竹の山小学校(PDFファイル 523.2KB)

平成27年度
日進市男女平等教育研究事業実践報告書
日進市立竹の山小学校
担当 志賀 直仁
1
はじめに
平成23年度に「第2次日進市男女平等推進プラン」が策定され、
「日進市男女平等推進
条例」の8つの基本理念を掲げて、男女平等な社会を実現するための施策を展開してきて
いる。基本目標Ⅰの「男女がお互いの人権を尊重し合う男女平等な社会に向けた意識・環
境づくり」を受けて、学校においては男女平等を推進するための教育・学習を充実させて
いく取組を行っている。本年度、男女平等推進研究校の指定を受け、児童や教職員がより
一層男女平等について理解し、意識を高める機会としたい。
2
めざす子ども像
本校の教育目標は、校訓を『時代を拓く』とし、
「将来を見つめ、新しい時代に貢献でき
る知・徳・体の調和のとれた児童を育成する。」である。そのめざす子ども像で、≪徳≫に
あたる部分で、
「自他を大切にし、ともに高め合う子」を挙げている。男女平等の意識を児
童にもたせるということは、男女かかわりなく自分自身を肯定し、他者を尊重する心を育
むことであり、日々の学校生活において「男女仲よく、共に協力し合って」活動する子ど
もの姿に表れると考える。
3
具体的な取組内容
(1) 人とのかかわりに関する内容の道徳の授業
(2) 愛知県県民生活部男女共同参画推進課
「はがき一枚からの男女共同参画」への応募
(3) 日進市男女平等推進あるある川柳及び標語への応募
(4) 外部講師による6年生を対象にした男女共同参画教室
4
実践
(1) 【主として他の人とのかかわりに関すること】の道徳の授業
4年 「ともだちや」<友情、信頼>
○ ねらい
役割演技で、互いに信じ合い、相手を大切に思う思いを伝え合おうとする役割
を、即興的に演じられるようになる(創造する)ことを通して、友達として認め
られたキツネの喜びと、初めて対等に接してくれたキツネに対するオオカミの喜
びを状況的に理解し、心から信頼し合える喜びを実感することで、友達を信頼し、
大切にしていこうとする心情を育てる。
学習活動
指導上の留意点
導 1 童話に出てくるオオカミやキツネ ○ 怖いものとして嫌われ役のオ
入
のイメージを話し合う。
オカミや、
「だます」
「ずるい」キ
・ いじわる。
ツネといった、それぞれのイメー
・ 怖い。
ジを想起し、資料への意欲を高め
・ 乱暴。
る。
展
開
2
合
資料「ともだちや」を聞いて話し ○
場面ごとに区切って範読する。
う。
○ 友達をつくりたいキツネの期
△ どんな考えから、キツネは「とも
待や不安の気持ちを理解させる。
だ
ちや」を始めたのでしょう。
○ 一方的に我慢する関係の不自
然さに気付かせる。
△ クマから 200 円をいただいたと
き、キツネはどんなことを思ってい
たでしょう。
・ 我慢しないと嫌われちゃう。
・ たったこれだけ。
○ イメージから、オオカミを嫌っ
ていたキツネの様子を理解させ
△ オオカミに呼び止められたとき、
る。
キツネはどんな気持ちがしたでしょ ○ キツネもオオカミも商売抜き
う。
で関係を楽しむように変化して
・ 怖い。
きていることに気付くようにす
・ 嫌だなあ。
る。
○ オオカミの言った「本当の友だ
ち」の意味を考えられるようにす
▲ オオカミから「友だちから金を取
る。
るのか。それが本当の友だちか。」と ○ 役割演技で「明日も来てもいい
どなられたあと、
「それじゃ、明日も
の」「あさってもな、キツネ」と
来ていいの。」と聞きながらそっと手
言う台詞から始め、その後は児童
を引っ込めたときのキツネは、どん
の思うキツネやオオカミを演じ
な気持ちだったのでしょう。キツネ
させる。
とオオカミを演じてみましょう。
ま
と
め
3
ワークシートに学習の振り返りを
書く。
○ 今日の授業で学んだことは、どん
なことでしょう。考えたことや気付
いたことなどを書きましょう。
5年 「ナイスシュート」<友情、信頼、男女の協力>
○ ねらい
学校生活をしていく上で、友達同士互いに相手を信頼し、助け合ったり、励ま
し合ったりして、ともに向上しようとすることは大切なことである。高学年にな
ると、相手の立場を理解しながら友情を深めるようになる。またお互いが異性を
意識して周りの目を気にして素直な気持ちで行動できなくなる。男女混合のバス
ケットボールの試合の話を題材に、主人公の女子が男子に働きかけた理由を考え
させることで、男女の協力の大切さに気付くようにしたい。男女が協力して、仲
よく生活することの素晴らしさを感じ取らせ、よりよい人間関係を築こうとする
気持ちを高めたい。
導
入
展
開
学習活動
1 男女一緒のグループで活動してい
て、困った経験について話し合う。
・ 掃除のとき、男子が勝手に終わ
って片付けを女子に押しつけた。
・ 授業後残ってやることになって
いたけど、女子が先に帰ってしま
った。
2 本資料を読んで話し合う。
△ 試合中に男子と口げんかをしてし
まったとき、
「わたし」は、心の中で
どんなことをつぶやいたでしょう。
・ もっとボールを回してくれれば
いいのに。
・ わたしたちだって、パスやシュ
ートをしたい。
▲ よし子さんのチームの練習風景を
見ながら、
「わたし」は、どんなこと
を考えていたでしょう。
・ 文句を言う人が誰もいなくてい
いなあ。
・ 自分たちはチームワークが悪い。
・ よし子さんのチームを見習いた
いなあ。
△ 「ナイス・シュート」の声がいつ
までも心に残り、
「わたし」はどんな
気持ちになったでしょう。
