京都次世代ものづくり産業雇用創出プロジェクト イノベーション・経営人材育成事業 経営戦略実践講座 第3回 実施日:2015 年 11 月 12 日(木) 【研修内容・ダイジェスト】 ■講座内容 1)第3回の講義のポイント 前回までは経営戦略とマーケティングについての学習を進めてきましたが、今回は経営活動の実践力を 高める上で欠かせない会計思考力について、学習を進めていきました。 経営活動によって出た〝結果〟を〝分析〟し、〝改善〟に繋げていく。この管理会計の考えが経営者に とって重要であり、経営活動と会計がリンクしていなければならないことを前提として確認しました。 2)会計思考を高める (事前課題の共有・確認) はじめに、会計における基本用語を確認しました。 貸借対照表:企業の一時点の財政状態を示すものです。 損益計算書:企業活動において、一定期間の経営成績を表したものです。 続いては、儲けのモデルとして確認する指標についても押さえていきました。 今回の事前課題では、「大手カフェチェーン店 A社と高級喫茶 B社」 それぞれの決算書分析を行い、それぞれの会社の特徴と両社の比較を考えて 頂きました。はじめに、各自準備してきた課題に対する考えを参加者同士で 共有しあうところから進めていきました。検討には、両社の指標分析を 表組みして整理し、各指標の意味や算出方法を確認しました。 ■どのようなモデルの違いがあるか -指標の違いを読み取る- 両社の事業形態(ビジネスモデル)をイメージしながら考えていきます。 1店舗あたり効率(売上/資産:大手カフェチェーン店 A社:1.8 回転、高級喫茶 B社:1.1 回転:総 資産回転率)から、会社の効率性を見ることができます。 さらに店舗数の比較:大手カフェチェーン店A社:1,000 店舗、高級喫茶 B社:114 店舗。 1 時間あたりの売上高から必要な来店人数を算出しました。 大手カフェチェーン店A社:125,666,000,000 円÷1,000 店舗÷12 ヶ月÷30 日÷15 時間=23,000 円。単 価 600 円とした場合、1 時間あたり 38 名の来店が必要になります。 同様に、高級喫茶 B社:売上高 7,233,777,000 円÷114 店舗÷12 ヶ月÷30 日÷15 時間=11,000 円。 単価 800 円とした場合、1 時間あたり 13 名の来店が必要になります。 同じコスト構造でも売上が低いと販売管理費が上がる。だから高級喫茶 B社は単価を上げています。 また大手カフェチェーン店A社は1坪あたり1席、高級喫茶 B社は1坪当たり 0.8 席の設定。高級喫茶 B社は立地の良いところに構え、商談や疲れを癒す空間を作り、リピーターの確保をすることで1時間あ たり 13 人の来店で儲かるモデルを作っていることがわかりました。 ■貸借対照表の確認 自己資本比率:大手カフェチェーン店A社:65.3%、高級喫茶 B社:79.8%。これまでに積み上げて SANNO Institute of Management 京都次世代ものづくり産業雇用創出プロジェクト イノベーション・経営人材育成事業 きた利益が大きいことを確認しました。では、自己資本比率はどうすれば増えるかを考えました。まずは 負債を減らします。しかし、そのためにはお金が必要になるから、当期純利益を増やして増資をすること で負債を減らせることを押さえました。 ■損益計算書について学ぶ 利益は、貸借対照表(B/S)では利益剰余金と表示しています。これは過去の儲けの歴史がわかります。 儲かった分を利益剰余金として増やしている流れを確認しました。 ■損益計算書の落とし穴 テキストの例題の解答について、何が間違っているかグループでディスカッションしました。 ここで確認したいことは、売れたら費用に計上するということです。つまり、原価は仕入れた 100 台では なく、売れた 50 台であるから、売上原価は 50×50=2500 として考えます。 費用はその期で処理し、資産は繰り越すことができます。また不良在庫となってしまうと費用が増えて しまい、その不良在庫が異常に増えると特別損失として計上することになります。 大手カフェチェーン店A社の不良在庫は、ドリップとそれ以外は生産方法が違うようです。ドリップは 作り置き(見込み生産)に対して、それ以外は受注生産になります。だから追加料金で、おかわりができ るサービスは、ドリップ方式でできた不良在庫を減らす仕組みとして有効なのです。 また最初は資産でも、その後、費用に変わる(=費用性資産)こともあります。廃棄ロスや万引きなど がその例です。躓きのポイントにもなるため気をつけて欲しいです。 ■減価償却費を理解する 土地代だけは減価償却できません。(理由:建物が古くなって解体しても土地は残るから) ■普及しているコンビニの100円コーヒーの影響から考える また最近では、大手カフェチェーン店A社は、コンビニの 100 円コーヒーの影響を受けているため、 お店で飲めるコーヒーを缶でも飲めるようにして販売しています。 