JP 2006-280371 A 2006.10.19 (57)【要約】 【課題】栽培用培地に均一に接種できるとともに、製造 時又は保存時に菌糸塊が生成し難いキノコ種菌、このよ うな種菌を栽培用培地に接種する方法、このような種菌 を用いてキノコを製造する方法を提供する。 【解決手段】粘性又は半流動状液体とキノコ菌体とを含 むキノコ種菌。 粘性又は半流動状液体の粘度は200∼36000cP程度である ことが好ましい。この種菌を、キノコ栽培用固体培地に 設けた孔内に注入し、キノコ菌体を培養することにより 、固体培地表面からキノコが生育する。 【選択図】 図2 (2) JP 2006-280371 A 2006.10.19 【特許請求の範囲】 【請求項1】 粘性又は半流動状液体とキノコ菌体とを含むキノコ種菌。 【請求項2】 粘 性 又 は 半 流 動 状 液 体 の 粘 度 が 200∼ 36000cPで あ る 請 求 項 1 に 記 載 の キ ノ コ 種 菌 。 【請求項3】 粘性又は半流動状液体が水溶性高分子化合物を含むものである請求項1又は2に記載のキ ノコ種菌。 【請求項4】 水溶性高分子化合物が、増粘多糖類である請求項3に記載のキノコ種菌。 10 【請求項5】 増粘多糖類がカルボキシメチルセルロースであり、粘性又は半流動状液体中にカルボキシ メ チ ル セ ル ロ ー ス が 1∼ 3重 量 % 含 ま れ る 請 求 項 4 に 記 載 の キ ノ コ 種 菌 。 【請求項6】 増 粘 多 糖 類 が カ ラ ギ ナ ン で あ り 、 粘 性 又 は 半 流 動 状 液 体 中 に カ ラ ギ ナ ン が 0.3∼ 3.5重 量 % 含まれる請求項4に記載のキノコ種菌。 【請求項7】 キノコ菌体に代えて、粉砕物状のキノコ栽培用固体培地中にキノコ菌体を生育させたもの を含む請求項1∼6のいずれかに記載のキノコ種菌。 【請求項8】 20 キノコ栽培用固体培地に設けた孔内に、請求項1∼7のいずれかに記載のキノコ種菌を注 入するキノコ種菌の接種方法。 【請求項9】 キノコ栽培用固体培地に設けた孔内に請求項1∼7のいずれかに記載のキノコ種菌を注入 す る 第 1工 程 と ; キ ノ コ 栽 培 用 固 体 培 地 中 の キ ノ コ 菌 体 を 培 養 す る こ と に よ り キ ノ コ を 生 成 さ せ る 第 2工 程 と を 含 む キ ノ コ の 製 造 方 法 。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、シイタケ、エノキタケ、シメジ、マイタケ、エリンギ、ナメコなどのキノコ 30 の種菌、これらのキノコ種菌を培地に接種する方法、及びこれらのキノコを製造する方法 に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、シイタケ、エノキタケ、シメジ、マイタケ、エリンギ、ナメコ等のキノコ類を栽 培するに当たっては、先ず、キノコ栽培用人工培地(おが屑やコーンコブミール粉砕物等 の固形材料を塊状に成形したもの)であって、必要に応じてブドウ糖液のような栄養液を 染み込ませたものに、おが屑種菌を接種し、接種後の人工培地を適度な温度条件に静置す ることによりキノコを生成させている。このおが屑種菌は、キノコ栽培用人工培地と同様 の固形材料からなる培地にキノコ菌糸を蔓延させた状態の種菌培養培地を粉砕したもので 40 ある。 【0003】 キノコ栽培用人工培地におが屑種菌を接種する従来方法を図1を参照して説明すると、 先 ず 、 広 口 瓶 や 袋 1に 粉 砕 物 状 の 人 工 培 地 を 充 填 す る こ と に よ り 塊 状 の 人 工 培 地 2を 形 成 し 、 こ の 人 工 培 地 2の 中 心 部 に 上 下 方 向 に 貫 通 又 は 穿 設 さ れ た 接 種 孔 21を 設 け る 。 さ ら に 、 お が 屑 種 菌 3を そ の 容 器 か ら 手 作 業 で か き 出 し て 、 接 種 孔 21内 に 投 入 す る 。 接 種 後 の 人 工 培 地 2を キ ノ コ 生 育 条 件 下 に 置 き 、 菌 糸 が 培 地 2上 面 に 現 わ れ た 時 点 で 、 培 地 2を 袋 1か ら 取 り 出 し 、 引 き 続 き 静 置 培 養 を 行 う 。 こ れ に よ り 、 接 種 孔 21に 充 填 さ れ た お が 屑 種 菌 3か ら 菌 糸 が 伸 び て 、 人 工 培 地 2の 側 面 に キ ノ コ が 生 育 す る 。 【0004】 50 (3) JP 2006-280371 A 2006.10.19 しかし、この方法では、おが屑種菌を接種孔の底部にまで詰めることが難しく、また種 菌と人工培地との接触面積が小さい。このため、人工培地におけるキノコの生育領域が偏 り易く、その結果キノコの生育効率が悪い。また、種菌を人工培地に接種する際に、雑菌 の混入を回避するためには、クリーンルーム内での熟練した操作が必要であるという難点 もある。 