電荷と電場 I

第1章
電荷と電場 I
この章ではまず、止まっている電荷とそれがつくる電場の関係について勉強していく。
高校で習ったことも多いかも知れないが、ちょっと見方を変え新しい数学的方法を使うこ
とで、新しい見方が生まれ、これから先の勉強の基礎となる。
1.1 クーロン力とクーロンの法則
我々は日常生活で”電気”という言葉を何気なく使うが、その実態は何であろうか?そ
れは”電荷”である。電気を帯びている物は電荷を持っており、電荷の流れが電流である。
この電荷は大きさと符号 ± を持つ。そして、この世のすべての電荷の大きさは
電気素量 e = 陽子の電荷= -電子の電荷=1.602 × 10−19 C
の整数倍の電荷を持つ。ここで、C はクーロンと読み、MKSA 単位系と呼ばれる単位
系での電荷の単位である。この単位系では長さ、質量、時間、電流を基本的な量とし、そ
れぞれメートル [m], キログラム [Kg]、秒 [s]、アンペア [A] で表す。1C の電荷とは 1A の
電流が 1 秒間に運ぶ電荷の総量である。実は、電磁気学ではさまざまな単位系が使われ、
混乱を招くこともあるのだが、現在ではこの MKSA 単位系の使用が国際的にも推奨され
ていて、本書でもこれを使う。この電荷にはきわめて大きな性質がある。それは電荷の総
量は常に一定であるということである。これを電荷保存則という。最初 1C の電荷が帯電
瓶にたまっていたとすると、他との接触がなければ、未来永劫、1C の電荷が帯電瓶にた
まっているのである。しかし、電荷は正の値も負の値もとれるので、最初、全く電荷のな
い場所に +q と −q の電荷が同時に生じるということは起こる。+q と −q の電荷が打ち
消しあって全体では電荷はないので、電荷保存則は満たしているのである。
さて、この世の電荷を帯びている物質は普通、大きさを持っている。しかし、大きさを
1
図 1.1
距離 r1,2 だけ離れた2つの電荷 q1 , q2
無視できる点とみなした方が便利なことも多い。そのように、大きさが無視でき、電荷だ
けを持っている点を、点電荷と呼ぶ。これは、力学で大きさが無視でき質量だけを持って
いる点を考え、質点と呼ぶのと同じことである。質点の間には万有引力の法則で表される
力が働く。では点電荷の間にはどのような力が働くのであろうか?距離 r12 だけ離れた 2
つの点電荷 q1 , q2 を考えてみよう。このとき、2 つの点電荷の間には
F12 = k
q1 q2
r12 2
(1.1)
の大きさの力が働くのである。これはクーロン力と呼ばれる。k は後で説明する定数であ
る。2 つの点の間の距離の2乗に反比例するという万有引力の法則と同じ形をしているこ
とがわかるだろう。違いは質量が電荷に置き換わったことと定数 k である。ではその力は
どちら向きに働くのであろうか?ここで万有引力の法則との大きな違いが現れる。他に特
別な方向はないのであるから、力が働くとすれば 2 つの点電荷を結ぶ直線に平行な方向、
すなわち (!
r1 − !r2 ) の方向か (!r2 − !r1 ) の方向に働く。そして万有引力の場合はその名の通
り常に引力が働くのであるが、点電荷の間の力の場合は q1 と q2 が同符号 (q1 × q2 > 0)
ならば反発力が、異符号 (q1 × q2 < 0) ならば引力が働くのである。この引力と斥力の
両方の場合が現れるというのが万有引力の場合との大きな違いであり、質量と異なり電
荷は正と負、両方の場合があるからである。さて、MKSA 単位系では先ほどの定数 k は
k=
1
と表される。ここで ε0 = 8.854 × 10−12 C2 N−1 m−2 は真空の誘電率と呼ばれ
4πε0
る量である。
図 1.2
位置 !
r1 , !r2 にある2つの点電荷を結ぶ直線の方向。
2
図 1.3
距離 r1,2 だけ離れた2つの電荷 q1 , q2 に働く力、q1 × q2 > 0 で反発力の場合
図 1.4 距離 r1,2 だけ離れた2つの電荷 q1 , q2 に働く力、q1 × q2 < 0 で引力の場合
3
ここまで述べたことをベクトルを使って表してみよう。いま力の方向は2つの電荷を結
ぶベクトル、(!
r1 − !r2 ) か (!r2 − !r1 ) の方向に等しい。力の大きさは式(1.1)で与えられる
のだから、これに q1 と q2 が同符号の時は斥力、異符号の時は引力になるように (!
r1 − !r2 )
か (!
