若い先生のための 学級づくりハンドブック 千葉県子どもと親のサポートセンター も 《はじめに》 く じ 「学級づくりで困ったことがありますか?」と,若い先生に聞いてみると,ほとんどの先生の答 えは「はい。 」でした。これが,ハンドブックを作る出発点です。若い先生の悩みに寄り添いたい 友達同士のもめごと対応に困っています と,調査をして,困っていることの多い事例をできる限り取り上げています。また,自信を持って 対応できるように,裏付けとなる理論やモデル(以下理論と表記)と事例を結びつけて説明しまし ・・・・・縦糸・横糸の関係づくり 1~2 1学期,どうやって学級づくりをしたらよいか困っています た。教育相談の視点でアプローチする理論を選び,一つの事例と一つの理論を結びつけることで, より分かりやすくしているのが特徴です。しかし,対応の仕方は一つではないのは,明らかです。 ・・・・・90日間システム 3~4 友達をつくれず,クラスで孤立しがちな子どもが気になります 反対に一つの理論が一つの事例にしかあてはまらないわけではありません。このハンドブックでは, 若い先生に学んでほしい理論を一つの例として紹介しています。このハンドブックを学びの入口と ・・・・・構成的グループエンカウンター 5~6 1学期末になっても,クラスにまとまりがありません し,学びを広げていただけたら幸いです。一つの理論を深く追求するのもいいでしょう。多くの理 論を知るのもまた一つの方法です。他の事例にも使えるかもしれないとアレンジすることも可能で ・・・・・Q-U 7~8 いじめがないクラスをつくるにはどうしたらよいのでしょうか す。若い先生の自由な発想で,自分なりの学級づくりを見つけていく手がかりとして活用してくだ さい。 ・・・・・アセス 9~10 クラスでよくトラブルを起こす子どもの対応に困っています 「学級づくりで困った時」 「校内の初任者研修会」「若い先生の研修会」「生徒指導・教育相談な どの校内研修会」等で御活用ください。 ・・・・・アドラー心理学 11~12 落ち着きがなく立ち歩く子どもの対応に困っています ・・・・・応用行動分析学 13~14 キレやすく,すぐ友達とけんかをしてしまう子どもの対応に困っています ・・・・・アンガーマネージメント 15~16 教師に対して反抗的な言動をする子どもの対応に困っています ・・・・・中学校の荒れ 17~18 不登校(登校渋り)の子どもの対応に困っています。 ・・・・・不登校支援 19~20 面接の仕方で困っています ・・・・・ブリーフセラピー 21~22 子どもを理解するにはどのような視点が大切ですか ・・・・・発達課題 23~24 友達同士のもめごと対応に困っています す る の も お す す め だ よ 。 よ 。 チ ェ ッ ク リ ス ト で 確 認 の 張 り 方 を 工 夫 す る と い い 子 ど も の 関 係 は 縦 糸 と 横 糸 え て み る と い い よ 。 教 師 と 学 級 経 営 を 織 物 モ デ ル で 考 学 級 経 営 は 難 し い よ ね 。 ご と が 起 き て 困 っ て い ま す 。 ー プ 内 で し ょ っ ち ゅ う も め を 作 っ て い る の で す が 、 グ ル 学級経営を織物モデルで考える 織物を織る時は,まず「縦糸を張ること」から始めます。教育もこの縦糸を張ることに始まると考えます。 ク ラ ス の 女 子 が グ ル ー プ 教育の縦糸とは,教師と子どもの上下関係を基礎とする関係作り(しつけや返事,敬語,ルールなど)です。 まず,しっかりとした縦糸を張ることが大切です。そこに,横糸,つまり,教師と子どものフラットな心の 通い合いを豊かに絡ませる必要があります。横糸が絡むための適度なゆとりのある縦糸に,感情に彩られた 横糸を豊かに絡ませ,厚みや温かみを併せもった見事な織物を,出会いの日から別れの日まで織り上げてい くのです。 込 み 法 で 対 処 す る と い い わ ね 。 す ね 。 織 物 モ デ ル の 横 糸 の 包 み し て ど ん ど ん か か わ る と い い で ね 。 そ ん な 時 は 、 教 師 が 手 助 け 個 々 に グ ル ー プ を 形 成 す る も の な る と 必 ず と 言 っ て い い ほ ど そのためには,縦糸と横糸をバランスよく張ることが大事になってきます。縦糸張り,横糸張りに失敗す と く に 女 子 は 、 高 学 年 以 上 に 困 っ て い る の で す ね 。 ると,学級は速やかに崩壊に向かいます。縦糸張りに失敗すると,子どもや保護者の動きに対応できず,ず るずると押され流されてしまいます。一方,横糸張りに失敗すると,教師が子どもや保護者を力で抑え込も うとしたり距離を置こうとしたりして,親しみを感じることができなくて子どもたちは教師から離れていき ます。 縦糸・横糸の張り方 ※縦糸・横糸のチェックリストは付録1参照 まず,縦糸を張ることから始めます。具体的には次の4つに気をつけます。 ①学校でのしつけをしっかりする②返事,あいさつ,敬語などの言葉づかいをきちんとさせる③学級内ル ールをきちんと作る④教室環境を整える(子どもの机,ロッカーなどの整理整頓を含めて) 次に,横糸をより多く張っていきます。横糸をどのように張っていくかは例えば次のようなことです。 ・子どもと遊ぶ。 ・教師が子どもと共に話し合う。 ・教師が子どもの良い点を伝え,ほめ,励ます。・教室 に笑いを作り,伸びやかな雰囲気を作る。・子ども同士で教え合い,学び合い,助け合いができる。等 もめごとは,包み込み法で対処する(横糸) 教師は,いつも子どもの言動に注目し,「おかしいな?」と感じたら,どんどん話し合う機会を作る必要 があります。いかに子どもたちと通じ合うかが大切です。担任はまず一方の子どもの話を聞き,次にもう一 学級経営を織物モデルで考えるってど ういうことかな。 方の子どもにも同じように話を聞きます。そして,最後に双方を呼んで話し合いをもちます。このくり返し で教師への信頼感はぐっと増していきます。小学校の高学年以上の子どもの場合には特に心得が必要です。 縦糸と横糸について詳しく知りたいな。 頭ごなしに叱りつけるなどは絶対に避けなければなりません。子どもは問題を起こした場合,自分なりの正 包み込み法についても知りたいな。 当性を持っているものです。その自分なりの正当性を最初から否定せず, 「○○さんに対して,あなたはそ れで腹を立てたんだね。知らなかった。先生はあなたの気持ちがよくわかるよ。」と積極的に「同意」 「同調」 してやることです。このような子どもとのかかわり方が「包み込み法」です。ちなみに,これは,織物モデ ルの横糸張りのひとつです このような対応をくり返しながら,問題解決を図っていくのです。すると教師への信頼感はぐっと増しま す。そのうちに,子どもの方から「先生,相談にのってください。 」と話しかけてくるようになります。 (参考文献)必ずクラスがまとまる教師の成功術! 1 野中信行・横藤雅人 学陽書房 2 2011 1学期,どうやって学級づくりをしたらよいか困っています て く だ さ い 。 す る と い い よ 。 進 め て い っ た ら よ い か を 確 認 用 い て 、 学 級 開 き を ど の よ う に 3 ・ 7 ・ 3 0 ・ 9 0 の 法 則 を を つ け れ ば よ い の か 教 え す 。 ま ず 、 一 学 期 に 何 に 気 分 か ら な く て 困 っ て い ま を つ け て い け ば い い の か い け ば い い の か 、 何 か ら 手 よ う に ク ラ ス を つ く っ て 担 任 を や る の で す が 、 ど の 3・7・30・90の法則 (中学校) ※ 【最初の3日間】子どもとの心理的距離を縮める 初 め て 中 学 校 の ク ラ ス →安全を脅かす事例でない限り,あるいは集団の規律から著しく逸脱した事例でない限り,厳しい指導はし ない。