優秀賞 「島の植物が彩る沖縄観光の未来」

優秀賞
「島の植物が彩る沖縄観光の未来」
沖縄県立中部農林高等学校 3 年
呉屋 瞳
昨年夏、ここ沖縄で全国の高校生による最も熱く感動的なドラマが繰り広げ
られました。それは記憶に新しい「美ら島沖縄総体」です。
沖縄の高校生が、会場周辺の美化活動や島ぞうりの記念品作成、大会役員な
どの一人一役活動を通して一丸となり、総体を盛り上げることに尽力しました。
私が在校する、中部農林高校園芸科学科の生徒は、開会式場の園芸装飾を担当
することになったのです。
園芸装飾を行うには、使用する草花の栽培管理から始めなければなりません。
その時の私は「スポーツの祭典を行う場所と草花はあまり関係無いじゃん?」
「ここへ来る高校生は皆スポーツマンなのだから、花には興味無いでしょう…」
と、あまり乗り気ではありません。夏の炎天下でのかん水や除草等の地道な管
理作業は体力的、精神的にも大きな負担となり、栽培管理を怠ってしまうこと
もありました。その影響で、装飾のメインであった花文字に使用する草花が、
枯れてしまった時には、とてもショックで先が思いやられました。この出来事
によって植物を育てる上で、日々の管理が大切だということを痛感したのです。
それからは気持ちを切り替え、本番までに何とか植物を揃えることができまし
た。
装飾当日、作業を終えた頃には、今まで溜まっていた疲労や重圧からの解放
感でとても満足した気持ちになりました。しかし、その気持ちを超える感動が
待ち受けていたのです。
装飾を前に歓声を挙げ、笑顔を見せる選手。記念写真を撮る選手。全国の高校
生の輝く表情を見て熱い思いが込み上げてきました。
私達が手掛けたのは、沖縄独自の文化である守礼門やサバニを利用した装飾。
そして一際目を引いたと思われるのが、選手の皆さんへの「頑張って!」とい
う気持ちを込めた、
「ちばりよ~」の花文字でした。こんなに大掛かりな装飾は
初めてで、緊張感や疲労を感じたりもしましたが、選手団の皆さんの笑顔を見
られたことが何よりも大きな喜びとして胸に残ったのです。
最初は無意味だと思っていた園芸装飾ですが、草花の力で感動や癒し、パワ
ーを与えられるということに気が付きました。そして見る人を笑顔にできたこ
とで自分の方も元気をもらいました。地元で開催された大きな行事を園芸装飾
により盛り上げたことは、私に大きな自信を与え、また、園芸装飾でもおもて
なしの心を表すことができるのだと実感したのです。
そこで、私は提案します。観光客に沖縄をPRする方法に、園芸装飾をもっ
と取り入れてみてはどうでしょうか。沖縄は、木々の緑や色鮮やかな花々など
の豊かな自然に囲まれています。屋外で見られるこれらの植物を、園芸装飾と
いう形で室内でも感じてもらい、沖縄の自然をもっとアピールしてはどうかと
考えました。まず、沖縄県の玄関である那覇空港に園芸装飾を施します。その
時、使用する植物にはハイビスカスやクロトンといった亜熱帯特有のものを選
び、南国の雰囲気を作り出します。それを荷物受け取り所などに設置し、空港
に到着してすぐに沖縄をイメージできるような工夫をしてみてはどうでしょう。
飛行機から降り立って間もないときは、沖縄に来たという実感はあまり得られ
ていないと思います。そこで、沖縄特有のトロピカルな雰囲気を味わえる園芸
装飾を一目見てもらえば、一気に「沖縄に来たんだ!」という気持ちを高めら
れることでしょう。美ら島総体における園芸装飾でも沖縄独自の文化を取り入
れたことで、県外の高校生に沖縄らしさを感じてもらうことができたと思いま
す。もちろん空港だけではなく、ホテルやあらゆる観光施設に「沖縄」をイメ
ージさせる、インパクトある園芸装飾を施したら良いと思います。園芸装飾の
長所は、植物を生きたまま使用するところにあります。それらを人の手で配置
し、様々なアレンジを加えることによって、生き生きとした植物の美しさが更
に引き立ちます。このように園芸装飾は、室内にいながらにして、沖縄の大自
然の中にいるような雰囲気を楽しむことができるのです。沖縄を訪れる観光客
の皆さんには、その沖縄ならではの雰囲気の中で、観光を満喫してほしいと強
く思います。
忘れられない夏となった美ら島総体。あの経験から生まれた夢が私にはあり
ます。それは、植物を利用した装飾を行う専門職、
「グリーンコーディネーター」
になることです。将来、グリーンコーディネーターになった暁には、沖縄の様々
な観光施設に沖縄をイメージできる園芸装飾を施します。そうすることで十分
に沖縄を楽しんでもらえるような手助けをし、沖縄の観光産業に貢献したいの
です。沖縄の経済を支える観光産業が発展すると、沖縄は益々活気溢れる島と
なるでしょう。
園芸装飾は普段の生活においてもよく目にするもので、
「当たり前の風景」に
なっていてあまり目立つ存在ではないかもしれません。しかし、その当たり前
な存在は知らぬ間に、かけがえのない癒しの空間を作りだしています。それが
現代社会を生きる人々にとっては欠かせないものとなっているはずです。
観光産業において、園芸装飾は微力なものかもしれません。ですが、その小
さな力が積み重なって大きな成果を得られるのではないでしょうか。だから私
も一つの力となって、沖縄の観光シーンを盛り上げていきたいのです。園芸装
飾での演出が、未来の沖縄の観光産業の発展や沖縄の活性化に繋がることを信
じて、私は自分の夢に向かって突き進んでいきます!あの夏、美ら島総体で感
じた熱い想いを持ち続けて。