r2 − !r1 ) の方向の単位ベクトル
!12 は
電荷 q1 が q2 から受ける力 F
!r2 − !r1
!r1 − !r2
か
を掛けてやればよい。よって点
|!r1 − !r2 |
|!r1 − !r2 |
q1 q2
!r1 − !r2
1
F!12 =
×
4πε0 |!r1 − !r2 |2
|!r1 − !r2 |
q1 q2 !r1 − !r2
=
4πε0 |!r1 − !r2 |3
(1.2)
2 が 1 から受ける力 F!21 は
q1 q2
!r2 − !r1
1
F!21 =
×
2
4πε0 |!r1 − !r2 |
|!r1 − !r2 |
q1 q2 !r2 − !r1
=
4πε0 |!r1 − !r2 |3
(1.3)
となる。
q1 × q2 の正負により、2つの点電荷を結ぶ直線に平行に斥力または引力が働くことが
式からもわかるだろう。この式がクーロンの法則である。
では次に点電荷が 3 つあるときを考えてみよう。この世界には様々な種類の力があるが
その多くは、力の働く物が3つ以上あるときの力は、2つの物があるときの力のベクトル
の足し算になることが多い。つまり、1,2,3という3つの物があるとき、1が2と3
から受ける力は、1と2だけがあるときに1が2から受ける力と、1と3だけがあるとき
1が3から受ける力のベクトル和になるのである。クーロン力もこのような性質を持つ。
つまり、場所 !
r1 , !r2 , !r3 に点電荷 q1 , q2 , q3 があるとき、点電荷 q1 が点電荷 q2 , q3 から受け
!1(23) は次のように表される。
る力 F
F!1(2,3) = F!12 + F!13
q1 q3 !r1 − !r3
q1 q2 !r1 − !r2
+
=
3
4πε0 |!r1 − !r2 |
4πε0 |!r1 − !r3 |3
(1.4)
!12 , F!13 は式 (1.2、1.3) に出てきた2つの点電荷だけがあるときの q1 が q2 から受
ここで F
ける力と q1 が q3 から受ける力である。同様に場所 !
r1 , !r2 , · · · , !rN に点電荷 q1 , q2 , · · · , qN
!1(2···N ) は次のように表される。
があるとき、点電荷 q1 が点電荷 q2 , · · · qN から受ける力 F
4
図 1.5
3個の電荷 q1 , q2 , q3 に働く力
図 1.6 N 個の電荷がある場合
5
F!1(2···N ) = F!12 + F!13 + · · · + F!1N
=
N
!
F!1i
(1.5)
i=2
このように、複数個の点電荷があるときに1個の点電荷が残りの全ての点電荷から受ける
力は、点電荷が2つだけある時に受ける力のベクトル和となるのである。なお、最後の
式で i の和は2からとることに注意しよう。点電荷は自分自身には力を及ぼさないので
ある。
6
問題1
1. 1cm の間隔をおいて静止している2つの電子の間に働く、重力とクーロン力の大き
さ、およびそれらの比を求めよ。
2. 位置 !r0 = (1, 1, 1)[m] に 1C の点電荷がおかれている。位置 !r1 = (3, 3, 3)[m] にお
いた 2C の点電荷が受ける力を求めよ。
3. 位置 !r1 = (1, 1, 1)[m] に 1C の点電荷、位置 !r2 = (−2, −2, −2)[m] に 2C の点電荷
がおかれている。位置 !
r = (x, y, z)[m] においた 2C の点電荷が受ける力を求めよ。
さらにこの点電荷が受ける力が 0 となる位置を求めよ。
7
1.2 電荷と電場
さてもう一度、場所 !
r にある点電荷 q が場所 !r1 にある点電荷 q1 から受ける力 F! を考
えてみよう。クーロンの法則は、
qq1 !r − !r1
F! =
4πε0 |!r − !r1 |3
(1.6)
と表される。この式を書いたとき、離れた点 !
r, !r1 の間のことは何も考えていない。いわ
ば、その間には何もなく、電荷 q1 からいきなり !
r − !r1 だけ離れたところにある電荷 q に
力が働くと考えているのである。このような考え方を遠隔作用の考えという。これに対し
て、電荷 q1 を1つ !
r1 に置くとその周りの空間の様子が変わり、その変化が !r まで伝わり
電荷 q に力が働くという考え方がある。これを近接作用の考えという。この考えだと、電
荷が1つだけしか存在せず力を働かせる相手がいなくても、空間の様子は電荷がないとき
に比べ変化していることになる。この 2 つの考え方の間には長い間の論争があったのであ
るが、今日では近接作用の考えが正しいことがわかっている。例えば、1個の電荷をある
場所の周りで振動させてやると、近接作用の立場では周りの空間の様子もそれに伴い振動
的に変化することになる。実はこれが電磁波(電波)なのである。これについては後に詳
しく説明する。
さて、このように電荷を1つ置いただけでも周りの空間の様子が変わっているのなら、
その変化の具合をうまく直感的に表せれば便利である。電気力線はまさにそのような手段
である。点電荷をおいたことによる周りの空間の変化は、点電荷から伸びた電気力線に
よって表される。電気力線の向きはその点に仮に 1C の点電荷を置いたときに受ける力の
向きに一致し、その密度はその力の大きさに比例するとする。+q[C] の点電荷を 1 つ置い
たときと +q[C] と −q[C] の点電荷を置いたときの電気力線の様子を図に示す。+q[C] と
−q[C] の点電荷があるとき、仮に置いた 1C の点電荷に働く力は、+q[C] の点電荷から受
ける力と −q[C] の点電荷から受ける力のベクトル和である。図では一見、そのように見
えないかも知れないが、±q[C] の点電荷を置いたときの電気力線はまさしくそのように
なっている。
! に話をもどそう。こ
場所 r にある点電荷 q が場所 r1 にある点電荷 q1 から受ける力 F
8
図 1.7 +q の電荷の周りの電気力線。
図 1.8 ±q の電荷の周りの電気力線。+q の電荷からは電気力線は出ていき、−q の電
荷からへ電気力線は吸い込まれていく。
(一部、図の矢印が間違っています。)
! は次のようにも表すことができる。
のF
qq1 !r − !r1
F! =
4πε0 |!r − !r1 |3
! r)q
= E(!
