CM 通信 No.4748 ( 2013 年 8月19日発行 )より再構成 “「新しい時代の、新しいプロダクション」に進化するために” 電通クリエーティブ X(クロス)と 内山光司氏(GT INC. )、業務提携 幅広い領域のコンテンツ制作に向けた対応強化を強くアピール 電通クリエーティブ X は、GT INC. の内山光司氏(クリエイティブディレクター)と業務契約を提携し、 協働してコミュニケーションコンテンツの企画制作を行っている。 “ オールコンタクトポイント コンテンツクリエー ション”を標榜する電通クリエーティブ X では、そ の実現に不可欠なデジタル/プロモーショナル コン テンツの制作に向けた対応の強化と、クライアント からの様々なリクエストに応えることを目的に、カ ンヌライオンズなど国際広告賞での豊富な実績と経 験を持つ内山氏と業務提携したもの。 既に内山氏は、GT INC. の活動と並行しつつ、 電通クリエーティブ X のスタッフとともに、ムービー 制作・グラフィック制作・Web 制作といった幅広い 領域において、コンテンツの企画・制作業務をスター トしている。 内山氏と吉澤貴幸氏(電通クリエーティブ X /コン テンツディレクショングループオフィサー)に聞いた。 左:内山光司氏(GT INC.) 右:吉澤貴幸氏(電通クリエーティブ X ) 豊富な経験値の蓄積を/ネームバリューによる PR 効果も 今回の業務提携は、電通クリエーティブ X の経営戦略をベースに、ビジネス面での相互メリットの 創出を前提に進められたものだという。 吉澤氏:業務提携というカタチを採った理由は、単なる仕事の 受発注という関係だけでは得られないことが沢山あるため。「一緒 に仕事をしました」だけでは経験値などは蓄積されません。その 意味でも、提携という関係性を築くことで、国内外で数多くの受 賞歴を持つ内山さんからナマの話が聞ける効果は非常に大きい。 若手に限らずベテラン勢も含め、当社のスタッフが内山さんと社 内で一緒に企画をしたり、新しい領域のプロモーションを手掛け る際にいろいろとアドバイスをいただけたり出来るのは、とても ありがたいこと。 01 多くの社員が刺激を受けるのではないかと思っています。 それと、もう 1 つの狙いは PR 効果。当社は電通映画社時代から 60 年間にわたって TVCM の制作 を続けてきたこともあり、周囲から「CM プロダクション」という固定したイメージで見られがちです。 現在は Web やグラフィックといった領域もトータルで制作していますが、CM 制作と比べれば実績や 知名度が及ばないのは確か。今回の提携によって、“内山光司”というバリューのある名前が前面に立 つことで、電通クリエーティブ X のビジョンである“ワンストップ オールコンタクトのコンテンツ制作” 刺激・触発し合える関係/制作機能を持つ“スタジオ”への関心 一方、内山氏が今回の業務提携を決めた理由は 2 つ。1 つは若いスタッフと一緒に仕事をすることに よる刺激。もう 1 つは、制作機能を持った“スタジオ”への高い関心。 内山氏:もちろん通常業務の中で、若いメンバーと一緒に仕事 をする機会や可能性はありますが、いわゆる“受発注”の関係では、 お互いに触発し合うというレベルには至りません。物理的に机を 並べてこそ初めて刺激し合えるものだと考えています。ですから、 今回の提携の話は、私にとっても非常に魅力的でした。 また、GT INC. はブティック型のクリエーティブ・エージェン シーとして、プランニングやディレクションを専門的に行ってい ますが、「新しく、イノベーティブなアイデア」を旗印に、責任を 持って仕事をフィニッシングするためには、自ら制作機能を持つ ことが非常に大事だと捉えています。例えば…PARTY やライゾマティクス、カヤックなど、注目を集 めているチームは、自発的にモノづくりの出来る環境を有しており、それが企画にも大きな影響を及ぼ している。 個人的には、受注に対する納品だけでなく、将来的にはそうした自己発信型のモノづくりを行い、世 の中への話題喚起を図っていきたい。そのためにも、 “スタジオ”機能を持つことはとても魅力的だと思っ ています。実は…GT INC. としてハウスプロダクションを持つ構想もありました。こうしたスタジオ への想いは、「オリジナルコンテンツを新たな収益源の 1 つに!」ということではなく、デジタル領域 において「R&D」的な活動はますます必要になってくると感じているからです。もし、アプリ制作の 発注があった場合、独自のアイデア・企画でアプリを制作した経験がなければイイものは生み出しにく い。対応も遅くなる。映像も同じです。自主制作で映像をつくった経験のあるディレクターの方がより 多くの引き出しを持っていることが多い。 若手メンバーに伝えていきたいこと/貪欲に盗んで欲しい 内山氏は、電通クリエーティブ X の若手メンバーに伝えていきたいこととして、「単にアイデアの発想 だけに留まらない、経験に基づいたクリエーティブの作法や、メディアを横断したトータルなコミュニ ケーションの作り方」を挙げ、そうしたノウハウを彼らに「盗んで欲しい」という。 02 内山氏:私自身が持つノウハウを、若い人たち に残せるのであれば、今回の提携の意味や価値は あるのかな、と。Web やデジタル領域の強化とい うより、世の中の新しい動向・潮流をキャッチアッ プして広告にしていくチカラや、「動画とグラ フィック」「マーケティングとエンターテインメン ト」などコミュニケーションに関する様々な掛け 合わせ/組み合わせ、さらにそうしたことをワン ストップで具現化していく実際的なスキルが求め られている、と認識しています。 そして、それらを「教える」のではなく、「盗ん で欲しい」という気持ちがある。電通クリエーティ ブ X との仕事では、出来るだけプロセスをキチン 電通クリエーティブ X コンテンツディレクション グループの若手メンバーとともに と説明したり、オープンな雰囲気の醸成を心掛け ています。若いスタッフには、そこから学べるこ とを感じ取り、貪欲に盗んでいって欲しい。特に、アウトプットの表現だけでなく、「何故こういう企 画になるのか」という課程や意図の共有に教育的な意味合いは強いと思います。 可能性、期待感、起爆剤/業務提携=他には出来ない試みを実現 吉澤氏は、今回の業務提携をキッカケとして、電通クリエーティブ X が「新しい時代の、新しいプ ロダクション」へと進化することに大きな期待を寄せている。 吉澤氏:電通クリエーティブ X という社名にある“X(=代数)”には、「時代に対して何か面白い実 験ができるのではないか」「今までなかった何かを生み出せるのではないか」という可能性と期待感が 込められていると考えています。そして、その 1 つとして結実したのが内山さんとの業務提携。こうし た他のプロダクションやエージェンシーには出来ない試みを実現できたのは、電通グループという大き な基盤や、当社の「新しいことに挑戦する」というビジョンがあったからこそ。 今、電通本社も様々な組織改革や提携などを進めながら「次の時代にどう対応していくか?」を探っ ているようです。今回の提携が、電通グループの一員として「新しいプロダクション」になっていく起 爆剤になれば、と考えています。様々なことにチャレンジしていきたいですね。 03
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