(09) - 1 - 呼吸器感染症 目標 1.気道と肺の防御機構(免疫学的・非免疫

呼吸器感染症
目標
1.気道と肺の防御機構(免疫学的・非免疫学的)と代謝機能を説明できる。
2.急性上気道感染症(かぜ症候群)の原因、診断と治療を説明できる。
3.気管支炎・肺炎の主な病原体を列挙し、症候、診断と治療を説明できる。
4.肺結核症の症候、診断、治療と届出手続きを説明できる。
5.非定型抗酸菌症を概説できる。
6.嚥下性肺炎の発生機序とその予防法を説明できる。
7.クループの成因、診断と治療を説明できる。
8.肺化膿症と膿胸を概説できる。
1.肺における感染防御機構
a. 物理的感染防御機構
粘液・線毛クリアランス
末梢肺に吸入された径 1mm 以上の粒子は 45 分で排泄され、1mm 以下の
ものは肺胞マクロファージに貪食される。
病的状態:粘液・線毛クリアランスの障害
外的因子:virus, smoking, NO2, SO2
遺伝的因子:Kartagener 症候群、Immotile-cilia 症候群、
副鼻腔気管支症候群
b. 生物学的感染防御機構
常在菌叢:α-Streptococcus, Neisseria, Corynebacterium
生態学的均衡状態:障害→抗菌剤投与時の日和見感染
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c. 神経学的感染防御機構
くしゃみ反射・喉頭反射・咳嗽反射
病的状態:神経筋疾患患者の死因の過半数は肺炎
老人や脳血管障害患者の嚥下性肺炎
d. 免疫学的感染防御機構
1)リンパ組織:肺門リンパ節、BALT
2)気道分泌免疫グロブリン (Secretary IgA)
3)肺胞マクロファージ:気管支肺胞洗浄液中の 90%を占める
機能
1.病原菌、異物の貪食
2.免疫機能の調節:cytokine (IL-1) の産生
e. 生化学的感染防御機構
肺胞表面活性物質 (surfactant):II 型肺胞上皮細胞が産生
マクロファージの貪食・殺菌効果を増強
肺の収縮を抑える(病的状態:ARDS)
2.急性上気道炎(かぜ症候群)とインフルエンザ
病因:
virus (rhinovirus, parainfluenza virus, adenovirus, RS vurus, etc)
chlamydia, mycoplasma
bacteria
診断:
詳細な病歴聴取と理学的所見による臨床的診断が一般的
(病原菌分離、ペア血清、DNA 診断)
治療:
基本的には対症療法
(インフルエンザを除き、有効な抗ウイルス薬はない。)
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抗菌薬の適応を検討する場合
高熱の持続
膿性の喀痰・鼻汁
扁桃腫大と膿栓・白苔付着
中耳炎・副鼻腔炎の合併
強い炎症反応(WBC 増加、CRP 上昇、ESR 亢進)
ハイリスクの患者
・インフルエンザ
かぜ症候群との臨床症状の違い
診断:
インフルエンザウイルス迅速診断法
治療:
ノイラミニダーゼ阻害剤(オセタミビル、ザナミビル)
アマンタジン(インフルエンザ A 型のみ)
対症療法(NSAID 使用する際の注意点)
・クループ
咽頭が強く侵され、発熱・嗄声・犬吠様咳・呼吸困難などの症状を呈する。
原因ウイルスとして、parainfluenza virus が重要。
3.下気道感染症(気管支炎・肺炎)
原因:細菌、マイコプラズマ、クラミジア、真菌、原虫、virus、寄生虫
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a. 細菌性肺炎
肺炎球菌 (Streptococcus pneumoniae)
最も高頻度
さび色の喀痰
近年、耐性菌の発現が問題となっている
モラキセラ(Moraxella catarrhalis)
肺炎桿菌 (Klebsiella pneumoniae)
大酒家の肺膿瘍の起炎菌として知られる
ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)
院内肺炎の起炎菌として重要(特に MRSA)
インフルエンザ流行時の起炎菌としても重要
インフルエンザ菌 (Haemophilus influenzae)
慢性気道感染症の急性増悪の起炎菌として重要
緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa)
院内肺炎(免疫機能不良状態の患者)として重要
慢性気道感染症の菌交代症または終末像にも関与
嫌気性菌
嚥下性肺炎の起炎菌として重要
(嚥下性肺炎の原因、病態)
検体の臭気(+)
治療:
βラクタム(ペニシリン系・セフェム系)
カルバペネム系
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アミノグリコシド系
(治療薬選択の際の注意点)
緑膿菌:治療抵抗性(併用療法)
MRSA:バンコマイシン、ハベカシン
嫌気性菌:クリンダマイシン
起炎菌不明の重症肺炎:ニューキノロン系
・肺化膿症
化膿性病原菌により肺実質が壊死に陥り、化膿性空洞を形成し、空洞内に