! r) = q1 !r − !r1
E(!
4πε0 |!r − !r1 |3
9
(1.7)
(1.8)
つまり、場所 !
r1 に点電荷 q1 をおいたことによる空間の変化は、場所 !r に点電荷 q を置
! r) というものを考えたのである。こ
かなくとも起こるのであるから、q を外に出して、E(!
れが位置 !
r1 の点電荷 q1 によって作られた位置 !r の電場である。ここに点電荷 q を置くこ
図 1.9
! r)。!r に点電荷 q を置いた
位置 !
r1 にある点電荷 q1 が位置 !r につくる電場 E(!
! = E(!
! r)q となる。
ときこれに働く力は F
! が生じると考えるのである。式 (1.8) で q = 1 とすればわかるよう
とにより初めて力 F
に電場の向きと大きさはその点に 1C の点電荷を置いたときに働く力の向きと大きさに等
しい。したがって、電場の向きは電気力線の向きに、その大きさはその点での電気力線の
密度に比例することになる。
複数個の点電荷が作る電場の式もすぐにわかる。このときのある点電荷に働くクーロン
力は、この点電荷と他の一つの点電荷があるときのクーロン力のベクトル和になってい
た。電場も同様である。!
r1 , !r2 , · · · , !rN にある点電荷 q1 , q2 , · · · , qN が場所 !r に作る電場
! r) は
E(!
! r) =
E(!
=
N
!
qi !r − !ri
4πε0 |!r − !ri |3
i=1
N
!
! i (!r)
E
(1.9)
i=1
! i (!r) =
E
!r − !ri
qi
4πε0 | !r − !ri |3
(1.10)
いま式 (1.9) で i の和が 1 から N なのは、q1 , · · · , qN の全ての電荷が電場を作り、それ
が力を及ぼす点電荷は仮想的な物で、それらの中には含まれていないからである。ここで
10
! i (!r) は場所 ri に点電荷 qi だけがあるときにできる電場で、全電場はそれらのベクトル
E
和になっている。点電荷の大きさや位置が時間変化しない場合は電場も時間変化しない。
そのような電場を静電場と呼ぶ。
ここまで点電荷を考えてきた。電荷を担う物の大きさが無視でき、かつ 1 個、2 個 · · ·
と数えられる場合を考え、点電荷として扱ってきたのである。しかし、実際の金属などの
物質の中で電荷を担うのは電子やイオンである。そして、物質中では 1023 個程度の電子
やイオンが存在する。そのときは1つ1つの電子やイオンを考えるのではなくもっと粗く
物事を見ることにして、電荷が空間的に連続的に分布しているとして、単位体積(今の場
合、1m3 )あたりの電荷の量を考えた方が具合がよい。これを電荷密度と呼び、この講義
では ρ と記す。ここで、ある点の電荷密度とはその点を中心とした単位体積の箱の中に
実際に存在する電荷の総量ではないことを注意しておく。その点を中心として体積 V の
小さな箱を考えその中に実際に存在する電荷の総量 Q とするとき、V を小さくしていっ
た極限での Q/V の大きさがその点の電荷密度である。これが”単位体積あたりの電荷の
量”という意味である。これからも”単位面積あたり”とか”単位長さあたり” という言葉
が何度か現れるが全てこのような意味である。さて、場所が違えば電荷密度は違ってもよ
い。したがって、電荷密度は場所 !
r の関数 ρ(!r) となる。では、電荷密度 ρ(!r) で表される
この空間的に連続的に分布している電荷が作る電場を考えよう。電荷が分布している空間
を数多くの微小な直方体で分割しよう。微小直方体の辺は x, y, z 軸に平行にとることに
する。それぞれの微小直方体は十分小さくそのなかでは ρ(!
r) は一定と見なせ、位置の変
化も無視できるとしよう。今、i 番目の微小直方体の場所を !
ri 、x, y, z 方向の辺の長さを
∆xi , ∆yi , ∆zi と記せば、この直方体の中の全電荷 Qi は Qi = ρ(!ri )∆xi ∆yi ∆zi となる。
いま、この直方体は十分小さいので、これは位置 !
ri にある点電荷 Qi と見なせる。よっ
て、これらの微小直方体全体が場所 !
r に作る電場は
! r) =
E(!
