建築学科 - 北海道科学大学

北海道工業大学 建築学科作品集
〒 006-8585 札幌市手稲区前田 7 条 15 丁目 4-1
http://www.hit.ac.jp/~archi/
4版
(C/M/Y/K)
2版
(C/K)
北海道工業大学 建築学科作品集
建築学科
空間創造学部
建築学科
建築をトータルに考える
建築設計
未来のデザイナーとエンジニアをめざして
充実した教育体制によりプロフェッショナルを育成します
年次
本学科での教育の要となっているのが
「建築設計」というテーマ。建築設計の基礎教育と
して図面を読む、描く、立体的に把握することを演習した上で、住宅や美術館の課題をと
おし、建築計画と空間の創造、設計製図の技術を学びます。さらに、空間デザインコース
の学生は、
「建築と場」
、
「集合」そして「複合」へと徐々に複雑なプログラムの計画設計を
進め、住環境システムコースおよびエンジニアリングコースでは、課題として構造、材料、
設備計画に着眼点を置き、総合設計をめざします。
建築空間を創造する建築、
インテリア、造形、
都市と建築の関係・ルールを認識
建築設計の能力を体感的に身につけていく演習
を 1 年次から行い、基礎から徹底的に学ぶカリ
キュラムが組まれています。商業空間などを例
に制作作業をとおして、目的と空間、材料、色彩、
照明などの理論を身につけるインテリアデザイ
ンや、都市と建築の関係を理解し、人々の生活に
影響を与えていく実態に対する認識を深める都
市計画など、建築空間をデザインする創造力と、
その空間の快適性や安全性を確保する設計能力
を身につけます。
建設と経済
アジア社会研究
ヨーロッパ社会研究
法学
心理学
日本国憲法
体育実技Ⅱ
キャリアデザインⅠ
論作文技法Ⅱ
哲学
国際関係論
マネジメント基礎
社会学
キャリアデザインⅡ
英語Ⅰ、Ⅱ
英語Ⅲ、Ⅳ
英語Ⅴ
ドイツ語Ⅰ、Ⅱ
朝鮮語Ⅰ、Ⅱ
中国語Ⅰ、Ⅱ
基礎数理演習
力学基礎演習
地球生態学
地球環境学
北国の暮らし
空間創造概論
微分積分学
CAD 演習Ⅰ
情報処理Ⅰ
情報処理Ⅱ
情報処理Ⅰ演習
情報処理Ⅱ演習
コース共通科目
環境とエネルギー問題を考えた、
快適で安心・安全な暮らしを
創造する
建築計画原論
建築一般構造
空間創造演習Ⅰ
建築設計演習Ⅰ
31
P
32
空間創造演習Ⅱ
P
現場で建築と向き合う
大切さを理解し、協調性、
人間性を養う
建築総合演習Ⅱ
建築演習
工学概論
[住環境システムコース]
応用数学
建築情報処理演習
CAD 演習Ⅱ
寒地建築設計法
建築法規Ⅰ
日本建築史
建築計画Ⅰ
建築計画Ⅱ
建築熱・空気環境
建築熱・空気環境演習
建築設備
木構造
建築構造力学Ⅰ
建築構造力学Ⅱ
建築構造力学Ⅰ演習
建築材料Ⅰ
建築材料Ⅱ
建築施工Ⅰ
建築設計演習Ⅱ
3
[エンジニアリングコース]
応用数学
建築情報処理演習
CAD 演習Ⅱ
コース共通科目
建築雪氷工学
建築法規Ⅱ
建築総合演習Ⅰ
建築施工Ⅱ
住環境システムコース科目
空間デザインコース科目
インテリアデザイン及び演習
都市デザインⅠ
暖冷房・換気設備
暖冷房・換気設備演習
建築音・光環境演習
住宅設備
都市設備
エネルギー利用計画
設備施工
鉄筋コンクリート構造
鉄筋コンクリート構造演習
鋼構造
鋼構造演習
建築住環境実験
建築設計演習Ⅳ
設備設計演習
造形デザイン演習
30
空間デザインコース科目
建築と文化
建築設備演習
建築構造力学Ⅱ演習
建築設計デザインⅠ
卒業研究
P
P
21P
雪や寒さにも対応できる建物を造りあげるには、
材料、構造、施工および保全に関する幅広い知識
と高いモラルが求められます。特に不可欠な構造
分野と材料施工分野の専門的な技術を身につけ、
第一線で働くエンジニアとして活躍できる人材を
育てます。多くの卒業生の協力を得て、施工現場
や鉄骨工場あるいはモデルハウスの見学研修を行
い、現場で建築と向き合う重要性を学び、協同作
業を伴う授業も多く取り入れ、協調性と人間性に
配慮した学生指導を行います。
技術者の倫理
[空間デザインコース]
建築グラフィックデザイン演習
コース共通科目
27P
年次
年次
文章表現法
論作文技法Ⅰ
基礎物理学
体育実技Ⅰ
建築の社会
西洋建築史
人々が快適に安全に暮らし、また仕事をするに
は、建物の断熱や明るさ、静けさなど環境工学に
関わる性能と、冷暖房・換気・給排水衛生・照
明など建築設備の適切さがバランスよく両立す
ることが必要です。また、エネルギーの多消費は
建築物の経済性を損ない、更には地球温暖化を
もたらします。このコースでは、住みやすく働き
やすい建築環境を創造するとともに、建築物の
省エネルギー化とエネルギーの有効利用システ
ムを支える知識を学びます。
年次
インテリアデザイン演習
29
P
エンジニアリングコース科目
都市デザインⅠ
都市デザインⅡ
建築計画Ⅲ
暖冷房・換気設備
暖冷房・換気設備演習
建築音・光環境演習
住宅設備
エネルギー利用計画
建築住環境実験
建築構造デザイン
建築構造デザイン演習
建築設計デザインⅡ
住環境システムコース科目
建築設備演習
建築構造力学Ⅱ演習
建築構造材料実験Ⅰ
建築設計演習Ⅲ
エンジニアリングコース科目
建築設備演習
建築構造力学Ⅱ演習
建築構造材料実験Ⅰ
建築設計演習Ⅲ
都市デザインⅠ
暖冷房・換気設備
暖冷房・換気設備演習
建築音・光環境演習
住宅設備
都市設備
建築維持保全
鉄筋コンクリート構造
鉄筋コンクリート構造演習
鋼構造
鋼構造演習
建築構造力学Ⅲ
建築構造計画
建築構造材料実験Ⅱ
建築設計演習Ⅳ
17P
25P
33P
39P
16P
11
42P
建築設計デザインⅢ
P
15
●宅地建物取引主任者 ●建築施工管理技士 ●インテリアコーディネーター ●建築設備士
●福祉住環境コーディネーター検定 ●管工事施工管理技士 ● CAD 利用技術者試験 1
●コンクリート技士・主任技士
●土地家屋調査士 ●インテリアプランナー
●技術士 ほか ●不動産鑑定士
43P
【これまでの主な就職先(抜粋・順不同)
】
●建築士
■設計事務所・コンサルタント/山本理顕設計工場、古市徹雄都市建築研究所、北海道日建設計、久米設計、環境
設計、日総建、アーブ建築研究所、ナカヤマアーキテクツ、安藤敏郎建築設計事務所、TAU 設計工房、創建社、大友
設計、アトリエ・ブンク、アトリエ・アム、岩見田建築設計、岡田設計、CIS ■建設業/大成建設、清水建設、大林
組、竹中工務店、戸田建設、西松建設、三井住友建設、岩田地崎建設、伊藤組土建、中山組、丸彦渡辺建設、田中組、
鉄建建設、日本建設、新井組、松村組、鴻池組、松井建設、東海興業、共立建設、栗本建設工業、日成ビルド工業、
坂本建設、国策建設、宮川建設、宮坂建設工業、荒井建設、旭製作所 ■住宅建設/大和ハウス工業、積水ハウス、
セキスイハイム、スウェーデンハウス、三井ハウス、ダイア建設、レオパレス21、土屋ホーム、ホームトピア、ミサワホー
ム北海道、クワザワ、東日本ハウス ■設備/新菱冷熱工業、高砂熱学工業、ダイダン、新日本空調、三建設備工業、
斉久工業、大成設備、西原衛生工業所、第一工業、池田煖房工業、サンウェーブ工業 ■その他/カンディハウス、ニ
トリ、郡リース、太陽工業、岩倉建材、大和工商リース、スミリンCADシステム、セキサン、エイジェック、ワットコンサル
ティング、エーアイエム、渥美工業、道内市町村、自衛隊、高校教員 ほか
C U R R I C U L U M
I N D E X
建築学科 2011
講演会と建築展
学生コンペ
入選作品
建築設計演習Ⅴ
P
【取得をめざせる資格】
教員実績紹介
45
高校生対象
建築デザインコンペ
Topics
P
2
北海道工業大学建築学科卒業設計最優秀案 下村賞受賞 日本建築学会北海道支部優秀卒業設計コンクール 銅賞受賞
日本建築家協会北海道支部卒業設計コンクール 金賞受賞 日本建築家協会全国卒業設計コンクール北海道代表作品選出
卒 業 設 計 『水の郷』
菅原 仁美 ● 作品のコンセプト
人を、世界を、創った水は、果てしなく続くかに見える。
絶えず生まれ、流れゆく姿は、豪壮でありながら、風雅
でもあり、華やかでありながら、霊妙で、儚いものだ。
白銀の世界でこそ、水は多様な顔を持つ。たゆたう水
は、とどまることなく、姿を変え、最後に残るのは、静
けさに満ちた広がりだ。
敷地は、北海道上川郡美瑛町白銀地区。青い池、
美瑛川、溢れる湧き水に力強い滝、そしてプラチナの
如く美しいと言われた泉源を持つ白銀温泉。
山々で囲まれた白金が持つ、美しい水資源たちは、
人々の手入れにより守られ、流れ続けてきた。しかし、
それらは今、人間の手が加わり過ぎたことにより、美し
さが失われつつある。本計画は、自然のみでも、人間
のみでも、あり得ない、白金の美しさを取り戻すととも
に、温泉地本来のあり方を示す提案である。
● 作品講評
氷、雪、みぞれ、雨、霧、水蒸気…固体から液体、そ
して気体へと、水の諸相が一同にあつまる場所が作者
の生まれ育った北海道のここにある。構想は、そんな
場所性への素朴な気付きと強い思い入れから始められ
た。それを基に、作者が長い年月を経て身体化してき
た鉛筆で日々のエスキースの折々に積み重ねられた多
くの優れたスケッチの数々、断片が、独特の美しい建
築へと昇華された。自らの建築に向う真摯な姿勢と圧
倒的な持続力、そして最終発表の語りでみせた瞬発
力に乾杯。
3
4
日本建築学会北海道支部優秀卒業設計コンクール本学代表作品として出品
卒 業 設 計 『支笏湖畔の集落 ∼境界の解体∼』
根本 周 ● 作品のコンセプト
2011年 3月11日、東日本大震災により多くの建築
物が倒壊した。そして、それ以前にあらゆるものが壊れ
ていたことが明らかになった。住宅の分厚い断熱ライ
ンは自然と人間の軋轢を生み、その集合体である都市
はコンクリートで塗り固められ、人間同士の繋がりを
希薄にした。人は自然に対して無知になり、生のすぐ
傍に死がある事に目を背け、生活を営んできた。震災
後に生きる私たちには、自然を感じる、生と死が身近
にある住宅やその集まりが求められているのではない
だろうか。暮らしから自然の脅威を学び、豊かさを呼び
込む。人間の生と死も、受け入れることのできる集落
を提案する。
現代の都市はどこか生と死が日常化する事を避けて
きた。断絶した個々が集合し積層されている。無機質
で感情のない都市。死の実感が排除され、生の実感ま
でもが喪失しているのではないか。生と死の実感を取
り戻すためにも、都市計画により郊外に追いやられて
いる墓と火葬場を中心に、集落を計画する。住宅の単
