Testi analizzati e tradotti per il corso di Lingua giapponese classica 2, Mod.3 “Analisi e traduzione di testi giapponesi premoderni”, a.a. 2005-2006 primo semestre. 古 事 記 故、所避追而、降出雲國之肥河上、名鳥髪地。此時箸從其河流下。於是須佐之 男命、以爲人有其河上而、尋覓上往者、老夫與老女二人在而、童女置中泣。 万葉集 1. Poesia N. 338 験無、物乎不念者、一坏乃、濁酒乎、可飲有良師 2. Poesia n. 351 世間乎 何物爾将譬 旦開 榜去師船之 跡無如 1 3. Poesia N.377 青山之 嶺乃白雲 朝爾食爾 恒見杼毛 目頬四吾君 竹 取 物 語 いまは昔、竹取の翁といふもの有りけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろ づの事に使ひけり。名をば、さかきの造となむいひける。その竹の中に、もと 光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。それ を見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。翁いふやう、「我あ さごと夕ごとに見る竹の中におはするにて、知りぬ。子となり給べき人なめり」 とて、手にうち入れて家へ持ちて來ぬ。妻の女にあづけて養はす。うつくしき 事かぎりなし。いとをさなければ籠に入れて養ふ。 竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけて後に竹とるに、節を隔てゝよごとに 金ある竹を見つくる事かさなりぬ。かくて翁やうやう豊になり行。この兒、養 ふ程に、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになる程に、よき程なる人 に成ぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳着す。 2 古今和歌集 - かな序 やまとうたは、人のこころをたねとして、よろづのことのはとぞなれりける。 世中にある人、ことわざしげきものなれば、心におもふことを、見るものきく ものにつけて、いひいだせるなり。花になくうぐひす、水にすむかはづのこゑ をきけば、いきとしいけるもの、 いづれかうたをよまざりける。ちからをもい れずして、あめつちをうごかし、めに見えぬおに神をもあはれとおもはせ、を とこをむなのなかをもやはらげ、たけきもののふの心をも、なぐさむるはうた なり。 伊勢物語 - (六段 芥川) 「むかし、男ありけり。女の、え得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけ るを、辛うじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ河を率て行きけれ ば、草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ。」となむ男に問ひける。行く 先遠く、夜も更けにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、 3 雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥におし入れて、男、弓・や なぐひを負ひて、戸口にをり。はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼 はや一口に喰ひてけり。「あなや。」と言ひけれど、神鳴るさわぎに、え聞か ざりけり。やうやう夜も明けゆくに、見れば、率て来し女もなし。足ずりをし て泣けどもかひなし。 白玉かなにぞと人の問ひしとき露と答へて消えなましものを」 更級日記 あつまぢのみちのはてよりも、猶おくつかたにおいゝでたる人、いか許かはあ やしかりけむを、いかにおもひはじめける事にか、世中に物がたりといふ物の あんなるを、いかで見ばやとおもひつゝ、つれづれなるひるま、よひゐなどに、 あねまゝはゝなどやうの人々の、その物がたり、かのものがたり、ひかる源氏 のあるやうなど、ところどころかたるをきくに、いとゞゆかしさまされど、わ がおもふままに、そらにいかでかおぼえかたらむ。いみじく心もとなきまゝに、 とうしんにやくしほとけをつくりて、てあらひなどして、人まにみそかにいり 4 つゝ、京にとくあげ給て、物がたりのおほく候なる、あるかぎり見せ給へと、 身をすてゝぬかをつき、いのり申すほどに、十三になるとし、のぼらむとて、 九月三日かどでして、いまたちといふ所にうつる。年ごろあそびなれつるとこ ろを、あらはにこぼちちらして、たちさはぎて、日のいりぎはの、いとすごく きりわたりたるに、くるまにのるとて、うち見やりたれば、人まにはまいりつゝ、 ぬかをつきしやくし仏のたち給へるを、見すてたてまつるかなしくて、ひとし れずうちなかれぬ。かどでしたる所は、めぐりなどもなくて、かりそめのかやゝ の、しとみなどもなし。すだれかけ、まくなどひきたり。 枕草子 春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲 の、細くたなびきたる。夏は、夜。月のころは、さらなり。闇もなほ。螢のお ほく飛びちがひたる、また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、 をかし。雨など降るも、をかし。秋は、夕ぐれ。夕日のさして、山のはいと近 うなりたるに、烏の、ねどころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛びい そぐさへ、あはれなり。まいて、雁などの列ねたるが、いと小さく見ゆるは、 5 いとをかし。日入りはてて、風のおと、蟲の音など、はたいふべきにあらず。 冬は、つとめて。