楽しく学級開きを行う。 【最初の 7 日間】クラスのルールを確立する →日直・給食当番・清掃当番等について,先生主導でルールを決定する。 【最初の 30 日間】クラスのルールを定着させ,システム化する く さ ん あ る の よ 。 中 一 の 担 任 は 配 慮 す る こ と が た こ と は た く さ ん あ る わ よ 。 特 に 、 初 が 肝 心 だ も の ね 。 気 を つ け る い の か 分 か ら な い の で す ね 。 最 →日直・給食当番・清掃当番等について,先生が徹底的にチェックして定着させる。班・係のポスター,製 学 級 づ く り を ど う や っ た ら い 作物等は,質の高いものをつくらせる。 【最初の90日間】授業のルールを定着させ,システム化する →各教科の授業システムを確立する。教科連絡,発言の仕方,ノートの取り方,提出物の仕方等々,細部ま で徹底的に指導し定着させる。 ※小学校は3・7・30の法則が使える。 中学1年生を担任する上での留意点 1年生を担任する上で,最も大切なことは,自分ができる限りの最大限の丁寧さが必要であると心得るこ とです。1年生の担任は3年生を卒業させて,担任することが多いのが現実です。あるいは,転勤したての 先生が,その学校の生徒の気質を理解しないままに担任するということもよく見られます。いずれにしても, ちょっとした言葉遣いや行き違いが大きなトラブルに発展することがよくあるのです。「中1ギャップ」と いう言葉もよく聞かれますが,先生の言っていることがわからない,中学校の先生が怖い,中学校の先生の 印象が冷たい,こういったことで不適応に陥る子どもが多いのが1年生です。1年生のクラス担任の対応で は,最大限の配慮をしても丁寧すぎるということはないくらいです。 最初が肝心っていうのは、もっともだわ。 「即時対応の原則」で信頼を高める 3・7・30・90の法則についてくわし 年度当初はこまごまとした仕事がたくさんあります。しかし,「先生はいま忙しいから明日ゆっくり話を く知りたいな。 しよう」という対応はよくありません。少なくとも,新しいクラスをもって3ヶ月間くらい,つまり,1学 期の間くらいは徹底して「即時対応」を意識しましょう。3ヶ月の間,ずっと「即時対応」を続けていると, それが保護者の耳に入ります。「先生はすぐに対応してくれた」ということが,家庭でも話題になることで しょう。逆に,学級開きから1ヶ月の間に,一度でも「即時対応」を怠ると,それは新しい担任の悪い所と して保護者の耳に入ります。「先生にお願いしてみたけれど,先生はすぐには対応してくれなかった」とい うわけです。 「今日はちょっとダメだけど,明日ね。 」などと言って,次の日に対応を忘れていた,などとい うことが一度でもあると,これはもう致命的と言っても過言ではありません。 1学期は, 「即時対応」を徹底することが大変重要です。 (参考文献)必ず成功する「学級開き」魔法の 90 日間システム 堀裕嗣 明治図書 3 4 2012 友達をつくれず,クラスで孤立しがちな子どもが気になります 感 じ が し ま す 。 ん が り を だ ま 方 行 。 と が う ま 上 こ る 手 と 」 に で と な 「 言 る 人 わ 」 と れ 「 の て ク か い ラ か る ス わ ん で み た ら ど う か な 。 プ ・ エ ン カ ウ ン タ ー に 取 こ り れ 組 ク ラ ス で 構 成 的 グ ル ー ょ っ と 距 離 を お い て い る な く 、 ク ラ ス の み ん な も ち も は 自 己 主 張 が 得 意 で は が 気 に な り ま す 。 そ の 子 ど 友 達 を つ く れ な い 子 ど も 構成的グループ・エンカウンターの特徴 構成的グループ・エンカウンター(以下,SGE)を行うと,自尊感情が高まり,信頼に基づいた人間関 学 級 開 き か ら 二 週 間 、 係が育まれると言われています。特徴として,2本の柱があります。エクササイズとシェアリングです。 エクササイズとは,ねらいを達成するための課題です。体を動かしたり,考えたり,個人で,またはみん なで協力して取り組んだりすることで,実際に体験し,そこで生じる感情や関係性を大切にします。ねらい には,次の5つがあります。①自己理解 ②他者理解 ③自己受容 ④信頼体験 ⑤感受性の促進 シェアリングとは,分かち合いや振り返りのことです。そこでの気づきや感情を明確にし,共有すること た い で す ね 。 に 、 予 防 的 な 対 策 を 講 じ い じ め に 発 展 し な い よ う で,ねらいを定着させる働きを持っています。SGEではシェアリングを必ず行います。ゲームやレクリエ 深 刻 な 仲 間 は ず れ や 、 そ れ は 心 配 で す ね 。 ーションとの違いはそこにあります。 実際に教室で行う時 ~どんなエクササイズを選んだらいいの?~ 左の例では,人間関係づくりが苦手な子どもを心配しています。新年度が始まって間もない時期,そのよ うな子どもにとって新たな人間関係を築いていくことは,容易なことではないでしょう。人間関係づくりが 得意な子どもであっても,緊張でいっぱいのはずです。そんな時期だからこそ,SGEの実施です。 「他者 理解」のエクササイズを行い,子ども同士がかかわるチャンスを作ります。友達同士が知り合い,心理的な 距離を縮めることができるように意図した活動です。 クラスの実態を考慮しながら,ねらいに即したエクササイズを行うことで,個々の子どもを育てるととも により良い集団を育てていくのです。 エクササイズの種類は,たくさんあります。多くの本が出されているので,それらを参考に,クラスの実 態,エクササイズの深さ(目的の深さ),先生自身の経験(参加者として,進行役のリーダーとして)など に合わせて,選ぶと良いでしょう。 実際に教室で行う時 ~流れ・手順~ 一般的な流れです。①ねらいを伝える②ウォーミングアップ(体を動かしたり触れ合ったりする活動を短 時間で行い,リラックスした雰囲気を作る。)③インストラクション(やり方を,わかりやすく説明する。 リーダー役の先生が実際にやってみせること【デモンストレーション】も効果的である。身体的・心理的な 是非やってみたい 安全を守るために,ルールやしてはいけないこともはっきり伝える。)④エクササイズ実施(子どもの様子 な・・・でも、どうやるの? に注意を払う。モチベーションを高めつつ,ねらいを達成できるよう,先生はリーダーシップをとる。進行 私たちにもできるかな? を妨げたり,友達を傷つけたりするような言動があれば,指導をする。)⑤シェアリング(エクササイズを 行った時に感じたことを振り返る。ねらいに沿って話し合ったり,ワークシートに書いたりする。 )⑥まと め(先生が活動から感じたこと,気づいたことをクラス全体に伝える。次回につながるよう,楽しく終わら せる。 )これをベースに,子どもの様子や時間的制約に配慮しながら進行すると良いでしょう。 SGEは,予防的・開発的に実施し,継続することで,より効果が上がると言われています。 (参考文献)どの先生もうまくいくエンカウンター20のコツ エンカウンターで学級が変わる(小中高編) 5 明里康弘 図書文化社 2012 國分康孝 (監修) 図書文化社 1996 6 Q-Uとはどのようなものなのか? 1学期末になっても,クラスにまとまりがありません 指 導 に 活 か せ る で し ょ う 。 