一で分厚い断熱ラインを解体し、多重状の断熱ライン
をつくる。様々な温度変化のある多重の領域は住宅内
部に自然を呼び込む。完全に外部と断絶された一定の
人工環境を作るのではなく、豊かさも不都合な煩わし
さをも受け入れる。
● 作品講評
発展の代償として打ち捨てられてきたもの、忘れて
しまったこと、あるいは、そうしようとしていること、作
者は、そのような事柄を丹念に拾い上げ、その建築的
再配置を試みた。作者が、このことに挑戦した契機は、
東北地方を襲ったあの惨事であることは言をまたな
い。現在、その東北の地で大学院生となり一層の発展
を目指す作者にとってこの作品が、大学時代に鍛えた
建築的試行を総括する高い到達点となったと同時に、
未来に向けた礎として様々な曲折を経ながら完成させ
たことに賞賛を送りたい。
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6
近代建築「全国大学建築系学科卒業設計優秀作品 2012」掲載作品
卒 業 設 計 『杭島 ∼日本三景松島から学ぶ復興計画∼』
佐藤 淳也 ● 作品のコンセプト
2011.3.11東北から関東にかけて広範囲を震源域と
する、M9 の大きな地震が発生。それから約 1 時間後、
10m 前後の津波が太平洋側沿岸を襲った。私の地元
である宮城県亘理町も甚大な被害を受けた。今回の東
日本大震災を受けて、私は今までの住まい方では津波
による被害を減らす事は出来ないと考え、被災地の中
でも特に被害の少ない松島町に焦点を当てる。松島町
の被害が少ないメカニズムを学び、それを亘理町にも
代用する。これからの復興計画の一つの案として杭島
を提案する。そして、ゆくゆくは太平洋側沿岸をこの計
画で覆っていく事を目的とする。
● 作品講評
宮城県亘理町は 3.11東日本大震災にて大津波によ
る被害を受けた地域の一つである。佐藤君は実家のあ
る亘理町に戻ったが、家の寸前でまで波が押し寄せか
ろうじて免れたものの海側の地域の被害は、想像を絶
する光景を目の当たりにした。彼は、松島の地形が比
較的高さの低い津波となったことを知ってから、津波
工学の専門家の言説を調べはじめた。浅い水深と点在
する島がエネルギーを減衰させたとの分析があった。
松島の地形と津波のメカニズムをヒントに減災の集落
をつくることは出来ないのか。住民の海での生業と生
活の場を提供する可能性はないのか。その思いが「海
の杭島」、
「陸の杭島」の構想となった。
7
8
日本建築学会卒業設計全国巡回展選出作品
卒 業 設 計 『帯の路地 −ものづくりやデザインの為の制作ファクトリー集合住宅−』
野村 和也 ● 作品のコンセプト
美術やアートとはかつて日常の一部であり、私たち
の隣にあった。それらはいつしか「美術館」という箱に
形式化され、閉ざされた非日常となった。美術とは必ず
しも何か大きな意味を持っていなくてはならないもの
ではない。子供達の描く落書きは、どこかの格調高い
名画よりも受け取る人にとっては、何よりも素晴らしい
ものに見えるかもしれない、美術に対してそんな当た
り前のことを思い出すきっかけになる様な空間を提案
する。
● 作品講評
札幌創成川の東に旧開拓使工業局があり、野村くん
は、工房の発祥の地として興味を持っていた。ものづく
りやデザインの現場を住まいとともにアーティスト・レ
ジデンスあるいはデザインセンターとしてとらえ、数々の
試作、制作の場とギャラリーの混在の路地、集住空間
を提案している。
9
10
空間デザインコース 3 年後期 建築設計デザインⅢ
課題「複合施設の設計」
本学近隣の前田森林公園内に図書館、
担当教員
カフェ、美術館、または音楽ホールを複合
川人 洋志 教授
した施設を計画することを求めている。敷
地の特性を読み取りながら複合の可能性
非常勤教員
を追求し、より独特で機能的な空間を実現
畠中 秀幸
させることを目的としている。
保科 文紀
t i t l e:「みる、みえる、みえてくる」
name: 浦本 義幸
● 作品講評
均質と不均質の緊張状態のうちに複合を果たそうとする方法に独自
性がある。均質なグリッドシステムを核に、その均質性を不均質に向
かわせる建築装置を構想し、場所の微妙な変化を顕在化することに
成功している。発想から方法の純化、表現にいたる作品制作の全て
の段階で優れている。
11
12
空間デザインコース 3 年後期 建築設計デザインⅢ
課題「複合施設の設計」
t i t l e:「地表の向こう、本と絵とちいさな居場所。
」
name: 中野 剛育
● 作品講評
均質性と不均質性の緊張状態のうちに複合を果たそうとする方法に
独自性がある。多くの人々が集う大空間から静かに書籍、美術作品
に向きあう小空間までの分節を設備システムが内蔵される単純な構
造システムを用いることで可能にしている。発想から方法の純化、表
現にいたる作品制作の全ての段階で優れている。
13
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エンジニアリングコース 3 年後期 建築設計演習Ⅴ
エンジニアリングコース 3 年前期 建築設計演習Ⅳ
課題「HIT
課題 1「急斜面に建つ集合住宅」
学生会館」
北海道工業大学の学生らしい活動を支
担当教員
人が高密度に住む「集住」の意味を考え、 担当教員
援するための複合施設を設計しなさい。1ヶ
伊藤 敏幸 教授
それを実現する集合住宅を提案する。この
久保 勝裕 教授
課題では、いずれも斜面地である3つの敷
非常勤教員
月程の期間、何らかの自活的なプロジェクト
(ものづくり・ことおこし・トレーニングなど)
非常勤教員
地から、様々な条件を分析した上で、自らの
に没頭できるような機能を持つ施設を、地下
湊谷 みち代
提案に相応しい場所を選択している。斜面
1階・地上4∼6階建て、延べ面積は6,000
山木 優敬
地の特性を積極的に活かした提案を求める
∼ 8,000㎡、構造耐力上安全な計画、災害
と同時に、壁式構造の合理性も評価の対象
時の安全避難に配慮、環境負荷低減に配慮
としている。
辻井 順
遠藤 崇能
して計画する。
t i t l e:「2.5× 2.5」
name: 佐川 雄広
t i t l e:「人を豊かにする空間」
name: 高田 圭太
● 作品講評
体育競技室や工房のある活動棟に寄り添うような円弧形の宿泊棟
を配置することで、異なる機能の施設を物理的に分離させつつも心
理的距離を保つ配置である。また、動線が交錯する中継位置に中庭
と開放スペースを配置することで、学生間に活動意欲につながる相
互作用が生まれる空間を提案している。
● 作品講評
壁式構造の合理性を自分なりに解釈して平面
計画に活かしながら、多様な居住パターンに対
応できる仕掛けを提案している。また、住む人
の動線を意識した平面計画のパターン分けは、
住人同士の交流を実現することができるだろ
う。大きな木のある空間に至る空間の演出にも
工夫が感じられる。
課題 2「積雪寒冷地に建つ小学校」
小学校の基本的な運営タイプを習得した上で、自らが求める教育に
t i t l e:「人と人をつなぐ学生会館」
name: 古里 樹市
● 作品講評
体育競技室を半地下にすると共に、その両側に高さのある宿泊棟を
配置することで、体育競技室への直射日光を避けることができ、宿
泊室の自然換気も期待できる。また、体育競技室と宿泊棟を独立し
た構造体としているので振動対策にも配慮されている。日射や屋根
への積雪を考慮した方位で配置すればより良き計画となる。
適合した小規模な小学校の提案を求めている。北海道の小学校では、
グラウンドや屋外プール等、冬季間の未利用ゾーンが多く、児童の活動
量が低下する。この課題では、冬季利用を念頭においた建築的な提案
を求めており、
「北海道型」の小学校を模索している。
t i t l e:「散」
name: 斉藤 圭祐
● 作品講評
部分を詳細に見ると課題は多いが、自らが考えた
「教育の場」の在り方
と積雪寒冷地への提案がダイナミックに表現されている。大空間への
光の導入方法や小学校固有の動線計画にも工夫が見られ、積雪寒冷
地における学校建築の弱点を克服している。プレゼンテーションも、
一目で制作者のコンセプトや意図が伝わってくる。
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空間デザインコース 3 年前期 建築設計デザインⅡ
課題 1「6 戸の低層集合住宅:SOHO」
「建築設計デザインⅡ」では「個と全、集
担当教員
合」をテーマとし、
「人・モノ・場」と社会を
佐藤 孝 教授
内包する環境空間の設計をおこなう。集住
により発生するプライベートとパブリックの
非常勤教員
調停と魅力的な空間、集住体としての豊か
赤坂真一郎
な生活空間と環境をつくる。計画地は、大
小西 彦仁
型量販専門店群の集積地であり、生活関連
施設や住宅地のはざまにある住商混合の地
区の「場の読み取り」と
「場の計画」を念頭
にもち、低層集合住宅の設計を行なう。
t i t l e:「イエガタのイエイエ」
name: 浦本 義幸
● 作品講評
三角屋根のシルエットは北海道で見慣れた住宅の風景である。半透
明の厚いガラスが 45 枚配列され、イエガタのくり抜きが各住居ゾー
ンのパブリックゾーンや気配を感じさせる。そのイエガタの虚と実は、
住居の個から集住と重なり、周辺の森と街の関係性へと展開させて
いる。なお、この作品は「建築新人戦 2011(応募登録 1012 名)」
において 100 選に選出、全国本選では僅かの差でベスト 16 を逃し
た。
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18
空間デザインコース 3 年前期 建築設計デザインⅡ
課題 2「建築学校」
「建築設計」を中心に設計作業と実践教育の建築学校である。設計
スタジオを中心に展開される設計活動、創作活動の空間を想定し、1
学年 30 名、2学年計 60 名の学生と6 名のアーキテクトによる建築設
計教育、創作活動の場を設計する。敷地周辺は札幌西北部を商圏と
する大型量販専門店群が集積している。
「場の計画」とともに、空間
単位とその集合により出現する空間をとらえ、個から全、全から個の計
画を学ぶ。
t i t l e:「円卓の丘」
name: 中野 剛育
● 作品講評
敷地とその周辺から起伏のある地形を見出した。建築学校のアトリ
エ領域である傾斜床はその地形であり、中庭は 700 ㎜レベルの丘で