! ρ(!ri ) !r − !ri
∆xi ∆yi ∆zi
4πε0 |!r − !ri |3
i
! r) は、この式で
となる。空間的に連続的に分布している電荷全体が場所 !
r に作る電場 E(!
分割の個数を無限個とする極限をとり直方体の大きさ ∆xi , ∆yi , ∆zi → 0 とすれば求ま
11
図 1.10
電荷が分布している空間を数多くの微小な直方体で分割しよう。
る。この極限をとるとこの式の和は体積積分となり、
! ρ(!ri ) !r − !ri
∆xi ∆yi ∆zi
3
∆xi ,∆yi ,∆zi →0
4πε
|!
r
−
!
r
|
0
i
i
"""
#
ρ(r! ) !r − r!#
=
dx# dy # dz #
4πε0 |!r − r!# |3
"""
ρ(r!# )(!r − r!# )
1
=
dV
4πε0
|!r − r!# |3
! r) =
E(!
lim
(1.11)
と表される。積分領域は ρ(r!# ) が有限な値をとる全領域である。
ここまでは電荷が 3 次元空間に連続的に分布している場合を考えてきたが、ある曲線上
に連続的に分布していると考えた方が都合がよい場合もある。十分細い針金が帯電してい
るような場合である。曲線状の単位長さあたり(今の場合、1m)の電荷の量を電荷線密
度と呼び、この講義では λ と記す。場所が変われば λ も変わることができるので、これは
!r の関数であり、λ(!r) と書くことができる。ここで !r は曲線上のみを動く。さて、この曲
線を C として、これを図のように微小な長さ ∆si ごとに分割していく。i 番目の区間の位
置ベクトルを !
ri とすると、その区間に含まれる全電荷 Qi は Qi = λ(!ri )∆si となる。こ
12
図 1.11
曲線を微小な長さ ∆si ごとに分割していく。
れらの微小区間全体が場所 !
r に作る電場は
! r) =
E(!
! λ(!ri ) !r − !ri
∆si
3
4πε
|!
r
−
!
r
|
0
i
i
! r) は、この式で分割の個数を
となる。曲線 C 上に分布している全電荷が !
r に作る電場 E(!
無限とする極限をとり微小区間の大きさ ∆si → 0 とすると求まる。この極限をとるとこ
の式の和は線積分となり、
! λ(!ri ) !r − !ri
∆si
∆si →0
4πε0 |!r − !ri |3
i
"
λ(r!# ) !r − r!#
=
ds#
#
3
!
r−r |
C 4πε0 |!
! r) = lim
E(!
(1.12)
と表される。
最後に電荷がある曲面上に連続的に分布している場合を考えよう。薄い膜が帯電してい
るような場合である。曲面上の単位面積(今の場合、1m2 )あたりの電荷の量を電荷面密
度と呼び、この講義では σ と記す。電荷密度、電荷線密度と同様に、これも場所が変われ
ば変われるので位置の関数 σ(!
r) となる。ここで !r は曲面上のみを動く。いま、曲面を S
としてこれを図のように微小な長方形に分割していく。
i 番目の長方形の場所を !ri 、2辺の長さを ∆xi , ∆yi とすると、その中に含まれる全電
荷は σ(!
ri )∆xi ∆yi となる。これらの微小長方形全体が場所 !r に作る電場は、
! r) =
E(!
! σ(!ri ) !r − !ri
∆xi ∆yi
3
4πε
|!
r
−
!
r
|
0
i
i
13
図 1.12 曲面を微小な長方形に分割していく。
! r) は、この式で分割の個
となる。曲面 S 上に分布している全電荷が場所 ri に作る電場 E(!
数を無限個とする極限をとり、微小長方形の大きさ ∆xi , ∆yi → 0 とすると求まる。この
極限をとるとこの式の和は面積分となり、
! σ(!ri ) !r − !ri
∆xi ∆yi
3
∆xi ,∆yi →0
4πε
|!
r
−
!
r
|
0
i
i
""
#
σ(r! ) !r − r!#
dx# dy #
=
4πε0 |!r − r!# |3
""
1
σ(r!# )(!r − r!# )
=
dS
4πε0
|!r − r!# |3
! r) =
E(!
lim
と表される。
14
(1.13)
例題 無限に長い一様な直線状の電荷のつくる静電場
図のように無限に長い電荷線密度 λ0 の直線電荷が z 軸上にある。この周りの電場を求
めよ。
解答
電荷は z 軸上にあるので線積分は z 軸上で −∞ から +∞ まで行えばよい。電荷線密度
λ(!r) = λ0 であるから、電場の x, y, z 成分は、式 (1.12) よりそれぞれ
"
λ(r!# ) rx − x# #
ds
Ex (!r) =
r − !r# |3
C 4πε0 |!
"
λ0 rx ∞
1
dz #
=
2
2
4πε0 −∞ [rx + ry + (rz − z ! )2 ]3/2
(1.14)
同様に
"
λ(r!# ) ry − y # #
ds
r − !r# |3
C 4πε0 |!
