メチレンブルー - 日本中毒情報センター

公益財団法人 日本中毒情報センター 医師向け中毒情報 解毒剤
【メチレンブルー】Ver.2.02
公益財団法人 日本中毒情報センター
医師向け中毒情報
解毒剤
メチレンブルー
0.概要
0- 1 臨床適応の基準(中毒起因物質) *
ア ニリ ン、ニト ロ ベンゼ ン、アニリ ン系 除草剤( D CPA 他)等、薬剤 性 のメト ヘモ グ ロ
ビ ン血 症
・使 用開始 基準
メ トヘモ グロ ビン濃 度 30%以上 の場 合(無 症状 でも投 与す る)。12)
メ トヘモ グロ ビン血 症に 起因す る低 酸素血 症に よる症 候( 精神症 状、頻脈、呼 吸 困 難 、
胸 痛等) が出 現した 場合 。13)
類 似薬 との比 較( 有用性 )
・ア スコル ビン 酸:先 天性 のメト ヘモ グロビ ン血 症にア スコ ルビン 酸の 経口投 与は
有効で ある が薬剤 性の メトヘ モグ ロビン 血症 に対す る効 果は確 立さ れてい ない 。
・リ ボフラ ビン :NADPH-メ トヘモ グロ ビン還 元酵 素を活 性化 し、先 天性 メトヘ モグ ロビ
ン血症 の治 療に有 効と される 。メ チレン ブル ーやア スコ ルビン 酸投 与に耐 えら れな
い患者 で選 択すべ きと される が、薬剤性 メト ヘモグ ロビ ン血症 に対 する有 効性 は不
明であ る。
3,17)
0- 2
品名(国内流通の商品名、または院内製剤化+剤形の表示)
メ トヘモ グロ ビン血 症治 療用の メチ レンブ ルー はわが 国で は医薬 品と して市 販さ れ
て いない ため 、試薬(特級 )のメ チレ ンブル ーを 用いて 院内 製剤化 する 必要が あり 、医
師 の責任 の下 に使用 する 。
メチレ ンブ ルー(R)(和 光純薬 工業 (株) 等)
9)
0- 3 用法・用量 *
初回 投与 :メチ レン ブルー 1~2mg/kg(1%メチレ ンブ ルー液 0.1~0.2mL/kg)を 5 分
以上 かけ てゆっ くり 静注。 14)
追加 投与 :効果 が不 十分な 場合 は、1 時間 後に同 量を 反復投 与す る。( 通常 は 1 時 間
以内 に症 状の改 善が みられ る。 12,15,18)
通常 最大 投与量 :7mg/kg ま で。 12)
0- 4 使用上の注意とその理由 * 15,18)
・ 7mg/kg 以上 の大 量投与 では 、メト ヘモ グロビ ン血 症や溶 血性 貧血を 引き 起こす 。
(小 児では さら に少量 でも 引き起 こす ことが ある )。
・ 皮下 注は、 注射 部位に 壊死 性膿瘍 を形 成する ので 禁忌で ある 。2)
0- 5 解毒機序(原理) *
メ チレ ンブル ーは 赤血球 内で 、NADPH 依 存メト ヘモ グロビ ン還 元酵素 系に より 、赤 血 球 中
のメ トヘ モグロ ビン を還元 して ヘモグ ロビ ンに戻 す( NADPH の存 在下に NADPH-フ ラビ ン還
元 酵 素 お よ び グ ル タ チ オ ン 還 元 酵 素 に よ り NAD と 結 合 し て ロ イ コ メ チ レ ン ブ ル ー を 生 成 し 、
ロイ コメ チレン ブル ーがメ トヘ モグロ ビン をヘモ グロ ビンに 還元 する)。5,16,19)
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0- 6
その他
そ の他の 治療 法
交換輸 血: 症状が ある 患者で メト ヘモグ ロビ ン血症 が進 行性の 場合 は、交 換輸
血を実 施す べきで ある 。
1,18)
メトヘ モグ ロビン 濃度 が 70%以上 の場合 は死 亡率が 高い ので、70%
