化粧品業界における 資生堂の成功と課題 千葉大学法経学部経済学科 内山ゼミナール 1 はじめに 2005年冬、「花王・カネボウ連合」が誕生し、化粧品 業界は大きなうねりがおこった。強力なナンバー2 が出現し、受けて立つ資生堂はどのような動きがあ ったのだろうか。 誰もが見たことがある「ツバキ」「マキアージュ」などの CMの華やかさの裏ではどのような戦略があったの かを探っていく。 2 ねらい 業界ナンバー1の資生堂のこれまでの動き を把握する 財務諸表分析をもとに、国内戦略、海外戦 略がどのように行われているかを見ていく 資生堂がさらなる発展をするための提言を 行う 3 目次 第1章 資生堂の変遷 第2章 財務諸表分析 第3章 国内を中心とする資生堂全体の戦略 第4章 資生堂の海外戦略 終章 資生堂への提言 4 第1章 資生堂の変遷 担当:川村 千紘 5 資生堂の誕生 1872年 東京・銀座に店を構え、日本初の 洋風調剤薬局として登場 1915年 事業の主体を薬品から化粧品へ 1923年 全国各地の専門店と資生堂の化粧 品を販売する契約を結ぶというチェ インストア制度を導入 6 化粧品業界における冬の時代 <80年代> 世の中では「感性消費」「消費の多様化」 「新しさ」を売り物にした商品やブランドの登場 メーカー提案型→売り場要望型 <90年代> いくら利益を上げたか>どう利益を上げたか 「売れればいい」商品が乱発 各企業の「らしさ」が商品から見えてこない状況 7 多角化による企業ブランドの弱体化 1978年 マーケティング部→事業開発部 1988年 チェイン事業部を新たに設置 1990年 三本部体制(チェイン事業本部、ファイ ントイレタリー事業部、研究開発本部) ファイントイレタリー事業部が別会社化 百貨店とチェインストアが中心だったチャネルが、ドラッ グストアの台頭などによって枝分かれ ブランドが増加、組織も分化 8 資生堂ブランドの歩み <90年代> 量販店、ドラッグストアなど新しいチャネルが広がり、新 ブランド作成 ⇒売り上げ増加、利益増加⇒市場在庫が増加、利益逓減 対応策 プレステージ領域、ミドル領域、マス領域 ⇒資生堂を3つにわけ、「資生堂ブランド」を守る ⇒ロゴ使い限定、企業ブランドのイメージ薄まる ⇒経営効率が下がり、「資生堂ブランド」のイメージ薄まる 9 「資生堂ブランド」を蘇らせる① 2001~2002年 「社内公聴会」 「We are SHISEIDO」というスローガンのもとに一体化 社名に「資生堂」を含むすべての国内会社・事業で欧文 ロゴを使用 2002年 プロダクトブランド政策・・・それまで100以上あったブラン ドを35程度に絞る カテゴリーごとにブランドを分け、整理・統合 10 「資生堂ブランド」を蘇らせる② 結果・・・ ブランドを絞ることでマーケティングコストが低下 100以上あったブランドそれぞれにかけていた広告費 をメガブランドに集中 1ブランドに割ける広告費は増加 2005年 前3ヵ年計画スタート 2008年 新3ヵ年計画スタート 詳細は第3章 11 第2章 財務諸表分析 担当:石坂 卓也 12 連結売上高 百万円 800,000 その他事業 海外化粧品 国内化粧品 700,000 600,000 500,000 400,000 300,000 200,000 100,000 0 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 (見込) 13 その他事業 営業利益 海外化粧品 百万円 国内化粧品 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 2005年度 2006年度 2007年度 14 国内化粧品 海外化粧品 その他事業 全社 営業利益率 12.0% 10.0% 8.0% 6.0% 4.0% 2.0% 0.0% 2005年度 2006年度 2007年度 15 投資利益率と自己資本純利益率 10.00% 投資利益率 自己資本純利益率 8.00% 6.00% 4.00% 2.00% 0.00% 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 -2.00% -4.00% 16 広告宣伝費 百万円 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 17 研究開発費 百万円 20,000 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度 18 化粧品業界の国内・海外シェア 海外シェア 化粧品国内シェア 9% 3% 1位 ロレアル 2位 46% プロクター・アンド・ギャンブル(P &G) 資生堂 花王 コーセー 42% 3位 ユニリーバ その他 4位 資生堂 19 まとめ 国内事業・・・高い利益率を実現しているものの国内市場は飽和 状態にあり、売上高は減少傾向。