-情勢分析20010302- (財)中東経済研究所 ― 中東・エネルギー情報 ― 2001 年 3 月 2 日 Vol.2, No.21 情勢分析 目次 2 0 0 0 年の中東プロジェクト動向 ................................................................... 2 I 発注国別動向:産油国の発注が回復 ........................................................................................................... 2 II 受注国別動向:単独では米国が一位に ...................................................................................................... 5 III 分野別動向:ガス開発が増加 ...................................................................................................................... 8 IV 日本の動向と今後の見通し:世界規模での価格競争 .............................................................................. 8 アルメニア人虐殺非難決議に見るトルコ ・フランス ・ ア ル メ ニ ア 関 係 .......... 1 3 アルメニア人虐殺非難決議に見るトルコ・ ス・ I 対仏制裁発動とそれまでの経緯 ................................................................................................................. 13 II アルメニア人虐殺とは ................................................................................................................................ 14 III 三者それぞれの事情 .................................................................................................................................... 15 IV 今後の見通し ................................................................................................................................................ 17 <トピックス> ........................................................................................................................................................ 19 アラブ首長国連邦:ADNOC は ZADCO の権益譲渡を Shell、ExxonMobil に持ちかける ....................... 19 オマーン:Sohar 肥料工場建設で近く入札 ...................................................................................................... 19 クウェート:プロジェクト・クウェートを巡る議論 .................................................................................... 19 サウジアラビア:ガス部門の開放交渉で石油会社幹部がサウジ訪問 ........................................................ 20 アゼルバイジャン:Chevron がバクー・ジェイハン・プロジェクトへの参加を表明 .............................. 20 カザフスタン:ENI が OKIOC オペレーターに決定 ....................................................................................... 21 カザフスタン:カスピ海地域への外国石油企業進出ではカザフスタンがトップ .................................... 21 <石油データ> ........................................................................................................................................................ 23 I 価格動向(2 月 14 日 - 2 月 27 日)..................................................................................................................... 23 II 需要、供給、在庫 ............................................................................................................................................. 26 1. 需要動向(3 月 2 日更新)................................................................................................................................ 26 2. 生産動向(3 月 2 日更新)................................................................................................................................ 27 3. 在庫動向(3 月 2 日更新)................................................................................................................................ 28 III 需給実績と短期需給見通し ............................................................................................................................ 31 1. IEA, Oil Market Report, 2001 年 2 月号(2 月 16 日更新)............................................................................. 31 2. 米エネルギー省(DOE/EIA), Short-Term Energy Outlook, 2001 年 2 月号(2 月 16 日更新)..................... 32 3. その他 (3 月 2 日更新)................................................................................................................................... 33 4. 原油価格見通し(3 月 2 日更新).................................................................................................................... 34 1 -情勢分析20010302- 2000 年の中東プロジェクト動向 2000 年の中東プロジェクト成約額は、油価低迷の影響を大きく受けた 1999 年から 68.8% 増加して、423 億 9990 万ドルとなった (図表 1 下段)。国防分野と 1999 年 8 月から 集計を始めたイスラエルを除いても (注 1)、成約総額は前年比 47.4% 増の 308 億 1570 万 ドルで (図表 1 上段)、この数字は 1998 年とほぼ同じレベルであり、1990 年代を通してみ ると平均的な数字である。 I 発注国別動向:産油国の発注が回復 産油国・非産油国別に見ると、2000 年の成約額増加は産油国によるところが大きい。 産油国では前年比 69.0% 増であるのに対し、非産油国では 29.1% の増加である。1999 年 の数字にイスラエル発注分の全てが含まれていないことを考慮すれば、その傾向はさら に顕著である。これは、1998 年の低油価による産油国の石油収入減少の影響を受けて、 1999年の中東 (特に湾岸産油国)プロジェクト市場が低迷したことに対する反動と考えら れる (注 2)。 1. 成約額が大きかった国 2000 年に中東で一番成約額が大きかった国は、前年に引き続きイランである。総額は 74 億 1200 万ドルで、対前年伸び率は 69.3%、構成比では中東全体の 22.5% を占め、前年 を上回った。その主要因は、大規模なガス田開発と計 10 件の石油化学プロジェクトであ る。 最大のプロジェクトは、イタリアの Agip とイランの Petro Pars によるコンソーシアム が受注した、総額 36 億ドルの South Pars ガス田開発 (第 4、5 フェーズ)である。この案件 はバイバック方式で行われ、Agip と Petro Pars は出資比率 60:40 で投資を行う。今回の契 約は、単独の石油・ガス案件としてはイスラーム革命以来最大と伝えられている。 さらに、イランは石油化学開発計画を推しすすめており、2000 年はバンダル・ホメイ ニのオレフィン・プラント建設 (3 億 3300 万ドル)、バンダル・アサルーイェの第 4 アロ マティクス・プラント建設 (9400 万ドル)など、計 13 億 6900 万ドルに上る成約があった。 第 2 位は UAE で、総契約額 57 億 7520 万ドルであった。そのうち、エミレーツ航空が、 エアバス社から世界最大のジャンボ・ジェット機 A3XX を 7 機購入する (5 機のオプショ ン付き)案件が、契約額 15 億ドルで最大である。エミレーツ航空は 2006 年 2 月に座席数 560 席の旅客機 5 機、2008 年春に貨物機 2 機の引き渡しを受ける予定である。さらにボー イング社とは、777-300型ジェット機6機購入 (10億ドル)の趣意書 (LOI)を交わしている。 また、ジャバル・アリー K の発電・淡水化プラント建設 (5 億 8720 万ドル)、Umm al-Nar の淡水化設備の建設 (5 億ドル)など、電力・水関連のプロジェクトも多く契約に至った。 国防案件を含めると、米 Lockheed Martin 社から F-16 戦闘機 80 機を 64 億ドルで購入す 2 -情勢分析20010302- 図表1:中東プロジェクト成約高推移(1998 - 2000年) (単位:100万ドル、%) 国防除く 1998年 1999年 2000年 イラン UAE サウジアラビア アルジェリア クウェート カタル オマーン リビア イラク バハレーン 産油国計 トルコ イスラエル エジプト モロッコ シリア レバノン チュニジア パレスチナ ヨルダン イエメン スダン 非産油国計 非産油国計 * 合計 合計* 2,143.0 8,066.0 6,807.7 275.9 400.6 1,315.5 607.6 333.0 33.5 818.3 20,801.1 3,689.0 4,025.0 304.2 396.1 86.9 100.8 44.8 79.1 6.3 1,202.2 9,934.4 9,934.4 30,735.5 30,735.5 4,379.2 2,570.6 2,107.9 312.1 984.9 1,484.4 664.5 516.0 15.0 617.4 13,652.0 2,891.9 400.0 2,929.4 313.8 291.5 70.5 266.0 10.0 385.6 93.1 0.0 7,651.7 7,251.7 21,303.7 20,903.7 7,412.0 5,775.2 4,513.1 1,814.6 1,207.6 751.7 707.2 589.0 123.5 183.3 23,077.2 4,124.6 2,139.3 1,697.9 1,299.2 250.4 120.4 103.0 85.4 53.5 4.1 0.0 9,877.8 7,738.5 32,955.0 30,815.7 国防含む 1998年 1999年 2000年 UAE イラン サウジアラビア アルジェリア クウェート カタル オマーン リビア イラク バハレーン 産油国計 トルコ イスラエル エジプト モロッコ シリア レバノン チュニジア パレスチナ ヨルダン イエメン スダン 非産油国計 非産油国計* 合計 合計* 13,809.0 2,143.0 6,980.7 275.9 400.6 1,315.5 607.6 333.0 33.5 838.0 26,736.8 4,540.0 4,062.4 304.2 396.1 86.9 100.8 44.8 79.1 6.3 1,202.2 10,822.7 10,822.7 37,559.5 37,559.5 5,672.3 4,379.2 2,109.2 312.1 1,484.9 1,484.4 664.5 516.0 15.0 626.5 17,264.1 2,913.9 400.0 3,112.9 313.8 291.5 70.5 266.0 10.0 385.6 93.1 0.0 7,857.3 7,457.3 25,121.4 24,721.4 12,654.7 7,412.0 4,513.1 1,814.6 1,207.6 751.7 707.2 589.0 123.5 215.3 29,988.7 5,624.6 3,164.3 1,706.3 1,299.2 250.4 120.4 103.0 85.4 53.5 4.1 0.0 12,411.2 9,246.9 42,399.9 39,235.6 出所:MEED各号 注:*の合計はイスラエルの成約高を除いた合計。 構成比はイスラエルの成約額を含めて計算。 3 99/98伸び率 00/99伸び率 104.3 -68.1 -69.0 13.1 145.9 12.8 9.4 55.0 -55.2 -24.6 -34.4 -21.6 -27.2 3.2 -26.4 -18.9 163.9 -77.7 387.8 1,374.3 -23.0 -27.0 -30.7 -32.0 69.3 124.7 114.1 481.4 22.6 -49.4 6.4 14.1 723.3 -70.3 69.0 42.6 -42.0 314.0 -14.1 70.9 -61.3 754.0 -86.1 -95.6 29.1 6.7 54.7 47.4 99/98伸び率 00/99伸び率 -58.9 104.3 -69.8 13.1 270.7 12.8 9.4 55.0 -55.2 -25.2 -35.4 -35.8 -23.4 3.2 -26.4 -18.9 163.9 -77.7 387.8 1,374.3 -27.4 -31.1 -33.1 -34.2 123.1 69.3 114.0 481.4 -18.7 -49.4 6.4 14.1 723.3 -65.6 73.7 93.0 -45.2 314.0 -14.1 70.9 -61.3 754.0 -86.1 -95.6 58.0 24.0 68.8 58.7 構成比 寄与度 (2000年) (2000年) 22.5 14.5 17.5 15.3 13.7 11.5 5.5 7.2 3.7 1.1 2.3 -3.5 2.1 0.2 1.8 0.3 0.4 0.5 0.6 -2.1 70.0 45.1 12.5 5.9 6.5 5.2 -5.9 3.9 4.7 0.8 -0.2 0.4 0.2 0.3 -0.8 0.3 0.4 0.2 -1.6 0.0 -0.4 0.0 0.0 30.0 23.5 2.3 100.0 47.4 構成比 寄与度 (2000年) (2000年) 29.8 28.2 17.5 12.3 10.6 9.7 4.3 6.1 2.8 -1.1 1.8 -3.0 1.7 0.2 1.4 0.3 0.3 0.4 0.5 -1.7 70.7 51.5 13.3 11.0 7.5 4.0 -5.7 3.1 4.0 0.6 -0.2 0.3 0.2 0.2 -0.7 0.2 0.3 0.1 -1.3 0.0 -0.4 0.0 0.0 29.3 7.2 100.0 58.7 -情勢分析20010302- る契約を結んだため、UAE の成約総額は 126 億 5470 万ドルとなり、イランを抜いて第 1 位の発注国となる。 第 3 位は 45 億 1310 万ドルでサウジアラビアである。1999 年と比べれば 114.1% の伸び を示しているが、例年の 60 - 70% の水準にとどまっており、完全に回復したとは言えな い。2000 年最大のプロジェクトとなったのは、特に巡礼期間中に需要が見込まれるメッ カとジッダに、公衆電話機を 10 万台設置する (5 億 8700 万ドル)ものである。また前年目 立った契約が見られなかった石油・ガス分野は、Haradh ガス開発計画におけるガス処理 設備の建設 (4 億 800 万ドルで日揮が受注)、Berri ガス処理プラントの NGL 回収装置の建 設 (3 億 8500 万ドル)などがあり、再び主要分野に返り咲いた。 