「招かれなかったお誕生会」 「 人 の 値 打 ち」 江口いと 孫は小学4年生 かわいい顔した女の子 仲良しA子ちゃんの誕生会 小さな胸にあれこれと 選んで買ったプレゼント 早く来てねと友の呼ぶ 電話の声を待ちました 夕陽が山に沈んでも 電話の声はありません 孫はぽつりと言いました きっと近所のお友達 おおぜい遊びに行ったので お茶わん足りずにAちゃんは 困って呼んでくれないかも 2、3日たった校庭で A子ちゃん家での誕生会 楽しかったと友人に 聞かされた孫はA子ちゃんに どうして呼んでくれないの 私はとっても待ったのよ 江口いと いつか、モンペをはいてバスに乗ったら 席の人が「おばはん」と呼んだ 隣座 よそいきの着物に羽織を着て汽車に乗ったら 人は私を「奥さん」と呼んだ どうやら人の値うちは らしい。 着ている着物で決まる 講演会が開かれる 有名な大学の先生だといえば 内容が退屈でも 人は耳をすませて聞き 良かったという どうやら人の値うちは 肩書きで決まるらしい。 名もない人の話には 人はそわそわして帰りをやたらと急ぐ 話よりも買い物が先と A子ちゃんとても悲しい顔をして 私は誰より千恵ちゃんを 呼びたく呼びたく思ったの けれども私の母ちゃんは 呼んではならぬと言ったのよ それで呼べずにごめんねと あやまる友のその顔を 見つめた孫の心には どんな思いがあったでしょう 私は孫に言いました お誕生会に招かれず さびしかっただろうねと どうやら人の値打ちは 学歴で決まるらしい。 立派な家の娘さんが部落にお嫁に来る でも生まれた子供はやっぱり部落だといわれる どうやら人の値うちは生まれた場所で決まるら しい。 人はいつの日このあやまちに気付くのだろう。 孫はあのねおばあちゃん A子ちゃんとても優しいの 私の大事なお友達 A子ちゃん悪くはないのよ お母さんが悪いのよ 大人ってみんな我ままよ 寂しく言った孫の瞳に 光る涙がありました どんなするどい刃物より 私の胸を刺しました 江口いと 人権の詩 「人の値うち」より -1- 1年人権・同和教育指導案 1 2 導入 主題名 招かれなかったお誕生会 指導観 本校の人権・同和教育がめざす生徒像は「一人ひとりの人権を尊重し、夢に向かってたくましく自己実現で きる生徒」である。本校では部落問題学習を中心にすえ、3年間を見通した計画のもと人権討論会をはじめ、 いろいろな機会を設けてさまざまな人権問題について学習に取り組んでいる。1年生では小学校での学習を引 きつぎ、部落差別の成り立ちを正しく理解し、その不合理性に気づき、差別の問題を自分のこととしてとらえ る力を育成することを目指す。 本時でとりあつかう「招かれなかったお誕生会」では今も残る差別を知り、前時の学習を想起して、差別は する側の問題、差別をしないために必要なことは何かということについて、私たちが生きる現代に時代をうつ し、差別をだれの心の中にでもある問題(自分のこととして)として普段の生活に重ねて考えさせていきたい。 1学年の子どもたちは明るく活動的な集団である。学習面でも目標に向かって大変意欲的に取り組み、生活 面においても友達と積極的に関わったり、人間関係のこじれなども自分たちで解決したりすることができる。 2学期はお互いの個性を理解し合い、支え合う姿も見られるようになってきた。正義感のある子どももおり、 集団としては正義が通る雰囲気はあるが、一方的なものの見方で躊躇なく相手を攻撃したり、事の経緯も確か めずにからかいの行為に加担したりする場面もたびたび見られた。油断すると発言力のあるものや力の強いも のが主導権を握り、自分たちの価値観のみで物事を進めようとすることもあった。それに対して異議を申し立 てずにがまんするもの、流されるもの、傍観者的な子どもたちがいる。 そこで、前時に学習した差別の不合理性をふまえて、自分たちの生活をふり返り、うわさや一面的な評価にと らわれず、正しく知り、物事を深く考え、いろんな立場の人の気持ちを考えて行動することの大切さを感じ取 らせたい。