教研発足集会あいさつと基調報告 - 沖縄県高教組南部支部_トップページ

副支部長あいさつ
副支部長 金 城
勝
ますます多忙化する学校現場にあって、生徒たちの成長を願い、日々の教育実践に努力
されている教職員のみなさんに敬意を表します。
特に、教職員評価システムが実施されてからは、生徒のことや授業のことを考える時間
がますます割かれていいます。そして数値目標による教育活動管理は教育の本来のあり方
を歪めはじめています。しかし評価システムに象徴される新自由主義による教育改革は生
徒間の共同の学び、教師間、保護者間の協力や信頼をズタズタにし教育を荒廃させてきて
います。最近の学校の状況に失望し職場を去っていく仲間も多くなっています。そんな中
にあっても教育本来のあり方に確信を持ち、教師としての誇りを持って教育実践を続けて
いくことができるでしょうか。
1947年に制定された教育基本法は教育の目的を人格の完成と明確に定め、第10条
で「不当な支配に屈することなく国民全体に対して直接責任を負って行われる べきもの
である」としています。その意味するところは「戦前の教育を反省し、時の政府におもね
ることなく、未来の国民にも責任をもつ」ことだと私は解釈しています。
1966年「教員の地位に関する勧告」がユネスコの特別政府間会議において日本政府
を含め全会一致で採択されました。「諸国民間の平和、相互の尊重と理解の精神を青少年
の間に普及する」「教育の進歩における教員の不可欠な役割、ならびに人間の開発および
現代社会の発展への彼らの貢献の重要性を認識し、教員がこの役割にふさわしい地位を享
受することを保障する」等が前文に書かれ、教育の専門職にふさわしい教員の地位に関す
る諸原則、具体的条項がもりこまれています。
1985年に成人教育パリ会議で「ユネスコの学習権宣言」が採択されました。基本的
人権の一つとしての教育を受ける権利が宣言されたのです。全ての教育政策がこの権利を
いかに保障していくかで評価されるべきでしょう。大学教育まで無償の国が多くある中、
日本の教育は相当悪い状況です。
私たちは、生徒一人一人の学び成長発達する権利に立った教育実践に確信を持ちましょ
う。
この一年間の教育実践が実り多く、そして教研集会でその交流ができますよう訴えて、
発足
のあいさつと致します。
学習権とは、
●ユネスコ学習権宣言
1985 年 3 月
29 日採択
読み書きの権利であり、
問い続け、深く考える権利であり、
想像し、創造する権利であり、
自分自身の世界を読みとり、歴史をつづる権利であり、
あらゆる教育の手だてを得る権利であり、
個人的・集団的力量を発揮させる権利である。
(中略)
学習活動は、人々を、なりゆきまかせの客体から、自らの歴史をつくる主体にかえ
ていくものである。学習権は、人間の生存にとって不可欠な手段である。それは基
本的人権の一つであり、その正当性は普遍的である。
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あ い さ つ
沖縄県高等学校障害児学校教職員組合
執行委員長
玉那覇
哲
高教組南部支部教研発足集会に参集されました組合員の皆様、ご苦労様です。
さて昨年の衆院選で画期的な「政権交代」を果たした民主党政権は、高校授業料の無償
化、子ども手当の支給や暫定税率の廃止、農家への戸別所得補償、高速道路の無料化(見
直しが起こっていますが)、行政刷新会議の事業仕分け等々、世間では「バラマキ」の範
疇と批判されながら、今までの自公政権がなしえなかった「コンクリートからヒトへ」の
政策で国民的な期待を集めました。民主党政権の特徴を述べると以下の5点にあげられま
す。
(1)情報公開(ディスクロージャー)
(2)公平・公正と機会均等(フェアネス)
(3)安心・安全(セーフティネット)
(4)地方分権(ローカリゼーション)
(5)包摂と参加(インクルージョンとパーティシペーション)
たしかにそれは今までにない斬新な政策でした。
しかし多くの国民的期待のこれらの政策に、大きな腫れ物としてあったのは、沖縄普天間
基地移設問題だったといわざるを得ません。名護市民の民意を大切にするとして名護市長
選後の5月末決着を表明し、続く県議会超党派による決議や9万人を結集した4.25県
民大会の盛り上がり、その後の東京要請行動団の熱もさめやらない、5/4に突如、県内
移設のお詫び行脚を行うという行動。「学べば学ぶほど沖縄の海兵隊には「抑止力」が大
きいと感じた」という言葉には愕然とするものがありました。どこに対する抑止力でしょ
うか。とても「東アジア共同体構想」打ち上げた総理の言葉とは思えません。今回の総理
の沖縄訪問が政局と連動したものであるならば、まさしく沖縄の民を愚弄した「沖縄差別」
といわざるを得ません。私たち沖縄県民の「基地撤去」の闘いは今後も大きなうねりとな
つて「島ぐるみ」で続いていくものと思います。
教育問題に目を向けますと、教員免許更新制の廃止問題は来年1月の通常国会に提案が
なされるという状況にあります。これまで民主党は「教員免許更新制」に代わるものとし
て「教員の養成課程6年制(教員養成系大学卒はプラス1年、その他の大学はプラス2年)」
を明らかにしています。限られた大学でしか免許が取れなくなる事を意味し、戦後民主教
育の中で形成された「開放性」の原則が崩されることになりかねません。今後日教組を通