あり、作業とアクティビティを生む。地形の建築である。
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20
空間デザインコース 2 年後期 建築設計デザインⅠ
課題 1「美術館の設計」
テーマは、大通公園につくる
「白い美術
担当教員
館」
。北海道の清涼な自然環境から生まれ
下村 憲一 教授
たデザインやアートを紹介、展示、創作、体
験、情報提供などを行う、芸術活動のクリ
非常勤教員
エイティブな発信拠点としてのアートセンタ
植田 暁
ーである。白い美術館はそのように白いの
鈴木 理
か、なぜ白いのか、白の意味をどう考えた
か。それによって美術館がどのような空間
になるのか。
「白い」ことによる可能性を引
t i t l e:「White
Rail Museum」
name: 堀田 大介
● 作品講評
大通公園の連続性、テレビ塔・大倉山の都市軸、石山通りによる領
域分断など都市的視野で課題を捉えて、スケールの大きな美術館の
あり方を提案している。伸びやかな造形と着彩図面や模型写真で、
雄弁にイメージを伝えようとする意欲的プレゼンテーションが支えに
なっている。
き出す。
t i t l e:「すきまの先のつながり」
name: 可香 葵
● 作品講評
自らのイメージをしっかり伝える美しい手書きドローイングと迫力あ
る模型がとにかく素晴らしい。ときには人の道となり、公園となり、
美術館となる。“ 白 ”を“ 自由 ”と捉え、交差する“ すきま”を自
由に人が動き、アートな空間を創り出す装置と新しい都市空間の提
案である。
t i t l e:「白い美術館」
name: 駒谷 友芽子
● 作品講評
幾重にも重なる大小のアーチの壁面が、多様で多彩な内外部空間を
創出している。それはイタリアの都市回廊(ポルティコ)のようでもあ
り、イスラム様式の宮殿のようでもある。密度の高い平面計画は、そ
れぞれの空間をしっかり実感している説得力がある。
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22
空間デザインコース 2 年後期 建築設計デザインⅠ
課題 2「本学クラブハウスの設計」
本大学構内の HIT プラザ付近を敷地として、学生のクラブ活動と課
外交流活動のための施設群を設計する。この課題は、旧クラブハウス
t i t l e:「CELL」
施設と新築される新アリーナのクラブハウスの機能を考慮して、設計
name: 佐藤 孝祐
対象への理解と評価を自ら行い、新しいクラブハウスを提案すること
が求められている。課題に取り組む姿勢と、自らが描く施設プログラム
に基づいて建築形態をデザインしていくプロセスを実践する。
t i t l e:「Cube
+ Cube」
● 作品講評
“ 群れる、寄り添う、形作る”をキーワードに、人と人が集まる場所
をよりどころとして、居心地の良い場所が自然につくられるしくみを
柔らかく有機的な形態に求めた。コミュニケーションを CELL
(細胞)
活動のような自然誘発的アクティビティーとしてとらえ、それぞれの
細胞の核やすき間に意味と機能を与えようとした意欲作である。
name: 鈴木 康太
● 作品講評
部室を主な活動の場ではなく、サブ的な場と考え、学生達を狭い場
所から引き出し、異なる人と人、部と部がかかわり、つながっていく空
間を創りだしている。“ 新しい物がうまれる”場所を、床レベルの差
や交錯する内外部空間、クラスター状のグルーピングなどを駆使し
て、様々なつながりの形を建築化した密度の高い秀作である。
t i t l e:「木陰に集い、交流を深める。
」
name: 青木 紗亜耶
● 作品講評
地域との交流や、学生の活動の場となるコミュニケーションスペース
を、大きな樹木の下に集うイメージになぞらえて、木陰空間がもつ魅
力を建築で創りだそうとしている。発想したイメージを手がかりに、
様々な建築的工夫を駆使して、造形的、構造的、環境的に新しいシ
ンボルとなるようにまとめあげた努力がひかる力作である。
23
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2 年後期 建築設計演習Ⅲ
課題 1「地域環境を配慮した体育館」
課題 2「商業地域に建つ大規模事務所ビル」
札幌市西区にある
「農試公園」では、屋外
担当教員
札幌市の中心市街地において、ある会社の貸事務所ビルを、次の条
および屋内のスポーツ競技施設が存在する
鈴木 憲三 教授
件に従い計画することを目的としている。①敷地周辺に対して開放され
が、屋内競技は限定的である。本課題では、
農試公園一体が総合スポーツ施設となるよ
千葉 隆弘 准教授
うに、体育館を計画することが目的である。 非常勤教員
設計条件としては、①既存施設では利用で
中舘 誠治
きない競技を想定し、計画する体育館の存
たオープンスペースを設けること、②事務所部門と店舗部門の異なる機
能を結びつけた計画とすること、である。
t i t l e:「louver」
name: 工藤 純也
在意義を明確にすること、②既存施設と積
● 作品講評
極的な関わりを持つように計画すること、で
本計画は、事務所ビルに縦および横方向のルーバーをラン
ダムに配置したものである。これらのルーバーが事務所ビル
のファザードにアクセントを与えている興味深い作品となっ
ている。
ある。
t i t l e:「→
LINK →つながる体育館」
name: 小林 大暉
● 作品講評
本計画は、体育館とその他の機能との連続性を強く意識し、極力
「壁」を用いない計画手法を採用したものである。また、アリーナ部
における窓からの採光に対しては、様々な工夫がみられ、大変興味
深い空間が表現されている。
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t i t l e:「繋がる地域と人と体育館」
t i t l e:「吹き抜ける風と光と人」
name: 池本 進
name: 池本 進
● 作品講評
● 作品講評
本計画は、敷地周辺との連動を強く意識したもので
あり、屋外施設を含めた体育館の全体計画が適正
に行われている作品である。与えられた敷地を有効
に活用する意識を表現した見本となる作品であろう。
本計画は、事務所ビル中央部に吹き抜けを設け、光や空間の連続性に配
慮した作品となっている。また、吹き抜けはゾーニングに対しても有効に機
能しており、また、屋上緑化などにより環境にも配慮した計画となっている。
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2 年前期 建築設計演習Ⅱ
課題 1「公園の隣にたつ住宅の設計」
本学近隣の公園に隣接した戸建住宅地
担当教員
に敷地周辺の状況に配慮しながら学生それ
川人 洋志 教授
ぞれの独創性を盛り込んだ小住宅を計画す
ることを求めている。具体的な与条件として
家族 4人の住居にふさわしいスペースとする
こと、自転車 3 台、自動車1台を収容するス
ペースを設けることとしている。
非常勤教員
大坂 崇徳
菊池 規雄
北浦 丈士
中田 稔
五十嵐 淳
(ゲストクリティーク)
t i t l e:「空間のつながり
課題 2「セミパブリックスペースをもつアーバンスモールビルの設計」
札幌都心部の角地に街並を活性化し、ビルの付加価値を
高めるセミパブリックスペースをもつアーバンスモールビルデ
ィングを計画することを求めている。
t i t l e:「隙間と箱」
name: 文蔵 理恵
● 作品講評
従来の商業空間、執務空間の構成手法にとらわれず、独特
の空間構成により課題の要求に応えている。
ー CONECTION ー」
name: 可香 葵
● 作品講評
柔らかい光のニュアンスを室内に讃え、独特の不思議な佇まいを創
り上げている。
27
t i t l e:「ガラリの家」
t i t l e:「快適を探す、森のような空間」
name: 山本 敬太
name: 廣冨 将宏
● 作品講評
● 作品講評
住空間に対する自らの切実さを質実な手法で具現化している。
多くのスタディーを繰り返しながら確実に自らの求める空間
を追求していった結果、たどり着いた作品。
28
空間デザインコース 3 年前期 インテリアデザイン演習
空間デザインコース 3 年後期 造形デザイン演習
課題「既存マンション空間の再利用計画
(居住空間)
」
課題「原寸の椅子をデザインする」
昨今、日本の社会は低成長期時代であり、 担当教員
造形デザイン演習では、大学の建築設計課題ではや
担当教員
新しい建築物を建設するニーズの縮小、既存
谷口 尚弘 准教授
り遂げることのできない、実寸および体感的造形、デザ
佐藤 孝 教授
非常勤教員
インを補完する。すでに提出済みの設計課題から、学生
非常勤教員
の床面積の過剰化がいわれている。そこで、リ
ノベーションやコンバージョンといった既存の
建築物を効果的に再生させる手法がここ数年
自ら設計した空間に置かれる「椅子」を想定し、設計者
井上 共子
による特注段ボールを使った実寸の椅子のデザインと制
の盛んになっており、これからこれらの手法を
作、そして空間の再デザインをする。プログラムは、設計
考えていくことが重要である。そこで、本課題
コンセプトの再認識、空間のスケッチパ−スによる空間
は、古いマンションの一室を対象として、その
把握、空間と椅子のコンセプト構築、1/5スケ−ル模型に
空間を再生させる。
よる検討、実寸スケ−ルの制作(特注ダンボール)
、プレ
高橋三太郎
中村 昇
ゼンテ−ションシートに至るプロセスを踏む。
t i t l e:「とんぼ・ちぇあ」
t i t l e:「森のような」
name: 中野 剛育
name: 丹治 和仁
● 作品講評
自ら設計した建築学校に置かれる椅子のデザインである。中
野くんの建築学校は傾斜の床であり、その床に対応するため
3点支持の脚に結論を見出した。きれいな3枚の羽根による
キュートなハイ・スツールである。
● 作品講評
この課題は、単なる空間を計画するのではなく、空間
計画から照明計画、家具計画、内装計画まで、与えら
れた空間をトータル的にデザインする手法を学ぶもの
である。この作品は空間をグリットに形成し、そのグ
リットを基に「緑」や「光り」を組み合わせているが、そ
の組み合わせ方が非常に上手であり、評価できる。床
や壁、天井など、それぞれの部位における材料選定も、
コンセプトにあわせて空間を上手に表現させている、
非常に優秀な作品である。
6月28日(火)に、今年もインテリアデザイン演習の家具見学会を実
