9月9日 区民健康講座 抄録 形成外科では先天的(生まれつき)あるいは後天的(事故、外傷、加齢など)な体の醜状 変形に対して、機能だけでなく整容的にも「いわゆる正常な状態」にもどすことで、個人 を社会に適応させることを目的とした手術を行っています。悪性腫瘍をとればそれでよし、 怪我が治ればそれでよし。そんな時代は終わりました。きずを負った人がいかにその後の 社会生活をその人らしく生きて行くことが出来るか?そんな患者さんの悩みに向き合い、 『可能な限り以前の状態に戻そうではないか。』『社会生活をスムーズに送ることが出来る ような整容に近づけようではないか。』ということを目標に手術を行っています。 手術の出来映えの善し悪しが一目瞭然であるため、患者さんが本当に満足できる状態にな るのには数回の手術が必要となることが多いですが、熱意を持って向き合えば「ここが気 になるのです。」「それでは、こういう風に修正しよう。」というように、患者さんと医師両 者の意見でよりよい結果を生み出して行くことが出来ます。 外傷、外傷後瘢痕、皮膚腫瘍、外科手術後の再建(乳房切除後の再建など)、しみあざレー ザー治療、美容皮膚治療につき、症例写真を供覧しながら、ご説明を追加しました。 <眼瞼下垂症> 先天性の眼瞼下垂症と後天性(加齢性、コンタクトレンズ長期装用)の眼瞼下垂症があり ます。先天性眼瞼下垂症は生まれつきまぶたがほとんど開かないため、1 歳前後で全身麻酔 下にて手術を行います。 後天性眼瞼下垂症は、加齢性のものがほとんどですが、コンタクトレンズ長期装用による もの、顔面神経麻痺性やバセドー氏病など原因疾患があるものがあります。局所麻酔下に て手術を行います。 眼瞼の下垂症の症状; (外見上変化) まぶたの下垂、まぶたのくぼみ、眉毛の挙上、おでこの横ジワの顕著化、 眠たそうな顔つき (自覚症状) まぶたを開けづらい、眼の奥が疲れる、頭痛・肩こり 下垂している部位による分類;A 皮膚が緩むことで生じる眼瞼下垂症 B 眼瞼挙筋が緩むことで生じる眼瞼下垂症 手術方法;A 皮膚が緩むことで生じる眼瞼下垂症→余剰皮膚切除 B 眼瞼挙筋が緩むことで生じる眼瞼下垂症→挙筋短縮術、挙筋前転術 眼瞼下垂症の手術は 「まぶたを開ける」 という機能的改善が一番の目的でありますが、 頭重感、肩こり、頭痛など不定愁訴の改善も見込まれることが多く、さらに整容的にもま ぶたが下垂してくる前の状態に戻ることから、若返り手術の要素も兼ね備えています。ト ータル的に患者さまの満足度が非常に高い手術であることから、私が力を入れている治療 の一つです。 高齢化社会においては、今後ますます、眼瞼下垂症の患者さまが増えると思われます。「年 だから…」とあきらめるのでなく、一つの疾患として治療という選択肢があることをご理 解いただけると幸いです。
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