に近い 場合 は交換 輸血 を考慮 すべ きであ る。
1,18)
酸素投 与: チアノ ーゼ のある 患者 にはす べて 酸素投 与を 行うが 、メ トヘモ グロ
ビン血 症に 伴うチ アノ ーゼは 酸素 療法で は改 善され ない 。 18)
高圧酸 素療 法:メ トヘ モグロ ビン 濃度が 30%以上で 症状 がある 患者 では、補助
療 法と して高 圧酸 素療法 が勧 められ る。
1,18)
動 物で メトヘ モグ ロビン 血症 による 死亡 率を低 下さ せたと の報
告 があ る。
1,18)
1.名称
1- 1 一 般名: メチ レンブ ルー Methylene blue
1- 2 化 学名: 3,7-Bis(dimethylamino)phenothiazin-5-ium chloride
1- 3 別 名:C.I. Basic blue 9
3,7-Bis(dimethylamino)phenazathionium chloride
Methylene blue
Methylthionine chloride
Methylthionium chloride
Tetramethylthionine chloride
1- 4 C AS登 録番 号:7220-79-3(3 水和 物)、61-73-4(無水 物)
1- 5 代 表的商 品名 :メチ レン ブルー (試 薬特級 )(和 光純薬 工業 (株)等 )
1- 6 そ の他: (規 格)JIS K 8897
試 薬メチ レン ブルー は 1992 年 JIS 規 格でメ チレ ンブル ー3 水和物 に規 定が改 正
さ れ、1976 年 規格の 2 水 和物、4 水和 物及び 生体 染色用 が削 除され てい る。
2.適応
2- 1 適 応する 中毒 起因物 質名
薬 剤性の メト ヘモグ ロビ ン血症
1,18)
薬剤性 のメ トヘモ グロ ビン血 症を 起こす もの には、ヘム を直接 酸化 する薬 剤と
酸素の 存在 下で自 己酸 化を生 じて 過酸化 水素 やフリ ーラ ジカル を形 成して 、間
接的に ヘム を酸化 する ものが ある 。直接 型で は、亜 硝酸 イオン 、フ ェリシ アン イ
オン、キノ ン体(特に ナフト キノ ン)、ア ロキ サンや メチ レンブ ルー 等の酸 化還 元
電位の 高い 色素が あり 、間接 型で はアリ ル化 合物、アミ ノ化合 物、ニトロ 化合 物、
アニリ ン、アセト アニ リド、ニト ロベン ゼン 、ニト ロト ルエン 、ス ルフォ ンア ミド、
フェニ ルヒ ドラジ ン、アスコ ルビ ン酸等 が知 られて いる 。
11)
2- 2
使 用開始 の基 準
明 確な基 準は なく、 文献 により 多少 の異同 があ る。
20)
文 献から の引 用とし て、 20)に 以下 4 つが 記載 されて いる 。
・症状 があ り MetHb 濃 度が 20%以 上であ る場 合、あ るい はわず かで も酸素 運搬 能
が低 下す ること によ り悪影 響が 生じる 場合(既存 の貧 血、う っ血 性心不 全、狭 心
症な ど)
・低 酸素 血 症の症 状や 徴候を 示す(呼 吸困 難 、錯 乱 、胸 痛など )か 、あ るい は 30%
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以上 の MetHb 濃 度を 示す MetHb 血症の 患者
・MetHb 濃 度 30~ 50% (第 2 度) の場合 は経 口投与 し、 50%以 上( 第 3、 第 4 度 )
の場 合は 静脈投 与を 行う
・貧 血が強 かった り 、心疾患 や呼 吸器疾 患な どのた めに MetHb 血症 による 臨床 症 状