施しました。見学場所は、札幌ファニシングとカンディハウスです。札
幌ファニシングでは、1時間ほど家具の見学をしました。時折、会社
の方々から家具の機能性やデザイン性について説明を受けておりま
した。また、カンディハウスでは、卒業生である湖川さんが会社の概
要、家具製作や家具の機能等々を説明してくださいました。
現代の家具の構成について次回からの課題(照明計画・家具及び内
装計画)に役立てるように見学していました。見学させていただいた
札幌ファニシング及びカンディハウスの関係者に感謝いたします。
(写真左:札幌ファニシング、写真右:カンディハウス)
29
t i t l e:「イスとイスと」
name: 浦本 義幸
● 作品講評
浦本くんの建築学校のデザインエレメントを読み取
り、20 ㎜厚の素材と重なりによるズレを生む L 型モデ
ルを見出した。その構成は多様で人のアクティビティ
により空間の状況が生み出される。
30
1 年後期 建築設計演習Ⅰ
1 年後期 空間創造演習Ⅱ(空間デザインコース、住環境システムコース)担当教員 佐藤 孝 教授 鈴木 憲三 教授
課題「心地よい居住空間を設計する」
平面構成 1「直交による緊張感の構成」
平面構成 2「規則的に配置から生まれる構成」
6m ×6m ×6m の立方体を想定し、 担当教員
プロセス1:A3ケント紙に指定された枠(210 ㎜× 210 ㎜)を描
きなさい。
プロセス1:A3ケント紙に指定された枠(210 ㎜× 210 ㎜)を描
きなさい。
プロセス2:5系統色11色から1系統色を選び、5 ㎜、10 ㎜、20 ㎜、
30 ㎜巾のリボンをつくり、直交による緊張感のある
プロセス2:色紙(色は自由)を使ってある形状の単位を規則的に
配置した平面を構成せよ。
『心地よい居住空間』の創造を求めてい
る。建築学科に入学して初めての創作課
題であることから、細かい設計条件は設
けず、設計する楽しさを体感してもらうこ
とを主目的としている。建物用途も限定せ
ず、敷地条件も1本の樹木を設定した以
外は設けていない。その過程では、全てエ
飯田 雅史 教授
久保 勝裕 教授
魚住 昌広 准教授
面を構成せよ。
非常勤教員
プロセス3:プロセス1で選んだ以外の色からアクセントカラーを
選び平面構成を完成させよ。
加藤 誠
K e y w o r d:水平と垂直、重と軽、遠近、比例、方向性、余白、焦
点など
名古屋英紀
プロセス3:プロセス2の構成体の一部に集中的な外力が加わっ
た状態を構想し、変容の瞬間のバランスを再構成せ
よ。※抽象的な表現とすること。
K e y w o r d:回転、亀裂、移動、消去、収縮、拡大、変形、浮沈、
異物の侵入など
スキス模型の作成により検討を進めた。
t i t l e:「もりのなかのいえ」
name: 畔木 伊代奈
● 作品講評
自然を享受する下層部と生活をしっかりと成り立たせる上層
部で構成され、プライベートとパブリックが明確に分離され
た計画である。そのバランスは6m キューブを感じさせない
軽やかな建築となっている。
○優秀作品制作者
○優秀作品制作者
唯木 奨
青柳 美咲
立体構成「箱を支える構成体」
・180×150× 36 の箱(370kg)を、
基準面から200mmの位置に支持さ
れる構成体をケント紙で制作せよ。
・材料はケント紙のみ(A3 版のケ
ント紙 2 枚程度)。
課題「サヴォア邸の模型制作と模型写真撮影」
近代建築の巨匠である、ル・コルビュジェの代表作「サヴォア邸」の図
面を読み解き模型を作成し、図面と建築物との関係性を認識する。
○優秀作品制作者
尾形 ひかる
Keyword:基準面、荷重、構造形式、
円と角、蛇腹、白色、プロポーショ
ン、バランスなど
1 年前期 空間創造演習Ⅰa・b
課題「建築・都市を観察する」
様々な魅力的な建築物や都市空間が
担当教員
存在する札幌市中心部を対象とし、興味
飯田 雅史 教授
のもったことやモノを調べ、建築物や都
市空間の捉え方・見方を養うことが目的
である。キーワードは、
「観察する」
、
「調べ
る」
、
「パネルに表現する」
、
「発表する」で、
伊東 敏幸 教授
○優秀作品制作者
富田 雄太
魚住 昌広 准教授
谷口 尚弘 准教授
3人で構成するチーム単位で十分に協議
しながらポスターを作成および発表する。
t i t l e:「Architectural
Glass」
1 年後期 空間創造演習Ⅱ(エンジニアリングコース)担当教員 前田 憲太郎 准教授
name: 西尾 仁志、熊本 雄祐、藤原 悟
課題 1「テンセグリティー」
課題 3「間取りを含めた全体模型の作成」
● 作品講評
テンセグリティーは、アメリカの彫刻家
本演習では、建築物を立体的に捉えることと、建築
札幌市中心部のビル群を調査し、そこで使用されているガラ
スに着目し、種類・機能・工法・歴史についてまとめている。
単体の建築物ではなく、建築的なマテリアル(素材)をテー
マとした意欲的な作品となっている。
ケーネス・スネルソンによって発明された
計画をプレゼンテーションするための模型を作成する
構造システムであり、工学と芸術の融合し
技術を身につけることを目的としている。
たシステムといえる。この課題では、テン
セグリティーの模型製作を通して、力の伝
わりの仕組みを理解するとともに、工学と
芸術の関わりについて理解する。
○優秀作品制作者
t i t l e:「北海道旧道庁赤レンガ」
國枝 こすも
name: 尾形 ひかる、坂下 宗久、武石 保夫
● 作品講評
北海道庁旧庁舎(赤レンガ庁舎)について、構造・歴史・外構・
類似建築物について調査しまとめている。写真等も画像処
理して使用するなど、ポスターとして統一的なデザインを施し
ている優秀な作品である。
課題 2「木造軸組模型(コーナー部)
の作成」
本演習では、一般的な木造住宅の工法で
ある「在来軸組工法」の軸組模型(縮尺:
1/30)を作成することにより、構造の仕組
み、部材の役割および部材の名称等を理解
し、
「木構造」に関する知識を習得すること
を目的とする。
○優秀作品制作者
金子 竜麻
31
○優秀作品制作者
杉本 琢也
● 作品講評
精度よく作成されており、丁寧さが伺える作品である。各階の間取
りを見せやすくするための工夫として、各階毎に外壁で切断された
模型である。
32
新体育館“HIT AREANA”は
本学教員とOB の技術の結晶
佐藤 孝 教授
研究分野
建築設計、デザイン
研究テーマ
建築空間の設計デザイン
手法に関する研究
る。また体育館に日常的な関わりを持ち得なかった
一般学生は、空中通路のバルコニーでアリーナを眺
建物に囲まれたアリーナは
安定した熱環境を生む
教 員 の 活 動
教 員 の 活 動
地域に適した住宅および
生活環境づくり
た温暖化による夏の暑さの調整は、札幌でも必要で
ある。西面のクラブハウスは、
西陽の日陰をつくるセッ
トバックした大窓と必要な量の小窓の調整配置によ
め、学生のコミュニケーションを生む。
ローマにあるナボナ広場 は、古代ローマのドミティ
北海道にある大学のキャンパスの春から秋は、本
メインアリーナは、高さ 12m の巨大空間である。
る魅力的なファサードを生んだ。サブアリーナの深い
アス競技場跡である。長い年月の内に教会建築やア
当に気持ちよい。しかし冬になると外に出ることが少
冬になるとこの巨大な気積を温めることは負荷が大き
庇の下ではストリートバスケットや自転車などを楽しん
パートに囲まれ、広場となった。広場に面したアパー
なくなる。ゆえに冬のキャンパスライフを楽しむため
すぎる。床を暖め、選手の足腰の高さまで温めるの
でいる。その深い庇は、南の日差しを外部床でバウン
トの住人はベランダでコーヒーを飲み、花に水を遣り
にもウィンターガーデン ( アトリウム ) があることが望
は合理的であり、そのためには熱環境的に安定性を
ドさせカーテンウォールを通し、サブアリーナの光の
ながら広場の大道芸や市場、イベントの光景を眺め
ましい。以前に設計した本学講義棟 G は街路型アト
必要とする。メインアリーナを別暖房系統の建物群
熱化を抑えている。
ている。広場を訪れる度に、この窓辺やベランダが
リウムを内包し、今回の体育館は、広場型アトリウム
により暖かく囲む広場型プランは、熱環境安定化の
基本設計は本学建築学科教授の佐藤孝と佐藤ゼミ
劇場のロイヤルボックスのように思えてしまう。この
でありアクティビティを誘発する。そのメインアリーナ
建築計画でもある。そして地下 80m までのボアホー
OB の建築家芳川朝彦、名古屋英紀、中舘誠治、山
広場を囲むアパートの窓辺やバルコニーを本学の体
の屋根の周囲からの光が膜天井を透過し、拡散し、
ル 19 本からの地中採熱ヒートポンプによりアリーナ
木優敬、中田稔の各氏との共同設計。建築学科の半
育館計画に重ねるとアリーナを囲む文化系・体育系
屋根が「ふわり」と浮かび上がるようだ。その時、広
の床下をダクトとして、冬は温風、夏は冷風を流す床
澤久教授、魚住昌広准教授が設備設計に加わり、太
のクラブハウスのラウンジは、ロイヤルボックスであ
場となる。
暖冷房によるスポーツに適したエコ環境となっている。
陽光パネル垂直利用は細川和彦准教授の研究成果で
ファサードデザインは、太陽光パネルを垂直壁に
ある。施工では、清水建設の目黒雅之・山名巨仁の
取り付け、雪の反射光と直接光の合算をねらった札
両工事長や大場智寿、小玉良太、石塚将之各氏を含
幌ならではの可能性であり、微妙に色を変える素材で
む多くの本学 OB が関わり完成した。まさにこの体育
ある太陽光パネルがファサードデザインとなった。ま
館は本学の教員と OB の技術の結晶である。
受賞作品
○日本建築学会作品選奨「北海道薬科大学
臨床講義棟 C」日本建築学会 2008 年
○照明学会優秀建築賞「北海道薬科大学臨
床講義棟 C」社団法人 照明学会 2007 年
○札幌市都市景観賞「北海道工業大学バス
待合所」札幌市 2006 年
○公共建築賞優秀賞「北海道工業大学 講義
棟 G」社団法人 公共建築協会 2006 年
○北海道建築奨励賞「北海道工業大学 講義
棟 G」日本建築学会北海道支部 2005 年
○照明学会優秀建築賞「北海道工業大学 講
義棟 G」社団法人照明学会 2002 年
○日本建築家協会北海道支部住宅部会住宅
賞「澁さんの家」1995 年
Takashi Sato
33
34
地域の住生活環境を創造する
場所に切実な建築デザイン
持続的地域居住の計画手法
十勝の農場に男子寮を創りました !