じて、この問題を解決していく必要があります。その他「離島勤務5年問題」「04 内規見
直し問題」「現業・図書館司書退職不補充問題」「臨任・非常勤」の非正規雇用が増大し
ているなど 多くの課題が山積しています。私たちはこのような状況をしっかりと見据え、
団結と組織強化をはかり、「平和・人権・環境・共生」の観点が大切にされる社会をめざ
し、民主教育の創造と「楽しい学校 」「
・ 楽しい職場」づくりをめざさなければなりませ
ん。多くの教職員とともに柔軟で創造的な高教組運動をともにつくっていきましょう。各
支部・各分会の奮闘に期待します。
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第43次教研の発足にあたって
一、教研集会の意義
私たちの教育研究集会も今次で43回目になります。この間、私たちは教研活動を通して
教育の抱える今日的課題に取り組み、お互いの力量を高めてきました。
教研の基本目標は、「憲法と47年教育基本法に基づいて、平和を守り、真実をつらぬく
民主教育の確立」です。この目標は、戦前の教師が軍国主義教育の担い手であったという
痛苦の反省に立ち、平和と民主主義、教育本来の目的を、教育の基礎にすえなければなら
ないという自覚と決意のもとに設定されたものです。
財界の提言を重視した文部科学省の諸政策は、豊かな人格の形成という教育本来の目的
とはおおよそかけ離れたものになっています。私たちは、いまあらためて「教育は誰のた
めに、何のためにおこなわれるものなのか」を問い直す必要があります。国民が人間らし
く生きるのに必要な権利としての教育はどうしたら実現できるのか。子どもたちの可能性
を開花させることのできる教育とは何か。教育の公共性とは何なのか。教研集会は、その
ような視点からお互いの実践を持ちより、その成果を生かしていく場でなければなりませ
ん。
二、教育をめぐる現状
2009 年8月 30 日の第 45 回衆議員議員総選挙において民主党の躍進、自民党の大敗北
で私たちの推し進めた「与野党逆転」が現実のものとなりました。
前政権で2006年12月には新教育基本法が成立し、それを受けた新自由主義的改革が進め
られてきました。全国一斉学力テストの導入により、学校間の序列化、格差が広がってい
ます。また、私たち教職員の職場環境において沖縄でも2006年度から「教職員評価システ
ム」が実施されましたが、評価が曖昧な基準のため校長により評価基準が異なり不信感を
抱くシステムになっています。
先の衆議院議員総選挙で与野党逆転の結果、与党民主党は「高校授業料無償化」や「子
ども手当」の実施など、子育ての負担軽減を行うシステムつくりを行おうとしていますが、
予算ばらまきの感は否めず、現実に即した対応が望まれます。また、民主党が公約に掲げ
た「教員免許更新制度の見直し」も何一つ進んでいないのが現状です。
数年後には公務員制度改革による教職員と、教育庁との新しい関係が否応なく結ばれて
きます。教職員の身分についての学習を深め、私たち一人一人が制度についての知識を深
めながら団結して職場環境をよりよいものに創り上げていく必要に迫られています。
三、生徒と保護者の要求に根ざした教育を!
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私たちはこれまで幼児児童生徒一人一人が学校生活を通して知識を得て、人間関係を学び、平
和で民主的な場を共に創り上げながら成長していくことをめざして様々な実践を行ってきました。
しかし、近年の多忙化で以前ほど幼児児童生徒との関わる時間がとれなくなり、幼児児童生徒一
人一人の興味関心に基づいた授業を行うことが難しくなってきています。そのような中でも私た
ちは幼児児童生徒一人一人の成長したいという気持ちに答えるべく自然や社会についての基本
的事実や法則、真理・真実や技術を発達段階に即してすべての幼児児童生徒が身につける
ためには、私たち教師は「どんな教材をとりあげればよいのか」と、絶えず考え、すぐれ
た教材を精選し、授業を実践していく必要があります。また、民主主義社会の形成者とし
て互いの人権を尊重し、自由とそれに伴う責任の重さを学ぶ機会がどれだけ学校にあるの
か。はたして学校は人間としての成長と友情を育む場になっているのか。こうした問いか
けを常に投げかけ、将来の主権者である子どもたちにふさわしい教育は何なのかを保護者
や地域とともに議論を深めていかなければなりません。
四、おわりに
戦後日本の教育の歩みを振り返ってみると、日本国憲法と 47 年教育基本法がもつ「人
間の尊厳に立脚した普遍的教育理念」は、軍国主義教育復活の動きにたいする歯止めとし
て大きな役割をはたしてきました。これからは世界に誇れる日本国憲法と、その理念の実
現を目標とする 47 年教育基本法、ユネスコの学習権宣言と子どもの権利条約を基本とし
た教育をめざし、子どもたちの幸せと世界の平和を築ましょう。
どんな時勢であっても、豊かな教育をするには、教師自身・生徒一人一人が豊かになる
ことが必要です。そして、生徒・教師が互いに信頼しあえる学校を創っていかなければな
りません。そのためにも一人ではなく多くの仲間と語りあえる教研を役立てましょう。お
互いの教育実践を深める交流ができるようにしましょう。
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