解 す る こ と が で き 、 今 後 の の 関 係 、 の 三 つ の 側 面 を 理 個 人 、 学 級 、 学 級 と 個 人 把 握 で き ま す 。 査 を 通 し て 、 実 態 を 適 切 に 「 Q ― U 」 と い う 心 理 検 態 は ど う で す か ? な り ま す 。 ク ラ ス の 実 い る こ と が 必 要 条 件 に 二 つ の 要 素 が 確 立 し て ル ー ル と リ レ ー シ ョ ン ク ラ ス の ま と ま り は 気 が し て 不 安 で す 。 ま と ま っ て い な い よ う な な く な っ て き て 、 ク ラ ス が 子 ど も た ち も 落 ち 着 き が 「楽しい学校生活を送るためのアンケートQ-U」 (以下,Q-U)は, 「居心地のよいクラスにするため ま い ま し た 。 最 近 は 、 他 の ど も の 対 応 に お わ れ て し のアンケート(学級満足度尺度)」と「やる気のあるクラスをつくるためのアンケート(学校生活意欲尺度)」 個 別 の 配 慮 が 必 要 な 子 の2つから構成されています。ここでは,学級満足度尺度を中心に紹介します。この尺度では,学級の集団 づくりと関係のある,次の3点が同時に把握できます。 ・児童生徒個人の学級生活満足度の把握 ・学級集団の状態の把握 ・学級集団と個人との関係の把握 子どもがクラスを居心地がよいと感じる最低限度の条件は,①集団で安心して生活するための基本的なル ールが確立している(ルールの確立),②安心して本音を言い合えるような人間関係(リレーションの確立), の2つが満たされた時です。ルールとリレーションのバランスが取れていると学級は安定します。学級満足 度尺度は,この2つの視点をもとに,子どもの満足感を測ります。①のルールの視点を得点化したものは「被 侵害得点」 ,②のリレーションを得点化したものは「承認得点」になります。これを座標軸にし,子どもを4 つのタイプ(学級生活満足群・非承認群・侵害行為認知群・学級生活不満足群)に分けて理解します。さら に,その分布の片寄りや散らばり方によって,学級集団の状態を把握することもできます(付録2参照) 。 Q-Uの結果から,現在の学級集団の状態を把握する 左の事例のクラスのQ-Uプロットをもとにすると、このクラスの状態は『なれあい型』で,リレーショ ンはある程度あるが,ルールが不足しているのではないか,と見立てることができます。1 学期の様子を担 任に尋ねると「個別の配慮が必要な子どもへの対応に追われてしまい,全体に目が行き届きません。そのた め,クラスのルールを徹底して指導することができていません。」 「子どもたちの気持ちは大切に接してきま した。」 「クラスの雰囲気は,元気でのびのびしていますが,授業中の私語,係や当番活動でのトラブルなど が気になり始めています。 」とのことでした。 このクラスの長所は,元気でのびのびしているところです。承認得点が高いことにも,それは現れていま こんな結果 が出たけれど Q-U プロット 指導にどう 活かせばいい のかなあ・・・ す。しかし,被侵害得点が左右に開いていることから,クラスの中で被侵害感を感じている子どもたちとそ うでない子どもたちがいることがわかります。ルールの定着していないクラスでは,自己主張がはっきりで きる子どもたちは学級生活満足群におり,そうではない子どもたちは侵害行為認知群にいるのです。 今後,学級集団はどうなる可能性があるのか? 指導の方向性は? ルールが不足している『なれあい型』が続くと,クラス内がとてもストレスフルになります。そうすると, リレーションも崩れ,クラスのまとまりはなくなります。それを防ぐポイントは,先生の適切なリーダーシ ップとルールの定着です。学級生活不満足群にいる子どもには,個別の配慮を続けていく必要もあるでしょ う。このように,ルールの確立とリレーションの確立を視点に,クラスの状態は5つの『学級集団の型(付 録2参照) 』のどれに近いのかと見立てていくと,指導の方向性が見えてきます。クラスや子どもの状態は 変化していきます。学期の変わり目や大きな行事の後などに,自分の学級経営をルールの確立とリレーショ ンの確立を視点に,見直していくとよいでしょう。 (参考文献)学級づくりのためのQ-U入門 河村茂雄 図書文化社 学級集団づくりのゼロ段階 河村茂雄 7 図書文化社 2006 2012 8 いじめがないクラスをつくるにはどうしたらよいのでしょうか て い ま す 。 把 握 し て 対 応 せ ね ば ・ ・ 。 ス の 子 ど も の 心 の 状 態 を い る の で は な い か な 。 ク ラ 気 持 ち で 毎 日 を 過 ご し て る の で は な い か 」 と 不 安 な 自 分 が タ ー ゲ ッ ト に さ れ ス が 陰 湿 な 雰 囲 気 に な っ ッ ト が 次 々 と 変 わ り 、 ク ラ が 起 こ っ て い ま す 。 タ ー ゲ 祭 の 後 か ら 「 仲 間 は ず し 」 し て い ま す 。 二 学 期 の 体 育 いじめ予防の決め手は周りの子どもに対する指導 いじめは「加害者」対「被害者」という構図だけで起こっているのではなく,それを取り巻く「観衆」 「傍 中 学 校 一 年 生 の 担 任 を ク ラ ス の 子 ど も も 「 次 は 観者」の2つの層と合わせて4層から成り立っているといわれています。 「観衆」の役割はいじめをはやし たてたり,おもしろがって見ている子どもたち,さらに「傍観者」の役割は見て見ぬふりをする子どもたち です。 「観衆」はいじめに対して積極的に是認し, 「傍観者」はいじめに対して暗黙的に支持し,互いにいじ めを促進させる作用をしています。 「傍観者」の中に「仲裁者」的な役割を果たす子どももいますがクラス 対 応 し な く て は ・ ・ ・ 。 ら よ く 話 を 聴 い て 、 す ぐ に ら な く て は 。 そ の 子 ど も か て い る 子 ど も を 先 生 が 守 ま ず 、 タ ー ゲ ッ ト に な っ の風土が関係していると考えられます。 クラスで、多くの子どもがいじめに気がついているはずです。ただ,それを大人に話すことによって自分 がいじめられることを恐れ、一緒にはやしたて,いじめ側につくことがあります。(観衆の役割) いじめを予防するには,いじめは「集団の問題」だという認識が大切です。その上で、一人一人がいじめ について理解し,いじめを起こさないようにするとともに,いじめを止めようとする仲裁者の正しい行動を 支えられるような集団作りが大切です。 学級の状態を客観的に捉えるには・・・ いじめの予防のポイントは「個」と「集団」への指導と援助です。より良い集団作りのためには,教師の 日常観察などに加え,客観的に実態を把握し,手立てを講じていくことが重要です。ここでは場面ごと,あ るいは領域ごとの「適応感」 (本人が発信しているSOSの「度合い」 )を教師が把握できる「アセス」を紹 介します。 アセスは, 「友人サポート」 「教師サポート」 「向社会的スキル」 「非侵害的関係」 「学習的適応」 「生活満足 感」の6因子から成り立つ主観的適応感を測定します。このアセスには次の特徴があります。 ①本人が主観的にうまくやっていると感じている程度を重視していること。大切なのは,周りからどう見え るかではなく,本人が発しているSOSだという観点から,主観的な適応感を重視しています。 ②「生活満足感」因子で全体的適応感を捉え,家庭のことを聞かずに学校以外の場での適応状態をある程度 いじめのないクラスを つくるにはどうしたらよ いのだろう? 推測できる尺度にもなっています。 ③アンケート項目を絞り,子どもに負担をかけることなく,教師が必要と感じた時にアンケートを実施しや すくなっています。