情報通信ネットワークを利用しよう」指導案

技術・家庭科(技術分野)学習指導案
平成21年11月13日(金)第5校時
第1学年
指導者
岩井善彦
授業改善の視点
情報の収集・発信の学習経験を生かして、チェーンメール等の具体的な事例への対応の仕方に
ついて考える場面において、その問題点を見出し意見交換を行うことにより、適切な情報発信の
在り方について主体的に考えることができるであろう。
1.題材名
「情報通信ネットワークを利用しよう」
2.考察
(1)生徒の実態
①
生活や技術への関心・意欲・態度
本学級は、コンピュータを用いた学習への興味・関心が高い。授業中も活気があり疑問点を
積極的に質問したり自分の意見を発表したりする生徒が多い。コンピュータ操作等への取り組
みも熱心で、最後までしっかりやり遂げようとする。しかし、情報の収集・発信のルールやマ
ナーについての関心は低く、その必要性を感じている生徒は少ない。また、本題材に関するア
ンケートの結果を見ると、すべての生徒が、習得した事項を次の学習や日常生活に活用する意
欲が低かった。習得した知識や技能を使えるよさを実感させるような学習活動を設定し、学ぶ
意欲を高めていきたい。
②
生活を工夫し創造する能力
応用ソフトウエアの利用についての学習において、○名は、基本操作にとどまらず自分で操
作方法を工夫し取り組むことができた。目的に応じた基本操作を選択することにも不安があり、
自分なりの工夫を取り入れた作品づくりのできない生徒は○名いた。また、日常生活における
コンピュータの活用場面を調べてみると、インターネットによる情報検索に利用している生徒
が○名いたが、授業以外ではほとんど活用していない。情報通信ネットワークを必要に応じて
実生活の中で適切に活用できるようにするため、生活との関連を図った題材の設定を行いたい。
③
生活の技能
コンピュータの操作に関しては、小学校の時にWEBページの閲覧やワープロソフトによる
文書作成、パワーポイントによる発表資料の作成を経験しており、基本的な操作はできる。し
かし、キーボードやマウスを使っての入力速度は個人差が大きい。電子メールのやりとりに関
しては、携帯電話によるメール交換の経験がある生徒は男女○名ずつ、パソコンによる電子メ
ール交換の経験がある生徒は○名いる。
④
生活や技術についての知識・理解
ネットワークやインターネット、電子メールの基本的な操作に関する知識はもっているが、
それらの基本的な仕組みについてはほとんど理解していない。情報モラルに関しても、ネット
ワーク犯罪やルールやマナーについて意識する機会が少ないことから身に付けている知識は少
ない。身近な具体的事例を取り上げることで、情報の正しい取り扱いに関する知識の必要性を
理解させる必要がある。
(2)題材観
本 題 材は 、『中 学 校 学 習指 導 要領 解 説 -技 術 ・家 庭 編- 』 の技 術 分野 、 B情 報 とコ ン ピュ ー
タ(1)イ、(4)ア、イについて、具体的に学習内容を構成したものである。
今日の情報化社会においては、社会の至る所に様々な情報機器が普及し、生活の中には多く
の情報が氾濫している。生徒にとって便利で快適な生活であると同時に、情報化社会の影に直
面する場面も増えている。このような中で、技術分野における「情報とコンピュータ」では、
情報の収集・判断・処理・発信に伴う技能の習得だけではなく、情報の中味を吟味できる力(情
報モラルを含む)を養っていくことが必要であると考える。
本題材では、地域の違いを調べる課題解決学習を行う手段としてコンピュータを利用するこ
とにより、生徒が必要感をもってインターネット・電子メールの利用方法と情報モラルについ
て学習できる。また、実際の情報の検索作業や電子メールによる情報交換を行うことにより、
情報通信ネットワークに関する基礎的・基本的な知識・技能を習得することができる。さらに、
インターネット上の情報の真偽や情報モラルについて考え、話し合うことにより、情報犯罪を
回避しながら情報を収集・発信する態度を育成するとともに思考力・判断力・表現力等を高め
ることができる。
以上のことから、情報を適切に処理し、発信する知識や技術、態度を身につけさせる上で有
効であると考え、本題材を設定した。
(3)題材の系統
1年次
2年次
B : 情 報 と コン ピ ュ ー タ ( 1 ) ~ (4 )
全30時間
「小学校の担任の先生に手紙を書こう!」
7時間
「コンピュータを使って、こづかい帳を作ろう!」
6時間
「情報通信ネットワークを利用しよう」
7時間
「コンピュータを使って、地域学習の発表資料を作ろう!」
6時 間
「コンピュータの仕組みを調べて、パソコンを作ろう!」
4時間
※ 1 年 次 は 、5 つ の 小 題 材 の 学 習 を通 じ
て コ ン ピ ュ ータ の 基 本 操 作 、 応 用 ソフ ト
の 活 用 、 ネ ット ワ ー ク の し く み と 情報 モ
3年次
A:技術とものづくり(1)~(5)
B:情報とコンピュータ(5)
全35時間
「木材の特徴を生かした
全17.5時間
「電子卒業アルバムを作ろう!」
ペン立てを作ろう!