が出 現し ている 場合 、ある いは MetHb 濃度 が 30% 以上 の場合
注 意:メ トヘ モグロ ビン 血症以 外で もチア ノー ゼを示 すこ とは多 いの で、正 しい 診断
が 必要
[参 考]
メ トヘモ グロ ビン濃 度と 臨床症 状は よく相 関す る。
1,18)
15~20%: チアノ ーゼ 、チョ コレ ートブ ラウ ン色血 液、通常、無症 状。
20~45%: 頭痛、嗜眠、めまい 、疲 労感、失神、呼吸困 難。
45~55%: 中枢神 経抑 制の増 強。
55~70%: 昏睡、痙攣、不整脈 、シ ョック 。
>70%: 治療し ない 場合、死亡 率は高 い。
2- 3
効 果が疑 わし い症例
1,4,18)
・先 天性の メト ヘモグ ロビ ン血症 には メチレ ンブ ルーを 投与 しても 有効 ではな い。
(G-6-P 脱 水素 酵素欠 損者 、NADH メト ヘモグ ロビ ン還元 酵素 欠損者 、NADPH メ
ト ヘモグ ロビ ン還元 酵素 欠損者 、ヘ モグロ ビン M 症を 含む 異常ヘ モグ ロビン 等)
NADPH は グル コース -6-リン酸 脱水 素酵素 (G-6-PD)を 介し てブド ウ糖 の嫌気 的解
糖 系の 1 つで あるペ ント ースリ ン酸 径路か ら産 生され るの で、G-6-P 脱 水素酵 素
欠 損者で はメ チレン ブル ーは効 果を 示さな い。
・ス ルフヘ モグ ロビン 血症 がある 場合 。
・消 化管か らメ トヘモ グロ ビン血 症の 起因物 質が 吸収さ れ続 け、メ トヘ モグロ ビン
生 成が続 いて いる場 合。
3.薬効・薬理作用
3- 1 解 毒作用 機序
・赤 血球内 のヘ モグロ ビン (Hb)中 の 2 価の鉄 イオ ン(Fe2+)が 3 価の 鉄イ オン
(Fe3+)に 酸化 されて メト ヘモグ ロビ ン(Met-Hb)となる と、酸素結 合能 を失い 、各
生 体組織 への 酸素運 搬・供給が でき なくな る。ヘモグ ロビ ンは正 常時 でも 1 日あ た
り 約 3%が メト ヘモグ ロビ ンに変 わっ ている が、生体に はこ れを還 元す る機構
(NADH-メ トヘ モグロ ビン 還元酵 素及 び NADPH-メ トヘモ グロ ビン還 元酵 素)が
あ り、制 御機 構とし て働 くため 、生 理的に はメ トヘモ グロ ビンは 全ヘ モグロ ビン の
1%以下し か存 在しな い。これが 1~2%以上 にな った場 合メ トヘモ グロ ビン血 症と 呼 ぶ 。
・メ チレン ブル ーは酸 化還 元電位 が非 常に高 く、低用量 (1~ 2mg/kg)で は NADPH
の 存在下 に赤 血球中 のメ トヘモ グロ ビンを 還元 して正 常ヘ モグロ ビン に戻す 。メ チレ
ン ブルー は速 やかに 無色 型(ロ イコ メチレ ンブ ルー)に還 元され 、メ トヘモ グロ ビン
(Fe3+)と 反応 し、正 常ヘ モグロ ビン (Fe2+)とメ チレン ブル ーを生 じる 。
1,5,7,18,19)
3- 2
そ の他の 薬理 作用
・メ トヘモ グロ ビン生 成作 用:赤血 球 外に出 たヘ モグロ ビン に対し てメ トヘモ グロ ビ ン
生 成作 用を示 す。大量で は酸 素が過 剰の 過酸化 水素 に還
元 され、細胞膜 脂質 とヘモ グロ ビンを 酸化 し、溶 血及 びハ
ンイ ツ小体 の生 成を引 き起 こすと 考え られて いる 。
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1,18)
・セ ロトニ ン遊 離作用 :神 経単位 及び 血小板 部位 からセ ロト ニンを 遊離 し、注 射部