さらに,結果をすぐ見て,支援の手立てを考える際の参考にできます。 いじめの予防は教師が行動することから 教師の重要な指導・援助は「教師の日常のかかわり」 「わかる授業の実践」「個への指導・援助」です。 適切な手立てを考えるためには,個と集団の実態把握が大切です。そして何よりも,教師が本気でより良 い集団づくりに取り組んでいる姿勢が,教師に対する信頼感を高め,お互いを思いやることができる集団 づくりにつながります。 (参考文献)アセスの使い方・活かし方 栗原慎二・井上弥(編)ほんの森出版 2010 入門いじめ対策小・中・高のいじめ事例から自殺予防まで 相馬 誠一・佐藤節子(編) 9 10 学事出版 2012 クラスでよくトラブルを起こす子どもの対応に困っています ん ・ ・ ・ 。 注 意 を し て も 聞 き ま せ 起 こ し て い る ん で す 。 し ・ ・ ・ 次 々 と ト ラ ブ ル を す る し 、 掃 除 も や ら な い 授 業 中 は お し ゃ べ り を に な る 子 ど も が い ま す 。 不適切な行動の4つの目標 子どもが不適切な行動を起こすのは,「所属欲求が満たされていない」と感じる時です。その目標は以下 の4つに分類できるとされています。(ルドルフ・ドライカースによる理論) ク ラ ス の 中 に 、 と て も 気 ①注目・関心を引く(第1段階) る の で す か ? ど ん な 注 意 の 仕 方 を す の は 、 困 り ま し た ね 。 教師の注目・関心を引くために,いたずらや目立つことをしたり,教師のお気に入りになろうとしたりす 注 意 を し て も 聞 か な い る。教師は子どもにいらいらした感情を持ち,注意や叱ることが増え,関係が悪化する。 ②権力争いをする(第2段階) 教師に勝ち,教室のボスになり居場所を確保しようとする。教師への反抗が見られる。教師が腹を立てる ことで権力争いに巻き込まれ,子どもとの関係はさらに悪化する。 ③復讐する(第3段階) 教師に復讐することで居場所を確保しようとする。教師を傷つける行動を取るだけでなく,他児や器物に 危害を加えることで教師を傷つけようとする。教師は傷つき,子どもとの関係は極度に悪化する。 ④無気力・無能力を誇示する(第4段階) 無気力・無能力であることをアピールし,居場所を確保しようとする。課題に取り組まない,他者とかか っ て し ま い ま し た 。 く 注 意 し て も 聞 か な く な 目 に 余 る も の が あ り 、 厳 し と 、 言 っ て い た の で す が 、 「 や め な さ い 。 」 に 、 は じ め は 穏 や か に わろうとしない,不登校や引きこもりなどの行動が見られる。教師はあきらめの感情を抱く。 気 に な る 行 動 を し た 時 勇気づけとは? 子どもが不適切な行動を起こしている時,教師はどのような対応をしたらよいのでしょうか。 不適切な行動に(過度に)注目せず、適切な行動を勇気づける 「勇気づけ」とは,相手の存在を認め,長所やリソース(資源,資質)に目を向ける態度や行動です。 あたりまえのことを認め,伝えることが勇気づけになります。 と い つ も 考 え て い ま す 。 何 か 良 い 方 法 は な い か っ た り ・ ・ ・ を し た り 、 約 束 を 守 ら な か い ま す 。 友 達 の 嫌 が る こ と う な 子 ど も が い て 困 っ て 授業中のおしゃべり,掃除をやらない,約束を守らないなどの不適切な行動に着目し,注意することに労 私 の ク ラ ス に も 、 同 じ よ 力を注がずに,授業中に静かにしている,掃除をしている,約束を守っているなどの適切な行動に着目し, 勇気づけをします。具体的には, 「授業に集中しているね。うれしいよ。」 「きれいにしてくれてありがとう。」 「約束を守って気持ちいいね。 」などの声かけをすることです。 共同体感覚を育てよう 子どもが不適切な行動を起こさないためには,共同体感覚を育てることが大切です。共同体感覚とは, 他者や世界に対する関心を持つこと,所属する共同体に居場所が存在すること(所属感),所属する共同体 のために役に立てることがあること(貢献感)を要素とする意識です。この意識で満たされたメンバーは信 頼感や安心感で結ばれ,相互の尊敬を背景に協力をします。共同体感覚のある子どもは,集団の楽しさを味 わうことができるのです。共同体感覚を育てることがとても大切なことです。 (参考文献)今日から始める学級担任のためのアドラー心理学‐勇気づけで共同体感覚を育てる 11 12 会沢信彦・岩井俊憲(編) 図書文化社 2014 落ち着きがなく立ち歩く子どもの対応に困っています ま い ま し た 。 か ほ も る な め し と 。 る れ 、 よ な か え う い っ ね に て し 。 そ 良 た れ く ら よ な ど り い う も か 無 理 に 座 ら せ よ う と す な い の か も し れ な い ね 。 ち 着 か な く な く な っ て し 歩 き 、 授 業 が ざ わ ざ わ と 落 か の 子 ど も も 一 緒 に 立 ち 最 近 は 、 そ れ を 見 て 何 人 る 子 ど も が い ま す 。 そ の 子 ど も は 、 集 中 力 が 立ち歩くのをやめさせるには? 問題行動が起きると,教師はその行動をやめさせようとします。問題行動を指摘し,注意をします。たび 授 業 中 に 立 ち 歩 い て 困 重なる注意に腹を立て,時には叱責してしまうこともあるでしょう。悪いことは悪いと教えることはもちろ ん必要ですし,叱るよりもほめる方に効果があることを知っている人は多いはずです。ですから,事例の二 つのアドバイスはどちらも,もっともな話です。しかし,叱責することで行動は,変わりません。大切なの は,行動をやめさせるだけでなくどうしたら良いのかまで教えることや,良い行動が起きるようにどう支援 悪 い と 言 わ な い と ね 。 え な い と ね 。 悪 い こ と は 、 は い け な い と 、 き ち ん と 教 授 業 中 に 立 ち 歩 く こ と そ れ は 困 り ま し た ね 。 していくのかということです。 行動はどのように起こるのか? と こ ろ で , 行 動 は ど の よ う に し て 起 こ る の で し ょ う か 。 行 動 ( Behavior ) に よ り 生 じ た 結 果 (Consequence)が,心地良いあるいは,心地悪いことが消し去られると行動は強化されます。強化され ることにより,行動が起きるのです。子どもが立ち歩くのは,立ち歩くことで心地良いこと(例:みんなに 注目される)が起きているか,または心地悪いことが消し去られている(例:勉強をしなくてすむ)のです。 さらに先行条件(Antecedent)に注目してみると,行動を起こしやすくする要因があると考えられます。 (例:課題がたくさんある。) 行動を変えるには? 子どもの行動を変える支援の仕方を見つけるには, 「先行条件」 「行動」 「結果」の 3 つを関連づけて考え ることです。 まずは,子どもをよく観察することです。では,どのように観察したらよいのでしょう。ただ漠然と一日 中見ているのではなく,「先行条件(A)」「行動(B)」「結果(C)」が分かるように記録することが必要で す。具体的には,カレンダーや時間割,日課表などを活用してみるとよいでしょう。一定期間観察をしたら, 記録から「先行条件(A) 」「行動(B)」 「結果(C) 」を見つけます。 どちらの話ももっともだ 次に,この 3 つから支援の仕方を考えます。先行条件(A)から考える方法と結果(C)から考える方法 と思うけれど・・・いった があります。