また、一人の差別された人の痛みによりそい共感させ、差別をする側の弱い心を掘り下げ、差別を してしまうのはなぜか、差別を許さず誇り高く生きることのすばらしさについて自分の生き方を考えさせたい。 3 ねらい ・ 自分の中の差別性について考え、差別はする側の問題であることに気づかせる。 4 指導計画 (全4時間) (1) 「身分ごとに異なる暮らし」 ・・・・・・・・・・・社会科 (2) きびしい差別の時代を人びとはどのように生きたか・・・・・・ 2時間 ~「牛のかたき討ち」と「解体新書・伊勢万歳」の世界から (3) 「招かれなかったお誕生会」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・1時間(本時) (4) 「大阪府桂中学校の取り組みに学ぶ」 ・・・・・・・・・・・・・2時間 5 本時の指導 (1) 資料名 「招かれなかったお誕生会」 (2) ねらい ① 現代も続く差別について知り、差別された人の痛みに共感し、その不合理性を再確認する。 ② 差別をする側の問題に気づき、自分の生活をふりかえる。 6 授業展開 生徒の活動・主な発問,発言 予想される生徒の心の動き,反応 指導上の留意点 1 「人権学習」の目標を確認する。 ・同じ過ちを繰り返さないため ・前向きな気持ちで授業 ・差別のない明るい未来をつくるため が受けられるような雰 囲気をつくる。 2 前時の復習をする。 ・感想を数点紹介する。 ・自分と同じ考えだなあ。 3 本時の学習目標を確認する。 ・どんな差別があっているのだろう。 現代に残る差別の実態を知り,なぜ今なお続いてしまっているのかを考えよう。 4 資料「招かれなかったお誕生会」 を読む。 ・あらすじを確認する。 ・ ○呼ばれなかったことに気づいた花 ・何で呼んでくれなかったのだろう。 織ちゃんはどう思ったでしょうか。 ・悲しい ・A子ちゃんのお母さんが,花織ちゃ ・差別されていたことは んを呼ばなかったのはなぜですか。 教師主導で説明する。 展開 5 前回の復習 ・部落差別とはどのようにしてできた ・少しわかってきた。 のでしょう。前回の復習をしてみま ・よく覚えているなあ。 しょう。 ・1871 年以降の出来事に ついて重点的に復習す る。 6 現代に残る差別の実態を知り,差 別 を生み だす心理 につい て考 え る。 ◎A子ちゃんのお母さんは,差別する ・周りの目を気にしたから ことがいけないとわかりながら,な ・自分も差別されるかもしれない ぜ差別をしてしまったのだろうか。 何が気になっているのだろうか。 7 まとめ 7 周りの目とは自分自身の心の弱さ ・お母さんは,周りの目とか言ってた の表れであること,正しく知り, けれど,結局は自分が差別する目を 正しく判断することの重要性につ 持ってしまってたんだ。 いてまとめる。 ・自分自身の揺れ動く心の葛藤を考え ・お母さんの心の動きを る。 自分の心の動きと考え させる。 8 本時の振り返りをして,感想を書 く。 9 次時の予告を聞く。 ・差別に立ち向かう中学生の活動につ ・中学生でもできることはあるのか いて学習することを知る。 な。 評価 ① 現代も続く差別について知り、差別された人の痛みに共感し、その不合理性を再確認することができた か。 ② 差別をする側の問題に気づき、自分の生活をふりかえることができたか。 〈 中学校 1年 〉 「 招 か れ な か っ た お 誕 生 会」 1 教材について 1年生では、社会科の学習で「村の自治」、「室町の文化 」、「きびしい身分による差別 」、「百姓 一揆と差別の強化」などの単元を通して、部落差別の成り立ちを正しく理解し、差別をされながら も、負けずに社会に貢献した人々のたくましさも学習する。それとともに、部落差別の不合理性に 気づかせ、自分を振り返りさせ、差別の問題を自分の課題として捉えるよう指導していきたい。 