【0005】 また近年、種菌用の菌体を液体培地に接種し、液体培地内に分裂菌糸や分生菌糸が分散 した状態で増加するように攪拌しながら培養し、その培養液を液体種菌として栽培用固体 培地に散布することにより接種する方法が検討されている。 【0006】 10 液体種菌を使用する方法では、栽培用固体培地の表面全域に種菌を接種することができ るため、接種分布も均一なものになり、菌糸の繁殖条件が良くなる利点がある。 【0007】 しかし、液体種菌を使用する方法では、種菌を液体培地で培養する場合に培地を静置し た状態にしておくと菌糸が絡まりあって塊状となってしまう。菌糸が塊状になると、栽培 用培地に菌を均一に接種することができない。従って、菌糸塊の生成を防止するために攪 拌が必要になる。攪拌するためには、通常、容量の大きな培養タンクと攪拌機とを備え、 無菌的に攪拌しながら培養することができる特殊な大型培養システムが必要になり、コス ト高となる。しかも、容量の大きな培養タンク内で培養するため、液体培地が雑菌により 汚染されるとタンク内全体が使用不能となり、大量の培養を最初からやり直さなければな 20 らないという危険性を常に抱えている。また、攪拌を止めてしばらくの間液体培地を静置 していると液体と種菌が分離するため、接種時に培地を再度攪拌しなければならず、手間 がかかる。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、栽培用培地に均一に接種できるとともに、製造時又は保存時に菌糸塊が生成 し難いキノコ種菌、このような種菌を栽培用培地に接種する方法、このような種菌を用い てキノコを製造する方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 30 【0009】 上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ね、以下の知見を得た。 (i) キ ノ コ 種 菌 と し て 、 粘 性 又 は 半 流 動 状 の 液 体 中 に キ ノ コ 菌 体 を 分 散 さ せ た も の を 用 い ることにより、キノコ栽培用固体培地に設けた孔の底部まで種菌を均一に接種できる。ま た、菌体が分散している液体の粘度が高いため、菌体が培地内で塊状にならず、又はなり 難い。 (ii) 粘 性 又 は 半 流 動 状 の 液 体 は 、 例 え ば 水 溶 性 高 分 子 化 合 物 を 水 、 又 は 種 菌 用 液 体 培 地 などに添加することにより得ることができる。水溶液高分子化合物として食品添加物とし て許可されている増粘多糖類を用いるときには、より安全性の高いキノコが得られる。 (iii) キ ノ コ 菌 体 に 代 え て 、 種 菌 用 固 体 培 地 と し て 従 来 使 用 さ れ て い る 粉 砕 物 状 の 固 体 培 40 地中に菌体を増殖させたものを用い、これを粘性又は半流動状の液体と混合して種菌とす ることもできる。これにより種菌中の菌体分布が一層均一になり、その結果、栽培用培地 に一層均一にキノコ菌体を接種することができる。 【0010】 本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下のキノコ種菌、キノコ種菌の接 種方法、及びキノコの製造方法を提供する。 【0011】 項1. 粘性又は半流動状液体とキノコ菌体とを含むキノコ種菌。 【0012】 項 2 . 粘 性 又 は 半 流 動 状 液 体 の 粘 度 が 200∼ 36000cPで あ る 項 1 に 記 載 の キ ノ コ 種 菌 。 50 (4) JP 2006-280371 A 2006.10.19 【0013】 項3. 粘性又は半流動状液体が水溶性高分子化合物を含むものである項1又は2に記 載のキノコ種菌。 【0014】 項4. 水溶性高分子化合物が、増粘多糖類である項3に記載のキノコ種菌。 【0015】 項5. 増粘多糖類がカルボキシメチルセルロースであり、粘性又は半流動状液体中に カ ル ボ キ シ メ チ ル セ ル ロ ー ス が 1∼ 3重 量 % 含 ま れ る 項 4 に 記 載 の キ ノ コ 種 菌 。 【0016】 項 6 . 増 粘 多 糖 類 が カ ラ ギ ナ ン で あ り 、 粘 性 又 は 半 流 動 状 液 体 中 に カ ラ ギ ナ ン が 0.3 10 ∼ 3.5重 量 % 含 ま れ る 項 4 に 記 載 の キ ノ コ 種 菌 。 【0017】 項7. キノコ菌体に代えて、粉砕物状のキノコ栽培用固体培地中にキノコ菌体を生育 させたものを含む項1∼6のいずれかに記載のキノコ種菌。 【0018】 項8. キノコ栽培用固体培地に設けた孔内に、項1∼7のいずれかに記載のキノコ種 菌を注入するキノコ種菌の接種方法。 【0019】 項9. キノコ栽培用固体培地に設けた孔内に項1∼7のいずれかに記載のキノコ種菌 を 注 入 す る 第 1工 程 と ; キ ノ コ 栽 培 用 固 体 培 地 中 の キ ノ コ 菌 体 を 培 養 す る こ と に よ り キ ノ 20 コ を 生 成 さ せ る 第 2工 程 と を 含 む キ ノ コ の 製 造 方 法 。 