望ましい行動が起きるような先行条件(A)を作り行動(B)を支援することで良い結果(C) いどうすればいいのかな。 が得られるようにします。または代わりの行動(B)をすることで良い結果(C)が得られるようにして, 現在起きている行動(B)を起こさなくなるようにします。例えば一人で課題をする時に立ち歩きが起きて いる子どもをよく観察し,先行条件は課題が多いことだと分かったとします。その場合,課題を分けて提示 することで,課題に取り組めるようになり,結果として課題を終えることができ,友達や先生から認められ 立ち歩くことがなくなります。 そして,支援の仕方を決めたら,一定期間続け,その結果を考察してさらに支援の仕方を考えていきます。 このサイクルを繰り返していくことで,子どもの行動が変わっていくのです。 個別の支援をどう行うかは,学級づくりの上で重要な課題の一つです。また,学級づくりをユニバーサル デザインするという考え方もできるでしょう。個別の支援が学級全体への支援につながることを意識しなが ら,学級づくりをしていくことが大切です。 (参考文献)応用行動分析学から学ぶ 13 子ども観察力&支援力養成ガイド 平澤紀子 14 学研教育出版 2010 キレやすく,すぐ友達とけんかをしてしまう子どもの対応に困っています 子どもの「感情」の育ちの中で 「感情」が育っていく上で,周りの人(大人)から良い子だと思われたいため,ネガティブな感情の表出 ん か す る こ と も 多 く て … 。 る か も … 。 本 人 も 保 護 者 も 困 っ て い し て み た ら ど う で し ょ う 。 様 子 を 改 め て 保 護 者 と 話 学 校 の で き ご と や 家 の て ば か り い ま す か ? 友 達 と ト ラ ブ ル に な り 、 け す 。 最 近 は 、 些 細 な こ と で キ レ て し ま う 子 ど も が い ま と が あ っ た り す る と 、 す ぐ り 、 授 業 中 に 分 か ら な い こ り に で き な い こ と が あ っ た 家 で も キ レ や す く 怒 っ をやめてしまおうとしたり,さらに不快な感情をないことにしてしまおうと自分で防衛してしまったりする 教 室 で 、 自 分 が 思 い ど お 子どもがいます。耐えがたく辛い感情が喚起されるような状況にさらされると,その感情を感じないように 防衛し,その状況に適応しようとしてしまうこともあります。そのような状態が続くと,身体と認知が解離 してしまう場合があります。 不快な感情を表出せず,感情的になることもなく,いつもにこにこ穏やかで,困っていることは何もない が 必 要 で す ね 。 か 、 じ っ く り 話 を 聞 く こ と は ど ん な 気 持 ち だ っ た の キ レ て し ま っ た 時 、 本 人 て い る だ け で す か ? た だ 「 わ が ま ま 」 を 言 っ 怒 っ て い る の で し ょ う か 。 そ の 子 ど も は 何 に 対 し て というような子どもは,大人からは理想的な良い子の姿に見えるかもしれません。しかし,そのような子ど もが学校生活でのちょっとしたトラブルが原因となり,解離させていたネガティブな感情が爆発してしまう と,自分で感情をコントロールできない状態に陥ってしまうことがあります。 ネガティブな感情とポジティブな感情の両方が,周りの大人から同じように大切に扱われることで,感情 の領域や身体と認知を隔てていた壁が低くなり,自分の感情と行動をコントロールできるようになっていき ます。 個別対応による支援方法は? 感情をコントロールできるようになるためには,①「個別対応による支援」②「親との協力援助関係をつ くる」③「集団の中での支援」と段階的な援助や支援が必要です。 「個別対応による支援」では,ネガティブな感情をコントロール可能な姿にかえていくために,まずなぜ そのような行動をしたのか,言葉で説明できない(覚えていない)ところも含めて承認し,子ども自身の感 じ方のレベルを把握することが重要です。そして,キレる前の身体感覚に焦点をあて,その時の状況を思い 出しながら,身体のどこにどんな変化(苦しい,いやな感じがする)があったのか,自分の身体状況とフィ ットした言葉で伝えられるよう丁寧に聴いていきます。身体の中で起こっている状態を言葉で伝えられるよ うになると,その度合いをスケーリング(主観的な身体感覚を0~10などの数字で表す)することができ ます。身体状況を数字で表すことが自分の感情の理解につながり,それが「自分で感情をコントロールでき た」というポジティブな意味づけに変化していくと,その感覚が自己肯定感を高めていくという良循環が生 じます。その他に,子どもが自分の身体感覚とのつながりを感じて落ち着ける「呼吸法」「動作法」といっ たような具体的援助技法もあります。 クラスのみんなはどう思っ ているのかな…。 他の先生方にも相談してみ ようかな…。 集団の中での支援は? 集団の中で配慮が必要とされる子どもを,周りの子どもたちが同じ仲間として受け入れられる学級(集団) づくりを目指すことが必要です。それが,キレやすい子どもにとって,クラスや集団から排除されないとい う安全・安心な中で感情が育っていくということになり,重要な環境の援助となります。そのためには,ク ラスの子どもたちと教師が対話をする中で,子ども一人一人が抱える「怒り」や「不安」 , 「悲しみ」等のネ ガティブな気持ちを含め,自分の感情が教師に承認してもらえたという体験を積み重ねていくことが大切で す。 (参考文献)怒りをコントロールできない子の理解と援助 15 教師とのかかわり 16 大河原美以 金子書房 2012 教師に対して反抗的な言動をする子どもの対応に困っています 反抗的な態度をとるのは,なぜなの? 教師に対しての反抗的な言動は,中学生に限らず小学校高学年くらいからみられるのではないでしょうか。 反抗的な言動だけに限らず,子どもの言動にはすべて意味があるという視点で生徒理解をすると大人へ伝え い ま す 。 子 ど も を 観 よ う よ 。 の で は な く て 一 人 一 人 の 頭 ご な し に 叱 り つ け る あ る の で は な い か な ? か 伝 え た い メ ッ セ ー ジ が や 周 り の 大 人 に 対 し て 何 応 し た ら よ い の か 困 っ て き て い ま す 。 ど の よ う に 対 態 度 を と る 生 徒 が 増 え て 私 た ち に 対 し て 反 抗 的 な し て い ま す 。 こ の と こ ろ 、 たい子どものメッセージに気づけます。その手がかりの一つとなるのが発達の視点です。思春期の特徴や心 中 学 校 二 年 生 の 担 任 を そ の 子 ど も た ち は 、 先 生 理発達について知ることは,子どもの心の理解に役立ちます。 思春期の特徴としては,身体の変化とともに,内側から突き上げてくるエネルギーをコントロールする力 をいまだ身につけていないがゆえに,ちょっとした刺激に対しても過敏に反応し,衝動的な行動をとってし い と い け な い わ ね ! を 通 し て し っ か り 叱 ら な さ せ る た め に も 、 集 団 生 活 まいがちです。親に対する激しい反抗や,反社会的行動などもこの時期ならではの過敏性と衝動性の現れと 善 悪 の 判 断 を 身 に つ け そ れ は 困 り ま し た ね 。 言えます。また,言葉にならない不安感を抱くようになり,不満や怒り,絶望,焦りなどがもやもやと心に 重なり,いつもいらいらしているような状態にもなりがちです。反抗と甘え,自立心と依存心が入り混じっ た状態の中で,子どもは信頼できる大人を探しています。