キンダーガートン・コップ

オーストリア英語
映画タイトル
Kindergarten Cop(キンダーガートン・コップ)
DVD 情報
日本で入手可/英語字幕あり (111 分)
小林めぐみ
製作年
1990 年 (アメリカ)
監督
アイヴァン・ライトマン
映画について
同監督による映画『ツインズ』(1988) 以来、シュワルツェネッガー2 度
目のコメディー。1991 年には『ターミネーター2』が公開されましたが、
シュワルツェネッガー全盛期時代の作品の 1 つと言えるでしょう。
主要キャスト
アーノルド・シュワルツェネッガー(ジョン・キンブル役)
、ペネロー
プ・アン・ミラー(ジョイス役)
、パメラ・リード(オハラ役)
、リンダ・
ハント(ミス・シュロウスキー役)
、リチャード・タイソン(クリスプ
役)
、ジョセフ/クリスチャン・カズンズ(ドミニク役)ほか
あらすじ
ロサンゼルス警察のジョン・キンブルは仕事一筋の刑事。麻薬密売人ク
リスプから 3 百万ドル奪って逃げたというクリスプの元妻と息子の居
所に関する情報が入り、キンブルは同僚のフィービー・オハラ刑事とオ
レゴンに向かう。そこでキンブルは 6 歳児クラスの教師のふりをして母
子を探す潜伏捜査を始めるハメになる。凶悪犯には動じないキンブル
も、子どもたちには悪戦苦闘。しかし、オハラや魅力的な教師ジョイス
の励ましで、子どもたちと打ち解けていき、母子をつきとめるが、元妻
から息子を取り返そうとするクリスプが迫ってきていた。
英語の特徴
シュワルツェネッガーはオーストリア出身。オーストリア訛りが強く、
発音・文法・語
役者として敬遠されたこともあるといいますが、逆にそれが彼の「売り」
彙
にもなっています。
まず、シュワルツェネッガーの英語の特徴として、母音の後の/r/音が
母音化していることが挙げられます。例えば体操の練習で、“one, two,
three, four”と掛け声をかけるシーンがありますが、four の発音は「フォ
ア」となっています。また、/u/の音が[uw]というように発音されていて、
例えば school は、口を丸めて突き出した感じの「ウ」になっています。
語末の/l/の発音も(英語の場合語末と語頭の/l/の発音はかなり異なりま
すが)
、語頭の/l/と同じような発音になっています。他にも bears(クマ)
を「ベア」というよりも「ビア」と発音したりしています。
面白いのは同僚のオハラ刑事が妹のふりをして、わざとオーストリア
訛りで話すシーンです。オーストリア訛りが誇張されているので特徴を
つかみやすいと言えます。以下は一連のセリフの抜粋です。“You have to
excuse my brother. It’s wonderful to meet you. I’m visiting here from Austria.
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/
I want to start. Wait a minute.”(兄がすみません。お会いできてうれしいで
す。オーストリアから来てるんです。始めたいわ。ちょっと待って。)
まず、/th/の発音が/z/になっています。そして wonderful が「ヴァンダ
フル」というように、/w/を[v]として発音するドイツ語式の発音になっ
ています。さらにドイツ語では語頭の sp-や st-の/s/が/[ʃ]の音で発音され
ますが、それが英語にも適用され、start が「シュタート」になっていま
す。これもドイツ(オーストリア)語訛りの代表的な例と言えます。
最後に、幼稚園を意味する kindergarten はもともと kinder「子ども」
garten「庭」という意味のドイツ語です。よく kindergarten を kindergarden
と間違えてしまうことがありますが、garden と garten は、英語の/d/に対
し て ド イ ツ 語 で は /t/ が 規 則 的 に 対 応 し て い る 一 例 で す ( 他 に も
drink/trinken, under/unter, word/Wort 等多数)
。
映画のみどこ
アクション映画で肉体派ヒーローを演じてきたアーノルド・シュワルツ
ろ
ェネッガーの無骨で近寄りがたいイメージをそのまま利用した映画と
言えます。キンブルはオーストリア出身という設定で、彼のオーストリ
ア訛りやドイツ語が自然に生かされています。自分の父親は警官だった
というのもシュワルツェネッガーの生い立ちそのままですし、園児に運
動をさせているのも彼のボディービルディングのキャリアを思い起こ
させます。さらにシュワルツェネッガーがこの映画に惹かれた理由に、
ちょうど前年(1989 年)に自分自身に初めての子どもが誕生したことを
挙げていますが、いろいろな意味で視聴者もキンブルとシュワルツェネ
ッガーを同一視して映画を見てしまいそうです。
しかし何といっても子どもたちの演技がこの映画の目玉です。強面の
刑事が 6 歳の幼稚園児たちに翻弄される姿はやはり微笑ましく、狙い通
りの効果を発揮しています。ただ、子どもたちは単にシュワルツェネッ
ガーを引き立てるための可愛い道具ではなく、社会を映し出す鏡にもな
っています。なんでも死と結びつける子ども、親からの虐待で周囲と溶
け込めない子どもなど、すでに制作から 20 年以上も過ぎている映画で
すが、麻薬というテーマも含めて今も同じ社会問題が根強く残っている
ことを我々に気づかせてくれるのではないでしょうか。
その他
シュワルツェネッガーが出演する他の作品でもドイツ(オーストリア)
英語を鑑賞することが可能です。
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/