【発明の効果】 【0020】 本発明のキノコ種菌は、粘性ないしは半流動状液体中に菌体を含むものであるため、キ ノコ栽培用固体培地に設けられた孔の奥部まで均一に充填することができる。この結果、 栽培用固体培地にキノコ菌体を均一に接種でき、栽培用固体培地中でのキノコの生育効率 がよい。 【0021】 また、種菌の製造時及び保存時に、菌糸塊が生じず、又は生じ難いため、製造又は保存 時に攪拌機を必要とせず、従って大型装置を使用せずに低コストで製造できる。 30 【0022】 さらに、固体状ではなく、粘性液体又は半流動状の状態であるため、配管やノズルを介 することにより簡単に無菌的接種を行える。 【0023】 また、菌体を直接粘性又は半流動状の液体に混合するのに代えて、従来の粉砕物状の固 体培地中で菌体を増殖させたものを粘性又は半流動状の液体と混合することにより、菌体 と粘性又は半流動状の液体とを一層簡単に混合することができるとともに、菌体が一層均 一に分布した種菌となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0024】 40 以下、本発明を詳細に説明する。 (I)種菌 本発明のキノコ種菌は、粘性又は半流動状の液体とキノコ菌体とを含むものである。 キノコ キノコの種類は特に限定されず、食用又は医用などに有用なキノコであればよい。例え ば、シイタケ、エノキタケ、シメジ、マイタケ、エリンギー、マッシュルーム、ナメコ、 マツタケなどが挙げられる。 粘性又は半流動状の液体 粘性又は半流動状の液体(以下、「粘性液体」と略称する)は、菌体塊の生成を防止で きるとともに、キノコ栽培用固体培地に設けた孔の奥部まで均一に種菌を接種することが 50 (5) JP 2006-280371 A 2006.10.19 できる程度の粘性ないしは流動性を有するものであればよい。 【0025】 中 で も 、 そ の 粘 度 は 、 200∼ 36000cP程 度 で あ る こ と が 好 ま し く 、 200∼ 30000cP程 度 で あ る こ と が よ り 好 ま し く 、 200∼ 10000cPで あ る こ と が さ ら に よ り 好 ま し い 。 上 記 粘 度 範 囲 で あることにより、菌体塊の生成を防止できるとともに、キノコ栽培用固体培地に設けた孔 の奥部まで均一に種菌を接種することができる。 【0026】 本 発 明 に お い て 、 粘 度 は 、 B型 粘 度 計 を 用 い て 測 定 し た 値 で あ り 、 詳 し く は 実 施 例 に 記 載の方法で測定した値である。 【0027】 10 粘性液体は、例えば、水溶性高分子化合物を水性溶液に溶解させることにより得られる 。水溶性高分子化合物としては、代表的には多糖類が挙げられるが、多糖類以外の水溶性 高分子化合物であってもよい。 【0028】 多糖類としては、一般に増粘多糖類と称される、カルボキシメチルセルロース、アルギ ン酸、キサンタンガム、アラビアガム、カラギナン、グアーガム、ペクチン、タマリンド シードガムなどが挙げられる。これらは食品添加物としての使用が認められている物質で あることから、消費者の印象がよい。中でも、キノコの栄養源となるセルロースが含まれ ている点で、カルボキシメチルセルロースが好ましい。 【0029】 20 また、カラギナンも好ましい。カラギナンは、紅藻類のイバラノリ、キリンサイ、ギン ナンソウ、ツノマタ、スギノリから得られる多糖類であり、κタイプ、λタイプ、ιタイ プ の 3種 類 が 知 ら れ て い る 。 カ ラ ギ ナ ン は 、 ゼ リ ー の ゲ ル 化 剤 や 乳 飲 料 の こ く み 付 与 等 に 使用されている安全性の高い食品添加物である点で好ましい。 【0030】 多糖類以外の水溶性高分子化合物としては、例えばアクリル酸グラフト共重合体などが 挙げられる。水溶性高分子化合物は、高分子であるため、そのままではキノコ菌体には取 り込まれない。従って、得られるキノコの安全性には特に悪影響を与えない。 【0031】 水溶性高分子化合物の使用量は、菌体塊の生成を防止できるとともに、キノコ栽培用固 30 体培地に設けた孔の奥部まで均一に種菌を接種することができる程度の粘度が得られる範 囲であればよく、高分子の種類やエーテル化度によっても異なる。例えば、エーテル化度 0.5∼ 1.5程 度 の カ ル ボ キ シ メ チ ル セ ル ロ ー ス の 場 合 は 、 粘 性 又 は 半 流 動 状 の 液 体 中 に 1∼ 3 重 量 % 程 度 が 好 ま し く 、 1.5∼ 2.0重 量 % 程 度 が よ り 好 ま し い 。 ま た 、 カ ラ ギ ナ ン の 場 合 は 、 粘 性 又 は 半 流 動 状 の 液 体 中 に 0.3∼ 3.5重 量 % 程 度 が 好 ま し く 、 0.3∼ 0.5重 量 % 程 度 が よ り好ましい。 【0032】 粘性液体は、例えば上記水溶性高分子化合物を水に溶解させた水溶液であってよい。こ の液体には水溶性高分子化合物の他に栄養分を特に加えなくてもよいが、菌体の増殖を促 進するために、ブドウ糖、ショ糖、デンプンのような炭素源、アミノ酸、尿素などの窒素 40 源を加えることもできる。