"
λ0 ry ∞
1
=
dz #
4πε0 −∞ [rx2 + ry2 + (rz − z ! )2 ]3/2
Ey (!r) =
"
λ(r!# ) rz − z # #
ds
r − !r# |3
C 4πε0 |!
" ∞
λ0
rz − z #
dz #
=
4πε0 −∞ [rx2 + ry2 + (rz − z ! )2 ]3/2
Ez (!r) =
(1.15)
(1.16)
となる。ここで !
r を x 軸上にとることにすると !r = (R, 0, 0) とおけるので、式 (1.15) で
ry = 0 より Ey (!r) = 0、また式 (1.16) の Ez (!r) の被積分関数は z # について奇関数となる
図 1.13 z 軸上に電荷線密度 λ0 で分布した電荷。
15
ので、Ez (!
r) = 0 となる。一方、Ex (!r) は式 (1.14) より
λ0 R
Ex (!r) =
4πε0
と表される。ここで R > 0 とし、
"
∞
−∞
(R2
1
dz #
+ z ! )3/2
(1.17)
z = R tan θ
とおいて置換積分をしよう。
dz # =
R
dθ
cos2 θ
π π
) となるので上の式 (1.17) は
2 2
であり、z の積分範囲 (−∞, +∞) は θ では積分範囲 (− ,
λ0 R
Ex (!r) =
4πε0
λ0 R
=
4πε0
"
−π
2
"
λ0
=
4πε0 R
π
2
π
2
−π
2
"
1
R
dθ
2
R3 (1 + tan θ)3/2 cos2 θ
1
1
| cos3 θ| 2 dθ
2
R
cos θ
π
2
−π
2
| cos θ|dθ
π
λ0
sin θ|−2 π
2
4πε0 R
λ0
=
2πε0 R
=
(1.18)
! r) は x の正の軸上ではその方向を向いている。さて、x 軸の正
となる。これより電場 E(!
の方向は z 軸に直交さえしていればどちらに選んでも構わない。どちらに選ぼうと、上で
求めた電場があるのである。したがって、電場の方向は図のように z 軸を中心として円対
称の形となり、その大きさは z 軸からの距離を R として E(!
r) =
ルで表せば
となる。
x , ry , 0)
! r) = λ0 (r#
E(!
2πε0 rx2 + ry2
16
λ0
となる。ベクト
2πε0 R
図 1.14 直線電荷の作る電場。
ちょっと進んだ話題ーディラックのデルタ関数ー
さて、この節の最後に点電荷があるときの電荷密度 ρ(!
r) はどう表わされるかを考えて
みよう。もともと電荷密度は空間に連続的に分布した電荷を表すために導入した。しか
し、点電荷も ρ(!
r) で表すことができれば便利である。点電荷は位置は決まっているが、大
きさは持たない。つまり、点電荷の存在する点以外では電荷は 0 であり、存在する点では
有限の電荷を持つ。大きさの無い点でのみ有限の電荷を持つのであるから、その点での電
荷密度は無限大である。そのようなものを表すには普通の関数では無理である。ディラッ
クのデルタ関数というものが必要になる。簡単のために空間が 1 次元の場合を考えよう。
つまり、位置は x 座標で表すことができ、電荷の密度は電荷線密度 λ(x) となる。ここに
図のように大きさ(いまの場合、長さ)a の電荷 Q を位置 x0 を中心としておくことにし
よう。電荷線密度 λ(x) は x0 − a/2 から x0 + a/2 の間でのみ有限であり、その間では一
様に λ0 で分布しているとする。全電荷は Q であるから λ0 × a = Q である。したがっ
て、λ0 = Q/a となり、
λ(x) =
$
Q/a,
0,
x0 − a/2 < x < x0 + a/2
それ以外
となる。ここで、a を 0 に近づける極限をとればそのときの λ(x) は x0 にある点電荷 Q
17
を表すことになる。ディラックのデルタ関数 δ(x) は
1
λ(x)
a→0 Q
δ(x − x0 ) = lim
のように定義することができる。Q = 1 として λ(x) の x0 に立った棒の面積を一定に
保ったまま幅を 0 に持って行き、その変わりに高さが無限大になったものと考えればわか
りやすいだろう。これから明らかなように
"
+∞
−∞
δ(x − x0 )dx = 1
また、δ(x − x0 ) は x0 以外では 0 で、x0 でのみ値を持つのであるから、普通の関数を
f (x) としデルタ関数 δ(x − x0 ) と f (x) の積 δ(x − x0 )f (x) を考えると、これを −∞ か
ら +∞ まで積分して現れるのは x0 での f (x) の値 f (x0 ) となる。
"
+∞
−∞
δ(x − x0 )f (x)dx = f (x0 )
このデルタ関数を使えば点 !
r1 に点電荷 Q があるときの電荷密度 ρ(!r) は
ρ(!r) = Qδ(rx − r1x )δ(ry − r1y )δ(rz − r1z )
とあらわされる。位置 !
r の x, y, z 座標がそれぞれ !r1 の x, y, z 座標に等しいところに電荷
があるのであるから、x, y, z の 3 方向のデルタ関数の積になるのである。
1.3 積分形のガウスの法則
さて例題1のような簡単な場合でも、クーロンの法則を使って電場を計算するのは積分
がちょっと面倒であった。ここで、クーロンの法則を別の見方で見てみよう。この見方を
つかうと、例題1のような場合にはほとんど計算せずに電場が求まる。
いま、点電荷 Q > 0 のある位置を原点に選び、これを原点を中心とする半径 R の球で
! r) の面積分を考える。
囲む。そして、この球面 S 上での次の電場 E(!
