レミーのおいしいレストラン

フランス英語
映画タイトル
Ratatouille(レミーのおいしいレストラン)
DVD 情報
日本で入手可/英語字幕あり (112 分)
製作年
2007 年 (アメリカ)
監督
ブラッド・バード、ヤン・ピンカヴァ
小林めぐみ
映画について
2007 年アカデミー長編アニメーション映画賞受賞作品
主要キャスト
パットン・オズワルト(レミー役)
、ルー・ロマーノ(リングイニ役)
、
ジャニーン・ガラファロー(コレット役)、ブラッド・ギャレット(グ
ストー役)
、イアン・ホルム(スキナー役)
、ピーター・オトゥール(イ
ーゴ役)ほか
あらすじ
レミーは、誰でも料理ができると説いた偉大なシェフ、グストーに憧れ
るグルメなネズミ。ある日レミーは食べ物を盗もうとして人間に見つか
ってしまい、一族郎党、命からがら逃げる中、家族と生き別れになって
しまう。途方に暮れる中、亡きグストーの幻に導かれるようにレストラ
ン「グストー」に辿りついたレミーは、そこで新米の見習いシェフ、リ
ングイニに出会う。ドジで料理のセンスのないリングイニはスープを台
無しにしてしまうが、見かねたレミーがスープを作り直し、それが客に
大好評を博す。レミーがスープを作るのを見てしまったリングイニは、
悩んだ末、レミーに協力を依頼するが…
英語の特徴
この映画はディズニー・ピクサーの作品ですが、パリを舞台としている
発音・文法・語
ため、フランス英語のアクセントが頻繁に使われています。ただし、フ
彙
ランス人声優ではなく、アメリカ人・イギリス人によるフランス語訛り
のパフォーマンスです。他のディズニーの作品同様、主人公(レミーと
リングイニ)は、アメリカ英語を使用しフランス語訛りを使いませんが、
他の登場人物の英語には、フランス語訛りの特徴がところどころ取り込
まれています。以下、多様な登場人物のセリフを見てみましょう。
まず、レミーを勇気づけるグストーのセリフです(0:14:52)
。“... but
that is no match for wishful thinking. If you focus on what you’ve left behind,
you will never be able to see what lies ahead. (しかしそれは希望的考えには
かなわないよ。過去のことばかりに気を取られていたら、未来は開けな
い。)
次は料理長スキナーがリングイニに声をかけるシーンです(0:18:25)。
“How are you, (...) How is she?”(調子はどうだ、… 彼女は元気かね?)
最後は、リングイニの面倒を見ることになったコレットがなぜレスト
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
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ランに女性シェフが一人しかいないのかリングイニに説明するシーン
です(0:41:05)。“Because Haute Cuisine is an antiquated hierarchy built upon
rules written by stupid old men, (…) But still I am here. How did this happen?”
(高級フランス料理っていうのは、馬鹿な爺さんたちによって作られた
ルールに則った、時代遅れの階級社会なのよ。それでも私はここにいる。
どうしてそうなったのかしら?)
この一連のセリフに見られる特徴は以下の通りです。まずフランス語
話者は th [ð]の音を[z]の音で代用することが多く、that や this は zat, zis
のように発音されています。また、フランス語ではアクセントが語末に
来る場合が多く、thinking, antiquated でも最後の音節が強く発音されて
います。さらにフランス語では鼻音に続く母音が鼻音化するため、その
現象が behind にも見られます。さらにフランス語の/r/は、口蓋垂ふるえ
音[ʁ]のため、never, rules, written などの r も[ʁ]で発音されています。最
後に、フランス語では(他のロマンス言語同様)/h/を発音しないため、
how「アウ」
、hierarchy が「アエラルキー」となっています。
(ただし、
Haute Cuisine は英語でも辞書の発音は「オウトクィジン」になっていま
すが、ここでは「ハウトクィジン」と/h/が発音されています。
)ここに
挙げた例は一般にもよく知られたフランス語訛りの特徴で、声優たち
は、それをうまく利用して演技をしているのです。そしてこういったス
テレオタイプの描写に批判があることも念頭に入れておくべき事実で
す。
映画のみどこ
この映画も、フランス料理とレストランが舞台。レストランで働くシェ
ろ
フたちの各役割や緊迫感あふれる厨房の様子を見ることができます。そ
してその世界は優雅なものではなく、基本的には男社会で自分の腕一つ
の厳しい世界であることもわかります。そんな中、自分がネズミである
という大きなハンデを抱えたレミーが、「誰でも料理はできる」と信じ
て、不可能に挑戦し、成功するという、いわばサクセス・ストーリーで
す。これは夢を叶えるという永遠のディズニーのテーマに則った映画
で、そういう意味では月並みな内容ですが、やはりレミーがお客さんの
喜ぶ料理を作るところはワクワクしますし、辛口批評家のイーゴがレミ
ーの作ったラタトゥーユを口にした途端、幼少期を思い出して感動した
ところでも、一緒に感動してしまいます。(人は結局豪華なメニューよ
りも、母の味を思い出させる素朴な料理に心を動かされるのでしょう
か。
)
なお、英語版のポスターでは、原題のラタトゥーユが rat・a・too・ee
とスペルアウトされています。これで英語では ratatouille をどう発音す
るのかわかりますし、ネズミ(rat)とかけことばになっていることも伝わ
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
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ってくることでしょう。
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