ローマでアモーレ

イタリア英語
映画タイトル
To Rome with Love(ローマでアモーレ)
DVD 情報
日本で入手可/英語字幕あり (111 分)
小林めぐみ
製作年
2012 年 (アメリカ・スペイン・イタリア合作)
監督
ウディ・アレン
映画について
ウディ・アレンのヨーロッパを舞台にした映画の一つ。(ウディ・アレ
ンはロンドン、バルセロナ、パリを舞台とした映画を制作している。
)
主要キャスト
アリソン・ピル(ヘイリー役)、フラヴィオ・パレンティ(ミケランジ
ェロ役)、ウディ・アレン(ジェリー役)
、ジュディ・デイビス(フィリ
ス役)
、ファビオ・アルミィアート(ジャンカルロ役)
、アレック・ボー
ルドイン(ジョン役)
、ジェシー・アイゼンバーグ(ジャック役)
、エレ
ン・ペイジ(モニカ役)
、ロベルト・ベニーニ(レオポルド役)
、ペネロ
ペ・クルス(アンナ役)ほか
あらすじ
ローマに居合わせた複数の男女の恋愛群像を描いた映画。ローマに旅行
に来て道を聞いた相手ミケランジェロと恋に落ちるアメリカ人女性ヘ
イリー。婚約の知らせにアメリカからヘイリーの両親のジェリーとフィ
リスはミケランジェロの家族に会いにローマにやってくる。他には田舎
から出てきたイタリア人新婚夫婦が巻き込まれる一連の騒動、ローマで
建築を学ぶアメリカ人学生が恋人の親友の訪問で翻弄される話、平凡な
イタリア人男性が突然有名になってしまう不可解な話、などが織り込ま
れ同時進行で進んでいく。
英語の特徴
まず映画はローマの大通りで交通整理をしている地元の警官が英語で
発音・文法・語
well. I’m from Roma. My job, as you can see, is to see that the traffic move. I
彙
次のように語るシーンから始まります。“Sorry, I don’t speak English very
stand up here, and I see everything. All people. I see life. In this city, all is a
story.”
このナレーションに見られるイタリア英語の特徴は、Sorry,
from, Roma の例のように/r/の発音が強いところ、everything が非常に強
調されて eeeverything と聞こえるところです。また、ローマという地名
も、英語風の Rome ではなく Roma としています。このような地名・人
名の発音の違いについては、ウディ・アレン扮するアメリカ人ジェリー
が娘の婚約者の名前 Michelangelo を英語風にマイケランジェロと発音
し、何度もミケランジェロだと訂正され、どっちでもいいじゃないかと
不機嫌になるシーンもあり、映画の中でさりげなく取り上げられていま
す。
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/
この映画は会話の半分以上がイタリア語で進行し、英語での会話はア
メリカ人同士が多いですが、主にミケランジェロやミケランジェロの父
ジャンカルロの英語からイタリア英語の特徴を聞き取ることができま
す。例えばジャンカルロは、ヘイリーの父ジェリーの誘いに応じてオペ
ラの舞台に立ち、満足して“It is so great, I…I can’t believe it. But no more
for me. …”(「すばらしい、信じられないよ。でも私には十分さ。
」)言う
のですが、great や it が greatǝ, itǝ のように聞こえます。イタリア語では、
音節末の子音は/r, l, n, m/のみ可能で、/t/のような子音が語末に来ると、
母音が挿入される傾向があります。以下、ミケランジェロが新聞のオペ
ラ批評を読み上げる台詞の experience の発音でも、experiensǝ のように
弱 い 母 音 が 語 末 に 挿 入 さ れ て い ま す 。 “Except from Mr. Santoli’s
magnificent voice...whoever imbecile…imbecile? (Yeah, imbecile.) whoever
imbecile conceived this moronic experience…should be taken out and
beheaded.”(
「サントーリ氏の荘厳な声を除いて、こんな馬鹿らしい体験
を思いついた愚か者…愚か者…?(そう、愚か者)は、どんな奴でも引っ
立てて打ち首にすべきだ。
」
)さらにミケランジェロが imbecile の発音の
仕方をヘイリーに確認しているところも母語話者と非母語話者の会話
らしいところです。
他にも映画の中には、英語を話せるかどうかに関するやり取りが見ら
れます。ヘイリーがミケランジェロに初めて会ったときに“You speak
very good English.”とほめるところや、ジャンカルロがヘイリーの両親に
妻を紹介しながら“Oh, Mariangela don’t speak good English.”と言うところ
などで、英語のパワーについて改めて考えさせられます。
映画のみどこ
この映画の見どころは、舞台となるローマと豪華キャストのアンサンブ
ろ
ルにあると言えるでしょう。互いに関係のない、かつ実際には起こりそ
うもない設定が満載の 4 つのストーリーがそれぞれに進行するという
ややわかりにくい展開にもかかわらず、豪華キャストがそれぞれの持ち
味を出しながら、ローマという共通の場所を通して一つのまとまりを作
っています。ストーリーの中に盛り込まれた日常と非日常(もしくは現
実と非現実)の狭間がこの映画の主題と言えるかもしれません。ごく平
凡な男が理由もなく注目され急にパパラッチに追いかけられるように
なって困惑する話も、通常ありえない話ですが、実生活では超有名人で
あるイタリアの国民的俳優ロベルト・ベリーニがこの平凡な男を演じる
ことで、その滑稽さがさらに強調されています。さらに、アメリカ人が
ヨーロッパを体験するときに感じると思われるある種の居心地の悪さ
をウディ・アレンが彼らしいしぐさで見事に表現しています。
その他
ウディ・アレンは近年ヨーロッパの都市を舞台とする映画を多数制作し
(c) 世界の英語を映画で学ぶ研究会
http://eureka.kpu.ac.jp/~myama/worldenglishes/
ています。
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