「この人は自分の攻撃に対してどのくらい感情的 になってうろたえるのか」 「攻撃をすると機嫌をとりに媚びてくるのか」 「自分と本気で向き合う覚悟はある のか」と大人を試す行動や,自分の内面の弱さを見られたくないと防御する様子が見られるのもこの時期の 特徴です。 このように発達の視点をはじめ,子どもの生活環境も鑑みて子どもを捉え直すと,反抗的な態度に隠され た気持ちに気づくことができます。 反抗的な言動をされたら,どう対応したらいいの? 問題行動に直面し,いざ注意をする時に「自分が注意をしたことで新たなトラブルが生まれるのではない か」「トラブルを起こしたことで他の教師に迷惑をかけてしまうのではないか」と躊躇した経験はないでし ょうか。子どもの言動には見過ごせないものもあり,その時に教えなくてはならないことがあります。指導 の機を逸してしまうと,反抗的な態度で教師に向かってくる子どもの問題行動はうやむやになってしまい, 子どもは暴力的な言動の行使がどんな不正でもまかり通せると思い,そのまま放置しておくと,やがてそれ が学校の荒廃につながります。問題に直面した際の指導は,チームとして指導体制が整い,学校全体の合意 があってできることですが,その勇気ある指導は反抗的な言動をする生徒だけではなく,周りの子どもとの どちらの話ももっとも 信頼関係をつくる礎になります。 だと思うけれど・・・どう すればよいのかな。 「叱る」ことの意味 問題行動を起こした子どもの多くは,叱られることがわかっています。叱るべき時に根拠を明確にして教 えることは,教師との信頼関係を深める機会にもなり,また,そのかかわりは,まわりの多くの子ども(「中 間的な集団」)を育てることでもあります。 「叱る」ことは子どもの心に葛藤を呼び起こし,大人から見捨てられていないという気持ちを育てます。 また,子どもの自己抑制力を育て,やってはいけない限界を教える機会にもなります。「厳しさ」と「優し さ」,そして「愛情」を持ち合わせて「叱る」ことで子どもとの絆も深まります。 (参考文献)荒れには必ずルールがある 吉田順 学事出版 2013 17 18 不登校(登校渋り)の子どもの対応に困っています い そ う で ま ま だ と … 不 … 登 。 校 に な っ て し ま か り ま す よ 。 で 、 担 任 と し て の 対 応 が わ 登 校 し て い る 状 況 で す 。 こ の っ て き て も ら っ た り 、 や っ と 数 日 間 続 い た り 、 保 護 者 に 送 子 ど も を 理 解 す る こ と い ま す 。 最 近 は 休 み 始 め る と 不登校(登校渋り)の対応で大切なことは何だろうか? 不登校(登校渋り)には様々な背景があり,同じ状況はないと言われます。それゆえ,その対応には子ど 学 校 を 休 み が ち な 子 ど も が もをよく観察して,気持ちを聴くことなどで子どもを理解することが大切です。今の状態に適した対応をと るため,共通なものをもった「タイプ分け」をすることで見立てや対応へのきっかけが得やすくなります。 不登校(登校渋り)は時間の経過に従って,回復までの過程に「段階」を経ていきます。この各「段階」の 子どもの状態を的確に把握し,子どもが学校復帰や社会的自立ができるように支援したいものです。 が 大 切 で す 。 も か を ま ず 、 理 解 す る こ と そ の 子 ど も が ど ん な 子 ど そ れ は 悩 み ま す ね 。 どんな「タイプ分け」があるのだろうか? 不登校は要因別に以下のタイプに分けられます。①カウンセリングや心理的治療が有効な「心理的要因」 ②学習や対人関係の問題解決的な対応が必要で,教育的支援が有効な「教育的要因」③家族関係などの関係 調整が必要で,場合によっては,福祉的な支援制度を利用することで改善されることもある「福祉的要因」 をもった,3つの質的に異なったタイプです。 さらに,学校復帰や社会的自立へ向けた長期的展望を持つのに,Ⓐある時期から急激に変化した「急性型」 Ⓑ以前から年単位で徐々に進んできた状況の「慢性型」という不登校への進み方の2タイプを,要因別タイ プと組み合わせて,6つのタイプに細分化して状態を理解していきます。 例えば,おとなしい性格で,学習内容が難しくなり,少し勉強への自信をなくしている子どもがいます。 友達はいますが自己表現力が弱く,気を使っている割にはグループにうまく入れてもらえず,ぽつんとして いることもあります。たまに気持ちが悪いと休むこともありましたが,最近,遅刻や休み明けの欠席が目立 つようになりました。 このケースを「タイプ分け」で見立てると,「教育的要因をもつ慢性型」と考えられます。この子どもへ の対応は日頃から教師が気を配り,丁寧な説明や友達関係を配慮すれば,不適応にならずに学校生活を過ご すことができます。このように状態の「タイプ分け」をすることで見立てや対応へのきっかけができます。 それぞれのケースへの対応はかなり異なります。そのため,できるだけ多くの情報を得て,適切な見立てが 必要です。付録3の「タイプ分けチェックリスト」を参考にしてください。 まずは「子ども理解」なんだ な。そのことをもう少し具体的 に知りたいな。 どういう回復への「段階」を経ていくのだろうか? 不登校(登校渋り)になると,期間の長さはケースによって異なりますが,回復までにはほぼ同じような 過程をたどります。時間の経過に従って,①前兆期②初期③中期④後期⑤社会復帰の5つの「段階」があり ます。この中ではっきりと不登校状態を示すのは②~④の3つの段階です。その時の状態を把握し,的確に 援助をすることで子どもの主体性を育て,回復を促していきます。 子どもの心の動きを外から捉え,②では「不安定・混乱」している子どもの心身を安定させる援助を,③ では「膠着・安定」しているため,体験を通してエネルギーをためさせる援助を,④では「回復・試行」の ための活動へ具体的な援助をすることが必要です。付録3の「状態像チェックリスト」を参考にしてくださ い。 (参考文献)<タイプ別・段階別>続 19 上手な登校刺激の与え方 小澤美代子(編) 20 ほんの森出版 2006 面接の仕方で困っています か て ん 。 い 。 っ ど た の ら よ よ う い に の 面 で 接 し を ょ 進 う め ま す よ 。 う か な 。 そ こ か ら 解 決 へ 導 け 例 外 を 考 え さ せ て み た ら ど 問題志向ではなく,解決志向でとらえる 子どもとの面接の時,起こっている問題の原因探しに終始してしまうことがあります。確かにその問題の な か な か 会 話 が 続 き ま せ 背景や原因を探ることで解決への筋道が立つ場合もあります。しかし,原因がわかるまで時間がかかったり, 面 接 す る の が 苦 手 で す 。 善悪などの当たり前のことをアドバイスしても,子どもが受け入れることができないことが多いです。また, 逆に反発されてしまう場合もあります。このような時には問題行動の意味にこだわるより解決志向で考え, 子ども自身で想像力を働かせたり,自分の思いを的確に表現できるように面接を展開して,問題解決へと進 んでいくブリーフセラピーの面接技法が有効です。 自分から気付き,何が変わるのかを子ども自身が実感することで,短期間で効果が現れ,子どもとの面接 が楽しくなります。 い か が で す か 。 問 題 に な っ て い る こ と の 良 い と こ ろ を 探 し て み て は そ の 子 ど も の 持 っ て い る ブリーフセラピーのエッセンスとは? ブリーフセラピーのエッセンスには以下のものがあります。 ●例外探し…例外を考えさせ,それを解決への第一歩としてさらに解決へ進めさせます。 ●外在化…問題となっていることを具体的にして,それを本人から引き離して,解決へと導きます。 ●ゴール・セッティング…目指すゴールを作り,未来から現在を考える解決へのイメージを持たせます。 ●スケーリング・クエスチョン…自分の状況を尺度で表現させ,現状の確認をさせます。 ●ミラクル・クエスチョン…「奇跡」で問題がない,自分にとってのぞむ状況から解決を探ります。 ●リソース探し…その子どもが持っているものを,問題解決のために活用します。 ●リフレ-ミング…自分の「枠組み」を捉え直させることで,柔軟な発想で解決を考えさせます。 ●コーピング・クエスチョン…問題解決への現状をたずね,共感して解決への自信をつけさせます。 ●称賛…ほめたり,ねぎらったりして勇気づけや自信回復をさせます。 ブリーフセラピーの3つのルールとは? もっともだと思うけど…。 エッセンスの考え方に基いて,実際に面接を進めていくわけですが,その際に,子どもに対して「今まで受け どうすれば 面接が うまく たアドバイスの中で,役に立ったものと役に立たなかったもの」の両方を聞いていくことがとても重要です。そ できるようになるのかなぁ。 れは,もし役に立ったアドバイスがあれば,それをくり返して子ども自身が問題解決へたどりつけば良いからで す。しかし,もし役に立たなかった,あるいは逆効果だったアドバイスであったならば,たとえどんなにそれが 「筋道」や「正論」だったとしても,くり返すことはいけないことです。こちらは何かそれとは違う角度からア ドバイスすることです。すなわち,ブリーフセラピーの面接方法には3つのルールの適用が大切です。 ルール1 「もしうまくいっているのであれば,それを変えるな」 ルール2 「もし一度うまくいったのなら,またそれをせよ」 ルール3 「もしうまくいかないのであれば,何か違うことをせよ」 子ども自身へ「役に立つ」アドバイスを行い,「役に立たない」アドバイスはくり返さずに面接を進めれば自 分自身で問題を解決していくようになります。このことを理解していれば,面接は楽しくなるでしょう。 (参考文献)先生のためのやさしいブリーフセラピー 読めば面接が楽しくなる 森俊夫 ほんの森出版 21 22 2000 子どもを理解するにはどのような視点が大切ですか 人生を8期に分けた「ライフサイクル・モデル」 子どもを実態把握する視点として,エリクソンの「ライフサイクル・モデル」にあてはめて考える方法が あります。人生を8期に分けて,心の発達の順序を明確に示したものです。8期は,①乳児期(0~2歳) え て き ま し た 。 暴 言 を 吐 き 、 注 意 さ れ る こ と が 増 は 、 言 葉 も 乱 暴 で 、 他 の 教 師 に も 話 し を 聞 こ う と も し ま せ ん 。 最 近 師 が 注 意 す る と 反 抗 的 な 態 度 で 、 乱 れ が 目 立 ち ま す 。 生 徒 指 導 の 教 中 学 生 に な り 服 装 や 頭 髪 な ど の ま 刻 は 人 す し 、 で 。 て 笑 過 登 っ ご 校 た す す 顔 姿 る を が 日 見 目 も て 立 増 い ち え な ま て い す き し 。 て 、 最 い 遅 近 す が 口 数 が 少 な く 、 休 み 時 間 は 一 友 達 と 遊 び ま せ ん 。 勉 強 は で き ま 小 学 校 中 学 年 の 子 ど も で す が 、 か り ま せ ん 。 い て い て 、 何 を 考 え て い る の か 分 は な く 、 話 し 合 い の 場 で も 下 を 向 授 業 中 、 自 分 か ら 発 表 す る こ と い る よ う に 見 え ま す 。 元 気 が な く 、 い つ も お ど お ど し て 「基本的信頼」の獲得,②幼児期(2~4歳) 「自律性」を身につける,③児童期(4~7歳) 「自主性」の 小 学 校 低 学 年 の 子 ど も で す が 、 基礎づくり,④学童期(7~12 歳)「勤勉性」の基礎づくり,⑤思春期・青年期(13 歳~22 歳) 「アイ デンティティ」の形成,⑥成人期(23~35 歳) 「親密性」をもつ,⑦壮年期(36~55 歳)「世代性」を 生きる,⑧老年期(56 歳~) 「人生の統合」と分けられています。 赤ちゃんの身体(運動)発達の段階において,首がすわる→寝返り→おすわり→つたい歩きと順序がある ように,心の発達にも順序があります。心の発達は身体の発達と比べて見えにくく実感できにくいものです。 心が育つ中で,各発達時期につまずきや課題を抱えたままみせかけの前進をしてしまうと,それが影響して, 他の発達時期に大きな問題となって表面化されることがあります。発達にとび級はないのです。 「ライフサイクル・モデル」の視点から学童期・思春期を考える 「ライフサイクル・モデル」において,学童期は「勤勉性」の基礎づくりの時期です。小学生の学童期に おいて,同世代の仲間と道具や知識,体験を共有することが「勤勉性」の基礎づくりとなります。遊びの中 で友達の姿を見ることから学んだり,友達と活動を共有しながら教え合ったりする経験が,大人になった時 の社会的な「勤勉性」の基になります。自分と違うタイプの友達と交り合いながら,コミュニケーションに ついて自然に学ぶことにもなります。また,生活の中で子どもがこつこつ取り組めるような実態に合った課 題や目標を設定し,その継続した結果から成功体験を重ねる中で,成就感や達成感をたくさん経験すること も必要です。友達との遊びの中で学び合ったり,課題を1つ1つ達成したりすることが自信へと繋がってい きます。 思春期は「アイデンティティ(自己同一性)」を形成する時期です。自分という人間を確認すること,自 分はこういう人間なんだと知る時期です。小学生の学童期にたくさんの友達と交り合い様々な体験を共有し てきた子どもは,思春期になると,自分と価値観を共有できる仲間をみつけていきます。そして,自分がど のような人間なのかを仲間との関係から見出し,自己洞察をしていきます。また,容姿を意識し始め,他人 にどう見られているのか自己を客観視する姿勢が見られるようになってきます。この時期に自分の価値,能 力,長所,短所を知り,自分の適性は何かを考え自覚することが,その後の進路に大きく影響していくので 「ライフサイクル・モデル」の視点から, 各発達時期の心の発達を理解してみまし ょう。そこから,目の前の子どもの心の発 達状況を捉えてみてはいかがですか。 心の発達に課題が残されているかもし す。周りの大人や教師は思春期の不安と混乱を理解し,温かく見守る姿勢が大切です。 「発達」の視点から 学校生活での行事や様々な活動を通して,子ども同士または教師と共に喜びや時には悲しみを共有しなが ら,コミュニケーションし続けることが大切です。その中で,一人一人の子どもが今どの発達時期にいるの か,また,これまでの発達過程の中でつまずきや残された課題はなかったのか, 「ライフサイクル・モデル」 れません。 の発達の視点を参考に確認してみましょう。そうすることが,子どもの内面の発達についてさらに深く丁寧 に捉え,心の発達に応じた今後の指導・支援に繋がっていくでしょう。 (参考文献)あなたは人生に感謝ができますか?エリクソンの心理学に教えられた「幸せな生き方の道すじ」 佐々木正美 23 24 講談社 2012 縦糸・横糸チェックリスト 学級集団の代表的な状態 チェックリストで自分の学級経営を振り返ってみよう。 時間をおいて何度かチェックできるように,コピーを取り,日付を入れて使用するとよい。 しっかりとできているようなら◎,少しできているが不十分だったりムラがあったりする場合は○, あまりできていない場合は×をつけてみよう。 