第1章 情報通信技術を取り巻く状況

第1章
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情報通信技術を取り巻く状況
背景
インターネットをはじめとするICT1の進歩により、私たちの生活は大きく様変わ
りしました。パソコンや携帯電話により外出先からでもブロードバンド化2したインタ
ーネットに接続でき、身近な情報通信端末として、いつでもどこでも欲しい情報を手
に入れられるだけでなく、自らインターネットを使って日記や写真や地図に関連した
情報なども発信することができるようになりました。さらに、電子マネー3が普及した
ことで、現金を持たなくても、携帯電話やICカードを使って支払いができるサービ
スが急速に広がっています。
ICTは人々の生活に深く浸透しており、人々は更なる便利さを求めて積極的に活
用しようとしています。
また、ICTは、便利さの追求だけでなく、新たなコミュニケーションツールとし
て関心が高まっています。チャット4やSNS5に代表されるように、空間の制約を超え
た双方向のコミュニケーションが可能となり、これまでになかったコミュニティ形成
の手段として期待されているところです。
一方、依然として個人情報の漏えい事故の報道が後を絶たないように、技術の進展
に伴う情報漏えいのリスクが高まっており、今まで以上に適切な情報の管理が求めら
れています。
また、環境負荷を低減する新たな方策として、機器の省エネルギー化だけにとどま
らず、情報通信技術を活用し、テレビ会議等により人の移動を最小限に抑えるための
工夫が検討されています。
こうした状況の中、区としても積極的にICTを活用し、利用者の立場に立った利
便性の高いサービスや新たなコミュニティの場を提供していくとともに、情報管理体
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ICT(アイ・シー・ティー Information and Communication Technology)
、IT(アイ・ティー Information
Technology)
情報・通信に関連する技術一般の総称。日本では「IT」の方が言葉として先に普及したが、国際的には「ICT」
という言葉の方が使われている。総務省の「IT政策大綱」が平成16年から「ICT政策大綱」に名称を変更する
など、日本でも定着しつつある。
本計画では、
「ICT」に統一して記載しているが、他の計画等において「IT」と記載されているものについて
は、そのまま記載している。
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ブロードバンド化
情報ネットワークが広帯域化すること。従来は、通話音声や文字情報しか送受信できなかったが、動画などの容量
の大きなデータが送受信できるようになることをいう。
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電子マネー
貨幣を用いずに、電子的な情報を使って取引決済を行うサービスのこと。
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チャット
ネットワークに接続された端末を使い、リアルタイムでテキストを入力することで、離れた場所にいる相手と会話
する仕組みのこと。
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SNS(エス・エヌ・エス Social Networking Site/Service)
参加するユーザが互いに自分の趣味や好みなどのことを公開しあいながら、コミュニケーションを広げていくこと
を目的としたコミュニティ型のホームページのこと。
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制の強化といった情報セキュリティ対策や環境負荷の低減に向けた取り組みを推進し
ていく必要があります。
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国の動向
国では、平成13年にIT基盤の整備、電子商取引、電子政府実現に向け、「e−J
apan戦略」、平成15年にIT利活用の推進に向けた「e−Japan戦略Ⅱ」を
策定しました。これらの取り組みにより日本は世界最高水準のICT国家となりつつ
ありますが、一方でICTの利活用への対応が遅れる産業や、高齢者・障害者等のI
CT利活用が伸び悩むなどの課題が挙げられるようになりました。この課題を解消し、
持続的に発展可能なIT社会を実現するため平成18年に「IT新改革戦略」が策定
され、「世界一便利で効率的な電子行政」を目標として掲げ、施策を展開しています。
上記の計画にあわせ電子自治体推進の一環としてLGWAN6、住民基本台帳ネット
ワーク7基盤整備を進め、共同アウトソーシング8の推進等の指針を打ち出しています。
平成19年には「新電子自治体推進指針」を策定し、「利便・効率・活力を実感できる
電子自治体」の実現に向けた施策を自治体に促しています。
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東京都の動向
東京都は、都民サービスの向上や事務の効率化を図るため、都政にITを積極的か
つ効果的に導入することを目指し、本庁・事業所のネットワークの増強、インターネ
ットを利用した電子申請・電子調達の導入、職員一人1台の端末の配備などを行って
きました。
平成19年9月には、「今後のIT化取組方針」を策定し、少子高齢社会や団塊世代
の職員の大量退職時代を迎え、質が高くスピード感のある都民サービスの展開、スリ
ムで仕事ができる効率的な都庁の実現を目指し、ITの更なる利活用と業務改善を推
進しています。今後のIT化取組の基本的視点として、①業務・情報システムの最適
化、②IT調達の見直し、③情報セキュリティ対策の強化、④IT人材の育成、⑤I
T部門の組織改革、を挙げ、これらの視点の下、取組施策を展開しています。
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目黒区の状況
本区では、従来区の内部で進めてきた情報化施策と異なり、地域と一体となって区
全体の情報化の進展に寄与することを目的として、平成5年度に策定した「地域情報
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LGWAN(エル・ジー・ワン Local Government Wide Area Network)
総合行政ネットワークともいい、地方公共団体を相互に接続する行政専用のネットワークのこと。
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住民基本台帳ネットワーク
氏名や住所などの住民基本台帳情報を、全国の自治体を結んだネットワークを使って共有し、全国どこからでも本
人確認ができるサービスのこと。
8
共同アウトソーシング
複数の自治体が共同して情報システムの開発・運用業務などを民間企業等に外部委託(アウトソーシング)するこ
と。これにより、民間企業等のノウハウが活用できるため、開発・運用経費を削減することができる。
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化基本方針」を踏まえ、平成7年度から平成11年度まで5か年にわたる「目黒区地
域情報化推進計画」を策定しました。
平成14年度には、区民サービスの充実と業務の効率化を進め、効果的な情報環境
の構築を図るためのビジョンを示した「目黒区情報化ビジョン」を策定し、当初の目
標は概ね達成することができました。しかし、このビジョン策定から6年以上が経過
し、この間に情報関連技術の向上やインターネットの普及、区民のICT利活用の大
幅な増加、目黒区総合庁舎への移転など、区の情報施策を取り巻く環境は大きく変化
しました。
これらの状況の変化に対応し、より一層の区民サービスの向上や情報セキュリティ
の確保などを推進するため、「目黒区情報化ビジョン」に替わる新たな計画を策定する
こととしました。
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