さらに、種菌の培養に従来使用されている液体培地(ブドウ糖 、 ポ リ ペ プ ト ン 、 酵 母 エ キ ス を 主 成 分 と す る GPY培 地 等 ) に 水 溶 性 高 分 子 化 合 物 を 溶 解 さ せたものであってもよい。粘性液体が菌体の栄養分を含む場合は、後述するように、粘性 液体に少量の菌体を接種し、その中で菌体を増殖させたものを種菌として用いることがで きる。 菌体 キノコ菌体は、菌糸又は胞子のいずれであってもよい。通常は菌糸と粘性液体とを混合 する。最終的に種菌をキノコ栽培用固体培地に接種すると菌体が増殖するため、菌体の使 用量は特に限定されない。 【0033】 50 (6) JP 2006-280371 A 2006.10.19 ま た 、 粘 性 液 体 に 菌 の 栄 養 分 が 含 ま れ る 場 合 は 、 少 量 の 菌 体 を 粘 性 液 体 に 接 種 し 、 20∼ 25℃ 程 度 で 、 30∼ 60日 間 程 度 静 置 培 養 す る こ と に よ り 菌 体 が 粘 性 液 体 中 で 増 殖 す る た め 、 菌体が増殖した粘性液体を使用すればよい。 【0034】 また、キノコ菌体そのものを粘性液体と混合するのに代えて、キノコ種菌生育用に従来 使用されている粉砕状の固体培地にキノコ菌体を蔓延させたものと粘性液体とを混合する こともでき、これにより、粘性液体中に菌体を一層均一に含ませることができる。 【0035】 このようなキノコ種菌は株式会社北研、森産業、秋山種菌研究所、キノックスなどから 市販されているが、次のようにして調製することもできる。この粉砕状の固体培地として 10 は、例えば、おが屑、コーンコブミールのような粉砕された植物材料が挙げられる。また 、この固体培地には、ブドウ糖、米糠、麦ふすまのような栄養分を添加してもよい。また 、 バ イ デ ル ( 株 式 会 社 北 研 ) 、 ネ オ ビ タ ス ( 株 式 会 社 キ ノ ッ ク ス ) 、 キ ノ ゲ ン S( 森 産 業 株式会社)のようなキノコ用の市販の栄養分を添加することもできる。固体培地の含水率 は 、 菌 糸 の 生 長 が 旺 盛 と な る 通 常 60∼ 65重 量 % 程 度 と す れ ば よ い 。 【0036】 こ の よ う な 固 体 培 地 に キ ノ コ 菌 体 を 接 種 し 、 20∼ 25℃ 程 度 で 30∼ 60日 程 度 静 置 培 養 す る ことにより、菌体が蔓延した固体培地種菌が得られる。 【0037】 この固体培地種菌を粘性液体と均一に混合すればよい。菌体含有固体培地は、粘性液体 20 に 対 し て 通 常 10∼ 50v/v%程 度 、 好 ま し く は 20∼ 30v/v%程 度 使 用 す れ ば よ い 。 上 記 の 固 体 培 地種菌の使用量の範囲であれば、実用上十分に短い期間の培養で、キノコ栽培用固体培地 からキノコを生育させることができ、かつ粘性のある種菌となる。 【0038】 菌体そのものを粘性液体と混合する場合、及び固体培地中に増殖させた菌体(固体培地 菌体)を粘性液体と混合する場合の双方において、菌体又は固体培地菌体は、攪拌により 粘 性 液 体 中 に 均 一 に 分 布 さ せ る こ と が で き る 。 一 旦 均 一 に 混 ざ る と そ の 後 は 、 30日 間 程 度 までであれば静置保存しても、菌体又は固体培地菌体が沈殿したり、塊状になって、粘性 液体と分離することはない、又は殆どない。 その他の成分 30 本発明の種菌には、本発明の効果を損なわない範囲で、コメヌカ、麦フスマ、ホミニー フィード、ビール粕などのキノコ種菌に通常添加される物質を添加することができる。 (II)種菌の接種方法 本発明の種菌の接種方法は、上記説明した本発明の種菌をキノコ栽培用固体培地に設け た孔に注入する方法である。 【0039】 キノコ栽培用固体培地は特に限定されず、公知の培地を使用できる。このような公知の 培地として、例えば、ナラ、ブナ、コナラ、シデなどの木材のおが屑、コーンコブミール 、 籾 殻 、 綿 実 殻 、 バ ガ ス な ど の 1 種 又 は 2 種 以 上 を 、 含 水 率 60∼ 65重 量 % 程 度 に な る よ う に調整して塊状に成形したものが挙げられる。また、この固体培地には、ブドウ糖、コメ 40 ヌカ、フスマのような栄養分や、バイデル(株式会社北研)、ネオビタス(株式会社キノ ッ ク ス ) 、 キ ノ ゲ ン S( 森 産 業 株 式 会 社 ) の よ う な 市 販 の 栄 養 液 を 含 ま せ る こ と も で き る 。 【0040】 また、この固体培地には、種菌を接種するための孔が設けられる。孔の位置、及び形状 はとくに限定されないが、固体培地全体をキノコ生育に有効に利用するためには、固体培 地 塊 の 中 央 部 に 塊 を 上 下 方 向 に 貫 く よ う に し て 孔 を 設 け る こ と が 好 ま し い 。 ま た 、 2∼ 6個 程度の孔を固体培地の上下方向に均等に設けても構わない。