ステムの構造と基本原理を理解し、その診断、修理、組み立てと問題解決の専門家に
なることで、訓練期間 8 日間(64 時間)総費用は 75 万ルピアである。これに関する
多数のカリキュラムがある。
11) 車体の電気装置
この訓練の目的は、車体の電気装置を理解し、電気部品の問題の診断、修理、解決、
そして取り付けの専門家になることである。訓練期間は 7 日間(56 時間)で、総費用
は 75 万ルピアである。これに関する多数のカリキュラムがある。
12)電子 EMS の診断と電子点火システム
この訓練の目的は、EMS システム、発火制度を理解し、その取り付けのため、問
題の診断、修理、解決の専門家になることである。訓練期間は 7 日間(56 時間)で総
コストは 75 万ルピアである。これについての種々のカリキュラムがある。
13)ホイールアラインメントとタイヤの形状
この訓練の目的は、タイヤの角度の形とタイヤのバランスシステムを確認し、タイ
ヤの形状を診断し、調整すること。訓練期間は 10 日間(80 時間)もしくは 5 日間(40
時間)で、総コストは 50∼70 万ルピア。これに関する種々のカリキュラムがある。
14)ブレーキシステム
この訓練の目的は、ブレーキの構造と機能とその作用を確認し、問題の診断とテス
トをするのが目的。訓練期間 5 日(40 時間)、総費用は 50 万ルピア。これに関する
種々のカリキュラムがある。
15)モーターバイクと小型モーターのメカニック
この訓練の目的は、モーターバイクと小型モーターメカニックの資格を持たせ、モ
ーターバイクワークショップの基本的な運営と推進を学ばせるもの。
3.8.4
修了生の取得資格、修了生へのアフターケア、修了生の就職状況
人材についての 2003 年新労働法第 13 号による改正を反映させるため、国家職能認定制
度の再構築作業が行われている。新しい法律の下、中央政府認定の LSP(職種別検定機関)
と呼ばれる独立機関が職業認定とその認定書の発行を行っている。
インドネシアでは現在 7 つの LSP が運営されており、各 LSP は特定の分野の認定に権
限を有している。伝統的にこの認定制度は訓練の時間に重きを置いてきた。2003 年以降は
国際的な基準を採用する必要性が増えたのに合わせ、職務能力に重きが置かれるようにな
り、職務能力評価基準の再設定が早急に進められ、今日までに 35 の職務能力評価基準が
作成された。それらは、自動車、機械工学、そしてテキスタイルの関連である。
さまざまな職務能力は何千もの職能単位に分けられている。例えば、自動車関連の職業
には、170 もの職能単位がある。訓練生はさまざまな職能単位を組み合わせて、多くの認
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定書を取得することができる。例えば、職能レベルによって、ジュニアメカニック、シニ
アメカニック、上級メカニックといった認定書を取得できる。より高度な技術的なスキル
を持つ労働者を養成する見地から、チューンアップやタイヤの均衡といったいくつかのプ
ログラムが作られている。ジュニアメカニックの認定書を得るためには、訓練生は 170 の
スキル単位のうち 43 のスキル単位を獲得しなくてはならない。個々の職種別検定機関
(LSP)が職能単位に権限を有している。その評価は訓練場で行われるスキルテストに基
づいている。
政府は LSP の拡大、他の職務についてのスキル評価基準、職業横断的国家証明書の作成
等多数の課題を抱えている。インドネシアにおいては、スキル証明制度の開発は未だ初期
の段階にある。
【参考文献】
1.
Batavia Prosperindo Sekuritas. (n.d.).
http://www.bps.co.id/
2.
Data base of Vocational Training in Indonesia year 2007.
3.
Karir-up.com. (n.d.).
http://www.karir-up.com/
4.
Ministry of Manpower and Transmigration of the Republic of Indonesia. (n.d.).
http://www.nakertrans.go.id/
5.
Ministry of Manpower and Transmigration of the Republic of Indonesia. (n.d.).
Alamat balai latihan kerja seluruh Indonesia.
http://www.nakertrans.go.id/alamat.html,bblk
6.
Vocational Education Development Center Malang. (n.d.).
http://www.vedcmalang.com/
7.
職業訓練認定機関における職業訓練認定制度のガイドラインに関する 2005 年職業訓
練認定機関の長による決定第 3 号
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