6大メガブランドの主力製品の 売上向上により国内でのシェアも拡大できる。 海外事業・・・拠点とする中国を中心に売上が飛躍的に向上。今 後もアジアにおける戦略を継続していくことで更なる成長が見込 める。 その他事業・・・今後の成長分野となるのはコエンザイムQ10な どのフロンティア・サイエンス事業。事業売却の影響がなくなれ ば増収に転じる。 20 第3章 国内を中心とする 資生堂全体の経営戦略 担当:高橋 千恵 21 資生堂のこれまで 1997年に化粧品の再販制度が完全撤廃され 、かつての流通構造が崩壊 負のスパイラルに陥る 資生堂はここから脱却しなくてはならない 前3カ年計画の取り組みへ 22 前3ヵ年計画(2005-2007) 国内に偏重した旧来型ビジネス モデルを再生し、グローバル プレイヤーへと脱皮 ①100%お客様志向の会社に生まれ 変わる 3つのビジョン ②資生堂ブランドを光り輝かせる ③魅力ある人で組織を埋め尽くす 23 前3カ年計画の内容 国内戦略 事業基盤整備 (人事改革・組織改革・ガバナンス改革) 海外戦略(収益拡大の源泉) 第4章 結果 営業利益率8%以上達成、海外売上比率 35%超、総還元性向90% 24 前3カ年計画の国内戦略 ~ポスト再販の新ビジネスモデル構築~ メガブランド 戦略 ブランドポートフォリオの整理・統合 取引制度改革 営業体制の再編 BCの活動革新 価値創造体制の再編 生産・物流体制の効率化 25 顧客接点拡大ブランド(メガブランド)戦略 増えすぎたブランドを整理・統合 専門店だけではなくマスマーケット向けの流 通チャネルに対し、カテゴリーごとのメガブラ ンドを投入する戦略 テレビCMなどの宣伝活動も積極的に展開 する (エレクシール シュペリエル、アクアレーベル 、マキアージュ、インテグレード、ツバキ、ウ ーノ) 26 新3ヵ年計画(2008-2010) 日本をオリジンとしアジアを代表とする グローバルプレイヤーを目指し、 全ての活動の質を高める ①世界中のお客様に愛されるブランド ②世界を攻める質の高い経営品質を確立す 3つの宣言 る ③国、組織を超えた資生堂グループの結束 力を高める 27 具体的戦略構築上のキーワード 成長性拡大と収益性向上の両立 + グローバル化 峻別と集中 社外の知恵とリソースの活用 ブランドづくり 経営品質向上 グループ結束力強化 28 戦略の方向性 経営品質向上 ブランドづくり グローバルSHISEIDOブ ランド育成 アジアでの圧倒的存在感 の確立に向けて 資生堂グループの価値向 上に向けた基盤強化 グローバル人材の育成 組織能力の向上 ガバナンス体制の強化 構造改革 CSRへの積極的取り組み グループ結束力強化 29 日本でのNo.1ポジションを磐石なものへ リレーショナルブランド戦略の展開 育成ブランドを27→21へ絞り込む 第2次営業革新:100%お客様志向の 徹底 最終目標 2010年度営業利益率10%以上、ROE= OPM+1~2ポイント、海外売上比率40%超 30 第4章 資生堂の海外戦略 担当:椎名 大介 31 資生堂の海外進出の思想的背景 化粧品業界の歴史的流れ 20 世紀初頭 フランスが世界市場を握る 戦後 アメリカが台頭 ⇒早い段階でボーダレス化している産業 ↓資生堂内の意識 世界中に受け入れられてこそ本物のブランド 世界で認められなければ生き残れない 32 資生堂の地域別 売上高内訳 第1四半期決算 (08 4~6月四半期決算) 15% アメリカ 38% 欧州 アジア・オセアニア (日本除く) 47% 33 各地域における資生堂の戦略 アメリカ プロフェッショナル事業で収益を伸ばす カナダやブラジルの現地法人売上も好調 欧州 トラベルリテールビジネスが好調 最近では拡大続くロシア市場にも進出 ⇒日本と同じ成熟市場、似通った戦略 34 各地域における資生堂の戦略 アジア・オセアニア 韓国やタイを中心に堅調に推移 ニュージーランド工場を閉鎖 ベトナム工場を新設 中国が4期連続30%増収という高成長 ⇒最重要市場 中国について詳しく見ていく 35 中国市場の現状 