&
ここで、
%
S
S
! r) · !n(!r)dS =
E(!
%
S
! r ) · dS
!
E(!
(1.19)
は閉じた曲面 S 上で積分するという意味である。閉じた曲面(閉曲面)とは端
のない曲面で球やそれを変形したもの、ドーナッツのような形をしたものを思い浮かべて
いただきたい。このように閉じた曲面上での面積分や、閉じた曲線状での線積分では積分
18
図 1.15 原点にある点電荷を半径 R の球で囲む。
記号
'
に ◦ をつけることになっている。!
n(!r) は位置 !r での曲面 S の単位法線ベクトルで
! とも表す。この積分 1.19 を計算してみよう。いま、S は原点
あり、!
n(!r)dS のことを dS
を中心とする半径 R の球面なので !
n(!r) = !r/|!r| = !r/r = !r/R となる。よって、式 (1.8)
を使うと
%
S
%
!r
Q !r
· dS
3
r| |!r|
S 4πε0 |!
%
Q
!r · !rdS
=
4πε0 R4 S
%
Q
=
dS
4πε0 R2 S
Q
=
ε0
! r) · !n(!r)dS =
E(!
(1.20)
図 1.16 原点を中心とする球面上では法線ベクトル !
n(!r) の方向は原点からの位置ベク
トル !
r の方向と一致する。
19
%
dS は球の表面全体にわたって面積分をするのであるから
%
2
! r) · !n(!r)dS の値は点
E(!
球の表面積 4πR となることを使った。これからわかるように
となる。ここで最後の積分
S
S
電荷を囲む球 S の半径 R によらず、S の内部の電荷だけで決まる。
この結果を 1.2 節の最初に導入した電気力線を使って考え直してみよう。ある点 !
r
での電気力線の向きはそこでの電場の向きに一致し、その密度 σL (!
r) は電場の強さに
比例する。ここで位置 !
r での電場の方向の単位ベクトルを !e(!r) としよう。すなわち
! r)/|E(!
! r)| である。すると
!e(!r) = E(!
電気力線の向き // !e(!
r)
! r)| = AE(!r))
電気力線の密度 : σL (!
r) = A|E(!
(1.21)
ここで A は比例定数であるがこれからは 1 とおく。式 (1.20) からもわかるように、いま
S 上では !e(!r) = !n(!r) であり、
%
%
! r) · !n(!r)dS = E(!r)!e(!r) · !n(!r)dS
E(!
S
%S
= σL (!r)dS
(1.22)
S
最後の結果は、電気力線の密度を全球面 S 上で積分しているので、球面 S を貫く電気力
線の総数 NL となる。従って、式 (1.20) の結果は、電荷を中心とする球面を貫く電気力線
! r) の方向は法線ベクトル !n(!r) の方向 = 原点からの位置
図 1.17 球面上では電場 E(!
ベクトル !
r の方向と一致する。
20
の総数は球面の半径によらず、球面内の電荷だけできまるということを示していることに
なる。
これから式 (1.20) の結果をより一般的に拡張していくが、その際、この電気力線をもと
に考えていこう。電気力線というのは電場の様子を直感的に理解するための手段であった
ので、この後の結果はもちろん電気力線など使わなくとも得ることができる。ただ、電気
力線を使った方がわかりやすいというだけである。
式 (1.20) の結果は電場を点電荷を中心とする球面上で積分した結果求まった。球の中
心が点電荷からずれていたらどうなるであろうか? 図からあきらかなように点電荷を中
心とする球面 S とそこからずれた点を中心とする球面 S’(ただしその中に点電荷を含む)
を貫く電気力線の総数は変わらない。しかし、
%
S
σL (!r)dS &=
%
S!
σL (!r)dS
である。S 上では電場の向きと S の法線ベクトルの向きが一致したが、
S’ 上ではそうは
%
ならないからである。つまり、S’ 上では
S!
