ギリシャ英語 小林めぐみ 映画タイトル My Big Fat Greek Wedding(マイ・ビッグ・ファット・ウェディング) DVD 情報 日本で入手可/英語字幕あり (96 分) 製作年 2002 年 (アメリカ) 監督 ジョエル・ズウィック 映画について ニア・ヴァルダロスが自身の経験を舞台化した本作を映画化したも の。脚本と主演を担当し、ゴールデングローブ賞主演女優賞・作品賞、 アカデミー脚本賞にノミネートされています。ギリシャ系アメリカ人 の妻リタ・ウィルソンがヴァルダロスの舞台を見たことがきっかけ で、トム・ハンクスも制作に関わっています。 主要キャスト ニア・ヴァルダロス(トゥーラ・ポルトカロス役) 、ジョン・コーベ ット(イアン・ミラー役) 、マイケル・コンスタンティノ(ガス・ポル トカロス役)、レイニー・カザン(マリア・ポルトカロス役) 、アンド レア・マーティン(ヴーラおばさん)ほか あらすじ 家族で経営するレストランを手伝うトゥーラは冴えない 30 歳独身女 性。ギリシャ人であることを誇りに思い、女ならば結婚し、子どもを 産み、家族に尽くすのが義務と信じている父に、早く嫁に行けと言わ れる毎日を送っていた。そんな自分の生活を変えようと父親を説得し 大学で授業を受け、親戚の経営する旅行代理店で働くようになったト ゥーラは、英語教師のイアンと付き合い始める。父親の反対を乗り越 え、結婚式の準備を始めた二人だったが、トゥーラは、典型的なワス プであるイアンの両親の「クール」さに、イアンはトゥーラの大家族 の干渉ぶりに困惑する。はたして二人は無事に結婚できるのか…?! 英語の特徴 ギリシャ系英語の特徴はトゥーラの父親ガス役で自身もギリシャ系 発音・文法・語 アメリカ人のマイケル・コンスタンティノのセリフに色濃く表れてい 彙 ます。例えばガスはすべてのことばの語源はギリシャ語にあると事あ るごとに自慢するのですが、あるとき「じゃあ kimono は?」と質問 されるシーンがあります(0:05:15)。最初はガスも答えに窮するのです が、ひらめいて“Kimono is come from the Greek word cheimonas, is mean winter. So, what do you wear in the wintertime to stay warm? A robe. You see: robe, kimono. There you go! ” (「キモノはギリシャ語で冬を意味す るヒモナから来てるんだよ。冬の間寒くないように何を着るかね?ガ ウンだよ。ね、ガウンはキモノだ。そらごらん!」)と自信満々に答え ます。まず文法的に is come や is mean のように本来必要のないとこ (c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会 http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/ ろに be 動詞が挿入され、普通動詞が活用されないままなっているこ とに気づくでしょう。発音で特徴的なのは、/r/音がはっきり発音され ているところで、特に語頭は強い震え音になっています。またヒモナ の/h/も、より強い摩擦音[x]になっています。また、ギリシャ系英語の 音声は、/ʃ/の音が[s]になる傾向が見られます。トゥーラがギリシャに お見合い に 行きたがらないとガ ス が親戚に相談するシ ー ンでは (0:09:10)、“She won’t go. … It’s like she don’t want to get married”(「行 かないって。結婚したくないみたいだ」)、とこぼすのですが、she の 部分は[si]と発音されています。 (ちなみにこのセリフのあと、みんな が口にしてはならないこと言ってしまったというように一斉に十字 架を切るしぐさをするのも面白いところです。)なお、トゥーラ自身 は標準的な北米英語で話しています(ヴァルダロスはギリシャ系カナ ダ人)。トゥーラの母親や親戚役の俳優たちは、映画の中で訛りのあ る英語を使用していますが、ギリシャ系ではないため、その特徴はオ ーセンティックではない可能性が高いです。 映画のみどこ 舞台はシカゴですが、この映画にはギリシャの日常文化や習慣がたく ろ さん出てきます。特に父親のガスは、世界はギリシャ人とギリシャ人 になりたがっている人の 2 種類に分けることができると豪語する強 烈なキャラクターです。トゥーラの家族は大所帯で、何かと言うと家 族で集まり、大量の食事でもてなして Opa!(それ!)というかけ声と ともに踊り、家族のつながりが密接である一方、ギリシャ人はギリシ ャ人と結婚すべきで、(実権を握っているのは女性でも)家長である 父親の権限が強いといった古い考え方も残っています。そんな大家族 でやかましい(big fat な)ギリシャ的文化の洗礼を受け、圧倒されて いるイアンの両親の様子は特に見ものです。ギリシャ正教会での結婚 式では、まず参列者が花嫁のベールに唾を吐きかけている様子(ギリ シャの習慣では厄除けのおまじない)に目を丸くします。さらに式の 進行がわからず、“How are we supposed to know what’s going on?” “It’s all Greek to me.” (「何を言ってるのかしら」 「ちんぷんかんぷんだよ」 ) とささやきあうのですが(1:21:46)、 (ギリシャ語みたいに)ちんぷんか んぷんだという意味の慣用表現が、パーフェクトな掛詞になってい て、とっておきの決めゼリフとなっています。 (なお、DVD の日本語 字幕は単に「ギリシャ語さ」になっていました。)この映画はデフォ ルメされているにせよ、ギリシャ文化がユーモアたっぷりに描かれて いて、低予算なのに予想外の大ヒットとなったのもうなずける出来栄 えになっています。 (c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会 http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/ その他 テレビシリーズ化された My Big Fat Greek Life やヴァルダロス主演の 映画 My Life in Ruins (2009)でもギリシア英語が鑑賞できます。 (c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会 http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/
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