第 4 位はトルコで、 「通信」 「電力・水」分野で大型案件があったために、非産油国で は最大の発注国となった。 「通信」では Turkcell と Telsim が、それぞれ携帯電話システム に関するプロジェクトを発注した (合計 23 億 5000 万ドル)。「電力・水」では 10 基のガ ス・タービン供給 (9 億ドル)と Melen 水供給プロジェクトの一部 (合計 4 億 1580 万ドル) が成約に至った。 第 5 位はイスラエルである。21 億 3930 万ドルという契約額の大部分は、15 億ドルの IC チップ製造工場建設が占めている。なお東芝はこのプロジェクトに米 SanDisk と共に 出資しており、受注元の Tower Semiconductor に製造・加工技術を供与する契約も結んで いる。 2. 寄与度が大きかった国 対前年比 47.4% 増 (イスラエルを除く)というプロジェクト市場成長率に最も影響を与 えたのは、寄与度が高い順に UAE、イラン、サウジアラビア、アルジェリア、トルコ、 モロッコであった。 アルジェリアは成約総額 18 億 1460 万ドルと、ここ数年では特に高額となった。発注 件数は 6 件のみで、いずれも石油・ガス関連であった。最高額案件は首都アルジェの南 東 800km にある Ourhoud 油田の原油回収設備建設プロジェクトで、スペインの Initec と 共に日揮が 7 億 1500 万ドルで受注した。Ourhoud 油田の開発は、生産分与契約に基づい て Sonatrach が海外企業 6 社と共に実施しており、23 万 b/d の生産量が見込まれている。 またモロッコの契約総額は 12 億 9900 万ドルであった。ボーイング社から中距離輸送 機 20 機、長距離輸送機 2 機を購入する契約 が 11 億ドルで、その大部分を占めた。 3. 寄与度が低かった国 逆に寄与度が低かった国は、順にエジプト、カタル、バハレーンであった。 エジプトは全体で見ると総発注額 16 億 9790 万ドルで第 7 位となったが、2 年連続で大 幅に減少した。エジプトは 1998年から、経常赤字拡大と外貨準備高低下への対策として 輸入抑制政策をとってきたが、さらに 2000年には議会でのメガ・プロジェクト批判をう けて、中止に追い込まれるプロジェクトも出始めた。これらが成約減に影響したと思わ 4 -情勢分析20010302- れる。 カタルはここ 10 年で最低の額である。例年石油・ガス、または電力・水分野での契約 が多いカタルであるが、2000 年にはそれらの分野で特に大きな契約がなかった。カタル は 1991 年度以来財政赤字が続いている。1999 年度には黒字に転じたと予想されるが、 2000 年度の政府財政は再び赤字となる予定である (注 3)。そのため開発支出予算のほと んどは進行が遅れている既存のプロジェクトに充てられており、もし油価が再び下がる ようなことがあれば、新規プロジェクトに充てられる予算も使われない可能性があると いう。 バハレーンもここ10年では特に低い額であった。政府は失業対策のために、1998年か ら 2002 年にかけて電力、水関連の事業に 9 億ディーナール (約 24 億ドル)を拠出する計 画を持っていたが、給与支払いを含む経常支出を削減することのほうがより社会不安を 増大させているとして、1999 - 2000年の開発支出予算を1998年実績の1億5000万ディー ナールから、各年 1 億 3000 万ディーナールに削減した。こうした政策が 2000 年の成約額 減に影響したと思われる。しかし油価高騰の恩恵を受けた 2001 - 2002 年の予算では、開 発支出は 2 年間で 3 億 2000 万ディーナールとなっており、国内のインフラ整備などに充 てられると見られている (注 4)。 II 受注国別動向:単独では米国が一位に 次に、受注国別に動向を見ると (図表 2)、国際コンソーシアム・多国籍企業 (ML)によ る受注が最も多く、全体の 34.2% を占める 112 億 7020 万ドルを受注した。代表的案件は イランの South Pars ガス田開発、イスラエルでの IC チップ工場建設 、また UAE の航空 機供給契約など (いずれも前出)である。 2番目に多く受注を獲得したのは米国である。単独国での受注実績を比べてみると、米 国が他の国を圧倒していることがわかる。 「電力・水」 「通信」の分野での受注が際だっ ているが、これにはいずれもトルコとの契約が大きく貢献しており、2000 年の米国の最 大相手国はトルコであった。また国防分野を含めれば、先述したUAEとの戦闘機供給契 約などにより、その成約額は 149 億 9570 万ドルとなり、米国が中東市場全体の 3 分の 1 以上を占めた。 受注国別第 3 位は韓国である。 「鉱工業」 「電力・水」 「輸送機器」 「石油・ガス」など、 中東地域における主要分野でほぼまんべんなく契約を獲得したかたちとなった。 第 4 位はサウジアラビアで、 「通信」 「インフラ」分野で大きなプロジェクトを受注し たことが大きい。サウジアラビアは毎年全体の 3 - 6% を受注しており、ほとんどがサウ ジ国内での受注である。国内でも 1 億ドルを超えるような大規模なプロジェクトは外国 企業が受注し、その他の小口案件をサウジ企業が請け負う傾向がある。 主要受注国の多くが前年から受注額を増加させた中で、第 5 位のイタリアは 33.4% の 減少となった。これは1999 年に、特にイランとの間で大型の契約があったことに対する 反動である。 5 -情勢分析20010302- 図表2:受注国別動向 (a) 分野別 (単位:100万ドル、%) 農業 ML 米国 韓国 イタリア スウェーデン フランス 日本 ドイツ イギリス 中国 オーストリア インド ロシア オランダ スイス チェコ ギリシャ アイルランド カナダ ベルギー ノルウェー デンマーク ハンガリー 中東計 サウジアラビア イラン UAE トルコ イスラエル クウェート オマーン カタル エジプト アルジェリア モロッコ レバノン ヨルダン バハレーン その他 合計 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 鉱工業 電力・水 インフラ 運輸機器 1,848.5 0.0 297.0 110.0 0.0 0.0 83.0 0.0 0.0 0.0 272.0 1.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 154.7 0.0 0.0 146.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 8.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 225.0 2,991.5 768.3 1,057.5 536.8 757.2 11.0 546.5 83.4 100.9 114.0 100.0 87.0 100.0 0.0 0.0 19.5 61.0 54.5 2.2 13.3 0.0 0.0 0.0 0.0 668.1 298.4 0.0 30.0 253.7 0.0 0.0 80.0 0.0 6.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 5,081.2 979.7 3.0 324.0 0.0 0.0 51.0 0.0 12.0 0.0 470.0 5.0 0.0 0.0 24.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 20.0 0.0 12.0 0.0 1,124.2 516.0 0.0 191.9 237.0 32.0 26.0 10.4 8.5 29.0 0.0 72.0 0.0 0.0 1.4 0.0 3,024.9 1,518.5 1,100.0 405.3 0.0 60.0 0.0 22.0 83.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 51.0 0.0 0.0 20.0 0.0 5.0 204.6 0.0 0.0 4.6 0.0 0.0 200.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3,470.3 通信 3.0 2,170.0 0.0 0.0 1,273.0 92.3 0.0 17.0 220.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 30.3 0.0 0.0 0.0 0.0 746.5 730.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 15.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 4,552.1 金融保険 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 9.5 0.0 0.0 9.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 10.1 商業 観光 31.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 253.5 1.2 0.0 116.5 0.0 100.0 0.0 0.0 35.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 285.1 60.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 121.3 37.0 0.0 0.0 0.0 0.0 19.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 56.8 8.5 0.0 0.0 181.8 公共 サービス 229.0 0.0 130.0 0.0 55.0 484.6 0.0 0.0 4.5 0.0 0.0 10.9 0.0 0.1 28.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 640.9 202.3 0.0 193.3 0.0 118.0 0.0 0.0 54.0 69.0 0.0 0.0 0.0 4.3 0.0 0.0 1,583.0 国防 20.0 9,360.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 40.0 10.9 0.0 0.0 0.0 13.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 13.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 9,444.9 構成比 石油・ 合計 (除く国防) ガス 5,831.4 11,290.2 11,270.2 34.2 1,304.8 14,995.7 5,635.3 17.1 338.5 2,031.6 2,031.6 6.2 782.0 1,649.2 1,649.2 5.0 0.0 1,399.0 1,399.0 4.2 174.5 1,348.9 1,348.9 4.1 781.0 969.4 969.4 2.9 753.3 967.7 967.7 2.9 417.0 755.8 755.8 2.3 16.5 586.5 586.5 1.8 0.0 364.0 364.0 1.1 181.0 293.2 293.2 0.9 80.9 80.9 80.9 0.2 56.2 80.3 80.3 0.2 14.4 61.9 61.9 0.2 0.0 61.0 61.0 0.2 0.0 54.5 54.5 0.2 0.0 53.2 53.2 0.2 0.0 83.6 43.6 0.1 0.0 30.9 20.0 0.1 0.0 20.0 20.0 0.1 0.0 12.0 12.0 0.0 0.0 5.0 5.0 0.0 1,043.5 4,980.5 4,966.9 15.1 30.0 1,815.6 1,815.6 5.5 850.0 850.0 850.0 2.6 0.0 692.5 692.5 2.1 0.0 490.7 490.7 1.5 0.0 250.0 250.0 0.8 0.0 258.6 245.0 0.7 46.8 153.0 153.0 0.5 31.0 129.3 129.3 0.4 0.0 112.0 112.0 0.3 85.7 85.7 85.7 0.3 0.0 72.0 72.0 0.2 0.0 56.8 56.8 0.2 0.0 12.8 12.8 0.0 0.0 1.4 1.4 0.0 0.0 225.0 225.0 0.7 11,775.0 42,399.9 32,955.0 100.0 出所:MEED各号 注:構成比は国防分野を除く。 (b)発注国別 アルジェリア バハレーン エジプト イラン イラク イスラエル ヨルダン クウェート レバノン リビア モロッコ オマーン カタル サウジアラビア シリア チュニジア トルコ UAE イエメン パレスチナ 合計 (単位:100万ドル) 日本 359.0 16.7 0.0 83.0 0.0 0.0 0.0 78.7 0.0 0.0 0.0 2.0 0.0 408.0 0.0 0.0 0.0 22.0 0.0 0.0 969.4 米国 イギリス フランス 574.0 0.0 0.0 0.0 0.0 31.8 449.5 0.0 462.0 0.0 0.0 85.0 0.0 0.0 0.0 133.0 0.0 0.0 23.0 0.3 16.7 42.0 0.0 0.0 0.0 0.0 34.6 0.0 0.0 0.0 1,146.0 0.0 41.0 0.8 114.0 0.0 0.0 18.0 173.6 669.0 385.0 8.0 160.0 0.0 0.0 0.0 14.0 39.0 2,400.0 0.0 52.7 19.0 224.5 404.5 0.0 0.0 0.0 19.0 0.0 0.0 5,635.3 755.8 1,348.9 ドイツ イタリア 0.0 0.0 0.0 0.0 12.0 0.0 606.0 200.0 0.0 0.0 83.9 0.0 0.6 0.0 30.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 250.0 202.0 280.0 0.0 0.0 0.0 0.0 17.3 48.0 15.4 871.2 0.0 0.0 0.0 0.0 967.7 1,649.2 カナダ 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 12.0 0.0 0.0 0.0 30.3 0.0 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 43.6 韓国 0.0 0.0 0.0 192.0 0.0 0.0 0.0 652.7 0.0 0.0 0.0 0.0 140.1 380.0 0.0 0.0 0.0 666.8 0.0 0.0 2,031.6 出所:MEED各号 注:他OECDにトルコを含む。 (c)対前年比較 (単位:100万ドル、%) 1999年 2000年 ML 5,778.3 11,270.2 米国 1,289.8 5,635.3 韓国 2,120.0 2,031.6 サウジアラビア 1,176.5 1,815.6 イタリア 2,476.8 1,649.2 スウェーデン 820.7 1,399.0 フランス 1,204.0 1,348.9 日本 809.6 969.4 ドイツ 549.9 967.7 イラン 227.8 850.0 イギリス 300.2 755.8 UAE 950.9 692.5 その他 3,599.3 3,569.8 合計 21,303.7 32,955.0 出所:MEED各号 6 伸び率 95.0 336.9 -4.2 54.3 -33.4 70.5 12.0 19.7 76.0 273.1 151.8 -27.2 -0.8 54.7 中国 他OECD ML 0.0 0.0 715.0 0.0 2.2 121.0 0.0 339.0 193.0 100.0 198.0 5,058.0 0.0 23.5 0.0 0.0 0.0 1,672.4 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 177.7 0.0 19.5 9.5 470.0 51.0 0.0 0.0 36.0 60.2 0.0 0.0 187.4 16.5 12.0 0.0 0.0 345.4 0.0 0.0 46.0 23.5 0.0 50.0 0.0 0.0 1,376.4 230.2 0.0 122.5 2,755.