位 、消化 管、性 器・泌 尿器 管を刺 激す る。皮 下注 投与し た場 合
は 組織の 壊死 を起こ すこ とがあ る。
1,18)
・神 経染色 作用 :細い 神経 組織が 筋肉 組織に 比べ 酸素貯 留が 高く、ロイ コメチ レン
ブル ーの 酸化が 他よ り高度 に行 なわれ る。適用部 位塗 布で、神経 細
枝部 では ロイコ メチ レンブ ルー がメチ レン ブルー へと 酸化さ れ青
色を し、周囲の 組織 と識別 が容 易とな る。
6)
4.入手法・調整法
4- 1 製 造会社 及び 連絡先
和光純 薬工 業(株)
第一化 成工 業(株)
大和化 工(株)
4- 2
6)
調 整法( 非市 販品の 場合 )
メ トヘモ グロ ビン血 症治 療用の メチ レンブ ルー はわが 国で は医薬 品と して市 販さ れ
て いない ため 、試薬(特級 )のメ チレ ンブル ーを 用いて 院内 製剤化 する 必要が あり 、医
師 の責任 の下 に使用 する 。やむ をえ ない場 合は 簡便法 とし て次の よう に調整 する 。試
薬 (特級)を生 理的食 塩水 で 1%溶 液に 溶解し 、オ ートク レー ブまた はろ 過によ り殺 菌 す
る。
5.使用法
5- 1 用 法・用 量
5- 1- 1 用法 ・用 量
1,4,18)
・通 常、メ チレ ンブル ーを 生理的 食塩 水に溶 解し た 1%溶 液(10mg/mL)を 用い、1~
2mg/kg(0.1~ 0.2mL/kg)をゆっ くり 静注す る。
・効 果が不 十分 な場合 は、1 時間後 に同 量を反 復投 与する 。
ア ニリン 中毒 では活 性代 謝物を 生じ 、メト ヘモ グロビ ン生 成が持 続す ること があ
る ので、反復 投与が 必要 となる こと がある 。
但 し、大 量で は逆に メト ヘモグ ロビ ン血症 を起 こすの で、まれに 例外 はある が、総
投 与量は 7mg/kg を越 えな いのが 望ま しい。
・メ チレン ブル ー投与 の準 備をし てい る間、チア ノーゼ のあ る患者 には 酸素を 投与 す
る。
5- 1- 2 小児 用量
1,18)
基 本的に 成人 と同量 。
但 し、小 児で は成人 に比 べ低用 量で も溶血 等の 中毒症 状が 起こる こと がある 。
5- 1- 3 高齢 者用 量
未 ファイ ル
5- 1- 4 透析 時の 補正投 与量
未 ファイ ル
5- 1- 5 特殊 患者 群に対 する 注意
貧 血のあ る患 者、心 疾患 や肺疾 患の ある患 者で は、同 じメ トヘモ グロ ビン濃 度で も
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症 状が増 悪す る。
1,18)
5- 1- 6 特別 な投 与法
経 口投与 法: メチレ ンブ ルー1~2mg/kg を 静注 した場 合と 同じ血 中濃 度を得 る
には、3~5mg/kg を 経口 投与す る必 要があ る。
但し、経口 投与で は最 高血中 濃度 到達に 2~ 3 時間 を要 し、速 効性 で
はない 。
1,18)
5- 2
作 用発現 時間 、作用 持続 時間
メ トヘモ グロ ビン血 症の 診断が 正し ければ 、メ チレン ブル ー投与 後、通常、1 時間
以 内に症 状の 改善が みら れる。
静 注後、通常、1 時間 以内 にメト ヘモ グロビ ン値 は半減 する 。メト ヘモ グロビ ン値
が 70%以 上の 場合、メチ レンブ ルー 投与に より メトヘ モグ ロビン の半 減期は 平均
15~20 時 間か ら 40~ 90 分に減 少す る。
1,18)
5- 3
効 果判定 の基 準
チ アノー ゼ等 の臨床 症状 の改善 が得 られた 場合