●研究室の概要
いね夏あかり」の活動を行っています。
「ていね夏あかり」
我が研究室は、地域に適した住宅および生活環境づ
は、
「ちょうちん」というモノづくりを通じて、手稲に住む
谷口 尚弘 准教授
くり、居住者が居心地良く住めるような居住環境の検
子どもたちに夢と感動を与え、新しい文化を創造するこ
研究分野
住宅問題、建 築・都市
計画
証・考察と、地域のまちづくり活動をおこなっています。
と」を目指しています。
研究テーマ
地域型戸建住宅のあり
方に関する研究
広大な自然がもたらす風土が
住まう人々の生活空間に溶けこむ
今回の計画は、その農場で共に働き、住まう人たち
のための男子寮です。農場のある新得は、太平洋、十
勝平野という広大な広がりを前面に、日高山脈のう
川人 洋志 教授
十勝、新得にある共働学舎新得農場は、心身に妨げ
ねりを背にしてあります。そして共働学舎新得農場は、
研究分野
建築意匠設計・建築論
を抱えているなど様々な理由で社会から距離を置いて
その大きな地勢の中でも日高山脈の端部、新得山の
●子どもたちの郷土学習の一環として、歴史ある町並
生活を送らざるを得なくなった人達のために開かれまし
ふもとに連なる牛乳山を背に拓かれています。そして
みや風景について学ぶとともに具体的な景観づくりを
た。農場は、農業や酪農などここで行う生産活動を通
また、この建築の敷地は、そこに拓かれた農場を前面
昨今、北海道の戸建住宅は高断熱高気密の普及・発
考え・作業をしながら、
「ものづくり」の楽しさを学ぶ「ま
じて、ここに集う人々と社会をつなげていく活動をして
に、おおらかな斜面を背にするところにあります。この
展によりコミュニケーションの減少を主とする、これま
ちづくり」WSの支援をおこなっています
(江差景観ポイ
います。そのような活動の一環で様々なものが住人た
建築を構想する時に、そのような大きな広がりからこ
での北海道の住文化・地域コミュニティに陰りが生じ
ント環境整備 WS)
。
ちの手によって生産されていますが、とりわけチーズは、
の建築の敷地まで、凝縮してくるこの場所独特の諧調
共働学舎のチーズとして地元、十勝、北海道の人たち
を、ここで共に働き、住まう人々の生活の舞台に、素
のみならず世界の人たちからも評価されています。
朴に織り込むことがふさわしいと考えました。
地域に適した住宅および
生活環境づくり
ています。そこで、北海道に適した住空間および住文化
のあり方についての研究・活動を進めています。
住教育分野の環境支援
主に中学校や高校などの授業でおこなわれている住
進法制定以降全道に普及し、寒冷地住宅の建築計画
生活、住環境や消費生活、環境などを題材としたスライ
学の第一人者であった故足達富士夫北海道大学教授は
ド教材
(副読 CD)を作成し、先生方への授業支援を進
それを
「北海道の民家」と評するなど非常に優秀な住宅
めています
(住まい・環境教育学会)
。
教 員 の 活 動
教 員 の 活 動
●三角屋根コンクリートブロック住宅は防寒住宅等促
研究テーマ
現代にあるべき生活空
間の建築的探求
でありました。住宅改修等が考慮される現在、ストック
としても多く現存しかつ現代史的にも秀逸な三角屋根
CB造住宅から、これからの北海道における持続的居
住のための住宅計画手法を検証しています。
●積雪寒冷地域の住民は、除排雪に多大な労力を費
やしている。札幌市などの戸建住宅地では、除排雪労
力を軽減するために融雪装置を設置する家庭が増えて
きているが、環境問題からは最良の解決方法といえな
い。そこで、各住戸の計画時点において除雪労力を軽
減できる手法を検討しています。
地域文化創造の
「まちづくり」活動
●21年前から本学の学生
(現在は、藤女子大学と北海
道工業大学谷口研究室・同濱谷研究室)と手稲区に住
む子どもたち、手稲区役所や諸団体などと協働して
「て
関連卒業研究
○三角屋根 CB 造住宅のストック価値再考と
持続可能な居住システムに関する研究、平
成 24 ∼平成 26 年度科学研究費助成事業
科学研究費補助金 基盤研究(B)
○積雪寒冷地域における住宅地の雪堆積形
成からみた計画ガイドラインの開発、平成
23 年∼平成 26 年度科学研究費助成事業
科学研究費補助金 基盤研究(B)
○ Naohiro Taniguchi, Takashi Yukawa,
Ts u k a s a To m a b e c h i : P L A N N I N G
TO REDUCE THE NEED TO
REMOVE SNOW IN THE CASE OF
D E TAC H ED H O U S ES C O LD A N D
SNOWY REGIONS, 6th International
Symposium on Environmental Effects
on Buildings and People VI, pp.213 ∼
216, 2010.10
○谷口尚弘、東奈樹沙、濱谷雅弘、大垣直
明 :17 年間の「ていね夏あかり」活動とその
展開∼子どもと大学生・地域関係者との協
働によるまちづくり∼、住まい・環境教育学
会論文報告集 No.7,pp.3 ∼15、2010.6
Naohiro Taniguchi
35
主な受賞、入選
○新建築住宅設計競技1990.1995 2等入選
○SDレビュー1997 朝倉賞受賞
○SDレビュー1999.2000 入選
○日本建築学会北海道建築賞奨励賞受賞
○知床斜里複合駅舎プロポーザルコンペ
最優秀賞
Hiroshi Kawahito
36
武田 寛 教授
研究分野
鉄筋コンクリート構造
研究テーマ
有孔梁の研究
低強度コンクリートの問題
北海道の気候に適した高断熱住宅とは
せん断破壊と靭性について
熱収支の面から見た寒冷地の窓の最適性能
低強度コンクリート梁の
せん断強度に関する実験
1995 年(平成 7年)に阪神大震災が発生した。建
度が低いと実/計は小さくなる傾向を示している。コンク
リート強度が13.5以下の強度の補正式は
(1)式である。
Kr=0.244+0.056 σB
取得率 0.65 以上)がいずれの地域でも熱収支の上か
高断熱住宅の窓の選択
最も性能の良かった室内側 Low-Eトリプルガラス
憲三 教授
鈴木
熱損失係数が1W/m2K 以下の超断熱住宅が望ま
に固定し、窓の開閉方式とサッシの材質の影響を検
討した。結果を図 5 に示す。開き窓ではPVC サッシ、
研究分野
建築環境工学
(1)
(1)式を考慮すると実 / 計は表1の通りコンクリートに
ら最も有利である。
物の倒壊等により6000 名を超える尊い命が奪われ
よるバラツキも少なく安全側の評価となった。ここで、
れるようになり、熱貫流率1W/m2Kを切るような欧米
た。同年10月に「建築物の耐震改修の促進に関する
着目したいのはせん断力・部材角曲線
(以後 Q・R 曲線)
から輸入される希ガス入りトリプル Low-Eガラス窓も
引違窓では木 +アルミの複合サッシが最も有利であ
法律」が制定され、耐震診断、耐震改修が盛んに行わ
である。せん断破壊型の場合は靭性に乏しい Q・R
珍しくなくなった。しかし日本の寒冷地は北欧に比べ
る。しかし開閉方式とサッシの材質による影響差は小
れている。
曲線となるのが相場であるが、この 3 体とも付着、又
て緯度が低く、冬季の日射熱が豊富であり、窓の選択
さい。
耐震診断を行ったRC造建物でコンクリート強度が
はせん断破壊型であるにも関わらず、部材角 3.5/100
に当たっては熱貫流率だけでなく窓の日射取得にかか
13.5N/mm2 を下回る場合は、せん断強度式の大野・
以上でも荷重低下が緩やかで、グラフを見る限りせん
わるガラスの日射熱取得率やサッシの材質、開閉方法
荒川式のコンクリート強度の範囲外であるので、大野・
断破壊したとは思えない。
などを加えて熱収支で評価することが重要である。
荒川式に強度低減係数を乗じてせん断強度を求める
表 1 耐力実験値と計算値
よう通達があった。
に関する実験」を行った。破壊状況とせん断力 - 部材
せん断強度計算値
実験値
σB
第1項 第 2 項
角曲線を写真1、図1に示す。
8.6
87.9
kN
KN
146
156
○窓ガラスの光熱性能の簡易推定法
実/
Kr
ガラスの熱貫流率と日射熱取得率に関する計算式を
計
考慮
ガラスメーカーのカタログ値に当てはめ、Low-Eガラス
図 1 1月の水平面日射量の分布
教 員 の 活 動
教 員 の 活 動
卒業論文で「低強度コンクリート梁のせん断強度
研究テーマ
寒冷地の居住環境向上、
省エネルギー
図 2 1月の平均気温の分布 の熱貫流率と日射熱取得率も推計できるようにした。
1.07
1.47
○窓サッシの熱貫流率
サッシを含めた窓全体の熱貫流率については、日
本建材センターでの多数の実測結果をまとめたデータ
10.8
95
58.3
153
172
1.12
1.32
がある。サッシメーカーのカタログからサッシの材質
別にガラスの”見付け面積 ”比率を求め、面積加重
平均法でサッシの熱貫流率を逆算した。
12.1
100
158
207
1.31
1.42
○日射量と外気温データ
北海道内の標準気象データを基に月別・方位別に
これからの展開
平均日射受熱量を計算した。図1と図 2は観測点を
結んで三角形網を作り、1月の水平面日射量と気温の
図 1 関連卒業研究
○平成21年度 中野 規子「低強度コンク
リート梁のせん断強度に関する実験」
○平成22年度 小松 琢哉「限界変形角に関
する文献調査」
Hiroshi Takeda
37
では、
「なぜ低強度コンクリートであるにも関わらず
分布を色分けしたものである。1月では日射量で700
靭性があるのか。
」との疑問であるが、これに対する解
Cか
Wh/(m2・日)から2200Wh/(m2・日)、気温では-1°
はおそらく大野・荒川式の第1項と第 2 項
Cまでの地域差がある。
ら-12°
図 3 熱収支検討プログラム画面
の比(第 2 項 / 第1項)であると思われる。本実験の第
2 項 / 第1項は0.583 ∼ 0.663 の範囲であり、肋筋の
○窓の熱収支計算プログラム
負担せん断力はコンクリートの負担せん断力の 6 割前
図 3 に期間平均室温を固定し、縦軸は日射受熱量、
後である。
横軸は期間平均外気温のグラフに窓ごとの熱平衡線
せん断余裕度
(=せん断強度 / 曲げ強度)が1以上
と地域の方位別日射量と気温の点を描くことのできる
の場合は曲げ破壊型となり、1以下の場合はせん断破
Excelマクロソフトを示す。平衡線より地点が上にあ
壊型となる。せん断余裕度が大きいと限界変形角も大
ると入ってくる日射熱の方が多いことを表している。窓
きくなる傾向をしめすが、相関係数は0.27と低い。せ
は 4 種類、地域・方位は7点同時に検討することがで
ん断破壊型になるとせん断余裕度と限界変形角の相
きる。
図 4 南窓の熱収支(9 尺テラス窓、木製サッシ)
写真1 関性は無く、むしろ、せん断強度の第 2 項と第1項の
梁 断面 250x400、内法 長さ800、主 筋、肋 筋とも
比の相関性が高くなることが分かった。
SD295を用いた。肋筋は2-D6@100
(pw=0.25%)コ
コンクリート強度と肋筋強度の最適な組み合わせ
ンクリート強度は 8.6、10.8、12.1N/mm2 の 3 種とし
は、例えば、コンクリート強度が40N/mm2 の場合に
室温18℃、12mm 乾燥空気層幅の複層ガラス、9
た。耐力実験値と計算値を表1に示す。せん断強度式
肋筋は SD345が良いという考え方ではなく、第 2 項
尺テラス開き窓、木製サッシに固定し、11種類の断熱
は荒川 min 式を用いた。
と第1項の比によって、決めるべきだと思う。コンク
ガラス入り窓について旭川、札幌、帯広の南窓と西窓
第1項はコンクリート、第2項は肋筋の負担せん断力
リート強度と第 2 項と第1項の比と靭性との関係は今
の熱収支を検討した。その結果を図 4に示す。南窓と
2)開口部の断熱性能に関する研究、清水則
夫、空気調和・衛生工学会大会学術講演
論文集、2011.9、pp.955-958
である。実験値は計算値より大きいが、コンクリート強
後の課題である。
西窓とも透過性の高い Low-Eガラスを室内側だけに
3)JIS A 2102-1.2011 窓及びドアの熱性能
―熱貫流率の計算
北海道の窓における望ましい性能
用いたEトリプルガラス
(熱貫流率1.3 程度、日射熱
参考資料
1)建築学会編;拡張アメダス気象データ、
丸善出版、2001.1
図 5 窓の熱収支に及ぼすサッシの影響
Kenzo Suzuki
38
2011 講 演会・建築展
開催報告
スポーツ施設の構造デザイン
2011.6.20
伊賀 信・幾何学的抽象芸術作品展 -ジオメトリカル パーク・プロジェクト-
