カクテルの作り方 4

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カクテルの作り方
カクテルの作り方には、シェーク、ステア、ビルド、ブレンドがある。
1.シェーク
シェーカーを使って混ぜ合わせる作り方。比重の差の大きい材料を混ぜたり、度数の
強い酒を飲みやすくするために用いる。
第
3
章
① シェーカーのボディに材料を入れる。
・ベースとなる材料から入れる。
・発泡性の材料は入れない。
② シェーカーのボディに氷を入れる。
・氷が少ないと溶けやすいので、ボディの半分以上入れる。
③ ストレーナー、トップの順にはめ込む。
・ストレーナーとトップは一緒にボディにはめ込まない。
④ シェーカーを振る。
・シェーカーは手ではなく指で持つ。手で持つと手のひらの暖かさで氷が溶けやすく
なるからである。
⑤ シェーカーのトップをはずして、冷えたグラスにカクテルを静かに注ぐ。
・人差し指でストレーナーを押さえながら注ぐ。
⑥ デコレーションをグラスに飾る。
2.ステア
ミキシンググラスを使ってかき混ぜる作り
方。比重の差の小さい混ざりやすい材料を混ぜ
るときに用いる。
① ミキシンググラスに材料を入れる。
・ベースとなる材料から入れる。
静かにステアしてカクテルを混ぜる
② ミキシンググラスに氷を入れる。
③ バースプーンを使って、素早くミキシング
グラスの中身をかき混ぜる。
・ミキシンググラスはやや傾け、左手で軽く
持つようにする。
・通常は6、7回混ぜるが、発泡性の材料の
ときは、1、2回でよい。
ストレーナを使ってカクテルグラスに注ぐ
カ
ク
テ
ル
の
基
礎
知
識
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第3章 カクテルの基礎知識
④ ストレーナーで氷を抑えながら冷えたグラスに注ぐ。
⑤ デコレーションをグラスに飾る。
3.ビルド
お客様に提供するグラスで作る、もっとも簡単な作り方。材料を入れる順序によって
うまく混ざらない場合があるので、比重の違いなどに注意し、正しい順序で材料を注ぐ
必要がある。
① 使用グラスに直接氷、材料を入れる。
・材料をフロートさせたり、重ねて注いだりするときは、バースプーンの背を使い静
かに注ぐ。
② バースプーンでステアする。
・発泡性の材料を使う場合は、炭酸が抜けすぎないようにステアの回数は1、2回で
よい。
4.ブレンド
ブレンダー(ミキサー)を使って強い力で混ぜるやり方。フローズンカクテルやフル
ーツを混ぜ込むカクテルなどを作るときに使われる。
① ブレンダーのカップに氷、材料を入れる。
② 様子を見ながら、ブレンダーを回転させて、材料を混ぜる。
③ グラスに注ぐ。
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カクテルの種類
1.ショートドリンクとロングドリンク
カクテルは大別して、ショートドリンクとロングドリンクに分けられる。
ショートドリンクは、シェークやステアで材料を混ぜた後、カクテルグラスなど足の付
いたグラスに注ぐ。少量を短時間で飲むカクテルである。
ロングドリンクは、シェークやステアで材料をよく混ぜた後に、氷の入ったタンブラ
ーやコリンズグラスのような大型のグラスに注ぎ、ソーダなどで満たして供するものが
多い。量も多く、時間をかけて楽しみながら飲むカクテルがある。
2.ロングドリンクの種類
ロングドリンクは、スタイルによってさらに次のように分類される。
(1)フィズ(Fizz)
ジンなどの蒸留酒をベースに、レモンジュースや砂糖などの甘酸味を加えてシェー
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クし、大型のグラスに注いでソーダで割る。名前の由来は、炭酸水をグラスに注いだ
ときのシューという擬声語をFizzというところからきている。フィズは日本でもショ
ートカクテルと並んでよく知られている飲物であり、全部で約70もの種類がある。
ジンフィズが、最もポピュラーで、他にカカオフィズ、ブランデーフィズ、デュボ
ネフィズなどがある。
(2)コリンズ(Collins)
イギリス生まれのフィズによく似たロングドリンクで、コリンズという名前は考案
者であるジョン・コリンズの名前からきている。フィズ同様ジンがベースとなること
が多いが、ウイスキーやブランデー、ラムなども使われる。ベースにレモンジュース、
砂糖、氷を加えてよくかき混ぜ、ロングコリンズグラスに注ぎソーダで満たす。本来、
シェークはしないが、近頃ではシェークする飲み方もある。
ジョンコリンズ、トムコリンズ、ラムコリンズなどが代表的なコリンズである。
(3)サワー(Sour)
蒸留酒にレモンジュースや砂糖などの酸味と甘味を加えてシェークし、サワーグラ
スに注ぐ。少量のソーダ水を加えることもある。サワーとは「酸っぱい」という意味
からきている。
ウイスキーサワー、ブランデーサワー、ジンサワーなどが代表的。
(4)クーラー(Cooler)
蒸留酒やワインをベースにレモンジュースやライムジュースなどの柑橘系ジュース
と砂糖を加え、ソーダまたはジンジャーエールで割って作る。ノンアルコールのもの
もある。
代表的なものとしてはブルドッグクーラー、リムゼンクーラー、デュボネクーラー、
ワインクーラーなどがある。
(5)スリング(Sling)
ブランデーやジンなどの蒸留酒にレモンジュース、砂糖などで甘酸味を加えてシェ
ークし、中型のタンブラーに注いで氷を2∼3個入れ、水またはソーダで割る。グレ
ナデンシロップやチェリーブランデーなどを甘味として使うこともある。
ブランデースリング、ジンスリング、シンガポールスリングなどが代表的。
(6)コブラー(Cobbler)
蒸留酒やワインをベースにジュースやシロップを加え、クラッシュドアイスを詰め
た大型のタンブラーに注ぐ。フルーツでデコレーションしてストローを添えて供する、
清涼感たっぷりの飲物である。
ブランデーコブラー、クラレットコブラーなどがある。