メ トヘモ グロ ビン濃 度の 低下が 確認 された 場合
5- 4
使 用中止 基準 (最大 使用 投与量 、投 与期間 等)
臨 床症状 の改 善やメ トヘ モグロ ビン 濃度の 低下 がみら れ、効果が 確認 された 場合
は 使用を 中止 する。
総 投与量 は 7mg/kg を 越え ないの が望 ましい 。
1,18)
15mg/kg 以上 では溶 血を 起こす こと がある (小 児では もっ と少量 でも 起こ
る ことが ある )。
1,18)
6.使用上の注意
6- 1 一 般的注 意と その理 由
1,18)
・チ アノー ゼは メトヘ モグ ロビン 血症 に特異 的な もので はな く、貧 血や 心・肺 疾患 な
ど がある と増 悪する ので 、正し い診 断が重 要と なる。
・メ チレン ブル ーを大 量投 与する と、逆にメ トヘ モグロ ビン 血症を 起こ すこと があ る。
・メ チレン ブル ーは皮 下注 投与し ては いけな い(神経単 位及 び血小 板部 位から セロ
ト ニンを 遊離 し刺激 する 結果、注射 部位に 壊死 性膿瘍 を形 成する こと がある ため )。
6- 2
禁 忌とそ の理 由
1,4,5,18,19)
・G-6-P 脱 水素 酵素欠 損者
NADPH メ ト ヘモグ ロビ ン還元 酵素 が働か ない ためメ チレ ンブル ーが ロイコ メチ レ ン
ブルー に還 元され ず、メチレ ンブ ルーの 効果 が発揮 され ない。更に メチレ ンブ ルー
自体の メト ヘモグ ロビ ン生成 作用 によっ て、遷延性 に溶 血を起 こす ことが ある た
め。
・一 酸化炭 素中 毒
血液の 酸素 運搬能 を更 に低下 させ るため 。
・塩 素酸塩 、臭 素酸塩 中毒
メチレ ンブ ルーは 赤血 球内の NADPH メト ヘモ グロビ ン還 元酵素 を介 して作 用
を発揮 する が塩素 酸塩 による メト ヘモグ ロビ ンは主 に溶 血によ り赤 血球外 に出
たヘモ グロ ビンが 酸化 された もの による ため 有効で はな い。更 に塩 素酸塩 には
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NADPH 産生 のもと とな る G-6-P 脱 水素酵 素を 不活化 する 作用が ある ため。
・シ アン化 物中 毒
メチレ ンブ ルーは メト ヘモグ ロビ ンと結 合し たシア ンを 遊離さ せ、毒性を 生じ
やすく する ため。
・過 敏症患 者
6- 3
6- 4
6- 5
6- 6
慎 重投与 とそ の理由
腎 障害の ある 場合: G-6-P 脱水 素酵 素は正 常で あるが 腎不 全のあ る患 者でメ トヘ
モグ ロビン 血症 (26%)の治 療にメ チレ ンブル ー1mg/kg を 静
注後 、溶血 性貧 血が報 告さ れてい る。
副 作用
1,2,18)
・経 口投与 後、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、胃炎、排尿 障害が 起こ ること があ る。大 量経
口 投与時 には 排尿痛 と同 様、陰 嚢・鼠 径部の 灼け る感じ を伴 う。
・静 注投与 によ り、重 篤な 悪心、腹痛、口腔の 灼け るよう な感 じ、胃 のあ たたか い感 じが
起 こる。
・大 量投与 する と、逆 にメ トヘモ グロ ビン血 症を 起こす こと があり 、チ アノー ゼ、頭
痛 、嗜眠、めま い、発 汗、疲 労感、失神、呼吸困 難、中枢抑 制、痙攣、不整 脈、シ ョッ ク、
溶 血性貧 血等 が出現 する 。
・皮 下注投 与す ると、注射 部位に 壊死 性膿瘍 を形 成する こと がある 。