膿の貯溜を認める疾患。
起炎菌:S. pneumoniae, S. aureus, K. pneumoniae,
P. aeruginosa, 嫌気性菌 etc
・膿胸
胸膜の炎症により胸腔内に膿性の滲出液が貯溜した状態
治療:
排膿ドレナージ
膿胸腔内洗浄(気管支胸腔瘻のある場合は禁忌)
b. マイコプラズマ肺炎 (Mycoplasma pneumoniae)
臨床症状、検査成績:細菌性肺炎との違い
診断:PPLO 培地、ペア血清
治療:マクロライド系、ニューキノロン、テトラサイクリン系
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c. クラミジア肺炎 (Chlamydia pneumoniae, Chlamydia psittaci)
臨床症状、検査成績:細菌性肺炎との違い
診断:ペア血清、オウム病抗体
治療:マクロライド系、ニューキノロン、テトラサイクリン系
d. レジオネラ肺炎 (Legionella pneumophilia)
水系(川や沼、温水タンク)に生息→病歴上は
温泉
が重要
重症化しやすい
診断:ヒメネス染色、鍍銀染色、BCYEα培地
血中レジオネラ抗体(ペア血清)、尿中レジオネラ抗原
治療:RFP+EM 併用療法、ニューキノロン
e. 真菌性肺炎
1) 肺アスペルギルス症 (Aspergillus fumigatus etc)
菌球形アスペルギルス症 (pulmonary aspergilloma)
菌球 (fungus ball)
胸部 X 線写真:meniscus sign
慢性壊死性肺アスペルギルス症
侵襲型肺アスペルギルス症 (invasive pulmonary aspergillosis)
免疫不全患者に発症し、極めて致死率が高い
治療:アンホテリシンB、イトラコナゾール、ミカファンギン
・アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (ABPA)
Rosenberg の診断基準
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2) カンジダ肺炎 (Candida albicans etc)
免疫不全患者、IVH カテーテル長期留置患者
治療:アンホテリシンB、フルコナゾール、ミカファンギン
3) 肺クリプトコックス症 (cryptococcus neoformans)
ハトの糞
胸部X線写真:孤立性円形陰影(時に空洞)
診断:血清中の cryptococcus neoformans 抗原
髄膜炎の合併(髄液の墨汁染色)
治療:アンホテリシンB、フルコナゾール、5FC
f. ニューモニシスチス・カリニ肺炎 (pneumocystis carinii)
免疫不全患者
著明な低酸素血症
胸部X線写真:びまん性間質性陰影
診断:Induced sputum or BAL→銀染色、PCR 検査
治療:ST 合剤
g. サイトメガロウイルス肺炎 (cytomegalovirus)
免疫不全患者
著明な低酸素血症
胸部X線写真:びまん性間質性陰影
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診断:Induced sputum or BAL→PCR 検査
血清のサイトメガロウイルス抗原 (C7-HRP)
病理診断:核内封入体
治療:ガンシクロビル
h. 肺吸虫症(ウエステルマン肺吸虫、宮崎肺吸虫)
(Paragonimus westermani, Paragonimus miyazaki)
もずく蟹、さわ蟹、猪の刺身
気胸、胸膜炎の合併
末梢血好酸球増多
診断:
虫卵の証明
血清学的検査(免疫電気泳動法、Ouchterlony 法)
治療:プラジカンテル
4.肺結核(感染症の結核・参照)
結核予防法(届け出手続き)
医師の行う届け出(第22条)
結核患者と診断→保健所長に届け出(2日以内)
病院管理者の行う届け出(第23条)
結核患者が入院→保健所長に届け出(7日以内)
結核患者が退院→保健所長に届け出(7日以内)
患者の公費負担申請(第34条、第35条)
患者の申請→医師→保健所長→都道府県知事
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5.非定型抗酸菌症(非結核性抗酸菌症)
抗酸菌属の菌種の中から M. tuberculosis, M. bovis, M. africanum などの
結核菌群を除いたすべての抗酸菌によって起こる感染症の総称である。
M. avium complex 症(MAC 症)
M. avium or M. intracellulare
M. kansasii 症
M. kansasii
など
肺結核に類似した臨床像
ヒト→ヒトへの感染は確証されていない。
(隔離する必要はない)
細菌学的診断基準
治療:化学療法
抗結核剤や一般抗生剤(ニューマクロライド、ニューキノロンなど)
抗菌化学療法を行うが確立されたものはない。
外科的療法
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