または、固体培地の底面のご く一部を残して上面から穿った孔も好ましい。 【0041】 50 (7) JP 2006-280371 A 2006.10.19 孔の容積は、固体培地に対する種菌の接種量に影響を与える。孔の容積は、固体培地に 対 し て 1∼ 15容 量 % 程 度 が 好 ま し く 、 2∼ 8容 量 % 程 度 が よ り 好 ま し い 。 上 記 の 孔 の 容 積 比 率の範囲であれば、種菌接種量が十分になって固体培地中のキノコの培養期間が実用上十 分に短くなる。また、これ以上孔容積が大きくてもそれ以上の効果は得られず、種菌接種 量が多くなってコスト高となるだけである。 【0042】 種菌の接種に先立ち、固体培地は通常雑菌の混入を防ぐために殺菌される。殺菌方法は 特 に 限 定 さ れ な い が 、 常 圧 下 98∼ 100℃ 程 度 で 6∼ 8時 間 程 度 の 熱 処 理 、 又 は 圧 力 0.7∼ 1.0k g/平 方 セ ン チ メ ー ト ル 程 度 の オ ー ト ク レ ー ブ 内 で 115∼ 121℃ 程 度 で 1∼ 2時 間 程 度 の 熱 処 理 による殺菌を行うことができる。 10 【0043】 次いで、固体培地に設けた孔内に種菌を注入する。本発明の種菌は粘性液体であるため 、種菌調製に使用する容器から外気に接しないように配管、及びノズルを介して無菌的に 固体培地に接種することができる。種菌は、固体培地の孔全体に充たせばよいが、さらに 固体培地の上面を覆うようにすることが望ましく、これにより培地全体を利用して効率よ く キ ノ コ を 生 育 さ せ る こ と が で き る 。 種 菌 の 使 用 量 は 、 固 体 培 地 に 対 し て 、 4∼ 20v/v%程 度 が 好 ま し く 、 6∼ 10v/v%程 度 が よ り 好 ま し い 。 (III)キノコ栽培方法 本発明のキノコ栽培方法は、キノコ栽培用固体培地に設けた孔内に本発明の種菌を注入 す る 第 1工 程 と ; キ ノ コ 栽 培 用 固 体 培 地 中 の キ ノ コ 菌 体 を 培 養 す る こ と に よ り キ ノ コ を 生 20 成 さ せ る 第 2工 程 と を 含 む 方 法 で あ る 。 【0044】 第 1工 程 に つ い て は 上 記 説 明 し た 通 り で あ る 。 種 菌 を 接 種 し た 固 体 培 地 中 の キ ノ コ の 栽 培 方 法 は 特 に 限 定 さ れ ず 、 公 知 の 方 法 を 採 用 す る こ と が で き る 。 例 え ば 、 温 度 15∼ 25℃ 程 度 、 相 対 湿 度 50∼ 80% 程 度 の 環 境 下 で 静 置 す れ ば よ い 。 キ ノ コ 種 菌 を 接 種 し た 固 体 培 地 は 、上記温度条件下になる季節であれば屋外に置いても構わない。 【0045】 光 は 自 然 光 で も よ く 蛍 光 灯 の よ う な 人 工 光 で も よ い が 、 人 工 光 の 場 合 は 、 0.1∼ 1600Lux 程度の照度で光照射することが望ましい。 【0046】 30 通 常 60∼ 120日 間 程 度 上 記 環 境 下 に 置 く と 、 培 地 上 面 に 菌 糸 塊 が 現 わ れ る た め 、 固 形 培 地 を 袋 又 は 容 器 か ら 取 り 出 す 。 さ ら に 、 温 度 10∼ 20℃ 程 度 、 湿 度 80∼ 90%程 度 、 照 度 200∼ 1600Lux程 度 の 条 件 下 で 、 引 き 続 き 静 置 培 養 を 続 け る と 、 7∼ 14日 間 程 度 で 、 固 体 培 地 側 面 からキノコが生成する。 【0047】 本発明のキノコ栽培方法は、例えば図2に示す装置を用いて行うことができる。この装 置 は 、 種 菌 調 製 用 の タ ン ク 5を 備 え 、 タ ン ク 5内 部 に は カ ッ タ ー 51が 備 え ら れ て い る 。 タ ン ク 5内 に 、 粘 性 液 体 62及 び キ ノ コ 菌 体 を 蔓 延 さ せ た 固 形 培 地 61を 加 え 、 固 形 培 地 61を カ ッ タ ー 51で 攪 拌 、 粉 砕 す る 。 こ れ に よ り 本 発 明 の 種 菌 6が 得 ら れ る 。 【0048】 40 タ ン ク 5は 配 管 7を 介 し て キ ノ コ 培 養 用 容 器 9と 連 通 し て い る 。 タ ン ク 5内 で 調 製 さ れ た 種 菌 6を ポ ン プ 8の 駆 動 に よ り 配 管 7を 介 し て キ ノ コ 栽 培 用 容 器 9に 輸 送 す る 。 配 管 7の 先 端 部 に は ノ ズ ル 71が 装 着 さ れ て お り 、 ノ ズ ル 71の 先 か ら 種 菌 6を 容 器 9内 に 注 入 で き る よ う に な っ て い る 。 容 器 9内 に は 、 キ ノ コ 栽 培 用 固 形 培 地 10が 充 填 さ れ て い る 。 固 形 培 地 10の 中 央 部 に は 上 下 方 向 に 貫 通 し た 接 種 孔 101が 設 け ら れ て い る 。 