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 66.4 586.5 2,621.6 11,270.2 その他 合計 166.6 1,814.6 11.6 183.3 242.4 1,697.9 890.0 7,412.0 100.0 123.5 250.0 2,139.3 12.8 53.5 226.0 1,207.6 56.8 120.4 56.0 589.0 16.0 1,299.2 403.0 707.2 141.5 751.7 1,805.4 4,513.1 20.9 250.4 0.0 103.0 0.0 4,124.6 672.1 5,775.2 4.1 4.1 0.0 85.4 5,075.3 32,955.0 -情勢分析20010302- 図表3:分野別動向 図表4:石油・ガス分野内訳 (単位:100万ドル、%) 1999年 2000年 石油・ガス 7,157.4 11,775.0 電力・水 5,364.7 5,081.2 通信 1,452.5 4,552.1 運輸機器 1,920.7 3,470.3 インフラ 1,688.8 3,024.9 鉱工業 889.9 2,991.5 公共サービス 936.8 1,583.0 商業 1,246.8 285.1 観光 523.4 181.8 金融保険 4.7 10.1 農業 118.2 0.0 国防 3,817.6 9,444.9 合計 25,121.4 42,403.9 (除く国防) 21,303.7 32,955.0 (単位:100万ドル) 伸び率 構成比99 構成比00 64.5 28.5 27.8 -5.3 21.4 12.0 213.4 5.8 10.7 80.7 7.6 8.2 79.1 6.7 7.1 236.2 3.5 7.1 69.0 3.7 3.7 -77.1 5.0 0.7 -65.3 2.1 0.4 114.9 0.0 0.0 -100.0 0.5 0.0 147.4 15.2 22.3 68.8 100.0 100.0 54.7 84.8 77.7 1999年 2000年 1,138.0 6,526.4 2,304.0 2,037.0 1,760.5 1,873.6 753.9 574.8 749.6 386.5 307.7 299.9 70.0 0.0 73.6 76.8 7,157.4 11,775.0 ガス開発 石油開発 石油化学 ガス輸送 石油精製 石油輸送 ガス精製 その他 合計 出所:MEED各号 出所:MEED各号 図表5 生産量・埋蔵量シェア (%) 天然ガス 40.0 35.0 生産量 埋蔵量 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 イ ラ ン カ タ ル U A E サ ウ ジ ア ラ ビ ア ア ル ジ ェ リ ア イ ラ ク ク ウ ェ ー ト エ ジ プ ト リ ビ ア 米 国 旧 ソ 連 カ ナ ダ オ ー ス ト ラ リ ア ノ ル ウ ェ ー ベ ネ ズ エ ラ ナ イ ジ ェ リ ア マ レ ー シ ア イ ン ド ネ シ ア 中 国 そ の 他 原油 (%) 40.0 35.0 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 イ ラ ン カ タ ル サ ウ ジ ア ラ ビ ア U A E ア ル ジ ェ リ ア イ ラ ク ク ウ ェ ー ト リ ビ ア エ ジ プ ト 旧 ソ 連 出所:Oil & Gas Journal, 2000.03.13, 2000.12.18 注:埋蔵量は2001年1月1日の確認埋蔵量。 生産量は1999年。 7 米 国 カ ナ ダ オ ー ス ト ラ リ ア ノ ル ウ ェ ー ベ ネ ズ エ ラ ナ イ ジ ェ リ ア マ レ ー シ ア イ ン ド ネ シ ア 中 国 そ の 他 -情勢分析20010302- III 分野別動向:ガス開発が増加 分野別の動向を見ると、石油・ガス分野が第 1 位で、続いて「電力・水」 「通信」と なり、上位 2 分野は昨年と同分野であった (図表 3)。 最も成約額の大きかった石油・ガス分野を、さらに細かく分類したものが図表 4 であ る。イラン、アルジェリア、サウジアラビアにおけるガス田開発の進展が反映されて、 ガス開発部門での成約額増が著しい。 図表5は世界主要国の原油・天然ガスの埋蔵量と生産量の世界シェアを表したもので ある。ここで注目されるのは、中東諸国の生産量と埋蔵量のシェアの差が特に天然ガス で大きいということであり、 中東諸国の天然ガス開発が石油に比べて十分に行われてい ない、つまり今後開発される余地が大きいという点である。 中東産油国の多くは、その経済が石油に大きく依存しており、そうした経済体質から 抜け出そうと様々な策を試みている。その一環として、また増加する国内エネルギー需 要をまかなう策として、天然ガス開発を推し進めている国も少なくない。また消費国側 から見ても、天然ガスは石油、石炭に代わるエネルギーとしてその利用に注目が集まっ ている(注 5)。こうした産出国、消費国の現状を考えると、開発国の外資導入などの投 資環境が整えば、 中東におけるガス関連の開発プロジェクトが今後増えていく可能性は 十分に考えられる。特に、日本もカタルなどで応札の準備を進めている LNG プラント は、1000 億円前後の事業規模が見込まれており (注 6)、特に期待の高い分野であろう。 第 2 位となった電力・水分野は、金額では上位に位置したものの 1999 年より 5.3% 減 少した。 一方で第 3 位の通信分野は、前年比 3 倍以上の伸びを示した。その半数以上が、携帯 電話システムの拡張に関する案件であり、総額の約 47.7% を米国企業が受注した。 第 4 位の運輸機器分野は、エアバス機やボーイング機など、大型航空機の供給契約が 2 件あり、それに支えられたかたちとなった。 インフラ分野では、ドバイ国際空港のコンサルタント契約、サウジアラビアのハイ ウェイ・メンテナンス契約など、空港や道路に関するものが多かった。 第 5 位の鉱工業分野は、対前年比 236.2% の増加と、最も高い伸び率を示した。主案 件は、イスラエルでの IC チップ製造工場の建設契約である。 IV 日本の動向と今後の見通し:世界規模での価格競争 図表 6 は最近 10 年間における、日本と韓国の受注実績の推移である。1990 年代前半 までは日本が韓国の実績を上回っていたが、1995年を境に形勢が逆転した。途中、通貨 危機の影響を受け韓国が額を減らした年はあったものの、中東市場では韓国が優位に 立っているといえる。 世界的に見ても日本のエンジニアリング・建設会社は、技術・ノウハウ面で優れた欧 米企業およびコストの安い韓国企業との間で板ばさみとなり、苦戦を強いられている。 欧米企業にとっても、価格の面から言えば、日本企業よりもウォン安に支えられる韓国 8 -情勢分析20010302- 図表6:日本と韓国の受注実績推移(1991 - 2000年) (100万ドル) 12,000 日本 10,000 韓国 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 出所:MEED各号 図表7:日本の主な受注プロジェクト (2000年) 発注国 アルジェリア サウジアラビア アルジェリア イラン イラン クウェート サウジアラビア プロジェクト Ourhoud油田開発 Haradhガス田開発 Hassi R'Melガス圧縮プラント建設 第4アロマティクス・プラント建設 アルダカン・ペレットプラント建設 シュアイバ変電所建設 アンモニア・プラント建設 受注企業 日揮、 Initec (スペイン) 日揮 伊藤忠、日揮 東洋エンジ、信和 (韓)、サゼ (イ) 神戸製鋼コンソーシアム 日立製作所 東洋エンジニアリング 金額 7億1500万ドル 4億800万ドル 3億5900万ドル 9400万ドル 8300万ドル 3190万ドル 20億円 出所:MEED各号 図表8:日本の受注相手国・受注分野 1999年 2000年 トルコ UAE サウジアラビア エジプト レバノン バハレーン 合計 日本 500.0 124.7 113.7 70.0 0.0 1.2 809.6 ML 0.0 0.0 0.0 0.0 2.0 0.0 2.0 合計 500.0 124.7 113.7 70.0 2.0 1.2 811.6 石油・ガス 電力・水 運輸機器 通信 合計 日本 500.0 264.9 44.0 0.7 809.6 ML 0.0 0.0 0.0 2.0 2.0 合計 500.0 264.9 44.0 2.7 811.6 アルジェリア サウジアラビア イラン クウェート トルコ UAE バハレーン オマーン 合計 日本 359.0 408.0 83.0 78.7 0.0 22.0 16.7 2.0 969.4 ML 合計 715.0 1,074.0 0.0 408.0 94.0 177.0 0.0 78.7 43.0 43.0 0.0 22.0 0.0 16.7 0.0 2.0 852.0 1,821.4 石油・ガス 電力・水 鉱工業 運輸機器 合計 日本 781.0 83.4 83.0 22.0 969.4 ML 合計 809.0 1,590.0 43.0 126.4 0.0 83.0 0.0 22.0 852.0 1,821.4 出所:MEED各号 単位:100万ドル 企業が脅威であるという (注 7)。そのため日本のエンジニアリング各社においても、以 前はありえなかった国内での提携・再編、または非プラント事業の強化を余儀なくされ ている (注 8)。 図表 7 は 2000 年に日本企業が関連したプロジェクトを、図表 8 は 1999 年と 2000 年に おけるそれらの内訳を示したものである。日本単独での受注は1999年からそれほど伸び ていないものの、2000 年は他国企業と手を組むことによって、アルジェリアとイランで 大きなプロジェクトの受注に成功した。 アルジェリアでのプロジェクトは先に述べたOurhoud油田の原油回収設備建設であり、 9 -情勢分析20010302- 日揮がスペインの Initec と共同で受注した。イランでは、日本の東洋エンジニアリング と、韓国の信和建設、イランのサゼ・コンサルタンツのコンソーシアムが、バンダル・ アサルーイェの第 4 アロマティクス・プラント建設 (9400 万ドル)の受注に成功した (注 9)。日・韓エンジニアリング会社の連合はこれが初めてである。東洋エンジニアリング がプラント設計、機材調達を、信和建設が付帯設備建設を、サゼが詳細設計を分担する。 図表9:MLの受注シェア推移(1991 - 2000年) 100% その他 90% 80% ML 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 出所:MEED各号 こうした国際コンソーシアムによる受注は、世界規模でコスト競争力を高める目的の みならず、特に投資規模が大きい案件においては、投資リスクの分散をはかることがで きるという利点もあり、近年増加する傾向にある。実際中東プロジェクト市場において も、ML による受注シェアは年々増えてきており (図表 9)、こうした流れが日本だけのも のではないことがわかる。 エンジニアリング振興協会の調べによれば、国際化のための施策として日本のエンジ ニアリング各社が重要と考えている項目として、 「欧米エンジ企業とのコンソーシアム・ JVの推進」が上位にランクインしている (注10)。日本企業が中東で生き残りをかけてい くにあたっても、国内外の企業との連携が一つの重要政策となってくるのではないだろ うか。 (斎藤 貴子) 注 1:本稿では、特に説明がない限り成約総額には国防案件の金額は含まない。 注 2:イラクについて、拙稿「中東プロジェクト動向 ---2000 年上半期 ---」 『情勢分析』Vol.2, ( No.12、2000 年 10 月 13 日、中東経済研究所)では、国連のオイル・フォー・フード計画の承認を受けていないプ ロジェクトも集計に含めたが、本稿 図表10:イラク発注のプロジェクト(2000年) では2000年中に承認を受けたと報道 (単位:100万ドル) されたもののみを含めた。未承認の プロジェクト名 受注企業 契約額 Technopromexport (ロシア) 419.0 案件も含めるとイラクの成約総額は 火力発電所建設 トルコへのガス輸出プロジェクト Agip (伊)、 Gas de France (仏) 2,300.0 28億 4250万ドルとなる。内容は図表 変電所設置 (6基)* STFA (トルコ) 23.5 10 の通りである。 ガス・タービン2基供給 (159-MW)* Bharat Heavy Electricals (インド) 100.0 出所:MEED各号 注:*印は国連承認済み。 10 -情勢分析20010302- 注 3:Country Profile 2000, Bahrain/Qatar, EIU 注 4:MEED, 2000.12.15; Gulf Daily News, 2000.11.06 注 5:世界の天然ガスの需給関係、消費見通しについては、高橋隆義「世界の天然ガス情勢と湾岸諸国の 天然ガス輸出」 『現代中東研究』Vol.3, No.3、1999 年 10 月、中東経済研究所 注 6:日経産業新聞、2000.07.27、2001.01.31 注 7:日本経済新聞、2000.06.08 注 8:日経産業新聞、2000.12.05、2000.12.06 注 9:東洋エンジニアリング社の発表、その他邦字紙の報道によれば受注金額は 430 億円となっている。 注 10: 「平成 12 年度 エンジニアリング産業の実態と動向」エンジニアリング振興協会 (単純得票数で第 5 位、業種別構成比に沿って平均を出した順位で第 1 位となっている) 付表1:発注国別・分野別動向 (単位:100万ドル) 2000年 農業 鉱工業 電力・水 インフラ 運輸機器 通信 金融保険 商業 観光 公共 国防 サービス アルジェリア バハレーン エジプト イラン イラク イスラエル ヨルダン クウェート レバノン リビア モロッコ オマーン カタル サウジアラビア スダン シリア チュニジア トルコ UAE イエメン パレスチナ 合計 1999年 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 農業 0.0 0.0 505.0 655.0 0.0 1,500.0 0.0 105.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 0.0 8.5 216.7 0.0 0.0 2,991.5 0.0 0.0 127.9 1.4 230.5 146.4 424.0 0.0 123.5 0.0 0.0 204.4 3.3 0.0 109.2 350.0 19.5 9.5 12.0 526.0 0.0 57.0 257.4 10.4 152.0 20.5 353.4 545.0 0.0 0.0 6.9 0.0 0.0 10.0 1,386.1 228.8 1,852.4 853.5 4.1 0.0 19.0 62.0 5,081.2 3,024.9 0.0 0.0 0.0 65.0 0.0 83.9 0.0 200.0 0.0 51.0 1,100.0 0.0 75.3 330.0 0.0 18.5 0.0 0.0 1,546.6 0.0 0.0 3,470.3 鉱工業 電力・水 インフラ 運輸機器 0.0 8.0 51.0 35.0 0.0 133.0 36.4 42.0 0.0 0.0 82.0 15.8 21.6 1,439.0 0.0 0.0 74.0 2,350.0 264.3 0.0 0.0 4,552.1 通信 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 9.5 0.0 0.0 10.1 金融保険 0.0 1.2 0.0 0.0 0.0 100.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 35.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 143.7 0.0 4.4 285.1 商業 0.0 1.0 0.0 0.0 0.0 0.0 8.8 0.0 56.8 0.0 60.2 0.0 0.0 36.0 0.0 19.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 181.8 観光 0.0 0.0 0.0 32.0 505.0 8.4 0.0 0.0 0.0 0.0 118.0 1,025.0 4.4 0.0 57.7 0.0 34.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 69.0 0.0 64.9 0.0 202.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 23.0 1,500.0 504.1 6,879.5 0.0 0.0 0.0 0.0 1,583.0 9,444.9 公共 国防 サービス アルジェリア バハレーン エジプト イラン イラク イスラエル ヨルダン クウェート レバノン リビア モロッコ オマーン カタル サウジアラビア スダン シリア チュニジア トルコ UAE イエメン パレスチナ 合計 2.6 22.9 64.5 13.2 15.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 118.2 14.2 8.9 346.1 58.0 0.0 0.0 160.0 0.0 0.0 0.0 0.0 7.3 0.0 48.5 0.0 198.0 0.0 0.0 49.0 0.0 0.0 889.9 107.0 33.4 129.7 948.0 0.0 0.0 126.7 307.3 0.0 16.0 7.2 284.1 0.0 948.0 0.0 0.0 266.0 1,342.6 798.7 50.0 0.0 5,364.7 74.3 15.8 473.0 0.0 0.0 0.0 25.1 310.0 3.8 0.0 62.0 162.0 0.0 260.9 0.0 0.0 0.0 20.4 236.5 37.0 8.0 1,688.8 4.0 450.0 173.2 590.0 0.0 400.0 0.0 38.0 0.0 0.0 0.0 0.0 15.0 170.0 0.0 0.0 0.0 8.0 72.5 0.0 0.0 1,920.7 0.0 23.4 82.2 0.0 0.0 0.0 0.0 86.6 0.6 0.0 142.0 75.9 0.0 133.6 0.0 41.0 0.0 700.8 164.5 0.0 2.0 1,452.5 0.0 6.0 2.6 13.6 0.0 465.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 30.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 51.0 2.1 0.0 0.0 35.4 0.0 170.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 475.5 0.0 0.0 0.0 0.0 4.7 1,246.8 出所:MEED各号 11 0.0 0.0 189.1 0.0 0.0 0.0 35.7 0.0 0.0 0.0 0.0 10.5 100.0 78.3 0.0 0.0 0.0 0.0 109.8 0.0 0.0 523.4 74.0 46.8 285.5 0.0 0.0 0.0 13.1 80.8 66.1 0.0 51.6 2.6 0.0 208.5 0.0 0.0 0.0 56.2 51.2 0.4 0.0 936.8 0.0 9.0 183.6 0.0 0.0 0.0 0.0 500.