ON THE SPOT 現場から ●脳震盪 を予防するための提言」の内容説明 リを行っているそうです。 スポーツ障害としての 脳震盪 や日本は諸外国と比較して脳震盪や 米国と比較すると脳震盪に関する 頭部外傷が多いこと、先に挙げた死 認知度は未だ高くはないのですが、 亡事故の規則や、さらには最新の画 これから先、脳震盪や頭部外傷につ 3 月22日、青山学院大学(東京都 像診断方法についてお話しいただき いてのリスクはスポーツ活動に関わ 渋谷区)にて、 「スポーツ障害とし ました。スポーツに関わる全ての人 る全ての人が「知らなかった」では ての脳震盪へ ── 他領域の先進的な は正しい知識をきちんと得る必要が 済まされない問題になってきている アプローチより」と題したセミナー あります。 と感じられた一日でした。 が開催されました(アールラボスポ 続いてのセッションでは海外より ーツアカデミー主催、青山学院大学 ゲストスピーカーをお招きして、脳 体育会ラグビー部共催) 。 震盪を受傷した後のめまいに対する ●ゲーム分析 最初に「スポーツ頭部外傷後の頭 リハビリテーションについて話をし 蓋内病変」という講演をされた川又 ていただきました。題は「頭部外傷 2014 スポーツコード・ 達朗先生(おとわ内科・脳神経外科 に対するリハビリテーション ── クリニック)は、対応した選手の死 Vestibular Physical Therapy」、講師 4 月 5 日、 東 京 都 品 川 区 に て、 亡事故をきっかけに調査研究に取り はキム・ムーア・ゴットシャール博 2014スポーツコード・ユーザーカ 組み始め、スポーツにおける死亡事 士(サンディエゴ海軍医療センター) ンファレンスが開催された。スポー 故は偶然起こるのではなく、ある程 です。脳震盪受傷後の症状に対して ツコードとは、ゲーム分析に特化し 度規則性があると明らかになってき リハビリをするという考え方は日本 たソフトウェアであり、全体テーマ たそうです。そして偶然ではないと ではあまり浸透していませんが、段 として「Unlock Potential(可能性を いうことは、予防に取り組むことが 階的にかつ積極的にリハビリを行っ 解き放て)」が設定されていた。 できるということです。その中で先 ていくそうです。また、海軍のリハ スポーツコードの概要について橘 生は「死ぬ気でやれ、とは言うが、 ビリセンターに勤務されているため、 肇氏(フィットネスアポロ社)が紹 死んではいけない」とおっしゃって 脳震盪の受傷機転も特殊であり、爆 介した後、4 つの講演が行われた。 いました。 「スポーツによる脳損傷 撃などで受傷した人に対してリハビ 最初の講演は、「ロンドンオリン 川又氏による講演。死亡事故を防ぐための取り組みについて 6 Training Journal July 2014 (大伴茉奈) ユーザーカンファレンス 脳震盪受傷後のリハビリテーションについて、キム・ムーア・ゴッ トシャール博士 現場から フェンシングの映像を見せる千葉氏 ニュージーランドから来日したMatt Toulson氏 サッカーを中心に、映像のさまざまな活用法を示した石崎氏 野球における分析について講演した高森氏 ピックに向けたフェンシングナショ にまとめてコーチへ配信できるよう 次に、「ニュージーランドにおけ ナルチームへの映像サポート」と題 な仕組みにした。これにより、個人 るパフォーマンス分析」というタイ して、日本スポーツ振興センターの の知を集団の知へと移行できる。3 トルで、Sportec New Zealand カン 千葉洋平氏が行った。講演ではまず つ目のフィードバックのための開発 トリーマネージャーのMatt Toulson フェンシング(とくにフルーレ)の では、いつでもどこでも映像をみら 氏が講演。スポーツとテクノロジー 基本的なルールとして、攻撃権があ れるようなソフトウェアを 3 つ紹介 の統合という分野に興味・情熱を持 ること、わずかな時間で攻撃権が入 した。その中には、フェンシングの っており、プロで関わりたいという れ替わり、一瞬の攻防が醍醐味であ ために開発された「FPAD」も含ま 希望があった同氏。映像分析とは何 ると紹介した。千葉氏が仕事として れる。千葉氏は最後に、ロンドンオ か、またどのような役割があるのか 取り組んできたことは大きく 3 つあ リンピックでメダル獲得の決め手と など基本的な業務内容を紹介。