種 菌 を 容 器 9内 に 注 入 す る こ と に よ り 、 粘 性 液 体 状 の 種 菌 が 固 形 培 地 10の 孔 101内 の 底 部 に ま で に 充 填 さ れ る 。 さ ら に 固 形 培 地 10の 上 面 を 覆 う ま で 種 菌 6を 注 入 す れ ば よ い 。 実施例 以下、本発明を実施例、及び試験例を挙げてより詳細に説明する。 【0049】 50 (8) JP 2006-280371 A 2006.10.19 試験例1 カルボキシメチルセルロースを使用した粘性種菌 <種菌の粘性液体の粘度の検討> 粘 性 液 体 か ら な る 種 菌 と し て 、 濃 度 1重 量 % 、 1.5重 量 % 、 及 び 3重 量 % の 各 カ ル ボ キ シ メ チ ル セ ル ロ ー ス ( CMC; 日 本 製 紙 (株 )製 サ ン ロ ー ズ EB50) 水 溶 液 を 調 製 し た 。 【0050】 濃 度 1重 量 % 、 3重 量 % の CMC水 溶 液 の 粘 度 を B型 粘 度 計 ( 東 京 計 器 社 製 、 BM形 式 、 1983年 12月 製 造 ) を 用 い て 、 温 度 20℃ で 粘 度 を 測 定 し た 。 ロ ー タ の 回 転 速 度 は 12rpmと し た 。 使 用 ロ ー タ は 、 上 記 粘 度 計 の 添 付 マ ニ ュ ア ル に 従 い 、 濃 度 1重 量 %の サ ン プ ル で は ロ ー タ No.2 と し 、 濃 度 3重 量 %の サ ン プ ル で は ロ ー タ No.4と し た 。 各 サ ン プ ル に つ い て 3回 づ つ 粘 度 測 定し、その平均値を粘度とした。 10 【0051】 濃 度 1 重 量 % の CMC水 溶 液 の 平 均 粘 度 は 259cPで あ り 、 3重 量 % 濃 度 の CMC水 溶 液 の 平 均 粘 度 は 30167cPで あ っ た 。 【0052】 こ の 3種 類 の CMC水 溶 液 、 及 び 対 照 と し て の 水 に 対 し て 、 そ れ ぞ れ シ イ タ ケ お が 屑 種 菌 ( 北 研 600号 ) を 30(v/v%)添 加 す る こ と に よ り 、 4種 類 の 種 菌 を 調 製 し た 。 【0053】 次 に 、 シ イ タ ケ 栽 培 用 固 体 培 地 を 次 の よ う に し て 作 製 し た 。 3メ ッ シ ュ よ り 大 き い 広 葉 樹 お が 屑 、 20メ ッ シ ュ よ り 小 さ い 広 葉 樹 お が 屑 、 米 ぬ か 、 及 び ふ す ま を 5: 5: 1: 1の 容 積 比 で 混 合 し 、 水 道 水 を 加 え て 含 水 率 を 62重 量 %に 調 整 し て 培 地 を 作 成 し た 。 こ れ を 、 11cm 20 × 13cm× 30cmの サ イ ズ の ビ ニ ー ル 袋 に 1700ml充 填 し 、 そ の 中 央 部 に 上 下 に 貫 通 す る よ う に 直 径 2cmの 孔 を 設 け た 。 こ の 固 形 培 地 の 孔 に 、 上 記 4種 類 の 種 菌 を ピ ペ ッ ト チ ッ プ の 先 端 を カ ッ ト し 、 先 端 直 径 を 5mmと し た 2∼ 10ml用 の マ イ ク ロ ピ ペ ッ ト を 用 い て 40ml注 入 し た 。 【0054】 CMC濃 度 1.5重 量 % の 種 菌 は 、 固 体 培 地 の 孔 の 底 部 ま で ス ム ー ス に 注 入 す る こ と が で き た 。 ま た 、 注 入 後 、 24時 間 経 過 し て も 、 CMC水 溶 液 中 で お が 屑 種 菌 が 分 離 す る こ と が な か っ た。 【0055】 CMC濃 度 1 重 量 % の 種 菌 は 、 固 形 培 地 の 孔 の 底 部 ま で 注 入 す る こ と が で き た 。 ま た 、 種 菌 注 入 後 の 固 形 培 地 を 静 置 し た と こ ろ 、 1時 間 程 度 で 、 粘 性 液 体 で あ る CMC水 溶 液 と お が 屑 30 種菌とが一部で分離しているのが認められたが、実用できない範囲ではなかった。 【0056】 CMC濃 度 3重 量 % の 種 菌 は 、 固 形 培 地 の 孔 の 底 部 ま で 注 入 す る こ と が で き た が 、 注 入 時 に 、一部が孔壁に付着して下方に流れ難かった。しかし、実用できない範囲ではなかった。 【0057】 一方、水に、おが屑種菌を混合した種菌は、調製後直ぐにおが屑種菌と水が分離したた め、接種前に攪拌する必要があった。また、固体培地の孔に注入した後直ぐにおが屑種菌 が水と分離し始めた。 【0058】 こ の こ と か ら 、 粘 性 液 体 の CMC濃 度 は 1∼ 3重 量 % 程 度 が 適 当 で あ る こ と が 分 か る 。 40 <種菌の接種・キノコの栽培例> CMC1.5重 量 % を 含 む 水 溶 液 に 対 し て 、 シ イ タ ケ の お が 屑 種 菌 ( 北 研 600号 ) を 20(v/v%) 混合した。 