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 22.0 3,101.7 0.0 0.0 3,817.6 石油・ ガス 1,814.6 43.8 260.0 6,233.0 0.0 0.0 0.0 343.7 0.0 0.0 0.0 354.6 380.3 1,607.4 0.0 206.0 19.0 128.2 384.4 0.0 0.0 11,775.0 石油・ ガス 30.0 0.0 721.1 2,770.0 0.0 0.0 25.0 132.2 0.0 500.0 0.0 120.0 1,334.0 90.0 0.0 52.5 0.0 763.9 612.9 5.7 0.0 7,157.4 合計 (除く国防) 1,814.6 1,814.6 215.3 183.3 1,706.3 1,697.9 7,412.0 7,412.0 123.5 123.5 3,164.3 2,139.3 53.5 53.5 1,207.6 1,207.6 120.4 120.4 589.0 589.0 1,299.2 1,299.2 707.2 707.2 751.7 751.7 4,513.1 4,513.1 0.0 0.0 250.4 250.4 103.0 103.0 5,624.6 4,124.6 12,654.7 5,775.2 4.1 4.1 85.4 85.4 42,399.9 32,955.0 合計 (除く国防) 312.1 312.1 626.5 617.4 3,112.9 2,929.4 4,379.2 4,379.2 15.0 15.0 400.0 400.0 385.6 385.6 1,484.9 984.9 70.5 70.5 516.0 516.0 313.8 313.8 664.5 664.5 1,484.4 1,484.4 2,109.2 2,107.9 0.0 0.0 291.5 291.5 266.0 266.0 2,913.9 2,891.9 5,672.3 2,570.6 93.1 93.1 10.0 10.0 25,121.4 21,303.7 -情勢分析20010302- 付表2:発注国・受注国別動向 (単位:100万ドル) アルジェリア バハレーン エジプト イラン イラク イスラエル ヨルダン クウェート レバノン リビア モロッコ オマーン カタル サウジアラビア スダン シリア チュニジア トルコ UAE イエメン パレスチナ 合計 日本 米国 イギリス フランス 359.0 574.0 0.0 0.0 16.7 12.0 0.0 31.8 0.0 457.9 0.0 462.0 83.0 0.0 0.0 85.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1,158.0 0.0 0.0 0.0 23.0 0.3 16.7 78.7 42.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 34.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 1,146.0 0.0 41.0 2.0 0.8 114.0 0.0 0.0 0.0 18.0 173.6 408.0 669.0 385.0 8.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 160.0 0.0 0.0 0.0 0.0 14.0 39.0 0.0 3,900.0 0.0 52.7 22.0 6,834.0 224.5 404.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 19.0 0.0 0.0 969.4 14,995.7 755.8 1,348.9 ドイツ イタリア 0.0 0.0 0.0 0.0 12.0 0.0 606.0 200.0 0.0 0.0 83.9 0.0 0.6 0.0 30.5 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 250.0 202.0 280.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 17.3 48.0 15.4 871.2 0.0 0.0 0.0 0.0 967.7 1,649.2 カナダ 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 12.0 0.0 0.0 0.0 30.3 0.0 0.0 0.0 0.0 41.3 0.0 0.0 83.6 韓国 0.0 0.0 0.0 192.0 0.0 0.0 0.0 652.7 0.0 0.0 0.0 0.0 140.1 380.0 0.0 0.0 0.0 0.0 666.8 0.0 0.0 2,031.6 中国 他OECD ML 0.0 0.0 715.0 0.0 2.2 141.0 0.0 339.0 193.0 100.0 198.0 5,058.0 0.0 23.5 0.0 0.0 0.0 1,672.4 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 177.7 0.0 19.5 9.5 470.0 51.0 0.0 0.0 36.0 60.2 0.0 0.0 187.4 16.5 12.0 0.0 0.0 345.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 46.0 23.5 0.0 50.0 0.0 0.0 1,376.4 230.2 0.0 133.4 2,755.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 66.4 586.5 2,632.5 11,290.2 その他 合計 166.6 1,814.6 11.6 215.3 242.4 1,706.3 890.0 7,412.0 100.0 123.5 250.0 3,164.3 12.8 53.5 226.0 1,207.6 56.8 120.4 56.0 589.0 16.0 1,299.2 403.0 707.2 141.5 751.7 1,805.4 4,513.1 0.0 0.0 20.9 250.4 0.0 103.0 0.0 5,624.6 685.7 12,654.7 4.1 4.1 0.0 85.4 5,088.9 42,399.9 出所:MEED各号 注:国防分野を含む 付表3:年次別成約額推移 (1990 - 2000年) (単位:100万ドル) 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 アルジェリア バハレーン イラン イラク クウェート リビア オマーン カタル サウジアラビア UAE 産油国計 835.2 1,253.5 559.7 1,678.8 968.5 2,517.4 2,533.7 199.2 275.9 312.1 1,814.6 151.0 189.7 356.1 1,406.0 177.3 322.1 556.9 710.0 838.0 626.5 215.3 4,179.3 8,107.9 7,427.8 1,865.2 2,967.0 3,043.5 5,092.6 3,995.5 2,143.0 4,379.2 7,412.0 934.8 12.0 30.3 0.9 0.0 0.0 0.0 0.7 33.5 15.0 542.5 1,150.3 1,169.5 2,210.2 1,123.0 2,983.3 1,972.3 834.1 810.5 400.6 1,484.9 1,207.6 6,542.5 847.9 356.0 1,072.0 161.5 1,435.3 10,574.5 357.5 333.0 516.0 589.0 1,077.6 560.4 469.5 752.8 602.0 292.9 1,613.4 1,744.9 607.6 664.5 707.2 83.7 1,093.5 1,024.0 1,971.9 2,454.2 1,151.0 2,712.9 871.8 1,315.5 1,484.4 751.7 8,666.0 7,034.7 4,405.8 5,297.4 19,411.0 7,319.0 8,388.5 7,682.0 6,980.7 2,109.2 4,513.1 1,299.7 4,807.6 5,871.9 8,586.8 1,834.1 1,367.9 4,679.4 4,486.8 13,809.0 5,672.3 12,654.7 24,920.1 25,076.8 22,711.2 23,754.8 31,558.8 19,421.3 36,985.9 20,858.9 26,736.8 17,264.1 30,407.7 エジプト イスラエル ヨルダン レバノン モロッコ スダン シリア チュニジア トルコ 北イエメン 南イエメン イエメン パレスチナ 非産油国計 合計 1,469.9 1,231.1 2,679.9 1,191.3 868.5 2,238.7 2,911.2 2,951.9 4,062.4 3,112.9 1,706.3 400.0 3,164.3 27.3 47.8 176.9 519.4 254.9 366.7 299.1 110.8 79.1 385.6 53.5 29.0 58.9 0.0 333.6 1,257.0 1,254.6 1,011.4 369.8 86.9 70.5 120.4 945.6 499.9 149.1 1,283.9 275.0 712.8 961.9 3,614.5 304.2 313.8 1,299.2 62.1 77.2 27.6 17.7 0.2 0.0 0.0 309.6 1,202.2 0.0 0.0 215.5 223.0 713.2 1,216.2 469.4 175.7 507.8 929.5 396.1 291.5 250.4 107.0 1,066.9 617.9 276.7 409.5 122.1 20.0 741.3 100.8 266.0 103.0 3,276.4 1,845.4 4,734.3 2,537.1 2,723.9 1,204.6 3,082.9 4,026.8 4,540.0 2,913.9 5,624.6 60.6 70.4 36.9 221.0 465.8 86.2 12.2 91.5 275.9 444.9 6.3 93.1 4.1 18.9 100.6 31.8 20.0 1.5 44.8 10.0 85.4 6,300.7 5,271.2 9,564.8 7,481.0 6,371.2 6,198.4 9,090.1 13,500.6 10,822.7 7,857.3 12,411.2 31,220.8 30,348.0 32,276.0 31,235.8 37,930.1 25,619.8 46,076.1 34,359.5 37,559.5 25,121.4 42,818.9 出所:MEED各号 注:イエメンについては、統合 (1990年)前は南北別に、それ以降は一国として集計。 イスラエルは1999年8月から収録。 国防分野を含む。 12 -情勢分析20010302- アルメニア人虐殺非難決議に見るトルコ・フランス・アルメニア関係 I 対仏制裁発動とそれまでの経緯 在アンカラ・フランス大使館の近くにフランス軍によるアルジェリア人虐殺を記録す るモニュメントを建立し、パリ、ドゴール、ストラスブールなどと名の付いた街路は名 称を変更する。こうアンカラ市長は同市議会に対し提案した。2001年1月フランスでは、 下院においてオスマン帝国によるアルメニア人虐殺を非難する決議が、パリ市議会にお いてはこの虐殺事件を記録するモニュメントを建立するという決定が相次いでなされ、 対するトルコは外交、経済、社会、あらゆる局面で様々な反発を示した。それらのうち、 冒頭のアンカラ市長の提案は、この時点におけるトルコ人の間で支配的だったヒステ リックな憤りの感情を最も端的に表していると思われる。 1 月 18 日、フランス下院の非難決議が成立した翌日、トルコ政府は駐フランス・トル コ大使を帰国させた。フランス議会に先んじて、既に同様の内容の非難決議が、米国下 院国際関係委員会、イタリア議会、ベルギー議会、そして欧州議会でも通過していたが、 トルコが大使を呼び戻したのはフランスが初めてであり、これまでで最もトルコが激し く怒っていることが窺われた。しかし、トルコ政府は駐フランス大使帰国の理由につい て、事後の対応策を打ち合わせるためだと説明し、召還という表現は避けた。またエジェ ビット首相も、フランス議会で決議が通るとその日のうちに、断固たる対抗措置をとる と勢いよく宣言しはしたものの、一方で、その声明の最後には「対抗措置をとることに よって、トルコも同時に不利益を被ることがあってはならない」という文言を付けるこ とを忘れず、報復への報復を呼ばないでフランスに抗議することの難しさを滲ませてい た。この段階では、トルコのフランスに対する経済的依存の強さを考えれば、実際に経 済制裁に踏み切れる訳がないと大方の者は考えていた。実際、フランスの決議に先んじ て決議を通した上記の他の国々の場合、トルコ政府が、それらの国との二国間関係を損 ねる行為だと非難する声明を出し、トルコの市民がアンカラやイスタンブールにある相 手国の在外公館周辺で抗議のデモを行ったことはあったが、実体を伴った対抗措置がと られたことはなかった。 従って、1 月 23 日トルコのチャクマクオール国防相が、フランスのアルカテル社と結 んだ 1 億 4,900 万ドルの衛星製造・打ち上げ契約を破棄すると発表したことは、少なから ぬ衝撃を持って受けとめられた。そして、この後もトルコの対仏報復はさらに続いた。こ れまでのところ、その主なものだけでも次のようになっている。 ・応札した企業連合にフランス企業が加わっていたことを理由に、公共事業・住宅省が イズミット湾高速道路計画の計画自体を中止 (契約予想額 6.2 億 - 14 億ドル)。 ・国防省が仏ダッソー・アビシオン社と結んだ、F16 戦闘機の電気系統の設備供給・メ ンテナンス契約を破棄 (契約額約 1.9 億ドル)。 13 -情勢分析20010302- ・国防省の行う入札について、今後 1 年間、アルカテル社、マトラ社など仏軍需企業の 参加を禁止。この措置が実行されれば、70億ドルと見積もられるトルコ陸軍の次期主 力戦車購入計画について、既にだいぶ前からこのプロジェクトに関心を示していた GIAT 社などフランス企業が入札に参加できなくなる可能性が濃厚となる。 このほか民間でも、フランス製品のボイコット運動が起こっており、ここまで至ると さすがに、今回のフランスに対するトルコの反応は、同じような決議でありながら、他 の国に対した時とは明らかに違っていると気づかざるを得ない。何がこうした違いをも たらしたのだろうか。また、そもそもの事の発端である、オスマン帝国によるアルメニ ア人虐殺とはどのような事件だったのだろうか。 II アルメニア人虐殺とは 19世紀末から20世紀初め、列強の干渉と支配下の少数民族の独立運動によってオスマ ン帝国が崩壊に向かう過程で、そうした少数民族の一つであったアルメニア人が多数殺 された事件は決して 1 度限りのことではなかったが、今回の対フランス関係悪化のきっ かけとなった「アルメニア人虐殺」は、特に、これらの迫害の中でも最も大規模で凄惨 であったとされる1915年の大量殺害を指している。1915年事件は、前年から周到に準備 が行われた。オスマン帝国は、まず 1914 年冬、免税と引き替えにアルメニア人男子を軍 隊に動員しておき、次いで、1915 年 5 月、帝国 (軍)に対する裏切り・スパイ行為を働い た者を処刑・追放できるという法令を制定し、従軍中のアルメニア人を裏切り者・スパ イと断罪して処刑した。さらに、東部各地のアルメニア系村落の住民にも手をのばし、裏 切り者・スパイに協力したとの罪を被せて、彼らを帝国領から排除しにかかった。追放 が決まった住民のうち、男たちの多くは村を出た直後に殺され、女性・子供を主とする 残りの者たちはシリア領に放逐された。移動の途中にも、一行に遅れた者などに対して 帝国軍の殺戮は繰り返された。この一般に「死の行進」と呼ばれる1915年の強制移動は、 食料・水の供給を断たれての強行軍だったため餓死や病死した者も多く、最終的な死者 は、アルメニア人側の主張では、当時のトルコ在住のアルメニア人口の半分以上に当た る 150 万人に達した。この時一連の殺人行為に携わったオスマン帝国軍の兵士の大部分 は正規兵ではなく、犯罪者崩れの民兵やクルド系の山賊だったと言われる。法令によっ て虐殺行為を正当化した点、および、正規軍の手を汚さず、民兵や他の少数民族に実際 の犯行を行わせたという点において、この 1915 年の事件は数々の「アルメニア人虐殺」 の中でも特に悪質であったと言える。 [以上の参考文献:ジャン = ピエール・アレム著、藤野幸雄訳「アルメニア」白水社 (1986 年)、および、 「世 界民族問題辞典」平凡社 (1995 年)] 14 -情勢分析20010302- III 三者それぞれの事情 1. トルコの事情 議会がアルメニア人虐殺非難決議を通した国が他にいくつもある中、なぜトルコがフ ランスに対して殊さら激しく抵抗したかについては、一つには、2000 年 11 月に EU の国 会にあたる欧州議会での非難決議成立に続き、 EU加盟国の中でも指導的立場にあるフラ ンスの議会で同様の決議がなされることで、 これがEUの共通認識として定着しかねない という懸念があったと思われる。そうなった場合、たとえアルメニア人虐殺は旧オスマ ン帝国の犯罪だとはいえ、現トルコ共和国が道義的責任を果たさずして、EUの一員とし て迎え入れられることは決してないだろう。具体的には、現トルコ政府が虐殺の事実を 認め謝罪し、事実上の賠償として何らかの経済支援を現アルメニア共和国に行うなどと いった行動が必要になると考えられる。 次に、大国のダブル・スタンダードに対する途上国の反発という感情もトルコには あったようである。トルコの言い分は、 「フランスは対ナチス協力者は厳しく追及してい るが、アルジェリア独立戦争でのフランス軍将兵の人道に対する犯罪には目をつぶって きた。これは二重基準である」というものだ。このトルコの主張は正しい。しかし、だ からといってオスマン帝国の犯罪が許されるという理屈にはならない。 