人口が多い ターゲットを絞っても規模は日本クラス 所得格差 高価格商品でも売れる 化粧習慣があまり広まっていない 所得水準向上に期待 模造品の乱立 ブランド低下、販売チャネル拡大の阻害 急激な成長市場 購買層が増加し続ける一方、従業員費用も増大 36 資生堂のターゲット 日用品や低価格帯は他社が圧倒している ⇒プレステージ(高価格帯)の売上を伸ばす戦略 発売当初 1%マーケティング(600万人) 1990年後半 3%マーケティング(1800万人) 現在 5%マーケティング(3000万人) さらなるターゲットの拡大を予定 37 資生堂の主力ブランド 中国国外のブランド グローバルブランド「SHISEIDO」 日本でもおなじみの「ツバキ」 「ウーノ」 AUPRES(オプレ) デパート販売の中核、知名度も高い URARA(ウララ) 化粧品専門店特化ブランド オプレよりやや安い価格帯 2006年10月に発売し ⇒売上の3割を占めるほどに成長 38 資生堂のチャネル(販売経路)戦略 デパート・百貨店 資生堂の強み。プレステージ商品を販売 近年では他社の参入で競争が激化 化粧品専門店 売上を大きく伸ばしている 今後は取り扱える商品の多様化で店舗数を拡大 その他にはドラッグストア、総合スーパーなど ⇒第3のチャネル開拓が今後の目標 39 資生堂の広告戦略 マス広告はあまりやっていない ⇒ターゲットを絞っているから 丁寧な接客を続けて信頼を形成し 口コミによる宣伝効果を期待 40 中国市場における資生堂 まとめ 好材料 市場規模の拡大が見込める(成長市場) ハイステージ商品販売による高利益率 課題 外資との競争 模造品の乱立 高収益を維持しつつ 信頼を獲得する商品・サービスを提供する 41 終章 資生堂への提言 担当:椎名 大介 42 第3~4章から見えてくる資生堂の課題 国内市場 リレーショナルブランド戦略 ⇒広告による販売活動よりも商品の質を高める 海外市場 成長市場にハイステージ商品を投入し高い利益を 信頼の確保 共通点 積極的な広告戦略よりも 商品・サービスの質の向上が重要 43 提言1 国内と海外の融合 商品やサービスノウハウの輸出入 (×役割分担) シナジー効果 例:シノアドア 中国の研究所と共同開発した 日本向けブランド グローバル企業としての社内風土の形成 地域の特色を生かした研究開発 44 提言2 機能性化粧品の開発 機能性化粧品とは? 通常のスキンケアに加え治療の側面を持つ 医薬品に使われる成分なども配合されている 現在飽和気味の国内でも売上が伸びている 内側から綺麗になりたいという 消費者ニーズに答えるためにも、 機能性化粧品開発を積極的に行うべき 45 提言3 女性管理職の登用 消費者ニーズを取り入れるためには? 化粧品業界の中心となる消費者は女性 資生堂全職員の7割も女性 しかし女性管理職の割合は約1割 ⇒女性消費者が求める商品戦略をとりづらい 女性が長く働けるような制度 性別役割を意識しない社内風土の形成 46 参考文献 2009 図解革命 業界地図 最新ダイジェスト 高橋書店 会社四季報 業界地図 2009年度版 東洋経済新報社 資生堂ブランド 川島 蓉子著 株式会社アスペクト よくわかる化粧品業界 中島美佐子著 日本実業出版社 資生堂 http://www.shiseido.co.jp/ RIETI 独立行政法人 経済産業研究所 資生堂中国ビジネスの戦略展開について http://www.rieti.go.jp/jp/ 英国居酒屋 http://www.ne.jp/asahi/british/pub/ 47 参考文献 サーチナニュース 資生堂:2010年、中国での売上1000億円目標へ 資生堂:中国で化粧品店向け新商品、地方でも販売 http://news.searchina.ne.jp/ NIKKEI NET:中国ビジネス特集 2008年に5000店体制目指す 斎藤忠勝・資生堂執行役員専務 、中国総代表 http://skill.nikkei.co.jp/china/ 日経ビジネス オンライン 資生堂 競合からドイツ人執行役員を獲得した狙い 資生堂「資生堂リサーチセンター」 http://business.nikkeibp.co.jp/ 内閣府 男女共同参画局 http://www.gender.go.jp/ 経済産業省 化学工業統計ホームページ http://www.meti.go.jp/ 48
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