7時間
「さまざまな材料の特徴を
生かした机の整理箱を作ろう!
12時間
「省エネ電気スタンドの製作」
※3年次は、1年次に学習したコンピ
ュータやソフトウェアに関する知識や
技能を活用し、マルチメディアの特徴
を生かした「電子卒業アルバム」の制
作を行う。
16時間
ラルについての学習を行う。
A:技術とものづくり(6)全5時間
「栽培方法を工夫して、おいしい野菜を作ろう!」
3.校内研修との関わり
本校 の 校内 研 修主 題 は、「 確 かな 学 力を は ぐく む ため の 指導 法 の工 夫 ・改 善 ~一 枚 ポー トフォ リ
オを活用して、学ぶ意欲を高める授業実践を通じて~」である。自己の変容を可視的に確認でき、
学習の意味や達成感を味わわせることのできる一枚ポートフォリオを導入することで生徒の「学ぶ
意欲」を高めるとともに、その記述内容を授業改善を図るための資料として活用する。
また、生徒の思考力・判断力・表現力の向上を目指し、習得した基礎的・基本的な知識や技能を
活用する学習活動を学習過程に位置づけたり、自分の考えをまとめ意見交換する活動を通してより
よい作品づくり等に向けた言語活動を充実したりすることで、
「確かな学力」の育成に努めている。
4.題材の目標
コンピュータの基礎的な構成や操作方法についての学習を通して、情報を収集、判断、処理し、
発信することができるようにするとともに、積極的に情報を活用しようとする態度を養う。
5.評価規準
【生活や技術への関心・意欲・態度】
情報を発信する場合のルールやマナーについて主体的に考えながら、情報通信ネットワークを
活用しようとしている。
【生活を工夫し創造する能力】
個々の課題に応じて、情報通信ネットワークの適切な利用方法を工夫している。
【生活の技能】
情報通信ネットワークを利用して、目的に応じた情報の収集・判断・処理・発信ができる。
【生活や技術についての知識・理解】
情報伝達の仕組みと利用方法に関する知識を身に付けるとともに、情報モラルの必要性につい
て理解している。
6.指導方針
【本題材全体を通して】
・
一枚ポートフォリオを活用し、学習内容や流れを確認して自らの学習目標を立てたり、学習の
成果を振り返ったりすることにより、生徒一人一人が課題をもって本時の学習に取り組み、学習
の成就感を味わえるようにする。
・
ワークシートを用いて本時の学習内容や流れを確認しながら学習を進めていくことにより、生
徒が情報の収集・判断・処理・発信にかかわる知識・技能を確実に身に付けられるようにする。
・
情報モラルの学習において具体的な事例を扱い、その問題点や対応策を考え意見交換する等の
言語活動を充実させる。
【インターネットによる情報収集において】
・
ソフトウェアの応用的な使用方法の指導については、様々な機能について細部にわたって指導
するのではなく、そのソフトウェアの持つ機能や活用方法について知らせる程度にとどめ、生徒
自身が自分で必要な機能を発見できるようにする。
・
学習課題は複数用意し、作業の早い生徒がより高度な課題に取り組めるよう配慮する。
・
収 集 し た 情 報を 既 習 の応 用 ソフ ト ウェ ア でま と めさ せ るな ど 、生 徒 が習 得 した 知 識・技 能を 活
用する場を設定する。
【電子メールによる情報交換において】
・
実際の 電子メールの 送受信を安 全に体験するため、電子メールのように使う LAN メッセンジ
ャー「まりメール」を活用し、校内 LAN の中で情報交換を行う。
・
