SOUGO IT 株式会社 相互移動通信

創造的革新の時代
- チャレンジ
ケータイを通じて社会貢献に取り組む
株式会社相互移動通信
経営コンサルティング室長
山岸 隆
総務省の統計によると、携帯電話は、全国の
人口普及率が87 . 8%(平成21年度末)であり、
私たちの日々の生活に欠かせない情報通信機器
となっている。
携帯電話市場では、従来の高機能な携帯電話
だけでなく、インターネットの利用を重点にお
いた多機能なスマートフォンが関心を集め、新
たな需要の掘り起こしが期待されている。
最新のスマートフォン発表会
れほど高くなかったようである。
一方、業界関連は、平成6 (1994)年に端末
「会社を引き受けた時、不安は大きかったけ
販売の自由化が実施されて携帯電話の加入数は
れども、不退転の決意で臨み、株の買い取りに
増加し、高い普及率であること、事業者が大手
も応じました」と社長は話す。
3 社に落ち着いてきたこと、番号ポータビリティ
結果として株を買い取ったことにより、自分
制度が導入されたことなど成長期を経て成熟期
が思い描く経営に徹する体制づくりができた。
に移行しつつあり、販売店では人材教育を通じ
そして、他のアドバイスに耳を傾けながら、ここ
たお客さま重視の対応、業界では携帯電話やイ
ンターネット利用に関する啓発活動を通じた社会
とのかかわりがこれまで以上に求められている。
今月は、こうした取り組みを実践している
au 携帯電話の販売店、相互移動通信を紹介する。
だと思うと自分の信念を貫き先手を打ってきた。
●お客さま重視の人材教育
販売店では各種のサービスやサポートの充実
についてお客さま重視の対応が求められる。
(1)資格取得の推進
● 株式取得により自らの経営に撤する体制づくり
auプロスタッフ、auハートフルスタッフな
当社は、平成5 (1993)年に北陸3 県の企業
どの資格に加え、総務省が後援している「MC
6 社が集まり、資本金1億円で設立された相互
PCケータイ実務検定」の取得に注力している。
移動通信サービスに始まる。
今までこの種の検定は公的なものがなかった。
そのころの社長の出資額は500万円であった。
これは主に販売員を対象として、携帯電話サービ
平成9 (1997)年の社長就任時でも1500万円で、
概
その後、他の株主から株を買い取ったそうであ
所 在 地
代 表 者
設
立
資 本 金
売 上 高
従 業 員 数
事 業 内 容
ホームページ
る。携帯電話の販売自由化以降、携帯事業はバ
ラバラな動きの中で先行きが不透明であったた
め、株主から株を手放す動きが出てきた。今で
は考えられないが、当時は携帯事業の信頼がそ
要
金沢市神田2 丁目2 番29号
代表取締役 池崎正典
平成5 (1993)年5 月6 日
2 億1500万円
34億6900万円(平成22年3 月期)
本社22人・店舗スタッフ88人
携帯電話販売ほか
http://www.sougo-idou.co.jp/
北陸経済研究 2010.12
チャレンジ
スなどの販売に消費者保護の観点から通信にか
●企業市民として地域に貢献
かわる基礎知識や法律知識を習得するものであ
(1)当社は地域を構成する一員
り、当社の資格取得者は50名をゆうに超えている。
携帯電話の販売チャネルはauショップのよ
社会的責任と利益追求は車の両輪であるが、
これまで求められたのは利益の追求ばかりで
うな専売チャネルのほかに家電量販店などがあ
あった。それで良いのだろうか、という素朴な
り取扱店も多い。そうしたところも含め、業界
思いから社長は当社も地域を構成する一員であ
をあげて取得に向けた取り組みが望まれている。
るという企業市民の考え方に立っている。
(2)クレドの導入
(2)「北陸携帯電話販売店協会」の設立
社員が仕事の質を高め、社員満足度および顧
石川県では、昨年6 月に小・中学生の携帯電
客満足度の向上を通じて業績向上を実現するこ
話所持規制努力義務を盛り込んだ「いしかわ子
とを目標として2 年前に「クレド」を導入した。
ども総合条例改正案」が可決された。これに対
「クレド」とはラテン語で「信条」の意で、
し携帯電話の機能の問題ではなく、ネット上の
企業理念や社訓などを正しく伝えるために、身
さまざまなサービスの問題であるという観点か
近に置いて分かりやすくしたツールである。当
ら携帯電話の適正な利用についての啓発活動な
社では「For pleasure(最高の笑顔と共に)」
どを他に頼るのではなく、自分たちで地道に教
を目標とし、社員は「企業理念」「MISSION」
育活動を実施していこうと考えた社長は北陸3
「CREDO」「ACTION」という4 つの行動基準
県の携帯電話販売店に呼び掛け、昨年12月に「北
をまとめた名刺大のカードを持っている。年2
陸携帯電話販売店協会」を設立した。
回、クレド表彰大会も実施され、優れた活動事
(3)参加者が広がる啓発セミナー
例は「社長賞」として表彰される。
協会では啓発に関するセミナーを公開で行い、
「社員意識の向上は、玉ねぎの皮をむくくら
新しい情報を発信している。参加者は一般の人
いの根気が必要です。おかげさまで素直にあり
をはじめ、PTAや行政関係者、また最近では
がとうと言える気持ちになってきています」と
県や市の議員にまで広がりを見せているため、
社長は社員みんなの取り組みを評価している。
(3)より良い職場環境づくり
販売店はお客さまとの接点であり、仕事内容
販売店側も協力して質の向上に努めている。
●来るべきLTEの時代を迎えて
今年度以降にLTE(Long Term Evolution)
の変化も激しい。特に、女性が中心の職場であ
という次世代高速通信技術規格が順次採用され
るため、みんなが当社で働いてよかったと思え
て、今後、通信規格が統一化される。それによ
るような職場環境づくりに努めている。
り、携帯電話機器と事業者間の縛りが弱くなる
また、ビジネスマンから、高齢者、小・中学
のではないかと予想される。販売店活動の対象
生、外国人までお客さまの層は多様である。さ
もこれまでの同列の販売店から他の事業者の販
らに、クレーマー対策も求められる。これは販
売店まで拡大することにより、お客さまを増や
売員やオペレーターが最も精神的に疲れる原因
すチャンスにもなる。当社が実践しているお客
であるといわれており、男性人員の配置など適
さま重視の対応、地域貢献の取り組みが結実す
正な対応を心掛けている。
る予感がする。
北陸経済研究 2010.12