■ 講演者 川口 衛 [川口衛構造設計事務所主宰、北海道工業大学客員教授]
■ 講演者 伊賀 信 [G.A.A.L]
川口先生がこれまでに手がけてこられたスポーツ施設
について解説いただきました。
代々木競技場第1体育館の設計においては、コン
ピュータのない時代であり、手動計算機を用いて解析し
つつ、実験を行い設計されたことをお話しいただきまし
た。近年、コンピュータを用いて解析を行った結果、その
結果は大きく違わないことが確認され、設計当時も計算
結果が大きく違わないであろうことを応力の分布から感
じておられたとのことです。現在、コンピュータを用いれ
ばほとんどの構造物は解析できますが、その結果につい
ての検証は人間が行います。構造設計は、頭脳だけで行
北海道工業大学 図書館 1Fギャラリーにて、札幌在
住の美術家である伊賀氏の展覧会「伊賀 信・幾何学
的抽象芸術作品展 -ジオメトリカル パーク・プロジェ
クト -」を行ない、伊賀氏やオーナーさんよりお借りした
約 20 点の作品を展示いたしました。その作品は、パネ
ルというキャンバスに小さなパーツを巧みに並べ組み合
わせて1つの作品として成立します。作品は建築・都市・
アースワークの様に見え、鑑賞者によって多様な捉え方
のできる面白い作品です。建築と芸術は、共通するもの
があると今回の展示会で学生も再確認できたようです。
うのではなく、ましてや、コンピュータ任せにするのでは
なく、全感覚を用いて感じ取ることが重要であることを示
唆していただきました。さらに、構造には合理性が重要で
あること、この合理性は建築の形態を支配するのではな
く、様々な方向へ高める可能性を秘めていることを、同じ
テンション構造を合理的に用いたフライ・オットー設計
のミュンヘンスタジアムと代々木競技場を比較して解説
いただきました。最後に、近年設計されたドームに用いら
れているパンタドーム構法についても、その着想から解
説していただきました。なお、今回は講演と同時に、建築
構造模型展も開催されました。
2011.7.19 ∼ 7.28
なお、展示会の初日には伊賀氏をお招きし、ギャラ
リートークを開催いたしました。伊賀氏より、作品へ
の想いや考え方、展示作品の解説をしていただきまし
た。その後、伊賀氏と本学建築学科である佐藤孝教授
によるトークショーを行い、美術家を目指したキッカケ
や造形との出会いについて熱く語っていただきました。
学生・教職員・一般の方など約 30 名の参加者は、興
味深く耳を傾けていました。開催期間中の来場者数は
162 名と、多くの人に足を運んでいただきました。
北方型住宅の過去・現在・未来
2011.7.19
■ 講演者 福島 明 [北海道立総合研究機構 建築研究本部 企画調整部長]
ティンバライズ建築展
2011.7.1 ∼ 7.10
̶ 都市木造のフロンティア in 北海道 −
NPO 法人 team Timberize 主催のもと「ティンバライズ建築展 - 都市木造のフロンティア in 北
海道」が 2011年7月1日より10 日間行われました。NPO 法人 team Timberizeとは「木」を伝統や
習慣にとらわれることなく木・木造の新しい可能性の模索を目的とした団体です。今回のようなティ
ンバライズ建築展やその他講演会などを企画しています。
ティンバライズ建築展は、古くから木材を使って建築を作ってきた日本で、木造建築の新しい可
能性を探すことや最新技術などの紹介を目的とした巡回展です。東京、静岡、なごやの巡回展を経
てこの度北海道展を本学図書館 1Fギャラリーにて行いました。木の基礎知識をはじめ、都市に木
造のビルを作る都市木造プロジェクト、そして北海道展ならではの展示として札幌の中心市街地に
北海道の建築家・大学の研究室による木造建築プロジェクトを企画しました。また迫力のある実
物大模型や各プロジェクトの模型、最新の技術を示す木造の耐火模型等の模型展示も充実してい
たのでより理解いただけたと思います。
来場者は延べ1145 名を数え、たくさんの方々に来場していただきました。北海道の建築実務者
や建築を学ぶ学生がこれからの木や木造について考えるきっかけをつくる展覧会であったと思いま
す。また木造建築の新たな可能性についても考えさせられる展覧会となりました。
ティンバライズ シンポジウム
「ティンバライズ建築展 - 都市木造のフロンティアin 北海道」
では、作品展示だけでなくゲストを招いての様々なイベント
を行いました。
●北海道の建築家・大学の研究室による
展示作品レビュー
今回は、北海道展ならではの展示として、本学研究室のほか、
北海道大学、室蘭工業大学、札幌市立大学、五十嵐淳建築設計
事務所、WanderArchi、設計舎、北海道日建設計、また北海道
の構造家の方にもご参加いただき、様々なアイデアの木造建築が
展示されました。展示作品レビューでは、それぞれの作品に込め
られた思いが語られるとともに、熱い意見交換が行われ、大変盛
り上がりました。
●「team Timberize」メンバーによる
ギャラリーツアー
主催者である「team Timberize」メンバーの方々とともに、会
場内を巡るギャラリーツアーを行いました。企画・制作者側からの
視点で、展示作品についてより詳しい説明をしていただきました。
昨年の東日本大震災時に日本建築学会会長を務められ
ていた佐藤先生に、
「まちづくり市民事業」についてご講演
いただきました。この事業は、これまでは行政が担ってき
た公益性のある事業を、事業性も考慮しつつ、市民らが出
資をする社会的企業によって実施するものです。
まず佐藤先生より、海外も含めた数々の事例紹介を織
39
2011年 4月に本学の新体育館が着工し、7月には、
基礎工事および躯体工事が進められていました。本講
演では、これまで日本で建設されてきた体育施設の空
間デザインと構造計画に関して事例を交えながら概説
人にとって懐かしさと新しさが同居した、優しい建築に
なっていると感じました。長谷川氏は最後まで椅子に
座ることなく、会場を動き回りながら講演をするという、
とてもエネルギッシュな方でした。
講演会の後、高校生対象のコンペ「第2回北海道
工業大学建築デザインコンペ」の表彰式が開催されま
した。
ソフトとハードの間で
■ 講演者 畠中
Photo/SAKAI Koji
2011.7.7
り交ぜながら、我が国で同事業が展開されるに至った背
景とその概念が詳しく紹介されました。その後、これも当
日にお招きした札幌市・富良野市・稚内市・岩見沢市の
皆様から、各々の取り組み内容の報告がありました。最
後に、佐藤先生に総括していただき、
「新しい公共」とし
てのまちづくり市民事業の重要性が提言されました。
2011.10.22
豪 [長谷川豪建築設計事務所]
若手注目建築家である長谷川氏の講演会には、多く
の社会人や大学生に加え、高校生も訪れており、新鮮
な空気が会場を包んでいました。講演のテーマは「建
築について考えていること」
。長谷川氏の実作を通して、
自身の考えを紹介していただきました。
「すでにあるも
ので新しい現実をつくる」新しさばかりに目を向けず、
古今のものに目を向ける。そうしてできた空間は、住む
team Timberize
腰原 幹雄 (東京大学生産技術研究所准教授)
安井 昇 (桜設計集団)
されたともに、張弦梁構造のような小屋組の構造シス
テムと空間デザインとの関係性について詳細に述べられ
ました。本学の新体育館と比較することによって、学生
達は、新体育館の構造的特徴を学ぶことができました。
建築について考えていること
■ 講演者 長谷川
<ゲスト>
角 幸博 (北海道大学大学院特任教授、日本建築学会北海道支部長)
平井 卓郎 (北海道大学農学研究院教授)
■ 講演者 佐藤 滋 [早稲田大学教授、日本建築学会前会長]
2011.7.25
■ 講演者 中島 肇 [北海道工業大学客員教授、清水建設 環境・技術ソリューション本部技術開発部]
●ゲストによる講演、トークセッション
「北海道における都市木造の可能性」
まちづくり市民事業の進め方
の住宅の考え方、諸外国の住宅やエネルギーに関する
意識や行動、室内環境と居住者の健康、北海道の住
宅におけるエネルギー消費の実態と地球温暖化対策、
北方型住宅が今後目指していく方向など幅広いテーマ
を環境工学を学び始めた 2 年生にも理解しやすく平易
に語られました。
空間構造のデザイン - 体育施設の構造計画 -
2011.7.3
角氏には北海道の木造建築の歴史的背景について、平井氏
には林業・生産という点から木質材料・木造建築について基調
講演をしていただきました。
また、両氏と team Timberize のメンバーである腰原氏と安井
氏の4名によるトークセッション「北海道における都市木造の可
能性」も行われ、木材の生産過程から工法、耐火などの構造、
デザイン、そしてこれからの木造建築の可能性について、それぞ
れの立場から語られました。豊富な森林資源を持つ北海道、日
本で木を使うことの重要性についてもふれ、今後の木造建築の
技術やアイデアについて積極的な意見交換が行われました。多
様な角度から、未来の木造の可能性について考えさせられる充実
したトークセッションとなりました。
福島氏は、寒地研究所時代から30 年以上にわたっ
て、研究者として北海道の気候風土に適した住宅工法
の研究開発に、また行政の立場として、北方型住宅の
普及啓発や基準や補助制度の制定に対して第一線で
活躍されています。今回の講演では、昭和 20 年代の下
見板張の木造住宅から近年の「北方型住宅 ECO」に至
る北海道の住まいづくりのあゆみ、社会ストックとして
2011.10.27
秀幸 [建築設計・音楽企画事務所 スタジオシンフォニカ代表取締役]
畠中氏は、建築設計のみに留まらず音楽の企画・活
動も行われています。本年 5月に病を患いましたが、順
調に回復され講演会を開催することができました。
今回は、畠中氏の建築論「音楽のような建築」につい
て実作を交えて語っていただきました。一般的に建築は
ハードとして考えられ、音楽はソフトとして考えられてい
ます。それをクロスオーバーさせる事で柔軟性
(多様性)
を持った建築が生まれるのだと言います。建築はハード
の側面を持たざるを得ませんが、ソフトな面が無いと飽
きられてしまいます。ソフトとハードといった相互関係の
重要性を再確認するきっかけとなりました。また、自身の
病気になった事を後悔しておらず、本質存在と実質存在
を見つめ直す事が出来たと、逆境をも自らの糧としプラス
に考える思考はとても勉強になりました。
自身の作品を巡って
2011.11.4
■ 講演者 山口 隆 [山口隆建築設計事務所主宰]
山口氏は、作品を作るよりも建築とは何か、という
考えを大切にしています。その考え方について機能を取
り除いた本当の建築の姿とは何か、と考えた卒業設計
から現在までに手掛ける自身の作品をからめて、お話
していただきました。山口氏が建築とは何かと考え始
めたのは、京都大学で学生の時に建築論を学んだこと
がきっかけだとお話していました。今回の講演会で学
生の内に聴けたことは、これから建築を学び、考えて
いく上でとても意味があり、貴重なお話を聴かせていた
だけたと感じました。
40
2011 講 演 会・建 築 展
建築にできること
■ 講演者 圓山
∼持続可能な建築∼
学生コンペ入選作品 2011
地球環境と建築と都市
トステム財団主催
「学生のための住宅デザインコンペティション」
並行に語っていただきました。建築は文明や数字的な
断片で評価されるものではなく、建築が親から子へ孫
へ引き継がれるなど回転運動を持つ連続的な面で評価
されるものだと感じました。その場しのぎで設計せず、
設計者の意図を明確に施主に伝えて設計する事で、数
十年先でも気に入ってくれる建築をつくり受け継がせて
持続させる、それが建築家の責務だと痛感しました。
ーエンジニアの視点からー テーマ 「新しい家」
震災を体験した後に我々はどのような家ができるでしょうか。
震災後の新しい時代にふさわしい新しい家を提案してください。
優秀賞
「土と空間を纏う家を覆う」
根本 周、菅原 仁美、
伊達 紗央里、山下 竜二
2011.11.14
●作品コンセプト
人が安心して暮らしていく為に、住宅にはシェ
信孝 [日本設計取締役常務執行役員 環境・設備設計群長]
株式会社日本設計にて、設備環境領域の最前線で
活躍されている佐藤氏、エンジニアの視点から展望す
る「地球環境と建築・都市」について、自身の会社で
手がけた数多くの作品を通してわかりやすく語ってい
ただきました。社会が求める持続可能な建築をエネル
ギーや環境という側面から、どのようにして実現する
のかを建築の内部から、周辺環境という広い領域より
関東地方以北の建築学生を対象とした全国コンペで優秀賞を受賞 !
