運動方程式を解く

運動方程式の解き方
力学Ⅰの範囲で遭遇する運動方程式の形は、次の 2 種類である。
1.m
d2x
=α ,
dt 2
ただし、α は定数
この場合は、 t に関する積分を実行することにより、一般解が得られる。
まず、運動方程式の両辺を質量 m で割ると
d 2 x ( t) α
=
dt 2
m
次に、上式の両辺を t で積分すると、
dx ( t) α
= t + C0 ,
dt
m
ただし、C0 は定数
(注)運動方程式の左辺を t で積分するとは、t で微分したら m
(1)
d2x
になるものを考
dt 2
えることであり、運動方程式の右辺を t で積分するとは、t で微分したら α にな
るものを考えることである。
式(1)の両辺をもう一度 t で積分すると、
x ( t) =
1α 2
t + C0 t + C1 , ただし、C1 は定数
2m
定数 C0 , C1 の値を決めるには、初期条件などを用いる。
具体例
x
v0
m
問題 左図に示すように質量 mの物体を t = 0 において鉛直上向きに速度 v0 で
投げ上げた。この物体の運動はどうなるか検討せよ。
解答
t = 0 において物体があった場所を原点とし、鉛直上向きに x 軸を採る。こ
の物体の運動方程式は、物体に作用している力が重力のみで、それは鉛直
下向きに mg であるから、次のようになる。
mg
d2x
m 2 = − mg
dt
上式の両辺をで割り、 t で積分を繰り返すと次式が得られる。
dx ( t)
= − gt + C0
dt
1
x ( t) = − gt 2 + C0 t + C1
2
(2)
(3)
dx
は v0 であるから、式(2)にこの条件を適用すると、C0 = v0 と
dt
なる。また、t = 0 のとき、物体の位置は座標の原点、すなわち x = 0 であるから、この
条件を式(3)に代入すると、C1 = 0 を得る。以上のことから、
t = 0 のとき、速度
1
x ( t) = − gt 2 + v0 t
2
となる。
d2x
= −βx ,
dt 2
2.m
ただし、m, β は正の定数
この場合の運動方程式は、右辺に求めるべき x が含まれていることである。また、特
に注意すべきことは、m 及び β が正であるという条件があることである。m は質量で
あるから常に正であるから、β の正負に注意する必要がある。
両辺を m で割ると、
d2x
β
=− x
2
dt
m
m 及び β は正であるから、ω 0 =
β
とおけば、上式は、
m
d2x
2
= −ω 0 x
2
dt
となる。この形の方程式の解は、一般に次のようになる(なぜこのような解をもつか
は、微分方程式の授業を受けるか、微分方程式に関する本を読まなくては分かるよう
にならない)。
x ( t) = a sin ω 0 t + b cosω 0 t , ただし、a, b は定数
あるいは上式の右辺を合成した、
x ( t) = A sin(ω 0 t + δ ) , ただし、A,δ は定数
あるいは
x ( t) = A cos(ω 0 t + γ ) , ただし、A,γ は定数
この場合の a, b あるいは A,δ、あるいは A,γ は初期条件等を用いて決定する。
具体例
x
k
m
問題 左図に示すように一端を鉛直な剛性壁に固定されたばね定
数 k のコイルばねに繋がれた質量 m の物体がある。この物体をつり
合いの位置から右に x 0 移動させた状態で手をはなした。この物体
の運動はどうなるか調べよ。
解答
この物体の運動方程式は、
m
d2x
= − kx
dt 2
と書ける。両辺を m で割り、ω 0 =
k
と置けば、上の運動方程式は次のように書き表
m
せる。
d2x
2
= −ω 0 x
2
dt
この場合の解は、
x ( t) = a sin ω 0 t + b cosω 0 t
(4)
と書ける。次に定数 a, b の決定を試みる。問題に記された条件から、手をはなしたと
きを t = 0 とすれば、
t = 0 のとき、x = x 0
dx
t = 0 のとき、 = 0
dt
(5)
(6)
が成立しなければならない。式(4)に(5)の条件を代入すると、b = x 0 をえる。式
(4)を t で微分すると、
dx ( t)
= aω 0 cosω 0 t − bω 0 sin ω 0 t
dt
(7)
となる。式(7)に(6)の条件を代入すると、aω 0 = 0 、すなわち a = 0 を得る(な
ぜなら ω 0 ≠ 0 であるから)。したがって、
x ( t) = x 0 cosω 0 t
を得る。