・皮 膚、尿、糞、唾液、粘膜 などを ブル ー色に する ことが ある 。
高 齢者へ の使 用に関 する 注意
未 ファイ ル
妊 婦・授 乳婦 への使 用に 関する 注意
未 ファイ ル
6- 7
小 児への 使用 に関す る注 意
新 生児・乳児 は下記 の理 由によ りメ トヘモ グロ ビン血 症を 起こし やす いので 注意
が 必要で ある 。
1,5,10,18,19)
・胎児ヘ モグ ロビン は酸 化され やす い。
・生後 4 カ月 頃まで は、NADH-メ トヘ モグロ ビン 還元酵 素の 活性が 成人 の 50%程度 と 低
い
・乳児 は胃酸 分泌 が不十 分で 胃内 pH が 高く、上部 消化管 に硝 酸還元 菌が 棲み、
硝酸塩 が亜 硝酸塩 に還 元され やす い。
6- 8
相 互作用 (併 用療法 時の 注意、 食物 ・嗜好 品等 による 影響 等)
未 ファイ ル
6- 9
過 量投与 時・ 長期投 与時
大 量では 逆に メトヘ モグ ロビン 血症 を起こ す。
15mg/kg 以上 では溶 血を 起こす こと がある (小 児では もっ と少量 でも 起こる こと があ
る )。
6-10
そ の他
・メ トヘモ グロ ビン血 症の 正確な 診断 には、CO オ キシメ ータ ーなど でメ トヘモ グロ ビ ン
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濃 度を測 定す る必要 があ る。メ トヘ モグロ ビン は内因 性の メトヘ モグ ロビン 還元 酵素
に より還 元さ れ、経 時的 に低下 する ので、採血 後速や かに (数時 間以 内に)検査 を行う 。
1,18)
・メ トヘモ グロ ビン血 症の 簡易検 査法
ろ紙滴 下法 :血液 をろ 紙に滴 下す ると、メト ヘモグ ロビ ン濃度 が 15%以上 の場
合、チョ コレー トブ ラウン 色と なり、正常 血と比 較で き、ス クリ ー
ニン グテ ストと して 応用で きる 。
この 方法 は 25%以上 の濃度 で最 も信頼 性が あり、12~14%では 信
頼性 に欠 ける。
1,18)
酸素通 気法 :静脈 血標 本に 100%酸 素を通 気す ると、正常 ヘモグ ロビ ンの場 合、
鮮紅 色に 変わる が、メトヘ モグ ロビン 血で は変化 がな い。 1,18)
シアン 化カ リウム 法: イオン 化し ていな い水 で 100 倍に 希釈し た静 脈血に シア
ン化カ リウ ムの結 晶を 加える と、有意な メト ヘモグ ロビ
ン濃度 を示 す場合 、シ アノヘ モグ ロビン の生 成に伴 い鮮
やかな ピン ク色に 変わ る。
1,18)
・ア ニリン は有 毒中間 代謝 物 フ ェニ ルヒド ロキ シルア ミン を生じ 、メ チレン ブル ー
の 赤血球 への 取り込 みを 競合的 に阻 害する こと がある ので 、効果 が乏 しくな るこ
と がある 。 10)
・メ トヘモ グロ ビン生 成の 感受性 は個 人差が 大き い。
1,18)
7.毒性
7- 1 急 性毒性
1,7,18)
メ チレン ブル ーのヒ トで の最小 中毒 量、最 小致 死量は 確立 されて いな い。
4mg/kg 以 上の 経口投 与で 中毒症 状が 出現す る可 能性が ある 。
1,18)
メ チレン ブル ー3 水 和物:毒性デ ータ なし
7)
メ チレン ブル ー無水 物:
7)
経路不 明ヒ ト;TDLo: 15mg/kg(RTECS)
経口イ ヌ; LDLo: 500mg/kg(RTECS)
経口ウ サギ ;LDLo:1000mg/kg(RTECS)
静注イ ヌ; LDLo: 50mg/kg(RTECS)