月 縦 ①教師が話すとき,子どもたちは静かに教師の方を見て聞いているか 糸 ②教師に対して,きちんと敬語(丁寧語)で話しているか の ③返事やあいさつは,歯切れよいか 点 ④廊下や朝会時の整列は静かにできているか 検 ⑤靴箱や机の中,下,周り,筆入れ,傘の始末などはすっきりとしているか 日( ) ⑥朝の会,終わりの会は自分たちでてきぱきと進めているか ⑦休み時間はルールを守って遊んでいるか ⑧掃除や給食は素早く落ち着いた動きか ⑨ルールをめぐって子どもたちが「ああだ,こうだ」と混乱することはないか ⑩学習のルールは,きちんと守っているか 縦糸の合計 点 横 ①子どもたちとよく遊んでいるか 糸 ②子どもは色々なことを話しかけてくるか。話しかけてこない子どもにはこちらから声をかけているか の ③教師の話に,ほとんどの子どもが明るい表情で耳を傾けているか 点 ④子どものよい点を毎日伝えたり,ほめたりしているか 検 ⑤教室に明るい笑いはあるか。暗い嗤い(わらい)はないか ① ⑥子どもは発言するとき,教師だけに話していないか ⑦友達ができないとき,失敗したとき,カバーし合えるか ⑧一定時間,グループで仲よく学習を進められるか ⑨教師が子どもの発言に本気で感動したり,子どもに負けて悔しがったりしてみせる場面はあるか ⑩保護者は,教師を信頼し,応援してくれているか 横糸の合計 点 縦糸+横糸の合計 点 ◎は 10 点,○は5点,×は 0 点。縦糸横糸それぞれ 100 点満点。 縦糸・横糸どちらか一方でも 50 点以下なら要注意。自分なりの対処方法を確立しておかないといけない。 対処してから1~2週間後に再度チェックしてみよう。チェックシートの点数が上がるにつれて、クラスの 状態も良くなっているはずである。 平成26年度休日開放事業 教育相談セミナーⅡ 「集団を育てる学級づくり」 河村茂雄より 必ずクラスがまとまる教師の成功術! 付録1 野中信行・横藤雅人 学陽書房 2011より 付録2 タイプ分けチェックリスト 状態像チェックリスト 当てはまる・○ A「心理的要因をもつ急性型」 やや当てはまる・△ 当てはまらない・× 十分確認できる・○ 確認できるが十分とはいえない・△ B「心理的要因をもつ慢性型」 (月/日) 1 感受性が鋭く,深く悩む 1 敏感すぎる(音・光・言葉・雰囲気) (初期) 2 まじめ,几帳面である 2 おとなしく,目立たない 1 腹痛・頭痛・発熱などの身体症状がある 3 こだわりをもつ 3 何事に対しても不安緊張が高い 2 食欲・睡眠時間等で生活の乱れがある 4 友達はいる 4 友達を作るのが苦手 3 物や人に当たるなど攻撃性がある 5 成績は悪くない 5 学習の基礎でつまずく 4 感情や行動のコントロールができない 6 思春期の不安・葛藤が強い 6 心身ともに丈夫でない 5 気力が低下する 7 神経症的な状態を示す 7 頭痛,腹痛などを訴える 6 恐怖心が強く,人目を避け外出しない 8 親に養育・保護能力はある 8 親自身に不安や不全感がある 7 学校の話題に激しい拒否感を示す 9 発達に問題は感じられない 9 発達上の問題が感じられる (心理治療を要するレベル) C「教育的要因をもつ急性型」 D「教育的要因をもつ慢性型」 (中期) 1 気持ちが外に向き,活動の意欲が出る 内気で自己主張が上手でない 2 趣味や遊びに関心を持つ 2 勉強や運動を頑張っていた 2 勉強が少しずつ遅れてきた 3 気持ちを言葉で表現する 3 友達をつくる力がある 3 友達関係が維持できない 4 きっかけになった出来事に触れても混乱がない 4 家庭環境は健全である 4 家庭が過保護・過干渉である 5 同じことの繰り返しがなくなり膠着状態から脱す 5 友達とのトラブルがある(いじめ等) 5 学級崩壊を経験している 6 手伝いや家族への気遣いをする 6 教師の強すぎる叱責,厳しすぎる指導 6 教師の指導力不足(本人に・学級に) 7 部屋の掃除や髪のカットなど,整理・区切りをする 7 学習の挫折(伸び悩み・急落・失敗) 7 進級・入学等で環境の変化がある 8 気の置けない友人に会う 8 発達上の問題はない 8 発達に弱さがある 9 子どもの状態に配慮する先生に会える (教育的支援で改善可能) 10 教育センターや適応教室に通い始める 家庭崩壊がある (親の不仲・病気・死・離婚・再婚・リストラ) (後期) 回復・試行期 1 自分を肯定する言葉が出てくる 2 最近顔色が悪く,表情が暗くなった 2 不安や不信の表情がある 2 進学や就職の話をするときに笑顔が現れる 3 最近投げやりな態度が目立った 3 反抗や不服従がみられる 3 アルバイトや学習を始める 4 学習意欲が減退し,成績が急落した 4 経済的に困窮している 4 担任や級友など学校関係者に会う 5 短期間に適応力が低下した 5 親が長期的病気である 5 登校や進学・就職に向けて動き出す 6 親に保護をする精神的余裕がない 6 親の保護能力(衣食住)が低い 6 不登校のことを振り返る 7 最近服装の汚れや,忘れ物が目立った 7 虐待が疑われる 8 発達上の問題はない 8 発達上の問題がある (能力があっても育っていない) 付録3 / (思考・行動に方向性をもつ) F「福祉的要因をもつ慢性型」 1 / 膠着・安定期 1 家庭生活に急激な変化があった / (これ以上悪くならない感じ) 性格は明るく活発なほうである 1 / 不安定・混乱期 1 E「福祉的要因をもつ急性型」 / 確認できない・× (自立の動きを実現する) ※チェックリストの見方:初期は経過とともに○が減り,中期・後期は○が増える。 <タイプ別・段階別>続 上手な登校刺激の与え方 付録3 小澤美代子(編) ほんの森出版 2006より 終わりに 「若い先生のための学級づくりハンドブック」は,若い先生だけではなく,全ての先生が十分活 用できる内容です。広く活用してもらいたいのですが,いくつかの活用方法を考えました。 ①学級づくりをしていて困った時 ②校内の初任者研修会 ③若い先生の研修会 ④生徒指導・教育相談などの校内研修会 また,本書の理論やモデルについてもっと知りたい場合には,当センターのスクールアドバイザ ー事業や学校支援事業を御利用ください。詳しくは当センターホームページをご覧ください。 (URL) http://cms2.chiba-c.ed.jp/kosapo 【参考文献】 必ずクラスがまとまる教師の成功術! 野中信行・横藤雅人 学陽書房 必ず成功する「学級開き」魔法の90日間システム 堀裕嗣 明治図書 2011 2012 どの先生もうまくいくエンカウンター20のコツ 明里康弘 図書文化社 2012 エンカウンターで学級がかわる(小中高編) 國分康孝(監修) 図書文化社 1996 学級づくりのための Q-U 入門 河村茂雄 図書文化社 2006 学級づくりのゼロ段階 河村茂雄 図書文化社 2012 アセスの使い方・活かし方 栗原慎二・井上弥(編) ほんの森出版 入門いじめ対策小・中・高のいじめ事例から自殺予防まで 2010 相馬誠一・佐藤節子(編) 学事出版 2012 今日から始める学級担任のためのアドラー心理学‐勇気づけで共同体感覚を育てる 会沢信彦・岩井俊憲(編) 応用行動分析学から学ぶ 子ども観察力&支援力養成ガイド 平澤紀子 怒りをコントロールできない子の理解と援助 荒れには必ずルールがある 吉田順 <タイプ別・段階別>続 図書文化社 2014 学研教育出版社 2010 教師とのかかわり 大河原美以 金子書房 2012 学事出版 2013 上手な登校刺激の与え方 小澤美代子(編) ほんの森出版 2006 先生のためのやさしいブリーフセラピー 読めば面接が楽しくなる 森俊夫 ほんの森出版 2000 あなたは人生に感謝できますか? エリクソンの心理学に教えられた「幸せな生き方の道すじ」 佐々木正美 講談社 2012
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