デー り、試合の映像をデータベース化す なった中国選手との対戦に向けた準 タをインフォメーションにするレポ ること、ゲーム分析の開発と運用、 備について紹介した。ステップワー ート、さらにインフォメーションを フィードバック方法の開発である。 クで距離をコントロールし、カウン ナレッジ(知)にするゲームプラン データベース化については、11の ターを狙わないということで相手の という情報の流れにより、「勝機を 大会、1500試合の映像をiTunesで管 「アタック」を封じることができた 見つける」あるいは「向上の機会」 理し、見たい映像をすぐに探し出せ とした。最後に、情報の収集、分析、 を得るということを示し、これが今 るようになっていて、リプレイによ フィードバックという循環する流れ 回のテーマ(Unlock Potential)であ って即時フィードバックもできる。 を紹介し、その順序で段階が進むご ると話した。また「Getting to the 2 つ目のゲーム分析については、誰 とに量から質へと変換していくとい 1 %」という言葉も示し、膨大な映 が、いつ、どこで、何をしたかがわ うことを説明し、「競争を共創に」 像からわずかな映像をフィルタリン かるようになっていて、シート 1 枚 という言葉で締めくくった。 グするには、正確なコーディングが Training Journal July 2014 7 ON THE SPOT 必要であると話した。さらに、映像 から見えたアナリストという仕事の 上記の講演が行われた後、懇親会が 分析はスポーツ以外にも、教育や医 本質」と題して講演。ラグビーやサ 行われ、情報交換の場となった。 療、安全管理(軍事など)、マーケ ッカーの現場で多く使われているス ットリサーチ分野でも用いられてい ポーツコードを、野球で活用した実 ることを示した。 例を示した。選手として得てきた経 その後、石崎聡之氏(芝浦工業大 験を元に、試合の映像を整理してい 学)が「サッカーの現場におけるゲ ったところ、コースや球種、打球方 ーム分析の現状とスポーツコードの 向などの項目ごとの分類(ソフトウ 5 月18日、早稲田大学のユニカフ 活用」と題して講演。すでに1980 ェア上では「ラベルボタン」として ェ 125(東京都新宿区)にて、 「トレ 年代からゲーム分析は行われている 表現されるもの)が非常に細かくな ーナーと仕事」をテーマに、トーク ことを紹介しつつ、手作業による筆 り、全部で1310項目にもなったと セッションが行われた。同大学の卒 (浅野将志) ●アスレティックトレーナー トレーナーと仕事 記法からDLT(Direct Linear Transfor いう。これらの情報をもとに、具体 業生を中心とした稲門会メンバー以 mation)法、さらにGPSを用いた方 策として「打席当たりの球数」 「全 外に参加を許されているのが現役の 法やタブレットによる入力、自動追 打球におけるゴロ、フライ、ライナ 学生のみということと、中村千秋先 尾へと方法が変遷していく様子をま ーの割合」「カウントごとのスイン 生がスピーカーということもあり、 とめた。どのように撮影するか(ボ グ率」を導き出し、どのような勝負 学生の数も多く、セミナーというよ ールを中心に撮るのか、全体を撮る をする選手であるかを見出し、伝え りは中村先生を囲んでの座談会のよ のか)といった問題や、ポゼッショ るのだという。高森氏は「数字がす うな形式であった。内容は「今後の ン率以外に各選手がどのように時間 べてではないということを、証明す トレーナーが目指すべき方向と必要 を使っているかなどの見るべき点を 「一歩踏み出 るために数字を使う」 なスキルについて」で、学生にとっ 話したほか、暑熱環境と運動量の関 すための裏づけ」「数字は頼るもの てはこれからトレーナー活動を行う 係を示すグラフや、シーズンを通し ではなく、使うもの(言い訳でなく 上で何が必要になるのか具体的な指 た運動量の変化など、興味深いデー 理由となる)」といった印象的な言 標にすることができ、また各自の疑 タも示されていた。そのほか、サッ 葉で、ゲーム分析の内容を改めて紹 問を中村先生だけでなく参加者の方 カー以外の映像分析の応用例として、 介した。これは、手作業を含めて膨 にもお聞きすることもでき、より多 教員養成の大学の授業において、授 大な作業量や、プロとしての経験が 岐に渡る答えをいただくことができ 業の組み立てを撮影してフィードバ あってこそのものであった。 