・ とてもいい気分になった。
・ 男女協力できてうれしい。
3
指導上の留意点
○ 児童の自発的な発表が出ない場
合は、事前に捉えておいたグルー
プの様子を紹介する。
○
男子に一方的に責められ、つい
感情的になってしまった主人公の
気持ちに共感させる。
○
男女の協力の大切さに気付いた
主人公の気持ちを感じ取らせる。
○
男女が互いに協力してやり遂げ
た後の喜びの気持ちを味わわせ
る。
男女が協力してうまく活動できた
という経験について話し合う。
○ P.50「心のまど」の写真を参考
・ 係の新聞つくりで絵がうまくか
に、男女が力を合わせて活動した
けなかったのを女子に手伝っても
経験を思い起こさせる。
らった。
・ 家庭科の調理実習のとき、男女
で役割分担を決めてやったら、早
くできた。
ま 4 学校生活の中で男女が互いに助け ○ 日頃、同じように助け合って活
と
合って活動している場面の VTR を視
動していることがあることに気付
め
聴する。
かせる。
(2) 愛知県県民生活部男女共同参画推進課
「はがき一枚からの男女共同参画」への応募
(3)
・・・
日進市男女平等推進あるある川柳及び標語への応募
118点
・・・120点
<優秀賞>
ランドセル いろとりどりが きれいだな
<佳作>
家庭でも 男女構わず 家事・育児
*
応募作品から *
女子男子 関係ないね 仲間だから
男女のね
ケンカはやだよ
個性はね
人それぞれの 宝物
男子と女子
どっちも結局
なかよくね
えらくない
(4) 外部講師による6年生を対象にした
男女共同参画教室
参画プラネットの渋谷典子先生を講師にお招きして、
6年児童に対して、「思い込み」をキーワードに、男女
の性差にとらわれる考え方をなくしていきましょうと
いうことで、講話をしていただきました。男女平等社
会とはどういう社会なのか具体例を挙げながら、「男
の子だから」
「女の子だから」と性差による偏見をなく
し許していける社会をつくっていくこと、家庭、職場、
学校などあらゆる社会の中で協力し合うことが大切であることを教えていただきました。
最後には、『後出し負けじゃんけん』というゲームを行い、「思い込み」をなくすとはど
ういうことかを学びました。
児童の感想
・
『ジェンダー』ということばを初めて知りました。昔は「男が働き、
女が家のことをする。」というのが当たり前だったことに驚きました。
昔と今はずいぶん変わったんだなと思います。
・ ジェンダーの話を聞いて、私も家で「ママのやることでしょ。」とか、
弟に「男なのに弱すぎだなあ。」とかそのようなことを言っているので、
直さないといけないなと思いました。
・ 男女共同参画社会はとても大切だと思いました。
「思い込み」はよくないので、
これからしないで自由にのびのびしていき、男女が仲よくなるといいと思いまし
た。一人一人が理解して助け合っていくのがこの社会をよくしていくことの第一
歩だと思いました。
・ 私は、男でも女でも自分の好きなことをやる権利があるので、男だか
ら女だからというのは間違っていると思います。
・ この話を聞いて、人の個性を悪く言ってしまう人がいる
ので、やさしく注意してあげようと思いました。
5
実践における成果と今後の課題
普段あまり男女平等について意識したことがない児童にとって、
「はがき一枚からの男女
共同参画」
「日進市男女平等推進あるある川柳・標語」それぞれへの応募は、男女平等の意
識を高めるよい機会となった。また、作品を考える上で両親に相談することによって、保
護者自身が家庭での家事・育児における協力体制を振り返るきっかけにもなったようであ
る。児童から保護者へ男女共同参画の意識が広がったことは成果といえる。
将来、大人になって社会を築いていくことを見据えて、学校教育の中で児童にどのよう
にして男女共同参画の意識をもたせていくか、今回の課題であった。しかし、本校のめざ
す子ども像の「自他を大切にし」の考え方の、自分・他者を尊重する心を育てることが、
男女だけでなくすべての人に対して助け合い、支え合うことができる子どもになるという
考えに行き着き、課題の解決になると考えた。そこで、道徳の授業の中で「男女仲よく、
共に協力し合う」という価値観を児童にもたせ、日常の学校・学級生活の中で意識の向上
を図るようにした。低中学年においては、
「友達と仲よくすること」が目標となり、高学年
においては、
「男女仲よく、協力し合うこと」が目標となった。授業の中では理解できたも
のの、係・当番活動や休み時間の児童の活動では、
「男女仲よく、共に協力し合う」という
価値が薄れてしまい、トラブルが発生してしまうことがあった。一時的なもので終わらな
いように、教師側が常に意識をして教育活動にあたっていかなければならないことが課題
である。
外部講師による講座は、児童にとって新鮮で効果的であった。
「男だから、女だから」と
いう性別による差別的考えがこれまでの成長過程で無意識のうちに植え付けられており、
驚く児童が多かった。また「思い込み」があらゆる平等の意識を崩壊させていることにつ
いて説明を受け、自分では気付けない心の動きを教えてもらい、改めて自分自身を振り返
る機会となった。児童それぞれ心に響くものがあり、自分なりに考えたことが児童の感想
によく表れ、効果的な講座となった。
今回、男女平等教育の事業によって、児童も教師も意識が変わったことは、大変有意義
であった。今回の事業で購入した男女平等及び人権に関する図書資料を活用しながら、学
校生活を通して、今後も男女平等教育を推進していきたい。