フィールド研究者の資質 ~天野さんの場合

フィールド研究者の資質
~天野さんの場合~
生命環境系 准教授 内海真生
天野さんが水環境生態工学研究室の門をたたいたのは彼女が 3 年生の秋頃だったと記憶しています。
卒業研究では杉浦則夫教授に指導を受けながら研究室の先輩と一緒に水源池ダムに毎月ボートを浮かべ、
水と泥を採取してかび臭を産生する植物プランクトン群集の変動を調べていました。小さなボートでの
湖上調査は雨や日光を遮るものも無く、かなりハードです。そんな中彼女はいつもニコニコしながら先
輩とうまく作業をこなしていたので、ちょうどその年の夏に北太平洋を横断、縦断する 40 日間ぐらいの
調査航海があったので「乗ってみますか」
、と誘いました。研究船での調査は 24 時間、昼夜を問わず調
査点についた段階で始まるのでボート調査なんて可愛く思える位きついものです。私は一緒に乗船でき
なかったので少しだけ心配していたのですが、調査終了後、赤道域の島の港で下船していつも通り笑顔
で日本に戻ってきました。しかも、ハードな作業の中、一緒に乗船した研究者や研究補助員、船員さん
の大部分と友達になった様でした。この航海がきっかけだったのかはわかりませんが、大学院博士前期
および後期課程を通じて多くの航海に乗船した他、アラスカでの陸上生態系調査に同行したり、国際学
会での発表を精力的に行っていたことが強く印象に残っています。
フィールドを対象に研究をする際に必要な資質というものが天野さんの研究者としての成長を通じて
なんとなくわかります。まず、体力(20 kg の荷物を背負って 10 km 以上歩いて調査点に行くこともし
ばしばです)
、少々のことではへこたれない精神力、知恵(フィールド調査では機材や消耗品などが揃っ
ていないのが当たり前で、現地のものやあるものを工夫して使うことが要求されます、現地の人との交
渉も)
、そして笑顔です。楽しみながら少々しんどいことでもやっていくことが周りの協力を得られ現地
調査を成功に導く鍵の様な気がしています。もちろん、安全を最優先させての話です。天野さんには今
後も笑顔で周りの人と協力しあいながらフィールド研究者の道を歩んでいってもらえればと思います。
アラスカ陸上調査での終着点 DEADHORSE にて
中央が天野さん、左が筆者