雪の降りたるは、いふべきにもあらず。霜のいと白きも、ま た、さらでもいと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるも、いとつき づきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちにな りて、わろし。ころは、正月、三月、四月、五月、七、八、九月、十月、二月、 すべて、をりにつけつつ、 一年ながらをかし。正月。一日はまいて。空のけし きもうらうらと、めづらしうかすみこめたるに、世にありとある人はみな、姿 かたち心ことにつくろひ、君をもわれをも祝ひなどしたる、さまことにをかし。 新古今和歌集 n.38 春の夜のゆめのうき橋とだえして峰にわかるる横雲のそら n. 149 花は散りその色となくながむればむなしき空にはるさめぞ降る n. 363 見わたせば花も紅葉もなかりけり浦のとま屋の秋の夕暮 n.1206 かへるさのものとや人のながむらんまつ夜ながらの有明の月 6 n.1336 しろたへの袖のわかれに露おちて身にしむ色の秋風ぞふく n.1686 わくらばに問はれし人も昔にてそれより庭の跡はたえにき n.1937 色にのみ染みし心の悔しきを空しと説ける法のうれしさ。 方丈記 ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮ぶうたかた は、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたる例なし。世中にある人と栖と、 またかくのごとし。 たましきの都のうちに、棟を並べ、甍を爭へる、高き、いやしき、人の住ひは、 世々を經て盡きせぬものなれど、これをまことかと尋れば、昔しありし家は稀 なり。 7 或は去年燒けてことしは造り。あるは大家ほろびて小家となる。住む人もこれ におなじ。所もかわらず、人も多かれど、いにしへ見し人は、二三十人が中に、 わづかにひとりふ たりなり。あしたに死に、ゆふべに生るゝならひ、たゞ水の 泡にぞ似たりける。知らず、生れ死ぬる人、いづかたより來りて、いづかたへ か去る。 又知らず、かりのやどり、誰が為にか心を惱まし、何によりてか目をよろこば しむる。その、あるじとすみかと、無常をあらそふさま、いはゞ朝顔の露にこ とならず。或は露おちて花のこれり。のこるといへども朝日に枯れぬ。或は花 しぼみて、露なほ消えず。消えずといへどもゆふべを待つことなし。 徒然草 いでやこの世に生まれては、願はしかるべき事こそ多かめれ。御門の御位は、 いともかしこし。竹の園生の末葉まで、人間の種ならぬぞやんごとなき。一の 人の御有樣はさらなり、たゞ人も、舎人など給はるきはは、ゆゝしと見ゆ。そ の子・孫までは、はふれにたれど、なほなまめかし。それより下つかたは、ほ どにつけつゝ、時にあひ、したりがほなるも、みづからはいみじと思ふらめど、 いとくちをし。 8 法師ばかり羨ましからぬものはあらじ、「人には木のはしのやうに思はるゝよ」 と清少納言が書けるも、げにさることぞかし。いきほひまうに、のゝしりたる につけて、いみじとは見えず、増賀ひじりの言ひけんやうに、名聞ぐるしく、 佛の御教にたがふらんとぞおぼゆる。ひたぶるの世捨人は、なかなかあらまほ しきかたもありなん。人は、かたち・ありさまのすぐれたらんこそ、あらまほ しかるべけれ。物うちいひたる、聞きにくからず、愛敬ありて、言葉おほから ぬこそ、飽かず向はまほしけれ。めでたしと見る人の、心おとりせらるゝ本性 見えんこそ、口をしかるべけれ。 仮名草子 浮世物語・巻第四 di 浅井了意 Asai Ryôi, 5 libri, 1661 七 名月の狂歌の事 今は昔、八月十五日夜は、名に負ふ月の滿てる時分なり。この夜は、日と月と さし望む事の正しければ、月の光も殊更に明らかなる故に望月とも云なり。又、 9 眞圓に滿る故に餠月といふとも申し傳へし。詩作り・歌詠みども、日頃より含 句を拵へて、只今作りし様にもてなし、うめきすめきて詠み出だす。さる儘に 日暮より雲渦巻きて雨ふり出でしかば、かねて作りける詩歌相違して、夜更く れども一首も出でず。 『浮世房、いかにいかに』と仰せられしかば、仰のき俯き 麥穗の風に吹かるゝやうにして案じける折節、鳫の渡る聲聞えければ、 『雲外に 鳫を聞て夜る聲を』と唱へさまに、不圖思ひ寄りてかくぞ詠みける。 雨ふれば三五夜中の眞の闇二千里渡るくらかりの聲 源氏・桐壺 いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむご となき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。 はじめより我はと思ひ上がりたまへる御方がた、めざましきものにおとしめ 嫉みたまふ。同じほど、それより下臈の更衣たちは、ましてやすからず。朝夕 の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふ積りにやありけむ、い とあつしくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、いよいよあかずあはれなる ものに思ほして、人のそしりをもえ憚らせたまはず、世のためしにもなりぬべ き御もてなしなり。 10 上達部、上人なども、あいなく目を側めつつ、 「いとまばゆき人の御おぼえな り。唐土にも、かかる事の起こりにこそ、世も乱れ、あしかりけれ」と、やう やう天の下にもあぢきなう、人のもてなやみぐさになりて、楊貴妃の例も引き 出でつべくなりゆくに、いとはしたなきこと多かれど、かたじけなき御心ばへ のたぐひなきを頼みにてまじらひたまふ。 父の大納言は亡くなりて、母北の方なむいにしへの人のよしあるにて、親う ち具し、さしあたりて世のおぼえはなやかなる御方がたにもいたう劣らず、な にごとの儀式をももてなしたまひけれど、とりたててはかばかしき後見しなけ れば、事ある時は、なほ拠り所なく心細げなり。 11
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