る会だった。 ックしている様子を紹介した。 今回は、スポーツコードのユーザ 序盤は中村先生の経歴や今までに 元プロ野球選手である高森勇旗氏 を中心として実際にスポーツ分析の 受けてこられた仕事について。ここ (スポーツプログラムス)は、「体験 関 係 者 ほ か、 約40名 が 参 加 し た。 で疑問に上がったのが「受けた仕事 和やかな雰囲気で行われた 8 Training Journal July 2014 今後目指すべき方向について語る中村氏 現場から に対しての取捨選択やモチベーショ してトップに立ち見本となるトレー ●トレーニング ンに差はあったのか」ということで ナーの必要さや適性について説かれ、 あったが、中村先生曰く「やりたい 今現在本当の意味でのトップに立て 仕事とやらなきゃいけない仕事に決 る人間が残念ながら少ないこと、ま 無理のない動きづくりの ために して差はつけず、受けた仕事に対し た企業家の方から見た新卒社員の ては好き嫌いこそあれど、たとえボ 「ほうれんそう」の出来具合も絡め、 ルーム(大阪市)にて橋本恒氏(ATC) ランティアでも金銭的報酬がある仕 トップトレーナーには知識はもちろ によるセミナー「プロアスリートへ 事でもYESと言い、全力で行った。 5 月18日、AVISS Sportsセミナー ん、ここでまたしても「人間力」や、 の指導と評価 実験と論文のエビデ ゆえに常に予定はビッシリだった」 「コミュニケーション能力」の高さ ンスに基づく科学的トレーニング─ とおっしゃった。それが技術の向上 が必要不可欠になる、と話題が収束 ─赤ちゃんトレーニングで注目され につながり、また信頼や「人間力」 していった。 る腹横筋、骨盤筋群の鍛え方と使い の向上にもつながるだろう、とのこ 最後に、「人間力向上のための人 方を頭と体で知る5時間」が開催さ とだった。 材育成」をテーマにしたセミナーを れた。 次に疑問に上がったのが「学生ト 開催しようという声が上がり、私自 前半の講義では、動くため、生き レーナーの地位と日米の違い」につ 身は学生のうちに、ぜひとも自身の るためには欠かすことのできない姿 いてだった。アメリカにはヘッドト トレーナーとしてのスキルと人間力 勢反射について、スポーツ動作での レーナーを中心に学生トレーナーが 向上のために参加したいものだと思 具体例を挙げ、陸上のスタートダッ 手足となり各部活で活躍していると うのと同時に、有意義な時間を過ご シュ時に下を向く(頚部を屈曲する) いう事実と、日本でそれを行う際に せたことに対して感謝した。 ことで力強く蹴り出す下肢の伸展と 必要なものについて議論された。そ (今野文子・中京大学 2 年) 上肢の屈曲が引き出されて力が発揮 講義する橋本氏 姿勢反射について身振りを交えて解説 可動域やストレッチについて丁寧に説明 チューブ抵抗をうまく活用 Training Journal July 2014 9 ON THE SPOT できることや、ゴロ捕球時に頭を下 てから、仰向けでの呼気と下肢の負 人間は自然の一部であり、進化の げてしまうことで下肢が伸展してし 荷を使った深層腹筋のトレーニング 過程や自然の力との関係を無視せず まい、トンネルしてしまうことを対 を行い、トレーニング後の姿勢を再 にトレーニングしていくことが、身 称性緊張性頸反射で説明し、投球動 度評価し、参加者は効果を目と身体 体に無理がなく本来のパフォーマン 作やバドミントンの構えの姿勢を例 で感じていた。橋本氏は練習前のア スを発揮できるという。非常に内容 に挙げ非対称性緊張性頸反射を解説 ップ、そして練習後にも、骨盤周囲 が濃く、橋本氏の熱意が伝わった 5 された。 を整えることを目的にこれらのトレ 時間であった。 また、四肢それぞれの関節が動作 ーニングを行うという。 の中で動くべき方向についても、間 続いて筋肉の走行や固定の位置、 違った方向へ行き過ぎないよう大き 相反神経支配や実際のパフォーマン ●ゴルフ な筋肉が反射的にブレーキをかける スでの可動域を考慮したストレッチ ように動くべきであり、ケガをしな やトレーニングを丁寧に説明し実践 いことが前提であるスポーツにおい した。