(7)その他
① トディー(Toddy)
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章
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礎
知
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第3章 カクテルの基礎知識
HotとColdとがある。大型のタンブラーもしくはロックグラス内に角砂糖を入れ
少量の水で溶かし、ベースの酒と水または湯を添えて供する。お客様は好みの量だ
け水または湯を注ぎ、レモンスライスを入れナツメグを振りかける。
② エッグノッグ(Egg Nog)
蒸留酒に卵とミルク、砂糖を加え、よくかき混ぜたもの。ノンアルコールのもの
もある。
③ ハイボール(High-Ball)
蒸留酒をソーダ、水、ジンジャーエールなどで割ったもの。
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カクテル関係用語
(1)フラッペ(Frappe)
クラッシュド・アイスを盛ったグラスに直接リキュールなどを注ぐスタイル、また
は、材料とクラッシュド・アイスをシェークし一緒にグラスに注ぐスタイルがある。
フラッペは「氷で冷やした」という意味がある。
(2)シングル(Single)とダブル(Double)
シングルは一般的に30ml。メジャーカップの小さい方がこの分量である。ダブル
は倍の60mlである。シングルはバーマンにとって重要な基準量であるから、正確な
目測ができるように体得しなければならない。
(3)フィンガー(Finger)
8オンスタンブラーの下部に指を横にあてたときの指1本がシングル、2本がダブ
ルを表わす。
(4)ボディ(Body)
ワインの評価によく使われる言葉で、このワインはLight Bodyだといえばソフトだ
という意味であり、Rich Bodyといわれればコクのあるワインだという意味になる。
濃さや、コクのあるなしなどに使用される。
(5)チェイサー(Chaser)
強い酒をストレートで飲むとき、サイドドリンクとして口直しに飲むもので水やソ
ーダの類である。
(6)ダッシュ(Dash)とドロップ(Drop)
ビターズボトルをひと振りしたときの量がダッシュで、1/6 Tea Spoonの量。1
ドロップは1滴。1ドロップ、2ドロップスと使う。
(7)ハーフアンドハーフ(Half & Half)
異なった2種類の材料を半分半分に使用する場合に使う。例えば、ヴェルモットの
ドライとスイートを1/2ずつというときに用いる。
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(8)レシピ(Receipe)
材料と分量、およびその作成順序を表わした処方をいう。
(9)スノースタイル(Snow Style)
グラスの縁をレモンジュースなどで濡らし、砂糖や塩をまぶし付けること。グラス
を逆さまにしてつける。フロスト(Frost)ともいわれる。
(10)ツイスト(Twist)
レモンで説明すると、長目に切ったレモンピール(皮)を指先でひねるようにしぼ
る。そのままグラスに入れてデコレーションしたものをツイストレモンと呼んでいる。
(11)スパイラル(Spiral)
ラセンの意味で、レモンピールなどをラセン状に切って使う。
(12)スライス(Slice)
薄切りの意味。角に切るとSquare-Slice、だ円形に切るとOval Slice、やや厚目の薄
切りはRich Sliceという。
(13)フロート(Float)
材料の比重の差を利用して混じらないように浮かせること。
(14)プルーフ(Proof)
アルコール含有量の表示単位。アメリカンプルーフとブリティッシュプルーフがあ
る。日本ではプルーフというと前者で、日本の純アルコール100度=200プルーフとする。
したがって、アメリカの86プルーフのウイスキーは、日本の43度ということになる。
デコレーション
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デコレーションは、カクテルに色彩の変化と香りを与える脇役である。デコレーショ
ンを付けるか、付けないかによって、カクテル名が変わるほどであるから、むやみに飾
ってはいけない。指定されていないデコレーションを飾ると、そのカクテルのよさがな
くなってしまうこともある。基本的にはレシピにそったデコレーションをすることが望
ましい。
(1)デコレーションの材料
よく使われるのは、チェリー、オリーブ、レモン、オレンジ、パイナップルなどの
果実である。他にセロリ、キュウリ、タマネギ(パールオニオン)などの野菜やラン
の花、ミントの葉、すりおろしたナツメグなどさまざまである。
また、
「スノースタイル」は塩や砂糖を使ったものとして有名である。
(2)デコレーションの種類
デコレーションの飾り方で、バーテンダーのセンスがうかがえる。飾り方の例を見
ても、同じ材料でもいろいろな飾り方があることがわかる。いずれにしても、新鮮な
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第3章 カクテルの基礎知識
材料を美しく飾ることが大切である。
① チェリーやオリーブは、カクテルピンを刺す。
② クシ形のオレンジに切り込みを入れ、グラスの縁にかける。
③ チェリーをカクテルピンの中央まで通し、グラスの上で橋渡しする。
④ レモンスライスの厚切りをリキュールグラスに乗せ、その上に砂糖を盛る。
⑤ グラスの縁をレモンスライスでぬらし、砂糖や塩をまぶす。(スノースタイル)
⑥ レモンの皮を、かつらむきにしたものをグラスの縁にかける。
⑦ クシ形のレモンとチェリーをカクテルピンで刺し通す。
⑧ 厚目のレモンスライスをグラスの縁にかける。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