【0059】 シ イ タ ケ 栽 培 用 固 形 培 地 ( 3メ ッ シ ュ よ り 大 き い 広 葉 樹 お が 屑 : 20メ ッ シ ュ よ り 小 さ い 広 葉 樹 お が 屑 : 米 ぬ か : ふ す ま =5: 5: 1: 1( 容 積 比 ) 、 含 水 率 62重 量 %) を サ イ ズ 11cm× 13cm× 30cmの ビ ニ ー ル 袋 に 1700ml充 填 し 、 中 央 部 に 上 下 に 貫 通 す る 直 径 2cmの 孔 を 設 け た 。 こ の よ う に し て 成 形 し た 固 形 培 地 を 圧 力 1.0kg/ 平 方 セ ン チ メ ー ト ル 、 121℃ で 90分 間 滅 菌した。 【0060】 50 (9) JP 2006-280371 A 2006.10.19 滅 菌 後 の 固 体 培 地 の 孔 内 に 種 菌 を 110ml注 入 す る こ と に よ り 、 孔 内 に 種 菌 が 充 た さ れ 、 さらに固体培地上面が種菌で覆われた状態になった。 【0061】 こ れ を 21℃ 、 相 対 湿 度 65% の 室 内 で 、 照 度 800Luxの 昼 白 色 蛍 光 灯 2本 の 光 の 下 に 置 い た 。 90日 間 後 に 固 体 培 地 を 袋 か ら 取 り 出 し 、 引 き 続 き 同 じ 光 条 件 で 温 度 17℃ 、 相 対 湿 度 85% の 環 境 下 に 置 い た 。 袋 か ら 取 り 出 し て 7日 後 に 固 形 培 地 の 側 面 か ら シ イ タ ケ の 子 実 体 が 生 成した。 【0062】 試験例2 カラギナンを使用した粘性種菌 <カラギナンと種菌の粘性液体の粘度の検討> 10 試 験 に は カ ラ ギ ナ ン ( GENUEGEL carrageenan type CJ) を 供 試 し た 。 カ ラ ギ ナ ン は 、 蒸 留水で溶解して水溶液として使用した。カラギナンのタイプ、水溶液濃度等を表1に示す 。 【0063】 【表1】 20 【0064】 カ ラ ギ ナ ン 水 溶 液 を オ ー ト ク レ ー ブ ( 121℃ 、 20分 ) 後 、 各 カ ラ ギ ナ ン 水 溶 液 に 対 し て 3 0%( v/v) の シ イ タ ケ お が 屑 種 菌 ( 北 研 607号 、 株 式 会 社 北 研 ) を 添 加 し 、 1000mL容 量 の エ ー ス ホ モ ジ ナ イ ザ ー ( AM-10型 、 ( 株 ) 日 本 精 機 製 作 所 ) を 用 い て 、 8,000rpm、 60秒 の 条 件で破砕し、粘性種菌を作成した。 【0065】 オートクレーブ後の各カラギナン水溶液の粘度、ならびに、粘性種菌の破砕直後、作成 4日 後 及 び 10日 後 の 粘 度 を B形 粘 度 型 ( BM形 、 東 機 産 業 株 式 会 社 ) を 用 い て 、 温 度 25℃ で 測 定した。 【0066】 これらの測定は、上記粘度計の添付マニュアルに従い、表2に示すように、ロータの回 転 速 度 は 、 6、 60rpm、 ロ ー タ は 、 ロ ー タ No. 2、 3、 4を 使 用 し た 。 粘 度 は 、 各 試 験 区 3回 の 測定の平均値とした。 【0067】 各試験区におけるカラギナンを使用した粘性種菌の粘度と一定期間後のおが屑種菌とカ ラギナン水溶液の分離状況を表2に示す。 【0068】 30 (10) JP 2006-280371 A 2006.10.19 【表2】 10 【0069】 イ オ タ ( ι ) タ イ プ の カ ラ ギ ナ ン は 、 水 溶 液 濃 度 0.3重 量 %、 0.5重 量 %と も 10日 後 に お い て も 、 お が 屑 種 菌 と カ ラ ギ ナ ン 水 溶 液 の 分 離 は 見 ら れ な か っ た 。 10日 後 の 粘 度 は 、 水 溶 液 濃 度 0.3重 量 %が 400cP、 0.5重 量 %が 1,400cPで あ っ た 。 こ れ ら の 粘 度 の 種 菌 を 培 地 に 接 種 し 20 たところ、均一に接種することが出来た。 【0070】 このことから、カラギナンを使用した粘性種菌を作成するには、カラギナン水溶液の濃 度 は 0.3∼ 0.5重 量 %が 望 ま し い こ と が 明 ら か と な っ た 。 0.3重 量 %の ι タ イ プ の カ ラ ギ ナ ン 水 溶 液 に 対 し て 、 30%( v/v) の シ イ タ ケ お が 屑 種 菌 を 添 加 し 、 ミ キ サ ー で 、 8,000rpm、 60 秒の条件で破砕することで、水溶液とおが屑種菌が分離しない、良好な粘性種菌が作成で きた。 <種菌の接種・キノコの栽培例> 0.3重 量 %濃 度 の ι タ イ プ カ ラ ギ ナ ン 水 溶 液 に 対 し て 、 シ イ タ ケ の お が 屑 種 菌 ( 北 研 607 号 、 株 式 会 社 北 研 ) を 30%( v/v) 混 合 し た 。 