選手自身が 1 人でストレッチ ゴルフにおける エクササイズ、ケア ては、ケガをしないでパフォーマン を行う場合には、セラバンドなどの 5 月24日、赤坂区民センターでテ スできる動きをトレーニングするこ チューブの弾性をうまく利用するこ ィーチングプロ・丸山匠氏による「パ とが大事であることを説明された。 とで補助が可能である。 フォーマンスキープ&レベルアップ 橋本氏が携わってきた野球の投球画 最後は、腹部のドローインを心が の た め のW-UP・ エ ク サ サ イ ズ・ 像や動画で具体的に示しながら、身 けながら、スクワット姿勢にチュー ケア」(司会進行は吉池宏彰氏)の 体を意識して「動かす」ような指導 ブ抵抗をかけた前後・サイドウォー セミナーが開催されました。丸山氏 方法ではなく、姿勢や動きをトレー クやシングルレッグ・スクワット・ は、9 年間の米国滞在時に「World ニングすることで身体が「動く」よ タッチダウンなどの殿筋群のトレー Golf Teachers Federation」のプロ資 うに指導していくことが必要と述べ ニング、そしてステップアップ動作 格を取得して、現在は田町ハイレー た。 と上肢の負荷を組み合わせたダイナ ン屋上ゴルフ練習場で指導していま さらに、正しい姿勢や骨盤傾斜に ミックな動きの中での骨盤の安定性 す。また、トレーニングにも興味を も触れ、正しい姿勢をつくるには骨 を求めるトレーニングなど、3 時間 持ち、NSCA‐CPTも取得しています。 盤に付着する筋肉がバランスよくト にわたって行われた。 イントロダクションでは、 「世界 (大槻清馨) レーニングされる ことが大切で、生 まれてから 1 歳に なるまでに身体で 覚えていく動作や 姿勢反射を利用し て身体機能や感覚 を呼び覚まそうと する「赤ちゃんト レーニング」につ いて、骨盤周囲の 筋群と呼吸法、そ れらの機能異常に ついても解説され た。 後半の実技では、 ペアになって互い の姿勢評価を行っ ゴルフスイングについて解説する丸山氏 10 Training Journal July 2014 さまざまなエクササイズを紹介 現場から のゴルフ団体」 「基本動作」「グリッ ルファーが陥りやすいパターンの実 ケアでは、スイングアークを大き プ」 「スイング運動」 「悪いスイング 例を紹介されました。 くするための肩甲骨周りの施術法や 例(アドレスとトップ)」をデモン ウォーミングアップでは、丸山氏 股関節が詰まりトップを作れない場 ストレーションを交えて解説いただ 自身が練習前や指導時に行っている 合の解消などの施術法を紹介されま きました。 「基本動作」のアドレス、 内容を紹介され、そのメニューは簡 した。 バックスイング、トップの一連の流 潔で各関節に対しての動きで構成さ ほかには専門用語の説明や打球が れの中で、とくにアドレス時の姿勢 れていました。練習場や自宅、治療 曲がる原因、ゴルファーが求めるこ とウェイトシフト配分の重要性を説 院でも行えます。他にランジ、サイ となど、実際的なことで、ゴルファ かれました。そして、トップのつく ドベント、グッドモーニング、肩関 ーのクライアントに対しての治療に り方の難しさと正しいトップをつく 節と肩甲骨周りが主な内容です。 るための身体の使い方の説明では、 エクササイズは、スイング動作と (戸田 淳・あおぞら接骨院、執筆 アドレスからの初動時で股関節と体 直結した内容で構成され、股関節の 協力/吉池宏彰・s-h-project.net) 幹、次に肩関節と肩甲骨の使い方を ローテーション&スイング、スクワ デモンストレーションを交えて説明 ット(シングルレッグを含む)、ペ を受けました。スイング動作に入る ットボトルを使用した体幹、とくに 前とトップ時の頭の位置をできるだ チューブを使用したウッドチョップ け同じにするないことやスイングア は、スイング動作と同様な動きで効 ークを大きくするための方法、ゴル 果的でした。丸山氏がデモンストレ フ特有の捻転運動のメカニズムの指 ーションを行った後、参加者がペア 導もありました。このほかにも、ゴ になり動きを体感しました。 役立つ内容でした。 on the spot欄では、学会やセミナー などへ参加していただいた様子を執筆 していただいたり、最近の話題をニュ ース記事としてお届けしています。下 記のメールアドレスへ情報提供をお願 いします。 [email protected] 投稿 募集 Training Journal July 2014 11
© Copyright 2024 Paperzz