トルコが今回フランスに対して示した一連の反応は、議会の決議が通ってから大統領 が署名する前までと、その後では性質を異にする。フランス下院の通過直後は、おそら くトルコは、米国下院委員会の場合に成功した手段がフランスに対しても通用すると考 えたと思われる。すなわち、対イラク政策への協力の打ち切りをちらつかせることに よってクリントン大統領を動かし、米議会を説得させて法案が本会議に送られるのを阻 止できたように、フランスに対しても弱みを突けば、シラク大統領に署名するのを思い とどまらせることが可能だ、そうトルコは踏んだのだろう。大統領が署名しなければ、決 議は正式に成立しない。そのトルコの目に映ったところのフランスの弱みというのが、 アルジェリアという古傷であり、何億、何十億ドル規模にもなるトルコ軍の各軍備調達 プロジェクトだった。 最後に、トルコが逆上した理由のもう一つとして、フランスには、第 1 次大戦の休戦 協定に従って占領したアレクサンドレッタ周辺 (シリア国境に近い現在のハタイ県)に、 ア ルメニア人を集めて独立国家を創ろうとした前科があることも指摘しておきたい。2月20 日、トルコ議会外交委員会は、フランス議会の非難決議に抗議するための 7 項目から成 る行動計画を採択したが、これの第 2 項 * は、フランスに対する歴史的遺恨に対応して いる。 [* (トルコは、)第1次大戦の最中、自らの利害のためアルメニア人を利用したフランスや他の国々を非難す る。彼らがアルメニア人に蜂起をそそのかしたことで、多くの人命が失われた。出典:Reuters (2001.02.20)] 15 -情勢分析20010302- 2. フランスの事情 下院でアルメニア人虐殺非難決議が通ってしまった後も、同国の軍産複合体と近い関 係にあると言われるシラク大統領が決議に署名するかは微妙と見られていた。1 月 23 日 にトルコ政府が実際にアルカテルとの契約をキャンセルするという制裁に踏み切ったこ とで、軍需産業にとって潜在的巨大市場であるトルコから全面的に閉め出される可能性 が俄然大きくなってきたからだ。それにも拘わらず、シラクが最終的に署名する方を選 んだのには、3月に統一地方選を控え、アルメニア票への対策を優先したためと分析され ている。フランスのアルメニア・コミュニティーは50万人ほどと見積もられ、在外コミュ ニティーとしては米国に並ぶ世界最大規模である。フランスの全人口に占める割合では 1% にも満たないが、フランス政界では強いロビー力を持つと言われている。一般に、ア ルメニア人には頭脳優秀で芸術方面にも優れるというイメージがあり、その在外コミュ ニティを抱える欧米では数相応以上に影響力があるらしい。アルメニア系有名人には、 ベルリン・フィルの指揮者だった故カラヤン氏などがいる。 シラク大統領が早々に署名してしまったのには、アルメニア問題に連動してアルジェ リア問題の方も何時までも議論が長引くのを嫌ったからでははないかとも考えられる。 2000年秋、フランス議会ではアルメニア人虐殺非難についての議論が大詰めを迎えてい たが、この同じ時期、フランスの高級紙 Le monde diplomatique が、アルジェリア独立戦 争時の仏軍司令官2 人による、解放戦線兵士に対する拷問、虐殺を認める告白を掲載し、 衝撃を呼んだ。以来、フランス社会は、この 2 つの問題をシンクロさせて議論してきた。 アルジェリア独立戦争での仏軍の残虐行為は、サハラ沙漠での原爆実験時にアルジェリ ア人捕虜を使って人体実験を行ったことを含め、知らない者とていない事実であるが、 これまで当時の仏軍関係者でこれを公に認めた者はほとんどいない。 アルジェリアでの残虐行為を持ち出されることの複雑さは、これが現在の第 5 共和制 の下での犯罪であるという点である (1954 年の独立闘争勃発時は第 4 共和制)。アルメニ アの場合、現在のトルコ共和国政府は直接の犯人ではなく、責任を追及されるとしても 民族的連続性における道義的意味に留まるのに対し、38年前のアルジェリア独立戦争の 場合、議論を続けていけば、Le monde 紙に告白したマシュー将軍ら実際に生きている人 間の過去の罪を具体的にどう裁くのか、つまり、法的に訴追が可能なのか、あるいは議 会に委員会を設置しての調査という程度で済ませ得るのか、というところまで行き着い てしまいかねない。 3. アルメニアの事情 アルメニア人による、世界各国の議会にオスマン帝国の虐殺を認知させようとする活 動は、虐殺と離散を経験した者たちの民族的悲願として受けとめられる。おそらく、ト ルコ、フランス、アルメニア各者の利害が複雑に交錯する中にあって、これが最も分か りやすい思惑であろう。民族離散後、欧米各地のアルメニア人協会は、大虐殺を周知さ せること、トルコ政府にトルコの罪を認めさせること、独立アルメニアの領土確保、の 16 -情勢分析20010302- 3 本柱から成る行動計画を策定した (ジャン = ピエール・アレム著、藤野幸雄訳「アルメ ニア」白水社 (1986 年)、pp. 139 - 141)。ソ連崩壊後アルメニア共和国は独立を果たした ので、最近の欧米でのロビー活動は、残る 2 つの目的に沿ったものである。 一方、アルメニア“共和国”には、1992 年に始まったナゴルノ・カラバフ紛争によっ て生じた現在の地理的孤立状態を打開する契機にしたいとの思惑があった。トルコは、 アルメニア共和国軍がアゼルバイジャン共和国ナゴルノ・カラバフ自治州の独立運動に 介入したことに抗議し、アルメニア共和国との国交を断絶している。アルメニア共和国 のコチャリャン大統領は、フランス議会の決議後、 「フランス議会の決議は歓迎するが、 アルメニアが領土的要求を行うのではないかとの心配は無用である。トルコにとって最 善の道は、虐殺事件に関る全ての公文書を公開し、直接アルメニア人に謝罪することだ」 と、トルコとの関係改善を望むともとれるメッセージを発している。 IV 今後の見通し 結局、トルコが何と抵抗しようとも、欧州議会とEUの主な国でアルメニア人虐殺を非 難する決議が通ったことにより、このオスマン帝国の犯罪は欧州における共通認識と なった。在外アルメニア人協会の行動計画の一つは達成されたのである。アルメニア人 が今後も国際キャンペーンを継続するかは、現トルコ政府が、同胞トルコ民族の過去の 犯罪としてアルメニア人虐殺に道義的責任を認め、謝罪できるかどうかにかかってくる と思われる。 しかし、軍が政治に卓越した影響力を持つトルコにとって、いくら組織的連続性はな いとしても、オスマン・トルコ軍の犯罪を認めることは難しい。ただし、かつて絶対と 言われたトルコ軍部の威光も、最近では徐々に翳りが差し始めたようだ。祖国党のユル マズ党首は、半年前に副首相に就任して以来、軍の政治介入を批判する発言を繰り返し ながらも命脈を保っており、また、実際にクーデターで政治活動を禁止される経験をし たエジェビット首相からさえ、クルド人なら誰でも反逆者と決めつけたがる軍の姿勢は 間違っているとの批判が聞かれた (2001 年 1 月 31 日)。また、イスラーム政党など反体制 政治勢力弾圧における、体制側の手先的な存在だった憲法裁判所でも、前代と現在の長 官の二代に渡って (前長官が現大統領のセゼル氏)、検察が無理に練りだしたイスラーム 政党・美徳党非合法化のための証拠を棄却している (2001 年 2 月 1 日)。これらはいずれ も、1998 年に軍の政治介入でイスラーム政党・福祉党が非合法化させられた当時なら、 とうてい考えられない現象である。こうした変化がトルコで起きていることに、トルコ、 アルメニア両民族和解の光明が見えないでもない。 一方、トルコ・フランス関係においては、これ以上トルコが対フランス経済制裁をエ スカレートさせることは、双方にとって非常に危険である。今のところ、フランスはト ルコの報復行動を比較的静かに見守っているが、トルコが調子に乗りすぎれば、逆にト ルコ製品のフランス市場からの締め出しなどの対抗手段に出る可能性がある。両国の貿 易関係は、トルコの輸出に占めるフランス市場のシェアが5.9% (1999 年)なのに対し、逆 17 -情勢分析20010302- では 1.1% で、トルコの依存過多となっている。そして、対仏制裁を発動したままでは、 トルコのEU加盟のプロセスは決して進展しない。フランスにしても、わずか1.1%のシェ アとはいえ、今回の騒ぎでキャンセルされた軍事プロジェクトの金額を見れば分かる通 り、トルコ市場は失うにはあまりに惜しい。このままで行けば、3 月の地方選挙では、ア ルメニア票を得た代わりに輸出業者の票を失うことにもなるだろう。この様な両国の相 互依存関係を勘案する時、そう遠くない時点で両国が関係修復に動き出す公算が大きい と思われる。 (大月 美恵子) 18 -情勢分析20010302- <トピックス> アラブ首長国連邦:ADNOC は ZADCO の 権益譲渡を Shell、ExxonMobil に持ちかけ る MEES (2001.02.19)によると、アブダビ国 営石油会社 (ADNOC)はShellとExxonMobil に対して、沖合操業会社 Zakum Development Company (ZADCO)の権益獲得案を提 出することを求めているようである。この ZADCO権益の譲渡については、2000年9月 中旬頃、ADNOC と BP、TotalFinaElf の間で 合意していたが、その後、アブダビ最高石 油評議会 (SPC)の中で反対意見があり承認 されなかった。既にアブダビにおいて比較 的多くの権益を保有している B P 、 TotalFinaElfに限定せず、他のメジャーズの 案もきいてみるべきというのが、SPC の意 見だった。 なお、Z AD C O の権益比率は A DNOC 88%、ジャパン石油開発12%で、沖合Upper Zakum 油田等で 50 万 b/d 程度の原油を生産 している。(高橋) Bahwan Trading Co. が進めており、工場の 生産規模等について再三の計画の見直しが されてきた。最終的には 1 トレインから 2000t/d のアンモニア、2 トレインから各 3500t/dの尿素を生産するもようで、2004年 の生産開始を目指す。 プロジェクト・ファイナンス・アドバイ ザーの HSBC Investment Bank によると、オ マーン政府はすでに当プロジェクトに 0.7 兆 cf の天然ガスを割り当て済みであり、材 料面での懸案事項はないという。また製品 の販売先についても、現在タイの National Fertilizer of Thailand が 30 万 t/y の尿素を購 入することで交渉が進んでいるとされる。 (山本) クウェート:プロジェクト・クウェートを 巡る議論 クウェート国民議会の立法・法律問題委 員会は 2 月 12 日、政府が 2000 年 4 月に議会 に提出した石油上流部門への外資導入 (プ ロジェクト・クウェート)に関する法案が憲 法に違反しているとの見解を示し、これに よりプロジェクトに反対する議員らは勢い オマーン:Sohar 肥料工場建設で近く入札 づいている。委員会は「現行憲法では、ク ウェートの天然資源への投資は透明性と公 Sohar 肥料工場建設プロジェクトにおい 正な競争を前提にして、法律に従って行わ て、設計・調達・建設契約についての入札 れなければならないと規定されているにも が 3 月に始まる見通しである。プロジェク かかわらず、政府法案はプロジェクトに対 トの総コストは5億 - 5.5億ドルと見積もら する議会側の関与を認めていない」とし、 れており、現在 Kellogg Brown & Root (米)、 政府に対して憲法上の疑義を解消するよう Krupp Uhde (独)、Snamprogetti (伊)、三菱重 求めている。また政府は、2 月 21 日に開催 工、東洋エンジニアリングがショート・リ された特別国会において、議員からプロ ストされている。燃料の天然ガスはOOCが ジェクトの一時中断と、これまでクウェー 新規に建設する Fahud-Sohar パイプライン ト政府が行ってきたプロジェクト遂行のた で輸送される。プロジェクトはオマーンの めの手続きに関する情報の開示を求められ 19 -情勢分析20010302- た。 これに対し、スバイヒー新石油相は 21 日、現在議会側が提起しているプロジェク ト・クウェートに関する問題点を解決する までは、海外石油会社とはいかなる合意も しないと明言した。同石油相は、プロジェ クトの中断は約束しなかったものの、サ ウード前石油相と比べれば議員の要求を聞 き入れる姿勢を見せており、3 月 14 日まで にプロジェクトに関する情報を議会側に提 供するとしている。(島末) ジアラビアに対してより詳細な情報の開示 を求めたものと考えられる。1 月に各社に 対してダハラーンにある Saudi Aramco の データ・ルームが開放されたが、ここで得 られた情報は各社が投資提案を策定するの に不十分であったといわれる。今後の予定 としては、2 月 21 - 28 日に各社による詳細 プレゼンテーションが予定されている (PIW, 2001.02.05)。(原) アゼルバイジャン:Chevronがバクー・ジェ イハン・プロジェクトへの参加を表明 サウジアラビア:ガス部門の開放交渉で石 油会社幹部がサウジ訪問 Chevronは2月初旬、バクー・ジェイハン・ パイプライン建設プロジェクトに参加する Reuters (2001.02.17, 2001.02.18)などの各種 意思を表明した。現在同パイプラインは初 報道によれば、サウジアラビアのサウード 期設計調査を実施中で、今年半ばにも完了 外相は、E x x o n M o b i l 、S h e l l 、B P 、 する。その後は12カ月かけて詳細設計調査 TotalFinaElf、Chevron (/Texaco)の 5 社に招 を行い、そこでプロジェクトの採算性、技 待状を出し、各社幹部 (CEO クラス)が 2 月 術面等に問題がないと判断されれば建設工 17日から18日にかけて、リヤードでサウジ 事に入り、計画では2004年の運転開始を目 側の閣僚レベル交渉委員会 (サウード外相 指す。 がヘッド)と会談した。 現在プロジェクトのスポンサーとその出 サウジアラビアのガス部門開放では、国 資比率は、SOCAR 50%、BP 25.41%、Unocal 際石油会社10社がショート・リストされて 7.48%、Statoil 6.37%、TPAO 5.02%、伊藤忠 いるが、今回招待された5社はスーパー・メ 2.92%、Ramco 1.55%、Delta Hess 1.25% と ジャーと呼ばれる大手であり、またサウジ なっている。昨年末から SOCAR は、自社 側が示している 3 つのコアー・プロジェク の財政上の問題から50%の出資比率を30% トのうち最大規模のコアー・ベンチャー 程度まで下げたいと表明しており、今年に No. 1 (ガワール南部のHaradh地区のガス開 なって 3 社 (社名の公表はなし)が参加に前 発)に指名された会社でもある 「情勢分析」 ( 向きな姿勢を示していると発表していた。 2000.12.22)。 なお、Chevron がどの程度のシェアを占め 会談の内容については発表されていない るのかはまだ明らかになっていない。 が、4 月 1 日の MOU 締結という目標を前に パイプラインの通過によって経済的恩恵 して、タイムテーブルの確認、今後の取り を被るべくアゼルバイジャンとトルコは、 進め方等について意見交換がなされたもの 今回のChevronの参加表明を歓迎している。 と思われる。外国石油会社側からは、サウ カザフスタンのテンギス油田でオペレー 20 -情勢分析20010302- ターを務める Chevron の参加によって、同 パイプラインがカザフスタン産原油の輸送 ルートとしても利用されることで、輸送能 力が実際の原油輸送量に比べて大きく (100 万 b/d)、経済性がないとも言われている (Lukoil、ExxonMobilらの見解) バクー・ジェ イハン・パイプラインの実現性が高まると の期待を抱いているからである。 これに対してChevronは、参加の理由を、 同社が30%出資しているアゼルバイジャン 沖合のApsheronプロジェクトを有望視して いるからであるとの見解を示しており、ト ルコやアゼルバイジャンの思惑と全面的に 一致しているわけではないようである。折 しも今年後半にはテンギスからノボロシー スクを結ぶCPCパイプラインが運転を開始 する予定で、Chevron としてはカザフスタ ン原油をバクー・ジェイハン・ルートに取 り込む必要性はないと思われる。また一方 では、CPC ラインの運転開始により、やが てトルコからは、ボスポラス海峡を通過す るタンカーの急増によって環境汚染を含む 様々な社会問題に対する不平不満が出てく る可能性があり、今回 Chevron が参加を表 明したのは、それに対処するための有効な 手段を手に入れるためだとも言われてい る。つまりプロジェクトに参入すること で、問題発生時には CPC パイプラインか ら、ボスポラス海峡を通る必要がないバ クー・ジェイハン・ルートに容易にシフト できる体制を整えるためということであ る。(山本) シャガン油田を探鉱しているカザフ沖合国 際操業会社 (OKIOC)のオペレーターが、 ENIに決まった。2月8日の出資各社の協議 でENIがオペレーターになることに反対し たのは ExxonMobil のみで、他社 (持ち株比 率合計85.7%)はENIを単一オペレーターと するのに賛成したとMEES (2001.02.19)が報 じた。 急遽 ENI がオペレーターに決まったの は、選定を急いでいたカザフ政府 「情勢分 ( 析」2001.02.16)へのOKIOC側の妥協の産物 だったと MEES はみている。TotalFinaElf、 Shell、ExxonMobil の 3 者が早くから本件オ ペレーターを望んでいた。2 月になって BP のシェア 9.5%の TotalFinaElf への売却が決 まり、その後 S t a t o i l のシェア 4 . 7 6 %の T o t a l F i n a E l f への売却も決まって、 TotalFinaElfが優位に立ったかにみえた。だ が一方、カザフ側はExxonMobilをオペレー ターにしたがっているとの観測も強かっ た。こうした中で株主の大勢は、相打ちの 形でENIをオペレーターとする方向となっ たようだ。 