桑田智晃

学習意欲を高めるための指導法の工夫
-学習形態の工夫を通して-
千葉市立花見川第一中学校 教諭 桑田 智晃
1
主題設定の理由
4
本校では、4年前から、ティームティーチン
研究の内容
(1)1年生での実践
グを実施していたが、必ずしも学習意欲が高ま
グラフ1と2は、少人数指導を始めて約7ヶ
ったとはいえなかった。そこで、3年前から、
月後、つまり入門期にあたる 1 年生 1 学級の
改善する方法の一つとして、少人数学級にわけ
意識調査の結果である。(H19.12.17 実施)
ての指導を試みている。まず、英語学習の入門
<グラフ1>
期に学力差ができるだけ生じないように、1年
(調査人数 35 名)
少人数制の授業についてどう思うか
生のみ、36 人学級を 18 人ずつに分けた少人数
25
学級で指導を行った。少人数に分けることで、
8
生徒一人一人と英語でコミュニケーションを図
2
る時間も増え、個に応じた指導もできるであろ
よい
うと考えた。また、その結果、生徒が「英語が
わかる」喜びを感じ、意欲を持って英語学習に
まあまあ
あまりよくない
<グラフ2>
取り組むであろうと考えたのである。そして、
0
よくない
(調査人数 35 名)
少人数制の授業はわかりやすいか
昨年度は、入門期の1年生だけでなく、2年生
21
においても継続し、2つの学年で少人数指導を
9
実施することにした。
5
0
本研究において、このような継続した少人数
思う
まあまあ
あまり
全く
指導と、その利点を生かして学習形態や指導法
グラフ1と2から、少人数制の授業に対して
を工夫することにより、どれくらい学習意欲を
高めることができるのかを明らかにしたいと考
その理由として「人数が少なくて、発表したり
え、本主題を設定した。
2
指されることが多くなるから」
「 1人1回は発表
研究の目標
生徒の学習意欲を高めるために、少人数指導
の利点を生かし、学習形態や指導法の工夫をす
「36 人でやるより 18 人の方がインタビューを
がよく聞けるし、質問したらすぐに答えてくれ
研究の見通し
書く活動において、少人数の指導の利点を生
かし、個に応じたきめ細かな指導をしていけば、
学習内容の理解がより深まり、生徒は意欲的に
学習に取り組むであろう。
できるから」「スムーズに会話活動ができる」
したときに全員に聞きにいけるから」
「 先生の話
ることの有効性を明らかにしていく。
3
肯定的にとらえている生徒が多いことがわかる。
る」「丁寧に教えてくれる」などがあげられた。
このように、少人数の授業形態は、生徒にとっ
て学びやすさにつながっていることがわかる。
(2)指導方法の工夫
少人数の利点を生かし、さらに2年生におい
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ても実践を継続した。その際、次の①、②のよ
グラフ3と4は、2年間にわたり少人数指導
うな指導法の工夫を取り入れた。
を継続した2年生の意識調査結果である。グラ
① 表現力(英作文の力)を伸ばすための工夫
フ3が示すように、少人数の授業は一斉授業に
次のような3つのステップを考え、個に応じ
て、段階的な指導を取り入れることとした。
比べて、一人一人の生徒に対応でき、英語の言
語活動を行う機会が増えたと感じる生徒が圧倒
ステップ1:テーマから考えられる、それに
関連した英単語を書く。
的に多いことがわかった。
<グラフ3> (H21 年 3 月実施 対象2学年 111 名)
ステップ2:ステップ1で考えた単語をもと
4つの活動の機会は増えますか
に、既習の文法事項を使い文を
70
60
50
40
30
20
10
0
構成する。
ステップ3:表現の広がりをもたせる。
② 語彙力を伸ばすための工夫
そう感じる
少し感じる
あまり感じない
全然感じない
話す機会
聞く機会
読む機会
書く機会
たとえば、新出単語の指導では次のように
<グラフ4> (H21 年 3 月実施 対象人数 31 名)
音声→フラッシュカードを使っての反復練習
少人数指導の英語学習はわかりやすいか
意味→フラッシュカードを使って英語と日本
そう感じる
文字→スペリングクイズを取り入れる
このほか、ワードチェインや英単語しりとり
などを取り入れた。
5
全然感じない
語の意味の導入
あまり感じな
い
15
10
5
0
少し感じる
工夫し実践した。
また、グラフ4が示すように、2年間の少人
成果
以上のような実践を継続的に行った後、4年
数指導の結果として、約9割の生徒が一斉指導
前と今年度の英作文の作品(全生徒)について
に比べてわかりやすさを実感し、意欲を持って
平均単語数を比べてみた。その結果、4年前の
取り組んでいることがわかった。
23 語と比べて、今年度は 41 語に増加していた。
6
今後の課題
少人数で行う段階的な英作文の指導や語彙力
少人数を生かし、語彙力を伸ばすために補充
を伸ばす指導の工夫により、長い文章を書く力
学習でスペリングコンテストを行ったり、表現
を身につけさせ、表現の広がりをもたせること
力を伸ばすために英作文でプラスワンセンテン
ができたことがわかる。
スを意識させたり、少しでも長い文章を書ける
また、1年生からの少人数指導を継続する2
ように年間を通して指導支援を続けた。その結
年生では、昨年度の実態を踏まえ、グループの
果、生徒一人一人にきめ細かく支援することが
編成をどうするかを年度当初に検討して、グル
でき、生徒の意欲を高めることはわかったが、
ープ分けをした。昨年度は、英語学習の入門期
基礎学力の定着を図ることの検証までには至っ
であったために、ランダムにグループ分けを行
ていない。今後は、学力の向上を目指し、さら
ったが、1年次の成績をもとに、2つのグルー
に手立てを工夫する必要がある。
プの学力が平均的なるように分け、2年生の少
人数指導をスタートさせた。
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