σL (!r)dS は球面 S’ を貫く電気力線の総数と
なっていないのである。ではどうすればよいか?どんな曲面もその極めて小さな一部分
に着目すれば平面になる。そこで、曲面を微小な平面に分割して、まずはその一つの平
面 Si を考えることにする。ある位置の電気力線の密度 σL とは、そこでの電気力線に垂
n
であたえら
∆S
れる。したがって、曲面を分割した位置 !
ri にある面積 ∆Si の微小平面 Ai が電気力線に
直な面積 ∆S の平面 A を貫く電気力線の数を n としたとき、lim∆S→0
垂直なら、そこを貫く電気力線の数 ni は σL (!
ri ) × ∆Si である。図を見ていただきたい。
しかし、一般には微小平面は電気力線と垂直にならない。位置 !
ri での電気力線と微小平
図 1.18
中心が原点からずれた球を貫く電気力線の総数は、その球が内部に原点を含
む限り、原点を中心とする球を貫く電気力線の総数と変わらない。
21
図 1.19 電気力線に対して直行していない単位面積の平面を貫く電気力線の数。
面 Ai の法線のなす角度を θi としよう。θi =
π
2 、つまり微小平面が電気力線と平行になっ
てしまえば、そこを貫く電気力線の数 ni は 0 である。つまり ni は微小平面と電気力線
のなす角度に依存し、微小平面を電気力線に垂直な面に射影した部分の面積 ∆Si × cos θi
できまる。そして ni = σL (!
ri ) × ∆Si × cos θi となる。電気力線の方向と電場の方向は
もちろん等しいから cos θi = !e(!
ri ) · !n(!ri ) である。ここで、!n(!ri ) は微小平面 Ai の単位
法線ベクトルである。よって、曲面を分割した微小平面 Ai を貫く電気力線の数 ni は
ni = σL (!ri )!e(!ri ) · !n(!ri ) × ∆Si となる。曲面全体を貫く電気力線の総数 NL は ∆Si を 0
に近づける極限をとって、ni をすべての微小平面について和をとればよい。極限をとる
と和は面積分となり、NL は
NL = lim
∆Si →0
= lim
∆Si →0
=
%
S
!
ni
i
!
i
σL (!ri )!e(!ri ) · !n(!ri ) × ∆Si
σL (!r)!e(!r) · !n(!r)dS
(1.23)
となる。上に述べたように同じ点電荷を含んではいるが中心のずれた S と S’ の2つの球
の表面を貫く電気力線の総数は同じである。このことは式では
%
S
σL (!r)!e(!r) · !n(!r)dS =
22
%
S!
σL (!r)!e(!r) · !n(!r)dS
(1.24)
! r) だから上の式は
と表されることになる。ここで、σL (!
r)!e(!r) = E(!
%
S
! r) · !n(!r)dS =
E(!
%
S!
! r) · !n(!r)dS
E(!
(1.25)
と同じである。さて、閉曲面を貫く電気力線の総数 NL の式 (1.23) を導く上で、曲面 S
が球面であるということは使っていない。式 (1.23) は球面以外の閉曲面に対しても使え
るのである。では図 1.20 のような形をした閉曲面 S” に対しても使えるのであろうか?
S” では電気力線の一部は、内部から外部へ出た後、もう一度、内部へ入り、その後、ま
た外部へ出て行く。このとき、内部から外部へ出る電気力線の数を正とし、外部から内
部へ戻る電気力線の数を負として勘定することにすると、閉曲面 S” を貫く全電気力線の
数は球面 S を貫く全電気力線の数と同じであることが図からわかるであろう。式 (1.23)
もちゃんと S” に対して、そのように正負の符号をつけて電気力線を数えるようになって
いるのである?式 (1.23) をみると、被積分関数には !e(!
r) · !n(!r) が含まれている。ここで
!e(!r) は位置 !r での電気力線の方向を向いた単位ベクトルであり、!n(!r) はそこでの曲面の
単位法線ベクトルである。閉曲面の法線ベクトルは常に閉曲面の中から外に向かう方向に
とるという約束になっている。したがって、電気力線が閉曲面の内部から外部へ出るとき
は !e(!
r) · !n(!r) > 0 となり、逆に外部から内部に戻るときは !e(!r) · !n(!r) < 0 となるので、式
(1.23) は電気力線の数を正負をつけてちゃんと勘定しているのである。よって、閉曲面
図 1.20 球ではないが原点を内部に含む閉曲面 S” を貫く電気力線の総数。
23
S” がどんな形をしていても
%
%
σL (!r)!e(!r) · !n(!r)dS = σL (!r)!e(!r) · !n(!r)dS
S!!
S
! r) を使って書けば
であり、電場 E(!
%
S!!
! r) · !n(!r)dS =
E(!
%
となる。ここで、式 (1.20) から上の式の右辺は
NL =
=
%
%
S!!
S!!
Q
=
ε0
S
! r) · !n(!r)dS
E(!
Q
となるから、結局
ε0
σL (!r)!e(!r) · !n(!r)dS
%
! r) · !n(!r)dS = E(!
! r) · !n(!r)dS
E(!
S
(1.26)
となり、任意の閉曲面を貫く電気力線の総数はその中の電荷を ε0 で割ったもので与えら
れることになる。
ここまでは閉曲面内に1個の点電荷がある時を考えてきた。しかし、結論は点電荷が
いくつあっても変わらない。式 (1.10) からわかるように N 個の点電荷あるとき、それら
! r) に作る電場はそれぞれの電荷が作る電場 E
! i (!r) の和で与えられ
が位置 !
r に作る電場 E(!
! i (!r) は点電荷 qi が作る電場である。
る。ここで E
! r) =
E(!