学生たちの思いが詰まった個性あふれる設計が、高く評価されました。
2011.11.7
彬雄 [アーブ建築研究所主宰]
アーブ建築研究所主宰の圓山氏を講師に招き講演
会を開催しました。最初に北海道の特産品である火山
灰軽量ブロックを使用した個人住宅を中心としたお話
がありました。火山灰軽量ブロックは水に弱く建築が
難しいのですが、ブロックが積まれた内部は暖かみのあ
る空間を演出しています。そして本題の「持続可能」の
お話へと移り、
「時間に対しての問題意識について」と
■ 講演者 佐藤
開催報告
ルターとしての役割を持った強さが必要とされ
考えるプロセスを実施設計物件などを通して伺う事が
出来ました。
学生が軽く見がちな建築設備と空間意匠、地球環境
がうまく統合される姿というものを今回の講演会では提
示され、建築とテクノロジーがどのようにして自然と向き
合うかということの可能性を予感させる内容でした。
る。しかし、そのことを意識するあまり自然と共
生することで生まれる居場所としての心地よさが
おろそかになっているのではないか。強さと心地
よさは相反するものではない。自然に抵抗する
強さを持つことで、人と自然が極限まで接近す
る居場所を手に入れることができる。土の上で暮
らせるほど自然に寄り添った新しい住まい方を提
第 8 回北海道工業大学建築学科 建築展
2011.11.26 ∼ 12.1
■ 講演者 西
纏い自然へと接続する。土は空気を纏い、人と
自然が心地よく共存する空間を帯びる。そして、
空間は 1 枚のビニールを纏い、環境と人間が一
体となる新しいかたちの生活空間が生まれる。
2011.12.2
第 36 回「北の住まい」住宅設計コンペ
在でも同様の仕組みの昆布乾燥機が使われているとの
ことです。
また、北海道工業大学では教育者として授業の体制
を改革し、会社や他大学とのコネクションづくりの強化
に奮闘していただきました。本講演は建築設備の面だ
けでなく西理事長の自伝の様な講演会でした。
魅せる構造
ーデザインとエンジニアリングー ■ 講演者 山脇
克彦 [北海道日建設計]
株式会社日建設計の山脇氏が、モード学園スパイラ
ルタワーズ、陸別小学校のデザインとエンジニアリン
グについて講演をしてくださいました。はじめにスパイ
ラルタワーズの構造設計のこだわりについて説明をして
くださり、できるだけ使いやすく、強くてかっこいい構
造をコンセプトに設計されていました。地震に対しては
制振システムを用いて、揺れを低減させる構造となって
いました。デザインでは今までにない形態の提案とい
奨励賞「sharing earth」
根本 周、菅原 仁美
野村 和也
2011.12.9
2011.1.25
公男 [日本大学名誉教授、北海道工業大学客員教授]
本学客員教授である斎藤先生の講演会が行われまし
た。今回は、構造デザインについて、アーキニアリン
グデザイン展の話を交えながら力学が造りだす建築デ
ザインについてお話しいただきました。デザインとは、
技術と芸術とつなぐものであり、技術と芸術の融合、
誘発、統合であること。想像力と実現力が建築を支え
ていることを話されました。様々な建築物を例に挙げ
最優秀賞「オテンキキルト」
うことで、外観はねじれたデザインにしたとのことでし
た。陸別小学校では、木造で明るく開放的で木の温
もりが感じられる空間を実現し、子供たちに材料の一
部にメッセージを書かせるなどの工夫を行うことで温か
みのある建築物にしたとのことでした。講演途中には
構造力学や自由に空間を創造しデザインするという演
習も行われ生徒一同楽しく講演を聞き、授業では学べ
ないことを経験できたと思います。
私にとっての構造デザイン
■ 講演者 斎藤
テーマ 「大地に住まう」
圧倒的な自然の力。我々は、効率性や経済性を追求するあまり、歴史か語る
教訓を忘れ、自然に対してあまりにも無力・無防備になってはいなかったか。
様々な恵みをもたらす土・水・雪・風・光・火は、時に容赦ない牙を剥いて我々
に襲いかかる。人里を離れて一人で住んでいても、都市に集まって住んでいても、
我々は大地の上に住まわせてもらっていることを忘れてはならない。優しくも厳
しい大地に対する自然観を、今こそ問い直す必要かあるのではないだろうか。
安信 [学校法人北海道尚志学園 理事長]
2011年 3月まで北海道工業大学の学長を務め、現
在は学校法人北海道尚志学園理事長に就任し、また
建築設備の分野で多大な功績をもたらした、西理事長
の講演会が開催されました。衛生工学の歴史について
時代背景や自身の歴史も交えて語っていただきました。
西理事長は建築の分野だけに留まらず、昆布乾燥機を
開発し、昆布事業に絶大な影響をもたらしたそうで、現
41
必要最低限の機能を詰め込んだ、シェルター
としての、強いけれど小さな家。小さな家は土を
紀伊國屋書店札幌本店 2 階ギャラリースペースにて、北海道工業大
学建築学科建築展を開催しました。本学の先生方、学生の卒業設計、
ゼミ活動による建築模型などを広く一般の方にもご覧いただくための
イベントとして毎年開催しています。今回のオープニングイベントは、紀
伊國屋書店札幌本店1F インナーガーデンにて、本学建築学科の川人
洋志先生による「光と建築」をテーマとした講演会を行いました。
室内環境工学・建築設備と私の関わりを回想して
案する。
ながら、イメージとテクノロジーの双方から発展した建
築物や、様々な素材と工法の中で、その建築物は何が
支配的になっているのかを話されました。また、3.11 か
らのメッセージを受けて、これまで、いま、これからの
建築について実際のレトロフィットや、AND 展などを
例に話されました。この講演会から学部生が構造に関
心を持ってくれることを期待しています。
●作品コンセプト
●作品コンセプト
3.11 以降人々は建築によって自然に対抗しようとする意識が強くなった。し
地球の総面積を世界の総人口で割り、一人当たりに分割すると約 21417 ㎡、
かし、建築とは身を守る為のものではあっても自然と対立するものではない。
正方形で表すと 147m 角、だいたい野球場くらいの広さである。この広いと
今一度、人々が自然の恩恵を受け、豊かに暮らしてきたことを思い出す必要が
も狭いともつかない領域を北海道の大地に表現し、大きすぎて見えない何か
あるのではないか。建築空間が閉じ人工環境化が進む現代において、北海道
を認識する為の空間を計画。
の気候の大きな変化を積極的に受け止め、降雨、積雪などによる自然現象と
住まいの共生方法を掲示した。
42
審査講評 長谷川 豪
(長谷川豪建築設計事務所)
全国高校生対象
第 2 回北海道工業大学
建築デザインコンペ
僕にとっては初めて高校生の提案を見る機会だったのだが、レベルが高くか
2 等の葛西義章さんの「Scenery Seen From Spiral Staircase ∼31階建
なり驚いたというのが正直な感想だ。建築学を専攻する大学生の課題を見る
ての建築物∼」は、既にある建築の要素に着目しそれを変形させるとても建築
ことはよくあるのだが、それと比べても全く遜色がなかったように思う。僕が
的な案だ。家のなかにある階段が階段でしかないことに目を向け、階段を部屋
高校生のときはケンチクのケの字も知らなかったので衝撃的だった。彼らが
化させてしまうという大胆なアイデアである。荒削りではあるが野心的なとこ
これからどのような成長を見せるのかとても楽しみだ。
ろが評価された。
コンペの課題は「屋外とともにある生活」
。以下上位入賞作品について簡単に
コメントしたい。
(c)
TAKUMI OTA
3 等の原山雅也さんの「屋外に浸食される家 屋外を浸食する生活」は分棟の
タワーのあいだに共用庭をつくるものだ。図式が明快だし設計も上手だが、屋
最優秀賞になった福田しおりさんの「緑を眺め、動物と暮らす小さな家 = 心
外の生活に対してもっと積極的になれたらなお良かった。
地よい小さな家について考える =」は、A1の用紙サイズいっぱいにつかった
同じく3 等の久保鈴奈さん「Tarpaulin House ∼自然に溶けこむ空中空間∼」
見事なドローイングにまず惹かれた。森のなかに小さな居場所を点在させブ
は上空に浮かぶ生活領域を大きなテントで覆っている。模型による外観イメー
リッジで繋ぎ、それら全体を一つの家とする案である。各居場所に併置され
ジがとても軽快で好感をもった。キャンプに行ったときのテントの空間体験か
た大きなバルコニーが積極的な屋外生活を想像させたし、なにより家の大き
ら発想したそうで、設計者の強い実感を感じさせる提案だったように思う。
さを限定せず、どこまでが家でどこからが森なのか分からないような大きな
環境の広がりのなかに生活を描いていることが素晴らしいと思った。
建築に興味をもつ全国の高校生を対象とした
「北海道工業大学建築デザインコンペ」は、昨年で
2 回目を迎えました。
課題は「屋外とともにある生活」
(審査委員長:
長谷川豪氏)をテーマとした、建築の内と外との
関連性が問われるものでした。高校生らしい自由
な発想のもとに作られた多くの作品が応募された
中、2011年10月22日、本学合同講義室において
表彰式が行われました。表彰式には、最優秀賞、
2 等、3 等を受賞した生徒さん 4 名をお招きし、審
査委員長である長谷川豪氏から表彰状と副賞が
2 等「Scenery Seen From Spiral Staircase ∼ 31 階建ての建築物∼」
葛西 義章さん 手渡されました。
●最優秀賞「緑を眺め、動物と暮らす小さな家 ∼心地よい小さな家について考える∼」
福田 しおりさん
(大分県立大分工業高等学校 建築科 2 年)
最優秀賞「緑を眺め、動物と暮らす小さな家 = 心地よい小さな家について考える =」
福田 しおりさん ●2等「Scenery Seen From Spiral Staircase ∼ 31 階建ての建築物∼」
葛西 義章さん
3 等「屋外に浸食される家 屋外を浸食する生活」
原山 雅也さん 第 3 回北海道工業大学
建築デザインコンペ 結果速報
(c)
Takashi Kato
●3等「屋外に浸食される家 屋外を浸食する生活」
原山 雅也さん
課題:
「未来の地球をつくる家」
(長野県長野工業高等学校 建築科 3 年)
●3等「Tarpaulin House ∼自然に溶けこむ空中空間∼」
久保 鈴奈さん
「未来の地球をつくる家」を考えてください。
(北海道札幌工業高等学校 建築科 3 年)
ビーバーにとっての家の建設は、ダムをつくるところからはじまります。
