<4>ノート指導について 1.入門期におけるノート指導 入学したばかりの1年生にとって、まず最初に学ぶ文字言語は平仮名である。国語において最 も基礎・基本であり、しかも最も重要な平仮名を入門期に確実に身に付けさせることが第一だろ う。そのためにノートは練習帳としての役割を持つ。教師の板書を見ながら真似て書いたり教科 書等のお手本を視写したり、慣れてくると聴写したりと、国語の学習には必ず「書く」という作 業が付いてくる。平仮名がある程度定着したら、次は表記上の約束事を学習する。拗音、撥音、 促音、長音等の表記や助詞の使い方と共にその表記の仕方を視写聴写を通して理解することで語 句や文、文章を読んだり書いたりできるようになる。(句読点の使い方も同時に学習する。) 入門期のノートは非常にマス目が大きく、そのような文字表記の練習には適切なものと言える。 しかし、書き写すだけの学習に終始するのではなく自分の考えを自由に表現する場としてのノ ートも意識させていかなければならない。例えば登場人物の気持ちを想像して1、2文で書くと か挿し絵や写真を見てわかったことを書く等、自分だけのノート作りの楽しさをこの時期から味 わわせていきたい。 <1年生のノート指導の流れ> 入門期 → 平仮名の視写 聴写による理 解と定着 → → 文字言語表記上の 約束の理解と定着 → → → 学年末 語句や文、文章の視写、聴写 による理解と定着 1行日記や感想、想像した ことやわかったことを文や 文章に表現する学習 片仮名の視写聴写 による理解と定着 漢字の視写聴写による理解と定着 文字言語の定着を図るためには、一定の期間だけ取り立てて学習するのでは不足である。常に 反復学習を念頭に置き指導していく。あまり表記だけにこだわりすぎると、子どもの自由な発想 を阻害するという考えも当然出てくるだろう。しかし、学年が上がるうちに覚えるだろうとこの 部分を疎かにすると、6年生になっても間違う子どもが実際見られるのである。助詞の表記を間 違ったり片仮名で書くべき言葉を平仮名で書いたり、ときには平仮名さえも書き間違える子ども も存在する。 ただ書き写すだけの学習は、入門期(1年生)にとっては退屈なものになりがちだが、指導方 法を工夫することで楽しくしかも繰り返し学ぶことができるような学習計画を設定していく必要 があるだろう。その方法の一つとして絵や図を描いたりしながら文や文章を書くことのできるワ ークシートの活用等も考えていきたい。 -1- 2.2年生のノート指導 2年生になると、<言語事項>に関わる平仮名や片仮名、漢字等をある程度自由に使えるよう になってくる。また、短い文章も書けるようになってくるだろう。 しかし、技能としての「書く」力が十分定着しているわけではないので視写、聴写といった学 習活動は継続していくべきであろう。 また、自分の感想や考えを書く機会が様々な場面で増加 してくる。見学や観察の際のメモ書きから書写のような字体に注意して忠実に書こうとするもの まで書く形態も様々である。高学年であれば、例えばメモするとき、まとめながら書くとか大事 なところだけ抽出して書くといった技能も身に付いてくるだろうし、速く書くためには後で読め ないくらい汚い字というなら論外だが、そうでなければ多少字が乱れても良しとする。ただ、低 学年の場合は「丁寧に書くこと」を主として指導していく方がいいだろう。1.2年生できちんと 字形や表記の仕方を身に付けることで後々の「読む」「書く」活動が円滑に進められる。そして丁寧 に書く活動をくり返す中で、次第に時間を意識させ「書く」スピードを付けていく。同時に、速 さばかりに気を取られないよう机間指導をする。学校生活にもすっかり慣れた2年生の後半ぐら いには、かなり書くようになるのではないか。各学年で1分間に何字書ければいいかについて、 かなり以前だが青木幹男氏の講演の中で次のような目安を提示していた。 視写するときの筆速 低学年…15~20字 中学年…20~25字 高学年…25~30字 これは視写の場合の目安だが、何かの折にやらせてみてもいいだろう。 入門期を経て、言語に関する基本な技能を身に付けた2年生では、練習帳としてのノートの役 割だけでなく調べたことや教師の板書等を書き写す記録帳としてのノート、自分の考えや感想を 自分の言葉で書き表す書き込み帳としてのノートといった本来のノートの用途を知り、身に付け る段階に入っていく。「書く」活動が「読む」活動と密接につながっていく段階に入るというこ とである。その導入期である故、子ども達が自分だけのノート作りを楽しみながら自ら学習を進 めていけるよう教師は常に書いた内容に対する賞賛や助言を与え続けていくべきである。 ノートの役割 (1)練習帳として…平仮名、片仮名、語句、文字言語の表記上の約束、漢字、文、 文章等の書き取りや練習 (2)記録帳として…視写、聴写、板書、語句の意味、学習のめあて、自己評価等 の記録 (3)書き込み帳として…絵や図、感想、意見、まとめ等自分だけのノート作り 教師側で意図的に学習を方向づける際、ノートの代わりにワークシートを活用することもある。 「書く」活動の中では、ノート指導と同様に扱っていきたい。ただし使用する場合には、何を読 み取るために、どんなことを書き込ませるのか明確な答えを持っていないと子ども達の読み取り に混乱を招くことになるので、その作成には十分配慮したい。 -2-
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