!
! i (!r)
E
i
ここで、1つの点電荷がつくる電場と電気力線については上の式がなりたつのであるから
N 個の電荷を内部に含む任意の閉曲面を S とすると
%
% !
! r) · !n(!r)dS =
! i (!r) · !n(!r)dS
E(!
E
S
S
=
i
!%
i
S
! i (!r) · !n(!r)dS
E
! qi
=
ε0
i
=
Q
ε0
24
(1.27)
となる。ここで Q は S 内の全電荷である。上の式の左辺
%
S
! r) · !n(!r)dS は S を貫く電
E(!
気力線の総数だから、点電荷がいくつあろうと、任意の閉曲面を貫く電気力線の総数はそ
の中の全電荷を ε0 で割ったもので与えられることになる。また、電荷が空間に連続的に
分布していて電荷密度 ρ(!
r) で表される場合も、空間を細かく分割すれば点電荷の集合と
みなせるので、同じ結論を得る。結局、
%
! r) · !n(!r)dS = 1 (S 内の全電荷)
E(!
ε0
S
"
1
=
ρ(!r)dV
ε0 V
(1.28)
となる。ここで、V は閉曲面 S で囲まれる全領域であり、最後の積分はその領域全体で電
荷密度を体積積分しているので、V 内の全電荷となる。式 (1.28) がである*1 。電場をあ
る閉曲面全体で面積分した結果は、その内部の全電荷だけで決まるのである。
例題 原点を中心とする半径 a の球殻が電荷面密度 σ0 で一様に帯電している。ガウスの積分
定理を使って球殻の中と外の電場を求めよ。
解答
いまの場合、電荷は原点を中心として球対称に分布している。ある点 !
r に注目したとき、
原点とその点を結ぶ方向、つまり !
r の方向以外、特別な方向はない。だから、電場は !r と
同じ、または逆の方向を向くしかない。そして、σ0 > 0 なら !
r と同じ、σ0 < 0 なら !r と
逆の方向を向くのである。また、特別な方向はないのだから、電場の大きさは原点からの
距離だけできまる。電荷の分布が球対称だから、電場も球対称となるのである。原点を中
心とする半径 R の球面 S を考えこの面上で電場を積分する。S 上での電場の方向と、そ
こでの S の法線ベクトルの方向は一致するので、
%
S
! r) · !n(!r)dS =
E(!
%
E(!r)dS
%
= E(R) dS
S
S
= E(R) × 4πR2
1
= (S 内の全電荷)
ε0
*1
(1.29)
わざわざ積分形のガウスの法則と呼んでいるのだから、微分形のガウスの法則という名前の法則もあるの
だが、これについては次章で勉強する。
25
E(R) は原点からの距離が R の点での電場の大きさであり、最後に積分形のガウスの法則
(1.28) をつかった。いま、R < a では S 内に電荷はない。一方、R > a のとき S 内の全
電荷は 4πa2 σ0 である。したがって、

 0,
r<a
E(!r) =
a2
 2 σ0 , r > a
r
となる。ベクトルで表せば

 0,
r<a
! r) =
E(!
a2
 3 σ0!r, r > a
r
となる。
例題
例題1で計算した z 軸上に一様な電荷線密度 λ0 で電荷が分布している場合の電荷を積
分形のガウスの法則を使って求めよ。
解答
いまの場合、電荷は z 軸上にのみに一様に存在するので、電場は z 軸について円対称で
z 軸に垂直方向を向いている。z 軸を中心とし長さ1,半径 R の円筒を考えその全表面を
S、2つの底面をそれぞれ St , Sb 、側面を Ss とし、S 上で電場の面積分を行う。
%
""
""
""
! r) · !n(!r)dS =
! r) · !n(!r)dS +
! r) · !n(!r)dS +
! r) · !n(!r)dS
E(!
E(!
E(!
E(!
S
St
Sb
Ss
となるが、St , Sb 上では電場の向きと St , Sb の法線ベクトルの向きが直交するので
! r) · !n(!r) は 0 となる。Ss 上では電場は z 軸に垂直なので法線ベクトルの向きと一致す
E(!
る。よって、
""
Ss
! r) · !n(!r)dS =
E(!
""
E(!r)dS
""
dS
= E(R)
Ss
Ss
= E(R) × 2πR
(1.30)
となる。E(R) は z 軸からの距離が R の点での電場の大きさである。積分形のガウスの
法則 (1.28) より、これが S 内の全電荷 λ0 を ε0 で割ったものに等しい。したがって
E(!r) = E(R) =
を得る。
26
λ0
2πε0 R
(1.31)
問題2
1. 原点を中心とする半径 a > b の2つの球殻がそれぞれ電荷面密度 σa , σb で一様に
帯電している。ガウスの積分定理を使って球の中と外の電場を求めよ。半径 a の球
殻の外の電場が常に 0 となるのはどのような場合か?
2. 原点を中心とする半径 a の球が電荷密度 ρ0 で一様に帯電している。ガウスの積分
定理を使って球の中と外の電場を求めよ。
27