一方、高級喫茶 B社は、客が減っても採算を取ることができる戦略をとっていて、テイクアウトが ないため直接的な影響は受けていないようです。 その他には、プリペイドカードの失効益、販売管理費用率などから儲けのモデルを確認しました。そし て、営業外収益>営業外費用の場合は、経常利益が営業利益よりも大きくなることも押さえました。 3)会計思考を高める (演習問題:企業の経営指標の数字からどの企業かを当てる問題) 上場企業 4 社(フランチャイズ牛丼店、大手総合スーパー、 大手化粧品メーカー、大手製紙メーカー)の決算書をも とに、経営指標の分析を行い比較することで、4 つの決算 書がどの企業かを推察するトレーニングを行いました。 この問題の学習ポイントは、各企業のビジネスモデル (儲けの仕組み)をイメージし、そのイメージが指標 のどの部分として現れているかを見つけるところです。 SANNO Institute of Management 京都次世代ものづくり産業雇用創出プロジェクト イノベーション・経営人材育成事業 また、こうしたトレーニングを繰り返すことで、指標そのものの意味を理解し、企業の儲けのポイ ントをより詳しくわかるようになります。 ■体力のモデルの理解 B/S の右側は、リスクの高い上から順に並んでいます(返済順)。また左右を比較しながら分析を行う ことも大事です。流動負債をみて返済可能かどうかは、左側の流動資産を見ていきます。大きければ返済 可能になります。今回の大手カフェチェーン店A社の流動比率は 159%(100%以上が好ましい)です。 尚、売掛金、受取手形は未回収の売上代金。貸倒引当金で引いています。 商品(買って売る)製品(作って売る)材料、仕掛品は棚卸資産=在庫となります。当座比率は 100%が 望ましいです。 ■固定比率 100%以下が理想ですが、電力やガス事業などはこの比率が高くなる特徴があります。 会社設立段階では自己資本比率が高いほうが良いが、ただし安定してくると借金を増やすほうが良い場合 もあります。もちろん、借金をしすぎると倒産リスクが高まるので注意しないといけません。 ■固定長期適合率 設備投資は、純資産と固定負債で賄えるほうが良いです。100%を下回っているほうが良いです。 ■総資産回転率 小売業、卸売業は高くなりますが製造業は低くなります。小売業でも回転率が高いとは限りません。 例えば、仏壇屋、墓石屋などは、値引きをしなくても売れます。一方、ある緑茶メインの飲料メーカーは 回転率が 1.8 で高いですが、製造委託していて工場を持っていないファブレス経営だから実現できている 例もあります。 大手カフェチェーン店A社: 棚卸資産回転日数(25 日)+売上債権回転日数(13 日)=38 日 仕入債務回転日数(31 日) 仕入 ⇒ 販売 ⇒ 現金化(回収)の流れで見た場合、38-31=7 日のキャッシュ不足に陥ってしま うため、銀行から借りる必要が出てくることがわかりました。 ■インタレストカバレッジレシオ 利息に対してどれだけカバーできるか。この比率が1倍を切ると倒産リスクが高まります。 ■演習:大手家具販売店C社の決算書分析 各指標の確認をした後で、もう一社(大手家具販売店C社)の分析と評価をしてみることで更に理解が 深まりました。財務的には問題もなく、過去からの儲けが蓄積されているこのC社は、これまで高級価格 帯を戦略に進めてきました。しかし低価格帯を売りにする他社の参入により、価格帯を変える動きがみえ ることも、決算書情報から読み解いていきました。 SANNO Institute of Management 京都次世代ものづくり産業雇用創出プロジェクト イノベーション・経営人材育成事業 ■配布資料:業界別経営指標 今回の研修では、様々な業界特性がわかる 指標を整理したシートを配布しました。 それぞれの業界のビジネスモデルが理解できる ようになると、指標の違いや意味についても 正しく理解できるようになり、更にはその指標 を高めるためにどうしたらいいのかを考える ことができるようになります。 ■第 4 会合に向けて 第 4 会合:事前課題シートの配布 設問1.自社を取り巻く外部環境の想定(チャンス/脅威) 設問2.自社の強み弱みについて 設問3.3年後(5年後。ターゲットにしている年次で良い)のあるべき姿とその実現に向けた プロセスの記入 設問4.自社の経営指標の計算 尚、自社の決算書の開示はしませんが、今後の方向性と数字をミックスして目標値を考えて頂き グループでディスカッションすることを想定しています。 またベンチマークしている上場企業についても考えておいてください。 以上 SANNO Institute of Management
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