30 【0071】 培 地 材 料 は 、 3メ ッ シ ュ よ り 大 き い 粒 度 の 広 葉 樹 お が 粉 と 20メ ッ シ ュ よ り 小 さ い 広 葉 樹 おが粉、栄養材として米ぬか、ふすまを使用した。これらの材料を乾物重量比でそれぞれ 5:5:1:1に 配 合 し 、 含 水 率 を 62重 量 %に 調 整 し て 培 地 を 作 成 し た 。 【0072】 培 地 は 、 培 養 袋 ( ST-12P-25、 株 式 会 社 シ ナ ノ ポ リ ) に 1kg充 填 後 、 117℃ で 90分 間 の 高 圧蒸気殺菌を行った。 【0073】 0.3重 量 %濃 度 の イ オ タ タ イ プ カ ラ ギ ナ ン 水 溶 液 で 作 成 し た 粘 性 種 菌 ι 0. 3を チ ュ ー ブ ポ ン プ を 用 い て 、 1培 地 当 た り 40ml接 種 し た 後 、 培 養 を 開 始 し た 。 ま た 、 対 照 区 と し て 、 お 40 が 屑 種 菌 を 種 菌 メ ー カ ー の 使 用 基 準 で あ る 、 1培 地 当 た り 15g接 種 し た 試 験 区 を 設 定 し た 。 培 養 期 間 は 100日 間 、 培 養 温 度 は 21℃ 、 湿 度 は 65%と し た 。 ま た 接 種 30日 後 ま で は 暗 黒 で 、 そ れ 以 降 は 、 800Luxの 白 色 蛍 光 灯 に よ る 1日 8時 間 の 照 明 と し た 。 【0074】 培 養 終 了 後 の 培 地 を 培 養 袋 か ら 取 り 出 し 、 培 地 表 面 を 水 道 水 で 水 洗 い し た 後 、 温 度 17℃ 、 湿 度 85%以 上 、 800Luxの 白 色 蛍 光 灯 に よ る 1日 8時 間 の 照 明 下 で 、 子 実 体 を 発 生 さ せ た 。 1 回 目 の 発 生 が 終 了 し た 培 地 は 、 水 分 供 給 の た め 浸 水 を 行 い 、 2回 目 の 発 生 に 備 え た 。 こ の よ う に 、 発 生 終 了 後 の 培 地 へ の 浸 水 を 繰 り 返 し 、 合 計 4回 子 実 体 を 発 生 さ せ て 、 発 生 個 数 を サ イ ズ 別 に 測 定 し た 。 サ イ ズ は 、 菌 傘 直 径 が 4cm以 上 を M、 4cm未 満 を S、 奇 形 を Oと 区 分 し た 。 各 試 験 区 と も 、 供 試 培 地 数 は 15培 地 と し た 。 50 (11) JP 2006-280371 A 2006.10.19 【0075】 1培 地 当 た り に お け る 、 4回 発 生 ま で の 子 実 体 の 発 生 個 数 を 表 3 に 示 す 。 子 実 体 発 生 個 数 は 、 粘 性 種 菌 使 用 区 が 23.7個 、 対 照 区 で あ る 、 お が 屑 種 菌 使 用 区 が 19.0個 と な っ た 。 こ れ ら の 間 に は 、 危 険 率 5%で 有 意 な 差 が 生 じ た 。 【0076】 【表3】 10 20 【0077】 一般に、熟成度の高い培地は、子実体の発生量が多くなることが分かっている。粘性種 菌は、おが屑種菌と比べて、培地に菌体をよりいっそう、均一に分布させることが出来る ため、菌糸の蔓延期間が短縮できると考えられる。実際に、粘性種菌を接種した培地は、 培 地 表 面 を 菌 糸 が 覆 う 期 間 が 、 お が 屑 種 菌 と 比 べ て 、 5∼ 8日 程 度 短 く な っ た 。 こ の こ と か ら、培地の熟成度も、おが屑種菌を使用した培地と比べて進んでいると推察される。その ため、粘性種菌がおが屑種菌に比べて、子実体の発生個数が多くなったと考えられた。 【図面の簡単な説明】 30 【0078】 【図1】従来の固形培地への種菌接種方法を説明する図である。 【図2】本発明の種菌接種方法を説明する図である。 【符号の説明】 【0079】 1 広口瓶又は袋 2 人工培地 21 接 種 孔 3 おが屑種菌 5 タンク 40 51 カ ッ タ ー 6 種菌 61 固 形 培 地 種 菌 ( キ ノ コ 菌 体 を 蔓 延 さ せ た 固 体 培 地 ) 62 粘 性 液 体 7 配管 71 ノ ズ ル 8 ポンプ 9 容器 10 キ ノ コ 栽 培 用 固 形 培 地 101 接 種 孔 50 (12) 【図1】 【図2】 JP 2006-280371 A 2006.10.19 (13) JP 2006-280371 A 2006.10.19 フロントページの続き (72)発明者 阿部 正範 徳島県徳島市南庄町5丁目69番地 徳島県立農林水産総合技術支援センター森林林業研究所内 (72)発明者 湯浅 明男 徳島県徳島市国府町井戸字八斗地56番地 有限会社丸浅苑内 Fターム(参考) 2B011 AA01 AA02 AA04 AA07 BA06 BA07 BA09 BA13 JA01 MA11
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