ビーバーの日々の暮らしは、自分たちの家を守る
●佳作「手と手をつなぎ皆で力を合わせよう」
岩田 良希さん
小さな溜め池の水位を管理することでもあるのです。
いっぽうわたしたちの家は、都市という大きな仕組みによって守られています。
(北海道名寄産業高等学校 建築システム科 3 年)
おかげでわたしたちは、朝、顔を洗うたびに
●佳作「BOX TRICK」
高薄 英理さん
「どこか遠くのダムの水がちょっぴり減った」なんて想像はしませんよね。
(静岡県立科学技術高等学校 建築デザイン科 2 年)
でもほんとうは私たちが暮らすことで、世界は確実に変化している。
だから、ひとつの家をデザインすることは、ゆっくり変化していく世界を、
知らずしらずのうちにデザインしていることにつながっているのです。
受賞された皆さんには、今後ますますの飛躍を期待しております。
※所属及び、学年は受賞時のものです。
一軒の家とそこでの生活が、
どこかで未来の地球をデザインすることにちゃんとつながっている、
佳作「手と手をつなぎ皆で力を合わせよう」
岩田 良希さん 佳作「BOX TRICK」
高薄 英理さん 1972年
1998 年
2000 年
2000-2007 年
2007年
主な受賞
2004 年
2007年
2008 年
福岡県生まれ
東京藝術大学美術学部建築科卒業
東京藝術大学美術学部建築科大学院修了
伊東豊雄建築設計事務所勤務
中山英之建築設計事務所設立
SD Review 2004 鹿島賞
第 23 回吉岡賞
第1回六花の森 Teahouse Competition 最優秀賞
最優秀賞
「一握りの土」
片山 瑛斗さん
静岡県立科学技術高等学校 建築デザイン科 3 年
2 等
「時と共に流れる家」
斎藤 将也さん
北海道札幌工業高等学校 建築科 3 年
3 等
「LOG +」
管野 大樹さん
北海道名寄産業高等学校 建築システム科 3 年
「干渉しあう家 私の好きな音楽が家族の話題へ」
廣森 悠大さん
三重県立四日市工業高等学校 建築科 3 年
そんな「未来の地球をつくる家」を考えてみてください。
佳作
あまりおおげさに構える必要はありません。
もしかしたらそれは、ほんの小さな
「置屋根ハウス∼自然の恵みを大切に∼」 深沢 司さん
山梨県立甲府工業高等学校 建築科 3 年
溜め池のある家を考えるようなことかもしれません。
大昔の人間や野生の動物たちの生活にヒントが隠れているかもしれません。
その家のある未来を想像するとわくわくするような
なるべく素朴で単純な、実感のこもった提案を期待しています。
43
●審査委員 Profile
中山 英之(なかやまひでゆき)
第 3 回目の審査員は、建築家の中山英之氏に
努めていただきました。
(応募総数 19点)
(北海道札幌工業高等学校 建築科 3 年)
3 等「Tarpaulin House ∼自然に溶けこむ空中空間∼」
久保 鈴奈さん 「Future make, Child's make」 池田 菜月さん
静岡県立科学技術高等学校 建築デザイン科 2 年
「みんなのリビング」
伊達 千尋さん
呉工業高等専門学校 建築学科 2 年
44
2011年度の出来事を
ピックアップしてご紹介します。
建築学科教員 田沼 吉伸(教授)
[非常勤教員] 赤坂 真一郎/㈱アカサカシンイチロウ アトリエ
研究分野 : 建築鋼構造
環境と境界をデザインする建築
̶ものづくり 40 年を振りかえる̶
『下村憲一教授 最終講義』
武田 寛(教授)
研究分野 : 鉄筋コンクリート構造
鈴木 憲三(教授)
研究分野 : 建築環境工学
2012 年 2 月 9 日、本学 G204 教室において、本年度を最後に退任
される建築学科教授の下村憲一先生による最終講義が開催されま
した。
先生ご自身のものづくり40 年間を振り返る、大学卒業後から設計
事務所勤務を経て、ロンドンAAスクール時代、
「環境設計」設立、そし
て、本学教授に赴任し現在へ至る中での様々な経験と自身の作品をも
とに環境建築をつくる尊さを講演していただきました。本学学生や建
築学科 OB・OG の方々、かつて先生とともに仕事に携わった関係者
の方々等が多く見られる中、エネルギッシュに立ち振る舞い建築を熱
弁する先生の最終講義は大盛況にて締めくくられました。
下村憲一先生、7年間お疲れ様でした。
半澤 久(教授)
研究分野 : 建築設備、建築環境工学
(50 音順) 担当科目 : 建築設計デザインⅡ
井上 共子/㈲井上武久建築事務所
担当科目 : インテリアデザイン及び演習
遠藤 崇能/遠藤設計工房
担当科目 : 建築設計演習Ⅰ
大坂 崇徳/一級建築士事務所 archi LAB.t+m
担当科目 : 建築設計演習Ⅱ
大海 邦彦/大成建設㈱札幌支店
担当科目 : 建築の社会
飯田 雅史(教授)
加藤 誠/㈱アトリエブンク
研究分野 : 建築計画・建築構法計画
担当科目 : 建築設計演習Ⅰ
佐藤 孝(教授)
研究分野 : 建築設計、デザイン
伊東 敏幸(教授)
研究分野 : 建築仕上材料学、雪工学
川人 洋志(教授)
研究分野 : 建築意匠設計・建築論
菊池 規雄/ワンダーアーキ建築設計事務所
担当科目 : 建築設計演習Ⅱ
北浦 丈士/キタウラ設計室
担当科目 : 建築設計演習Ⅱ
舩坂 大樹/ to be Designed
担当科目 : 建築グラフィックデザイン演習
小西 彦仁/㈲ヒコ コニシ設計事務所
担当科目 : 建築設計デザインⅡ
久保 勝裕(教授)
研究分野 : 都市計画(市街地整備)
歴史ある建造物から最新の建築デザインまで
多くの感動を味わったスペイン、スイスの旅
『2011 年度 建築学科海外研修旅行』
魚住 昌広(准教授)
研究分野 : 建築環境工学、建築設備計画・設計
坂部 俊行(准教授)
研究分野 :ESP、異文化コミュニケーション
今回の研修旅行は、スペインとスイスを巡る8 泊10日のヨーロッパ
8日目は自由行動の日でしたが、午前中はバスでフランスに行きル・
旅行でした。
コルビュジェのロンシャン教会やヘルツォーク&ド・ムーロンのリコラ・
初日のバルセロナは 3 ヶ月ぶりの雨でした。到着したのが夜だった
ヨーロッパ社工場・倉庫を見学しました。午後からはバーゼルまで戻
ため、ホテル周辺を散策し、スペイン料理を食べたりするなどそれぞれ
り建築博物館に行こうと思いましたが、あまりおもしろくないという話
前田 憲太郎(准教授)
自由行動していました。
を聞いたので行くのをやめ、街の中で買い物を楽しみました。
研究分野 : 建築鋼構造
2日目はライブラリー・アンド・シチズンセンターや郊外にあるEls
観光地となっている有名な建築物や普通の旅行では見ることのでき
千葉 隆弘(准教授)
Colors KindergartenなどRCR Arquitectesが設計した建築物を見学
ない近年の建築物など様々な時代の建築に触れ、多くのことを学ぶこ
研究分野 : 建築構造、雪氷工学
しました。中でもLes Cols のレストランではまだ日本では未公表だっ
とができました。また様々な地域に行き、異文化交流がたくさんでき建
た新しい施設を見学させていただき、さらにその場でミシュラン 3 つ星
築以外のことも勉強できました。
の料理をいただきました。
10日間と長かったですが1日1日がとても充実していて最終日にはま
3日目はミース・ファン・デル・ローエのバルセロナパビリオンやア
だ帰りたくないと思うぐらい楽しい旅行でした。
ントニオ・ガウディのコロニアル・グエル地下教会、カーサ・ミラ、カー
瀬尾 寛美/㈱高岡建築設計事務所
高木 貴間/(株)設計舎
中島 寿宏(講師)
研究分野 : 教育心理、保健体育科教育
担当科目 : 建築設計演習Ⅱ
高橋 三太郎/家具工房 SANTARO
担当科目 : 造形デザイン演習
武井 久/㈲武井企画設計
担当科目 : 建築法規Ⅰ、建築法規Ⅱ
辻井 順/㈱ホルス
担当科目 : 建築設計演習Ⅳ
中舘 誠治/㈲エヌディースタジオ
担当科目 : 建築設計演習Ⅲ
名古屋 英紀/ a-plus 名古屋英紀 建築設計室
担当科目 : 建築設計デザインⅠ
建築学科 3 年 尾西 千央
成田 憲之/(株)総合設備計画環境開発部
担当科目 : 建築の社会
星野 政幸/元北海道工業大学教授
担当科目 : 建築材料Ⅰ、建築施工Ⅰ
4日目はバルセロナ市内で各グループに分かれ、グエル公園など見
学したり、ショッピングセンターで買い物をしたりなど自由に行動し、
湊谷 みち代/㈱エム・アンド・オー
担当科目 : 建築設計演習Ⅴ
スペイン最後の日を満喫していました。
三好 和則/大成建設㈱札幌支店
5日目はスペインを離れ飛行機でスイスのジェネーブに行きました。
担当科目 : 建築施工Ⅱ
出発前にトラブルがあり数名飛行機に乗り遅れそうになりましたが、無
山浦 靖夫
事全員でジェネーブに着きました。
担当科目 : CAD演習Ⅰ、CAD演習Ⅱ
6日目はバスでジェネーブからローザンヌに移動し、妹島和世が設
山木 優敬/CSA(同)1級建築士事務所
担当科目 : 建築設計デザインⅢ
計したスイス連邦工科大学ローザンヌ校のロレックス・ラーニングセ
[客員教授] 川口 衞/川口 衞構造設計事務所主宰
ピーター・ズント−が設計した温泉施設を見学し、さらにその温泉に
入浴し建築物を体感しました。
斎藤 公男/日本大学名誉教授
見学しました。
担当科目 : 建築設計デザインⅠ
研究分野 : 住宅問題、建築・都市計画
も感動しました。夜はフラメンコを見に行ったグループもいました。
見学し、バーゼルまで移動しレンゾ・ピアノのバイエラー財団美術館を
鈴木 理/㈱鈴木理アトリエ
担当科目 : 建築の社会
などでよく見る有名な建築物ばかりだったので、実際に見たときはとて
7日目はスーンヴィッツでピーター・ズントーのヴェネティクト教会を
菅原 秀見 /(株)北海道日産設計
研究分野 : 建築設計デザインⅣ
谷口 尚弘(准教授)
サ・バトリョ、サクラダ・ファミリア教会を見学しました。どれも写真
ンターやル・コルビュジェの小さな家を見学した後、ヴァルスに向かい
下村 憲一 /元北海道工業大学教授
研究分野 : 建築設計デザインⅠ
中島 肇/清水建設(株)
環境・技術ソリューション本部
西 安信/北海道尚志学園理事長
山田 恵一/さくら構造(株)
担当科目 : 建築の社会
山本 進一/苫小牧市役所建築指導課
担当科目 : 建築の社会
若佐 和夫/高砂熱学工業㈱札幌支店
担当科目 : 設備施工
(2012 年 4月1日時点)
Design Works 2012
北海道工業大学
建築学科作品集 2012
45
2012 年10月発行
46