ENIはカラチャガナク・コンデンセート・ ガス田で BG と組んでオペレーターをして おり、また、ロシアのガスをトルコに持っ てくるブルー・ストリーム・パイプライン 事業ではロシアのパートナーとなってい る。(遠藤) カザフスタン:ENIがOKIOCオペレーター に決定 ソ連からの独立以来10年で、カザフスタ ンは外国石油企業誘致において、他のカス ピ海諸国を引き離したようだ。2000年夏の カシャガン油田 (北カスピ海)の発見で、ア カスピ海のカザフスタン沖合いにあるカ カザフスタン:カスピ海地域への外国石油 企業進出ではカザフスタンがトップ 21 -情勢分析20010302- ゼルバイジャンの影が薄くなってしまって いる。トルクメニスタンやウズベキスタン にも案件はあるが、今、スポットライトは カザフスタンに当たっているといえる。 カザフスタンでは他に、テンギス油田 (Chevron)、カラチャガナク・コンデンセー ト・ガス田 (BGとENI)が投資を加速しよう としている。対照的にアゼルバイジャンで は、唯一の大プロジェクトであるアゼリ、 チラグ、グネシリ沖合開発 (BP がオペレー ター)は、輸出経路が決まらないことから、 勢いを失っている。Wood Mackenzieのカス 22 ピ海32プロジェクトの調査によると、1990 年から2020年までに予定されている石油・ ガス資本支出のうち、カザフスタン向けが 59%、アゼルバイジャン向けが 27%、地域 パイプライン向けが12%、トルクメニスタ ン向けが2%を獲得することになるという。 カザフスタンの成功の鍵は、C P C (Caspian Pipeline Consortium)が建設する 56 万 b/d の輸出パイプラインである。同パイ プラインでは、テンギス油田の原油がロシ アの黒海の港ノボロシースクまで輸送され る。2001 年後半には輸送開始の見込みだ。 (遠藤) -情勢分析20010302<石油データ>(今号担当:牛嶋) I 価格動向(2 月 14 日 - 2 月 27 日) (1) WTI は 20 ドル台へ ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)原油スポット価格は 2 月 14 日、米国で 原油在庫が積み増されたことから、およそ半月ぶりに 30 ドルの大台を割り込んだ。続く 15 日 も米国景気失速による石油製品の需要減退懸念から、価格は 28 ドル台へと下がった。翌 16 日 は再び OPEC の 3 月減産観測が強まったことで 29 ドル台へと上昇したが、その後は 28 ドル台 で推移している。21 日には、需要期である冬が終わりに近づき、今後需要が減少するとの見 方から $28.23/b まで下がった。22 日は米国の週間原油在庫が 1,200 万 bbl も減少したことが価 格押し上げ要因となったが、 これは米国湾岸の濃霧で輸入に影響が出たため在庫が取り崩され たという一時的な現象で、 影響は限定的と見られ、価格の上昇幅も $0.35/b に留まった。23 日 にはガソリンの上昇に伴って$28.83/bまで上がったものの、週末にロドリゲスOPEC事務局長 が、OPEC バスケット価格がプライス・バンド圏内に収まっていれば3月 16 日の総会では減産 しない、と発言したことで、週明けの 26 日は $28.43/b となった。27 日は米国の週間在庫統計 で原油在庫積み増しが予想されることから、$28.13/b とわずかに値を下げた。 (2) OPEC バスケット価格 2 月の OPEC バスケット価格は、プライス・バンド圏内($22 - 28/b)のほぼ真ん中、24 - 25 ド ル台で推移していたが、27 日は約 40 日ぶりに 24 ドルを切り、$23.99/b となった。 (3) WTI 先物はバックワーデーション NYMEX の WTI 先物市場は、依然としてバックワーデーション(期近物が期先物より高い 状態)が続いている。2001 年 2 月は期近物の価格上昇と同時に先物の価格も上がっているた め、結果的に価格差が 1 月よりも小さくなっている。 最近の原油スポット価格の推移 ($/b) 36.00 Brent WTI Dubai OPEC Basket 34.00 32.00 30.00 28.00 26.00 24.00 22.00 20.00 2001年 18.00 11/22 11/28 12/4 12/8 12/14 12/20 12/26 1/2 1/8 出所:Wall Street Journal. 日本経済新聞, OPEC通信。 23 1/12 1/18 1/24 1/30 2/5 2/9 2/15 2/21 2/27 -情勢分析20010302原油スポット価格の推移(1年) ($/b) 36 34 32 30 28 26 24 Dubai Brent WTI OPEC Basket 22 20 2001年 18 2/25 3/24 4/21 5/19 6/16 7/14 8/11 9/8 10/6 11/3 12/1 12/29 1/26 2/23 出所:Platt's Oilgram Price Report, OPEC通信。 ($/b) WTI先物価格価格差(期先物価格-期近物価格) 2.00 コンタンゴ 1.00 0.00 Jan.93 Jan.94 Jan.95 Jan.96 Jan.97 Jan.98 Jan.99 Jan.00 Jan.01 -1.00 -2.00 -3.00 2nd month 3rd month 4th month -4.00 バックワーデーション -5.00 出所:PMIおよびOMI, 2001年1月以降についてはWall Street Journalより算出。 (¢/gal) NYMEX:製品先物価格の推移(期近物) 110.0 100.0 90.0 80.0 暖房油 70.0 ガソリン 2001年 60.0 2/24 3/24 4/25 出所:Wall Street Journal. 5/24 6/23 7/26 8/24 24 9/25 10/24 11/22 12/26 1/26 2/27 -情勢分析20010302- 表I - 1 原油価格動向(ロッテルダム・米国湾岸) (単位: $/b) 2000年 3月 4月 5月 6月 アラビアン・ライト34° ネットバック 25.22 22.16 23.71 25.99 スポット 26.30 22.38 27.05 28.80 アラビアン・ヘビー27° ネットバック 23.10 19.72 19.84 22.60 スポット 24.80 21.43 26.05 29.70 イラニアン・ライト34° ネットバック 24.97 21.88 22.58 25.00 スポット 26.15 22.23 26.90 28.70 クウェート31° ネットバック 23.93 20.67 21.06 23.63 スポット 25.35 21.73 26.40 28.15 イラク・キルクーク37° ネットバック 25.44 22.71 23.68 26.21 スポット n.a. n.a. n.a. n.a. ドバイ・ファテ32° ネットバック 25.11 22.06 23.60 25.90 スポット 25.35 21.50 26.75 28.35 ナイジェリア・ボニー・ライト37° ネットバック 27.22 24.73 26.85 29.12 スポット 29.05 22.90 29.15 30.15 OPECバスケット (7油種平均)* 26.71 22.93 26.94 29.12 イギリス・ブレント38° ネットバック 27.02 24.46 26.42 28.96 スポット 28.55 22.65 28.80 30.00 ノルウェー・エコフスク43° ネットバック 27.59 25.46 26.33 28.97 スポット 28.95 22.80 29.20 30.35 メキシコ・イスムス34°** ネットバック 28.40 23.78 28.60 29.95 スポット 29.16 23.70 28.03 29.66 ウエスト・テキサス・インターミディエイト40°** ネットバック 30.24 27.11 31.70 33.75 スポット 31.50 26.30 29.85 32.05 7月 8月 9月 10月 11月 2001年 12月 1月 2月 25.01 27.38 25.79 27.33 29.42 31.93 28.51 30.13 27.46 30.73 22.52 21.45 20.70 22.45 25.68 22.51 26.18 21.26 25.73 25.20 29.33 24.70 28.03 23.22 28.98 18.74 19.60 16.99 20.95 24.18 25.77 27.28 24.41 27.23 28.84 31.83 28.15 30.03 27.04 30.63 22.27 21.35 20.54 22.35 25.58 23.84 26.53 22.70 26.28 26.95 30.28 26.24 28.88 24.95 29.78 20.26 20.40 18.48 21.65 24.78 26.24 24.94 30.44 29.35 28.22 23.17 21.02 n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. n.a. 25.02 26.40 25.68 27.05 29.25 31.20 28.47 30.55 27.42 31.65 22.57 20.90 20.75 22.80 25.25 28.40 27.85 29.64 28.90 33.32 32.75 32.13 30.35 31.77 33.60 26.32 23.05 24.42 25.25 27.80 27.94 28.30 31.48 30.42 31.22 24.13 24.05 28.41 28.25 29.04 29.65 32.50 33.00 32.04 30.65 31.30 33.40 26.54 23.20 24.62 25.25 27.75 30.10 27.70 28.08 28.60 32.92 33.15 32.24 30.30 31.45 33.40 26.56 22.90 25.06 25.30 27.95 29.29 28.07 27.87 29.39 32.81 32.52 31.57 29.87 30.83 31.73 25.56 23.41 28.93 25.34 24.74 31.73 31.15 32.80 31.63 35.97 36.05 34.87 33.30 34.78 34.85 29.71 27.80 33.20 30.05 30.05 出所:ネットバックはOil Market Intelligence, スポットはPlatt's Oilgram Price Report月央値, OPECバスケット価格はOPEC通信。 注:*OPECバスケットはサウジ産Arab Light, UAE産Dubai, ナイジェリア産Bonny Light, アルジェリア産Saharan Blend, ベネズエラ産T.J. Light, インドネシア産Minas, メキシコ産Isthmusの7油種平均。 **米国湾岸市場、他はロッテルダム市場の価格。 表I - 2 製品価格動向(スポット、シンガポール市場) (単位:$/b, 重油のみ$/Metric Ton) 2000年 2001年 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 ガソリン(プレミアム) 31.03 33.03 27.98 32.11 32.94 35.96 38.31 35.00 33.08 32.88 29.54 29.90 ジェット燃料 31.07 32.91 27.84 29.09 30.99 33.15 38.04 42.14 43.31 39.81 32.54 29.72 軽油 29.83 33.14 26.81 28.07 30.48 31.77 36.97 40.17 38.98 34.90 29.22 28.29 重油(硫黄3.5%) 143.05 171.85 155.08 164.33 174.60 151.92 148.83 170.98 182.62 168.27 134.88 126.54 出所:Oil Market Intelligence, EIG 注:いずれもf.o.b.価格 25 -情勢分析20010302II 需要、供給、在庫 1. 需要動向(3 月 2 日更新) (1) 1 月の米国の石油需要 2031.6 万 b/d DOE, Monthly Energy Review, 2001 年 2 月号によると、2001 年 1 月の米国の石油需要は前年 同月比 9.3% 増の 2031.6 万 b/d となった。 製品別ではガソリンが 11.5%、中間留分が 9.4% 、重油が 47.9% の増加となった。 (2) 11 月の日本の石油需要 446.4 万 b/d 石油連盟『石油資料月報』2001 年 1 月号によると、2000 年 11 月の日本の石油需要は前年同 月比 5.6% 減の 446.4 万 b/d となった。 製品別ではガソリンが 1.1% の増加、中間留分が 1.1% 、重油が 6.7% の減少となった。 表II- 1 主要7カ国の石油需要動向 (単位:1000b/d, %) 2001年 1月 2000年 8月 9月 10月 11月 12月 米国 ガソリン 8,762 (2.1) 8,416 (0.8) 8,364 (-1.9) 8,297 (0.6) 8,573 (-3.2) 8,364 中間留分 3,694 (9.2) 3,775 (11.0) 3,736 (-0.9) 3,742 (4.7) 4,282 (10.0) 4,102 重油 876 (-13.6) 852 (6.5) 1,029 (45.8) 836 (9.6) 1,099 (29.0) 1,093 その他 6,892 (-0.2) 6,698 (-4.1) 6,572 (-4.1) 6,189 (-3.9) 6,685 (-3.0) 6,757 合計 20,224 (1.7) 19,741 (1.0) 19,701 (-0.8) 19,064 (0.2) 20,639 (0.7) 20,316 日本 ガソリン 1,151 (3.1) 1,036 (3.6) 953 (-1.3) 981 (1.1) 中間留分 957 (0.5) 1,048 (2.5) 1,032 (-5.8) 1,310 (-1.1) 重油 1,057 (7.2) 1,078 (-0.8) 944 (-3.8) 1,026 (-6.7) その他 1,307 (0.5) 1,241 (0.4) 1,130 (1.0) 1,148 (-14.1) 合計 4,472 (2.7) 4,403 (1.3) 4,058 (-2.5) 4,464 (-5.6) ドイツ ガソリン 680 (-4.2) 690 (-2.8) 650 (-8.5) 660 (-4.3) 中間留分 1,570 (21.7) 1,550 (11.5) 1,370 (-4.9) 1,380 (-8.6) 重油 170 (41.7) 160 (23.1) 170 (13.3) 170 (13.3) その他 660 (4.8) 600 (-9.1) 600 (-6.3) 640 (1.6) 合計 3,080 (12.0) 3,000 (3.8) 2,790 (-5.1) 2,850 (-4.4) フランス ガソリン 350 (-2.8) 310 (-8.8) 310 (-3.1) 290 (-9.4) 中間留分 1,080 (9.1) 920 (-14.0) 1,340 (20.7) 1,120 (-5.1) 重油 110 (-8.3) 120 (-7.7) 140 (-6.7) 150 (-11.8) その他 410 (0.0) 420 (-4.5) 430 (0.0) 450 (-2.2) 合計 1,950 (3.7) 1,770 (-10.6) 2,220 (10.4) 2,010 (-5.6) イギリス ガソリン 500 (2.0) 490 (-2.0) 500 (2.0) 540 (1.9) 中間留分 820 (7.9) 850 (10.4) 840 (7.7) 830 (3.8) 重油 70 (-12.5) 80 (-11.1) 70 (-22.2) 90 (0.0) その他 350 (-7.9) 350 (-7.9) 360 (-2.7) 350 (-12.5) 合計 1,740 (1.8) 1,770 (1.7) 1,770 (2.3) 1,810 (-0.5) イタリア ガソリン 440 (0.0) 420 (-6.7) 410 (-4.7) 400 (-7.0) 中間留分 540 (3.8) 670 (4.7) 680 (3.0) 670 (-4.3) 重油 460 (7.0) 460 (-2.1) 350 (-14.6) 340 (-26.1) その他 330 (17.9) 340 (-8.1) 380 (8.6) 360 (2.9) 合計 1,770 (6.0) 1,890 (-2.1) 1,820 (-1.6) 1,770 (-8.8) カナダ ガソリン 720 (2.9) 660 (-2.9) 650 (0.0) 650 (-1.5) 中間留分 620 (12.7) 640 (0.0) 640 (6.7) 650 (0.0) 重油 120 (-7.7) 190 (35.7) 170 (54.5) 180 (28.6) その他 720 (4.3) 720 (7.5) 760 (8.6) 810 (26.6) 合計 2,180 (5.3) 2,210 (3.8) 2,220 (7.8) 2,290 (9.6) 主要7カ国計 ガソリン 12,603 (1.6) 12,022 (-0.1) 11,837 (-2.1) 11,818 (-0.3) 中間留分 9,281 (9.9) 9,453 (5.8) 9,638 (1.9) 9,702 (-0.4) 重油 2,863 (-0.6) 2,940 (3.3) 2,873 (10.6) 2,792 (-2.8) その他 10,669 (0.7) 10,369 (-3.5) 10,232 (-2.2) 9,947 (-3.0) 合計 35,416 (3.2) 34,784 (0.7) 34,579 (-0.1) 34,258 (-1.3) 出所:米国:Monthly Energy Review, DOE 日本:石油連盟『石油資料月報』 ドイツ, イギリス, フランス, イタリア, カナダ:Oil Market Report, IEA 注:( )内は前年同月比。 