本時でとり扱う「招かれなかったお誕生会」では今も残る差別を知り、その不合理性を学習する ことを通して、差別はする側の問題、差別をしないために必要なことは何かということについて、 私たちが生きる現代に時代をうつし、差別をだれの心の中にもある問題(自分のこととして)とし て普段の生活に重ねて考えさせていきたい。 また、本教材の学習に加え、ビデオ「人の値打ちを問う」(江口いと)を視聴させることで、更 なる内容理解や目標達成の深まりが期待できる。 2 ねらい (1) 現代も続く差別について知り、差別された人の痛みに共感させ、その不合理性を再確認させる。 (2)差別は差別をする側の問題であることを理解させ、自分の中の差別性に気づかせる。 3.指導過程 学 習 活 動 導 1.誕生日はどんな日 にしたいかを考え 入 る。 2. 資料「招かれなかっ たお誕生会」 を読む。 ( 1)A子ちゃんの誕生 会に千恵ちゃんがい けなかったのはなぜ かを考える。 主な発問と予想される生徒の反応 指導上の留意点 ○誕生日には、どんな一日を過ごしたいか。 ・自分も、周りの人も ・プレゼントをたくさんもらいたい。 嬉しくなる一日であ ・みんなにおめでとうと言われたい。 ることを確認する。 ○A子ちゃんの誕生会に千恵ちゃんがいけ なかったのはなぜか。 【問1】 ・お母さんが反対したから。 ・千恵ちゃんの家が被差別部落だった から。 展 (2)A子ちゃんの母は、 ○A子ちゃんの母は、千恵ちゃんを誕生日 千恵ちゃんを誕生日 に呼ぶことをなぜ反対したのか。 【問2】 に呼ぶことをなぜ反 ・被差別部落の人とはつきあいたくない 対したのかを考え と思っている。 る。 ・周りの目を気にしている。 ・自分も差別されるかもしれないから。 ・母親は、まわりの人から色々なことを 聞いているのかもしれない。 ( 3)誕生日に呼ばれな ○誕生日に呼ばれなかった千恵ちゃんは、 かった千恵ちゃんの どんな気持ちだったのか。 【問3】 気持ちを考える。 ・悲しい。悔しい。 開 ・どうしてA子ちゃんのお母さんはそん なことを言うんだろう。 ( 4)みんながしている ○まわりが言っているからしているからし から自分もしている てしまったということはないか 。 【問4】 ということについて ・友だちが悪口を言ったとき、自分も一 考える。 緒になって言ってしまった。 ・仲間はずれにされている子に話しかけ ることができなかった。 ・「障がい」がある人をさけてしまった。 3.差別を無くしてい 終 くためにはどうすれ ばよいか考えさせ る。 末 ○差別を無くすために私たちができること はどんなことか。 【問5】 ・まわりに左右されるのではなく、自分 で判断し、行動できる力を持つ。 ・一人ひとりの事をもっと大切にする。 ・差別を無くそうとする強い意志を持つ。 -1- ・おばあちゃんは、被 差別部落出身である ことを補足する。 ・差別が今も続いてい ることを確認する。 ・母親一人の責任なの かを考えさせ、周囲 の考え方や行動に気 づかせる。 ・差別は、差別する側 の問題であることに 気づかせる。 ・差別に対して怒りを 持たせる。 ・おかしいと思ってい ても、自分に不利に なるからといって周 りと同じ事をしてい ないかを考えさせる。 ・自分と違うと感じて いる人を排除してい ないかどうかを振り かえさせる。 ・様々な差別は、誰か が無くしてくれるも のではなく、自分た ちが無くしていかな ければならないこと に気づかせる。 -2- 【ワークシート】 「招かれなかったお誕生会」 ( )号 名前( 【問1】 A子ちゃんの誕生会に千恵ちゃんが行けなかったのはなぜですか。 ) 【問2】A子ちゃんの母は、千恵ちゃんを誕生会に呼ぶことをなぜ反対したのですか。 【問3】誕生日に招かれなかった千恵ちゃんは、どんな気持ちだったでしょうか。 千恵ちゃん 【問4】まわりが言っているからしているから、してしまったということはありませんか。 具体的にかきなさい。 【問5】差別を無くすために私たちができることはどんなことですか。 江口いと -1- さん
© Copyright 2024 Paperzz