慣れていない生徒が自信を持って操作できるように、基本操作に関する個別の指導を十分に行
う。
【情報モラルの学習において】
・
生徒が前時までに習得した情報の収集・発信に関する知識や技能を活用して、情報の真偽を判
断したり、その対応について考え、判断したりする学習活動を位置付けることにより、情報通信
ネットワークを適切に利用しようとする態度を育成する。
・
生徒にとって身近な事例を提示することにより、興味関心や必要感をもって、情報モラルにつ
いて考えられるようにする。
・
情報化社会の持つ負の部分をしっかりと理解させた上で、将来に向けての有効な活用方法につ
いても考えさせる。
7.指導の評価と計画(全7時間)
学
時間
1
習 内 容
○:ねらい
主な留意点と支援
評価項目(評価方法)
○おおむね満足できる状況
・ 世界につな がるネッ トワー
・世界中のコンピュータがネット
【関・意・態】
クの仕組みを調べよう。
ワークでつながり双方向通信が可
○インターネットに関心をもち,情報の伝わる
○ ネットワー クのしく みとイ
能なことに気付かせる。
仕組みを調べようとしている。(観察)
ン ターネット 上の情報 の流れ
・ネットワークの仕組みについて
【知・理】
・閲覧の仕組みを理解する。
は分かりにくいので、図で表し説
○情報が伝わる仕組みについて説明できる。
明する。
2
(ワークシート)
・ インターネ ットで地 域の違
・キーワード検索だけに偏らず、
【工・創】
いを調べよう。
カテゴリ検索やリンク集の利用な
○調べたい情報に応じてキーワード検索とカテ
○ リンク集や 検索エン ジンを
どの方法も体験させる。
ゴリー検索を使い分け、情報検索を工夫してい
用 いて、目的 の情報を 適切に
・情報検索の経験に個人差がある
る。(ワークシート・観察)
探すことができる。
ので、課題を複数用意する。
【技能】
○インターネットを利用して課題についての情
報を収集することができる。(観察・作品)
1
・ 収集した地 域情報を みんな
・校内 LAN を利用した電子メー
【知・理】
に伝えよう。
ルの送受信を用いる。
○電子メールの送受信の仕組みと方法に関する
○ 電子メール の送受信 の仕組
・電子メールの送受信を経験して
知識を身に付けている。(ワークシート)
みと方法を理解する。
いない生徒がほとんどなので、基
【関・意・態】
本操作から指導を行う。
○電子メールを利用して情報を発信しようとし
ている。(観察)
1
・ 電子メール を使って 、みん
・校内 LAN を使った電子メール
【技能】
な と収集した 地域の情 報交換
の交換を行わせる。
○電子メールを利用し、目的に応じた情報の発
をしよう。
・情報交換を行う上でのマナーに
信ができる。(観察・作品)
○ 電子メール を利用し 、適切
ついても配慮をさせる。
に情報交換できる。
1
本時
・ 電子メール を使って の情報
・身近な具体的事例としてチェー
【工・創】
交 換のルール とマナー を考え
ンメール等を取り上げ、その対応
○問題点を把握し、対処方法を考えている。
よう。
策を考えさせたい。
○ 具体的な事 例への対 応を考
・対応策が記入できない生徒に対
【関・意・態】
え 意見交換す る活動を 通して
しては、机間指導でそのメールの
○献血メールへの対応について、既習事項をも
電 子メールに よる情報 の収集
問題点を確認させて対応策を考え
とに考えようとしている。
(ワークシート・観察)
・ 発信のマナ ーやルー ルにつ
させる。
(作品・観察)
いて考えることができる。
1