日本はキロリットルからバーレルに換算している。中間留分は軽油と灯油の和とする。 ドイツ, イギリス, フランス, イタリア, カナダの中間留分はJet/Kerosene, Diesel, Other Gasoilの和とする。 26 (11.5) (9.4) (47.9) (2.3) (9.3) -情勢分析200103022. 生産動向(3 月 2 日更新) (1) 1 月の OPEC 原油生産量は 2769.1 万 b/d EIG, Oil Market Intelligence, 2001 年 2 月号によると、2001 年 1 月の OPEC 原油生産量はイラ クが前月比 45.5万b/d 増産したものの、サウジアラビアが36.5万b/d 減産したことなどにより、 全体では前月より 0.8 万 b/d 減の 2769.1 万 b/d となった。 (2) 非 OPEC 生産は 4044.6 万 b/d 同誌によると、2001 年 1 月の非 OPEC 原油生産量は、米国が 5.5 万 b/d 減、ノルウェーが 7.3 万 b/d 減などの減産があったが、イギリスが 29.7 万 b/d 増産し、全体では 24.1 万 b/d 増の 4044.6 万 b/d となった。 表II - 2 原油生産動向* 2000年 4月 5月 6月 サウジアラビア 7,800 8,080 8,100 イラン 3,650 3,650 3,700 イラク 2,680 3,080 2,590 クウェート 1,800 1,780 1,850 UAE 2,300 2,300 2,335 カタル 680 700 700 中立地帯 600 620 640 ナイジェリア 2,050 2,000 2,030 リビア 1,380 1,400 1,400 アルジェリア 800 810 820 ベネズエラ 2,850 2,850 2,900 インドネシア 1,310 1,300 1,300 OPEC計 27,900 28,570 28,365 米国 5,499 5,485 5,409 うちアラスカ 1,008 966 925 メキシコ 3,041 3,040 3,056 イギリス(北海のみ) 2,466 2,510 2,511 ノルウェー(北海のみ) 3,077 3,041 3,024 中国 3,300 3,251 3,294 旧ソ連 7,291 7,341 7,421 その他 15,090 15,007 15,115 非OPEC計 39,764 39,675 39,830 世界計 67,664 68,245 68,195 出所:Oil Market Intelligence, EIG. アラスカのみMonthly Energy Review, DOE. 注:* NGLとコンデンセートは含まない。 **2000年10月31日からの合意産油量。 7月 8,350 3,715 2,560 1,875 2,370 725 645 2,010 1,350 800 2,920 1,305 28,625 5,420 913 2,876 2,488 3,410 3,228 7,506 15,077 40,005 68,630 8月 8,500 3,565 2,990 1,850 2,325 725 645 2,050 1,360 810 2,930 1,280 29,030 5,922 914 3,162 2,296 3,039 3,191 7,712 14,752 40,074 69,104 27 9月 8,550 3,720 2,865 1,865 2,325 725 645 1,980 1,380 830 2,950 1,300 29,135 5,514 892 3,174 2,222 3,020 3,252 7,474 14,645 39,301 68,436 10月 8,490 3,750 3,010 1,875 2,310 725 660 2,195 1,400 830 3,000 1,270 29,515 5,701 966 2,861 2,262 3,253 3,211 7,751 14,351 39,390 68,905 11月 8,558 3,780 2,800 1,838 2,350 730 665 2,175 1,400 810 2,980 1,250 29,335 5,694 986 2,965 2,317 3,387 3,206 7,782 14,544 39,895 69,230 (単位:1,000b/d) 2001年 00年10月 12月 1月 合意** 8,365 8,000 8,674 3,780 3,750 3,917 1,276 1,731 1,840 1,840 2,141 2,350 2,350 2,333 730 730 692 680 680 2,178 2,150 2,198 1,400 1,400 1,431 820 820 853 3,000 3,000 3,077 1,280 1,240 1,385 27,699 27,691 26,700 5,674 5,619 1,010 1,002 3,043 3,100 2,384 2,681 3,373 3,300 3,212 3,220 7,825 7,868 14,694 14,658 40,205 40,446 67,904 68,137 -情勢分析200103023. 在庫動向(3 月 2 日更新) (1) OECD 諸国の在庫動向 IEA, Oil Market Report, 2001 年 2 月号によると、2000 年 12 月の OECD 諸国の民間原油在庫 は、8 億 6800 万バーレルとなり、前月の 8 億 8500 万バーレルより 1700 万バーレル減少した。 製品別ではガソリンが 3 億 7500 万バーレル、中間留分が 5 億 1000 万バーレル、重油が 1 億 5700 万バーレルとなった。 (2) 米国の在庫動向 API (米国石油協会), Weekly Statistical Bulletin 最新号によると、2001年 2 月第 3 週(2/17 - 23) の米国の民間原油在庫は、2 億 8095.8 万バーレルとなり、前週の 2 億 7872.3 万バーレルより 223.5 万バーレル増加した。 製品別ではガソリンが 2 億 414.9 万バーレル、軽油が 1 億 1524 万バーレルとなった。 表II - 3 OECD諸国の民間在庫 (単位:100万バーレル) 1997年 1998年 1999年 2000年 12月 12月 12月 7月 在庫変動(対前月比) 8月 9月 10月 11月 12月 10月 11月 12月 377 238 188 44 649 1,175 392 223 185 46 633 1,177 386 225 188 47 640 1,176 381 217 190 45 624 1,158 393 228 195 48 637 1,178 401 228 194 45 617 1,153 -5 -8 2 -2 -16 -18 12 11 5 3 13 20 8 0 -1 -3 -20 -25 323 127 222 83 523 906 343 121 230 78 530 940 317 119 233 83 539 923 336 122 225 78 528 928 320 126 227 85 541 928 319 123 228 84 540 926 312 123 232 88 548 927 -16 4 2 7 13 0 -1 -3 1 -1 -1 -2 -7 0 4 4 8 1 186 22 78 24 187 454 173 25 80 21 190 438 191 26 79 24 198 472 167 24 81 24 200 451 168 26 82 24 203 453 171 27 92 26 219 472 173 25 93 25 218 475 155 24 84 24 202 438 3 1 10 2 16 19 2 -2 1 -1 -1 3 -18 -1 -9 -1 -16 -37 945 405 584 166 1,486 2,725 876 375 502 147 1,321 2,470 911 385 497 146 1,377 2,587 877 366 499 153 1,372 2,552 890 372 495 149 1,371 2,557 872 370 508 156 1,385 2,558 885 376 517 157 1,395 2,579 868 375 510 157 1,367 2,518 -18 -2 13 7 14 1 13 6 9 1 10 21 -17 -1 -7 0 -28 -61 北米 原油 ガソリン 中間留分 重油 製品計* 北米計 403 240 223 50 664 1,211 413 248 241 55 717 1,283 380 223 199 43 608 1,126 欧州 原油 ガソリン 中間留分 重油 製品計* 欧州計 333 127 239 87 544 940 346 136 265 88 581 989 太平洋 原油 ガソリン 中間留分 重油 製品計* 太平洋計 195 23 87 26 205 493 OECD** 原油 ガソリン 中間留分 重油 製品計* OECD合計 931 390 549 163 1,413 2,643 出所: Oil Market Report, IEA *製品計はガソリン、中間留分、重油その他の石油製品の合計を示す。 **OECDには全加盟国(29カ国)を含む。 注:いずれも月末値 28 -情勢分析20010302OECD諸国の民間原油在庫(1996 - 2000年) (100万バーレル) 1,020 1,000 980 1997 1998 1999 2000 2001 960 940 920 900 880 860 Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec OECD諸国の民間ガソリン在庫(1996 - 2000年) (100万バーレル) 460 440 420 1997 1998 1999 2000 2001 400 380 360 340 Jan Feb Mar (100万バーレル) Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec OECD諸国の民間中間留分在庫(1996 - 2000年) 650 600 1997 1998 1999 2000 2001 550 500 450 400 Jan Feb Mar Apr May Jun Jul 出所:Oil Market Report, IEA 29 Aug Sep Oct Nov Dec -情勢分析20010302- 米国の原油在庫(1997∼2001年) (100万バーレル) 360 350 340 330 1997 1998 1999 2000 2001 320 310 300 290 280 270 J F M A M (100万バーレル) J J A S O N D 米国のガソリン在庫(1997∼2001年) 235 230 225 1997 1998 1999 2000 2001 220 215 210 205 200 195 190 185 J F M A M (100万バーレル) J J A S O N D 米国の中間留分在庫(1997∼2001年) 160 150 140 1997 1998 1999 2000 2001 130 120 110 100 90 J F M A M J J A 出所:API, Weekly Statistical Bulletin 注:月ラベルは2001年各月第1週の位置に表記。 2001年は2月23日までの数値(週末値)。 30 S O N D -情勢分析20010302III 需給実績と短期需給見通し 1. IEA, Oil Market Report, 2001 年 2 月号(2 月 16 日更新) ・2000 年 10 月以来、石油需要増加量は予測を下回り続けている。欧州、アジアでの高油価、 暖冬が一因と考えられる。世界経済は減速しており、需要を抑制している。 ・1 月の世界の石油生産量は約 50 万 b/d 増加して 7790 万 b/d となった。増加分はイラクの生産 再開によるものである。1 月半ばまでにイラクのオイル・フォー・フード計画における輸出 量は 180 万 b/d (昨秋のピーク時より 40 - 50 万 b/d 少ないレベル)まで回復している。 ・OPEC の減産によって1月の軽質油価格は上昇を続けた。米国では地域によって原油在庫が 記録的低水準に落ち込んでいる。 ・1月のガソリン価格は大西洋両岸で急騰した。米国のドライビング・シーズンを前にしてNY 港で 18%、北西ヨーロッパ・地中海では約 10% 値上がりした。暖房油の季節が終わりに近 づき、中間留分、重油の価格は下落している。ロッテルダム、地中海、シンガポールでは マージンが減少して生産を抑制させているが、米国湾岸ではマージンは高く、生産を支え ている。 ・12 月の OECD 原油在庫は 11 月レベルより、6100 万 bbl (200 万 b/d)減少した。第 IV 四半期 の在庫変動予測は平年より低い 40 万 b/d の在庫減少となる見通しである。 表III - 1 石油需給見通し(IEA, 2月12日予測) (単位:100万b/d, %) 1997年 1998年 1999年 <需要> 北米 欧州 太平洋 OECD計* 旧ソ連 中国 欧州 中南米 アジア 中東 アフリカ 非OECD計 需要合計 <供給> OECD諸国* 旧ソ連 中国 その他非OPEC プロセスゲイン** 非OPEC計 2000年 2001年 平均 平均 IQ IIQ IIIQ IVQ 平均 IQ IIQ IIIQ IVQ 平均 IQ IIQ IIIQ IVQ 平均 22.7 15.0 9.0 23.1 15.3 8.4 23.6 15.8 9.4 23.5 14.4 7.9 24.1 14.7 8.2 24.3 15.6 9.1 23.9 15.1 8.6 23.6 15.1 9.3 23.7 14.5 8.0 24.3 15.0 8.3 24.4 15.4 8.8 24.0 15.0 8.6 24.3 15.3 9.5 23.9 14.6 8.1 24.5 15.1 8.4 24.8 15.7 9.1 24.4 15.2 8.8 46.7 46.8 48.7 45.7 47.0 49.0 47.6 47.9 46.3 47.6 48.6 47.6 49.1 46.6 48.0 49.6 48.3 (1.7) (0.2) (3.2) (0.7) (0.9) (1.9) (1.7) (-1.6) (1.3) (1.3) (-0.8) (0.0) (2.5) (0.6) (0.8) (2.1) (1.5) 3.8 4.2 0.8 4.7 6.7 4.0 2.3 3.7 4.2 0.8 4.8 6.7 4.2 2.3 3.6 4.4 0.8 4.6 7.0 4.3 2.3 3.3 4.6 0.7 4.8 7.1 4.4 2.3 3.4 4.3 0.7 4.9 7.1 4.4 2.3 3.7 4.6 0.7 4.8 7.1 4.2 2.4 3.5 4.5 0.7 4.8 7.1 4.3 2.3 3.6 4.7 0.8 4.7 7.1 4.3 2.4 3.4 4.5 0.7 4.8 7.3 4.4 2.3 3.5 5.1 0.7 4.9 7.3 4.5 2.3 3.7 4.8 0.8 4.9 7.3 4.3 2.4 3.5 4.8 0.8 4.8 7.2 4.4 2.3 3.7 4.9 0.8 4.8 7.4 4.4 2.4 3.4 5.0 0.8 5.0 7.5 4.6 2.4 3.3 5.0 0.7 5.0 7.5 4.7 2.4 3.5 5.3 0.8 5.0 7.6 4.5 2.4 3.5 5.0 0.8 4.9 7.5 4.6 2.4 26.5 26.7 27.0 27.2 27.1 27.5 27.2 27.5 27.6 28.2 28.1 27.9 28.4 28.6 28.7 29.1 28.7 (3.1) (0.8) (-1.5) (0.0) (1.1) (2.2) (1.9) (1.9) (1.5) (4.1) (2.2) (2.6) (3.3) (3.6) (1.8) (3.6) (2.9) 73.1 (2.1) 73.5 (0.5) 75.8 (1.7) 72.9 (0.4) 74.0 (0.8) 76.5 (2.1) 74.8 (1.8) 75.5 (-0.4) 73.9 (1.4) 75.9 (2.6) 76.8 (0.4) 75.5 (0.9) 77.5 (2.6) 75.2 (1.8) 76.7 (1.1) 78.7 (2.5) 77.0 (2.0) 22.1 7.2 3.2 10.4 1.6 21.9 7.3 3.2 10.7 1.6 21.5 7.4 3.2 10.9 1.7 20.9 7.4 3.2 10.8 1.6 21.3 7.5 3.2 10.9 1.6 22.0 7.6 3.2 11.1 1.7 21.4 7.5 3.2 10.9 1.7 22.3 7.7 3.3 10.9 1.7 21.8 7.8 3.2 11.1 1.7 21.7 8.0 3.2 11.1 1.7 21.9 8.2 3.2 11.2 1.7 21.9 7.9 3.2 11.1 1.7 22.2 8.2 3.2 11.3 1.8 22.0 8.3 3.2 11.3 1.7 21.9 8.4 3.2 11.3 1.7 22.6 8.4 3.2 11.3 1.8 22.2 8.3 3.2 11.3 1.8 44.5 44.7 44.6 44.0 44.6 45.5 44.7 45.9 45.5 45.8 46.4 45.9 46.7 46.5 46.5 47.2 46.7 (2.1) (0.4) (-1.5) (-1.6) (1.4) (1.8) (0.0) (2.9) (3.4) (2.7) (2.0) (2.7) (1.7) (2.2) (1.5) (1.7) (1.7) OPEC 原油 OPEC・NGL 27.2 2.7 28.0 2.8 27.8 2.8 26.3 2.8 26.2 2.8 26.1 2.8 26.6 2.8 26.5 2.8 27.8 2.9 28.4 2.9 29.0 2.9 27.9 2.9 27.8 3.0 25.7 3.0 27.2 3.0 28.5 3.0 27.3 3.0 OPEC合計 29.9 (5.3) 30.8 (3.0) 30.6 (-2.2) 29.1 (-6.7) 29.1 (-4.0) 29.0 (-4.9) 29.4 (-4.5) 29.3 (-4.2) 30.7 (5.5) 31.3 (7.6) 31.9 (10.0) 30.8 (4.8) 30.8 (5.1) 28.7 (-6.5) 30.2 (-3.5) 31.5 (-1.3) 30.3 (-1.6) 供給合計 74.4 (3.3) 75.5 (1.5) 75.3 (-1.8) 73.1 (-3.6) 73.6 (-1.1) 74.5 (-0.9) 74.1 (-1.9) 75.2 (-0.1) 76.2 (4.2) 77.1 (4.8) 78.2 (5.0) 76.7 (3.5) 77.5 (3.1) 75.2 (-1.3) 76.7 (-0.5) 78.7 (0.6) 77.0 (0.4) 在庫変動 1.3 2.0 -0.5 0.2 -0.4 -2.0 -0.7 -0.2 2.3 1.2 1.5 1.2 - - - - - 出所:Oil Market Report 2000年2月号, IEA 注:( )内は対前年伸び率。 