・ ネットワー クの可能 性と危
・ネットワーク犯罪の具体例を取
【知・理】
険性を考えよう。
り上げ、これを防ぐ方法について
○情報モラルとインターネットの便利さに潜む
○ インターネ ットの利 用方法
考えさせる。
危険性について説明できる。(ワークシート)
と利用上の注意点を理解す
る。
8.本時の学習
(1)ねらい
具体的な事例への対処法を考え意見交換する活動を通して、電子メールによる情報の収集・
発信のマナーやルールについて考えることができる。
(2)準備
教師:一枚ポートフォリオ、ワークシート、献血メールデータ
生徒:ワークシート用ファイル、筆記用具
(3)展開
学
習
活
動
①学習課題の把握
・ 本 時の 学 習課 題 を把 握 し、 一
枚 ポ ート フ ォリ オ に本 時 の目 標
を記入する。
②献血メールへの対応策検討
・ 送 信さ れ たr h -A B 型血 液
募 集 の電 子 メー ル (チ ェ ーン メ
ー ル )を 受 け取 っ た時 の 対応 方
法 を 考え 、 ワー ク シー ト に記 入
し、発表する。
時間
指導上の留意点及び個への支援
5
分
・デマメールへの対応の仕方について
想起させる。
・生徒一人一人に本時の学習目標を発
表させ、自己の目標が適切であるか確
認させる。必要に応じて修正させる。
15
分
・対応方法の判断や理由が思いつかな
い生徒に対しては、電子メールを送受
信するときのルールやマナーを想起さ
せる。
・すべての生徒に対応方法を発表さ
せ、自分の考えと比較させる。
《予想される対応策》
○無視する
送信者が知らない人だから
真実かどうかわからないから
○知り合いに送信する
かわいそうだから
その人を助けたいから
③献血メールの問題点の共有
・今ままでの学習経験をもと 25
に、このメールの問題点を考え、 分
ど の よう な 問題 が ある の か話 し
合う。
《予想される問題点》
・多くの人に送り続けることになる。
・献血が必要な期間を書いていない。
・差出人の連絡先が書いていない。
・サーバーがパンクする。
・問題点と対応方法について
各自で再度まとめる。
④本時の反省
・ 本 時の 学 習の 大 切な こ と、 身
に 付 けた こ とを 一 枚ポ ー トフ ォ
リオに記入する。
・ 次 時の 学 習内 容 に関 す る説 明
を聞く。
5
分
・「 こ の メ ー ル の 内 容 は 真 実 で あ っ た
が、メールに関しての問い合わせが日
医大永山病院に集まり業務に支障が生
じるという問題が発生した」ことを伝
える。
・ネットワークのしくみという視点か
らも問題点を考えさせるよう助言す
る。
・問題点が明らかになった後、このよ
うなメールのことを「チェーンメール」
と呼ぶことを知らせるとともに、対応
方法について確認する。
・どのように対応したら分からない場
面が合った場合には一人で判断せず、
今回のように複数名で検討したり、相
談したりすることが大事であることも
伝える。
・本時を振り返り、次時への課題意識
を持たせる。
評価項目(評価方法)
【関・意・態】
<おおむね満足>
献血メールへの対
応について、既習
事項をもとに考え
ようとしている。
<十分満足>
献血メールへの対
応及び問題点につ
いて、既習事項を
もとに考えようと
している。
(ワークシート、観察)
【工・創】
<おおむね満足>
○問題点を把握
し、対処方法を考
えている。
<十分満足>
◎問題点を様々な
角度から把握し、
対処方法を具体的
に考えている。
(ワークシート・観察)