2000年第IV 四半期以降(囲み部分)は当研究所にて在庫変動0で試算。 *OECDには全加盟国(29カ国)を含む。 **プロセスゲインは精製過程(ただし旧ソ連、中国、非OECDヨーロッパは含まない)、海上輸送損失におけるネット量。 31 -情勢分析200103022. 米エネルギー省(DOE/EIA), Short-Term Energy Outlook, 2001 年 2 月号(2 月 16 日更新) ・米国では、暖房油の供給拡大と北東部での暖冬のおかげで、暖房油価格上昇圧力が和らい でおり、前回の予測と比較して在庫水準が改善している。依然として供給量は平年より少 ないが、北東部の暖房油不足の問題は解決する方向に向かっている。 ・1 月 17 日の OPEC 総会における 150 万 b/d 減産合意によって、OPEC 10 の実質生産量は 2000 年12月のレベルから約100万 減少するだろう。この減少分の半分はサウジアラビアによる ものである。イラクの生産量を若干下方修正したため、OPEC全体での生産量は前回の予測 よりも平均で 30 万 b/d 減少している(2001 - 2002 年)。この予測には 2001 年中のさらなる減 産は考慮されていない。 ・非 OPEC 供給は 2001 年に 60 万 b/d、2002 年に 80 万 b/d 増加すると考えられる。増加分の供 給地域は主として旧ソ連である。 ・世界の石油需要は今後も増加を続けるだろうが、アジア諸国では需要の伸びが鈍化すると見 られ、2001 - 2002 年の世界需要量は前回の予測より 30 万 b/d 下方修正した。これによって 需要増加量は 160 万 b/d となっている。 ・EIA の OECD 在庫予測は、2001 年も「ミッシング・バーレル」の問題が続くが 2002 年まで には縮小するだろうとの見通しに基づいて修正されている。その結果、OECD 在庫は 2001 年、2002 年を通してゆっくりと増加する見通しであるが、依然として通常レベルを下回る 状態が続くと予想される。 表III - 2 石油需給見通し(DOE, 2月6日予測) (単位:100万b/d, %) 1998年 1999年 2000年 <需要> 北米 欧州 太平洋 OECD計* 旧ソ連 欧州 中国 その他アジア その他非OECD 非OECD計 需要合計 <供給>** OECD諸国* 旧ソ連 中国 メキシコ その他 非OPEC計 OPEC 供給合計 在庫変動 2001年 2002年 平均 平均 IQ IIQ IIIQ IVQ 平均 IQ IIQ IIIQ IVQ 平均 IQ IIQ IIIQ IVQ 平均 21.1 14.7 6.4 21.7 14.5 6.6 21.5 14.6 7.0 21.6 14.0 6.0 22.1 14.4 6.4 22.2 15.2 7.0 21.8 14.5 6.6 22.1 15.0 7.2 21.9 14.0 6.1 22.4 14.6 6.3 22.6 15.2 6.9 22.3 14.7 6.6 22.4 15.1 7.4 22.4 14.2 6.2 22.9 14.7 6.3 22.9 15.4 6.9 22.7 14.8 6.7 42.2 42.9 43.0 41.5 42.9 44.2 42.9 44.3 42.1 43.3 44.6 43.6 44.9 42.8 44.1 45.2 44.2 (1.0) (1.7) (-1.8) (0.7) (1.2) (0.2) (0.0) (3.0) (1.4) (0.9) (0.9) (1.6) (1.4) (1.7) (1.8) (1.3) (1.4) 4.2 3.6 3.9 3.7 3.7 3.7 3.7 3.8 3.7 3.7 3.7 3.7 3.9 3.7 3.7 3.7 3.8 1.5 3.9 8.7 13.2 1.6 4.3 8.8 13.6 1.5 4.6 9.2 13.7 1.5 4.5 9.3 14.0 1.5 4.5 9.0 14.0 1.5 4.5 9.4 14.0 1.5 4.5 9.2 13.9 1.6 4.8 9.6 14.1 1.6 4.7 9.6 14.3 1.6 4.7 9.3 14.4 1.6 4.7 9.7 14.3 1.6 4.7 9.6 14.3 1.6 5.0 9.9 14.4 1.6 5.0 9.9 14.7 1.6 4.9 9.6 14.8 1.6 5.0 10.1 14.7 1.6 5.0 9.9 14.6 31.5 31.9 32.8 33.0 32.8 33.1 32.9 33.9 33.9 33.6 34.1 33.9 34.8 34.9 34.6 35.1 34.9 (0.3) (1.3) (2.8) (3.8) (3.5) (2.5) (3.1) (3.4) (2.7) (2.4) (3.0) (3.0) (2.7) (2.9) (3.0) (2.9) (2.9) 73.8 74.8 75.8 74.5 75.7 77.4 75.8 78.2 76.0 76.9 78.7 77.4 79.7 77.7 78.7 80.3 79.1 (0.8) (1.4) (0.1) (1.9) (2.2) (1.4) (1.3) (3.2) (2.0) (1.6) (1.7) (2.1) (1.9) (2.2) (2.3) (2.0) (2.2) 19.7 19.4 20.2 19.7 19.6 20.1 19.9 20.0 19.8 19.9 20.5 20.1 19.9 19.8 19.9 20.5 20.0 7.2 3.2 3.5 10.9 44.5 7.4 3.2 3.4 11.2 44.6 7.6 3.3 3.5 11.2 45.7 7.7 3.3 3.5 11.2 45.4 7.9 3.2 3.5 11.4 45.7 8.0 3.3 3.6 11.4 46.3 7.8 3.3 3.5 11.3 45.8 7.9 3.2 3.8 11.1 45.9 8.0 3.2 3.8 11.2 46.1 8.2 3.2 3.8 11.4 46.5 8.2 3.2 3.7 11.5 47.2 8.1 3.2 3.8 11.3 46.4 8.3 3.1 4.0 11.4 46.8 8.5 3.1 4.0 11.5 46.9 8.6 3.1 4.0 11.7 47.4 8.6 3.1 3.9 11.8 48.0 8.5 3.1 4.0 11.6 47.2 (0.9) (0.2) (2.7) (3.2) (2.5) (1.8) (2.7) (0.4) (1.5) (1.8) (1.9) (1.3) (2.0) (1.7) (1.9) (1.7) (1.7) 30.4 29.3 29.3 30.7 31.6 31.6 30.8 30.9 31.1 31.3 31.4 31.2 32.0 32.0 32.1 32.1 32.1 (1.7) (-3.6) (-3.6) (6.2) (8.2) (10.1) (5.1) (5.5) (1.3) (-0.9) (-0.6) (1.3) (3.6) (2.9) (2.6) (2.2) (2.9) 74.9 73.9 75.0 76.1 77.3 77.9 76.6 76.8 77.2 77.8 78.6 77.6 78.8 78.9 79.5 80.1 79.3 (1.2) (-1.3) (0.1) (4.4) (4.7) (5.0) (3.7) (2.4) (1.4) (0.6) (0.9) (1.3) (2.6) (2.2) (2.2) (1.9) (2.2) 1.2 -0.9 -0.8 1.6 1.6 0.6 0.8 -1.4 1.2 0.9 0.0 0.2 -0.9 1.2 0.9 -0.2 0.2 出所:Short-Term Energy Outlook, 2001年2月号, DOE/EIA 注:( )内は対前年伸び率。 *OECDにはチェコ、ハンガリー、メキシコ、ポーランド、韓国は含まない。 **供給にはNGL、コンデンセート等も含む。 32 -情勢分析200103023. その他 (3 月 2 日更新) Petroleum Argus 社 , Petroleum Argus Weekly Global Markets, 2001 年 2 月 19 日号 ・需要が減退期に入る第 II 四半期に OPEC がこれ以上減産しなければ、今年の世界の需給は バランスすると見られる。しかし、わずか 10 万 b/d の在庫積み増しではカバー日数は変わ らず、価格の不安定性、及び地域的不均衡というサイクルから抜け出すことはできない。 ・高価格が続くと需要の伸びが予測を下回る危険がある。アナリストたちは経済の減速に合 わせて需要を下方修正している。 ・昨年の高価格は間違いなく米国経済の急激な減速の一因となり、他の地域にも影響を与え ている。特にアジア太平洋地域では税金が低く、政府が最終消費者に補助金を出す傾向が あるため、影響を受けやすい。韓国、インド、タイなどを含む主な国で、第 IV 四半期は需 要が減退した。今年の石油需要、経済成長率も下方修正されている。中国経済は引き続き 好調だが、需要は昨年ほど強くないと見られる。 ・今後の石油価格については、世界経済の減速という弱気要因、低レベルの在庫という強気 要因の 2 つの方向性が併存している。 ・現在の需要予測では、今年の原油在庫レベルが回復する余地はほとんどない。もし需要が 失速すれば、それに対して OPEC が価格下落を防ぐために再減産しようとするだろう。そ うなると、高価格 - 需要減退 - 減産 - 高価格という悪循環に陥る可能性がある。 表III - 3 石油需給見通し(Argus, 2月19日予測) (単位:100万b/d, %) 1998年 1999年 2000年 2001年 平均 IQ IIQ IIIQ IVQ 平均 IQ IIQ IIIQ IVQ 平均 IQ IIQ IIIQ IVQ 平均 47.6 48.6 45.7 46.9 49.1 47.6 47.8 46.3 47.7 48.9 47.7 49.3 46.4 48.3 49.5 48.4 27.4 27.3 27.2 27.6 27.7 27.5 28.3 28.0 28.6 29.2 28.5 28.8 28.9 29.1 29.6 29.1 75.0 75.9 72.9 74.5 76.8 75.1 76.1 74.3 76.3 78.1 76.2 78.1 75.3 77.4 79.1 77.5 (1.6) (1.7) (0.0) (0.9) (2.3) (0.1) (0.3) (1.9) (2.4) (1.7) (1.5) (2.6) (1.3) (1.4) (1.3) (1.7) 21.4 21.5 20.9 21.2 22.1 21.4 22.2 21.9 21.7 22.4 22.0 22.3 21.9 22.0 22.4 22.2 23.1 23.0 23.0 23.2 23.4 23.2 23.6 23.6 23.8 24.2 23.8 24.3 24.4 24.5 24.7 24.4 44.5 44.5 43.9 44.4 45.5 44.6 45.8 45.5 45.5 46.6 45.8 46.6 46.3 46.5 47.1 46.6 (0.2) (-1.8) (-1.8) (0.9) (2.0) (0.2) (2.9) (3.6) (2.5) (2.4) (2.7) (1.7) (1.8) (2.2) (1.1) (1.7) 26.5 27.6 26.1 26.3 26.0 26.5 26.3 27.9 28.6 28.8 27.93 27.9 28.2 28.2 28.2 28.09 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 2.9 29.4 30.5 29.0 29.2 28.9 29.4 29.2 30.8 31.5 31.7 30.8 30.8 31.1 31.1 31.1 31.0 (-2.0) (-2.9) (-6.5) (-2.7) (-3.7) (0.0) (-4.3) (6.2) (7.9) (9.7) (4.9) (5.5) (1.0) (-1.3) (-1.9) (0.5) 73.9 75.0 72.9 73.6 74.4 74.0 75.0 76.3 77.0 78.3 76.6 77.4 77.4 77.6 78.2 77.6 (-0.7) (-2.2) (-3.7) (-0.5) (-0.3) (0.1) (0.0) (4.7) (4.6) (5.2) (3.6) (3.2) (1.4) (0.8) (-0.1) (1.3) -1.1 -1.0 -0.1 -1.0 -2.4 -1.2 -1.1 2.0 0.8 0.2 0.4 -0.7 2.1 0.1 -0.9 0.1 需要 供給 50.5 44.0 51.0 44.1 49.0 43.3 50.5 43.7 52.0 44.8 50.6 44.0 50.2 44.9 49.7 44.8 50.9 45.0 52.3 46.1 50.8 45.2 51.8 46.1 50.2 45.7 51.6 45.9 52.8 46.5 51.6 46.0 供給-需要*** -6.6 -6.8 -5.7 -6.8 -7.2 -6.6 -5.2 -4.9 -5.9 -6.1 -5.5 -5.7 -4.5 -5.7 -6.4 -5.6 需要 20.1 20.7 19.5 19.7 20.6 20.1 21.7 20.1 20.8 21.5 21.0 21.9 20.6 21.1 21.8 21.3 供給 8.1 8.1 8.0 8.1 8.1 8.1 8.3 8.4 8.3 8.4 8.4 8.4 8.4 8.4 8.4 8.4 -12.0 -12.6 -11.5 -11.6 -12.5 -12.1 -13.3 -11.8 -12.5 -13.1 -12.7 -13.5 -12.2 -12.8 -13.4 -13.0 <需要> OECD諸国 非OECD 需要合計 <供給> OECD諸国 その他非OPEC 非OPEC計* OPEC原油 OPEC NGLs OPEC計 供給合計 供給-需要 大西洋市場** アジア太平洋市場 供給-需要*** 中東市場 需要 4.3 4.2 4.3 4.4 4.2 4.3 4.3 4.4 4.5 4.4 4.4 4.4 4.6 4.7 4.5 4.5 供給 21.8 22.7 21.5 21.8 21.4 21.8 21.7 23.1 23.7 23.8 23.1 22.9 23.3 23.3 23.3 23.2 供給-需要*** 17.6 18.5 17.1 17.4 17.2 17.5 17.4 18.7 19.1 19.4 18.7 18.5 18.7 18.6 18.8 18.7 出所:Petroleum Argus Weekly Global Markets, Petroleum Argus社 注:( )内は対前年伸び率。 *非OPEC供給はプロセス・ゲイン(160万b/d)、米国のSPR放出を含む。 **大西洋市場には南北米、欧州、旧ソ、アフリカを含む。 ***大西洋市場、アジア太平洋市場、中東市場の需給バランスは在庫変動0とする。 33 -情勢分析200103024. 原油価格見通し 予測者(機関) 価格見通し 理由・根拠 出所 河原 一夫氏 (石油連盟調査役) ・$25/bを挟んだ一進一退 (ドバイ原油)・ 原油は今後、春の不需要期に向かう が、もし需給の緩和感が強まれば、 OPECが減産を強化して引き締めに動 くのは必至だ。今春は米国のガソリ ン需給の逼迫感は昨年ほど強くな く、かく乱要因になる可能性は低 い。しかし、パレスチナ情勢が緊迫 する局面では先物主導で一転、上昇 に転じることもあり得る。 日経新聞 2000.2.20 川田 竹千代氏 ・向こう数年間はOPECバスケットで プライス・バンド圏内 ($22 - 28/b) (環境制約による石油需要の急減、 中東和平問題のこじれによる大規 模紛争の発生といった自体がない 場合) ・ この15年間の原油価格低下の時代に おける石油産業のリストラの結果、 経営効率化が進み、メジャーズも再 編された。市場は、上流ではOPECの 結束、下流ではメジャーズの寡占が 進み、新たな投資を行う収益を望み 得る状況となっている。末端製品市 場の高騰は、ネットバックを通じて 原油市況の下支え効果を持つ。 石油文化 2001.1 CGES ・ 3月16日のOPEC総会までにプライス・バンドの下限($22/b)を下回ることはない だろうが、第II四半期の価格下落を予測して減産に踏み切る恐れがある。OPEC 諸国の多くは価格が上限($28/b)近いことをのぞんでおり、タカ派の国は$25/bを 将来的な減産のサインと見るかもしれない。 ・ 2001年を通してOPECが現在の生産量を維持し、イラクが輸出を再開したとし ても、世界の在庫積み増し量はわずか5万b/dに過ぎず、需要が増加すればカ バー日数を維持するのに不十分となる。 ・ OPECが高油価を維持しようとすれば、需要は減退し、さらに減産して1984 85年のような悪循環に陥る可能性がある。OPECは毎日の価格を$25/bに維持し ようとするのではなく、2001年の平均価格が$25/bになるようにするべきだ。 ・ 年平均価格を$25/bにすることはできそうだが、それを達成するためには夏の 間、プライス・バンド圏内での低価格を受け入れなければならない。年末に は、2002年の価格高騰を防ぐために再度増産する必要があろう。 MEES 2001.2.26 34
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