静注ネ コ; LDLo: 41mg/kg(RTECS)
経口ラ ット ;LD50:1180mg/kg(RTECS)
静注ラ ット ;LD50:1250mg/kg(RTECS)
腹腔内 ラッ ト;LD50: 180mg/kg(RTECS)
腹腔内 マウ ス;LD50: 150mg/kg(RTECS)
7- 2
7- 3
7- 4
1,18)
亜 急性毒 性
未 ファイ ル
慢 性毒性
未 ファイ ル
特 殊毒性 (変 異原性 、催 奇形性 等)
変 異原性 及び 繁殖に 対す る悪影 響が 認めら れて いる。
7)
8.体内動態
8- 1 前 臨床試 験
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8- 1- 1 血中 濃度 推移
未 ファイ ル
8- 1- 2 吸収
イ ヌに経 口投 与時の 吸収 率は 10~20%。
8- 1- 3 分布
組 織結合 は高 くなく 、全 身に分 布す る。
ラ ットに 静注 後、3 分 以内 に投与 量の 29.8%が心 臓、肝 臓及 び腎臓 で検 出され た。
分布容 量(イヌ);0.222
8- 1- 4 代謝
赤 血球内 で diphospyridine nucleotide(DPN)によっ て、速やか に無 色型ロ イコ メ
チ レンブ ルー に還元 され る。
8- 1- 5 排泄 (半 減期、蓄積 性)
主 に尿、胆汁 中に無 色型 ロイコ メチ レンブ ルー として 排泄 される 。
8- 2 第 一相臨 床試 験
8- 2- 1 血中 濃度 推移
未 ファイ ル
8- 2- 2 吸収
静 注後は 速や かに組 織に 取り込 まれ る。
消 化管か らは わずか しか 吸収さ れな い。
経口投 与時 の最高 血中 濃度到 達時 間:2~3 時 間
8- 2- 3 分布
分 布容量 :平 均 70.6L(13.7~192.6L)
8- 2- 4 代謝
メ チレン ブル ー10mg を単 回経口 投与 後、投 与量 の 74%(53~ 97%)が 5 日 間に尿
中 に排泄 され たが、この うち約 22%は未変 化体 のメチ レン ブルー で、78%が無 色
型 ロイコ メチ レンブ ルー であっ た。
8- 2- 5 排泄 (半 減期、蓄積 性)
尿 、糞、唾 液が 主な排 泄経 路で、他に 発汗、母乳、胎児循 環及 び胃か らも 排泄さ れ
る 。主に 無色 型ロイ コメ チレン ブル ーとし て排 泄され るが 、未変 化体 メチレ ンブ ル
ー も排泄 され るので 、尿 が青色 とな ること があ る。
排泄 開始 は静注 後 30 分
健常 人に 1%溶液 50ml を静注 時、排泄に 3~ 5 日を 要し た。
排泄 には 24 時間 周期(概日リ ズム )があ り、夜 間は未 変化 体のメ チレ ンブル ー、
日中 は無 色型ロ イコ メチレ ンブ ルーが 多く 排泄さ れる 。
8- 3
臨 床試験
未フ ァイル
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88888-
33333-
1
2
3
4
5
血中 濃度 推移
吸収
分布
代謝
排泄 (半 減期、蓄積 性)
9.物理化学的性質
9- 1 原 薬に関 する 項目
9,18)
9- 1- 1 性状 ・外 観
光 沢のあ る暗 い緑の 結晶 または 結晶 性粉末 であ る。
水 溶液の 吸収 極大は 、波 長 644nm 付 近にあ る。
9- 1- 2 化学 式:
9- 1- 3 分子 式: C16H 18N 3S・C l・3H2O
9- 1- 4 分子 量:373.90
9- 1- 5 構造 式:[図]
N
(CH3)N
2
+
S
Cl
N(CH3)2
9- 1- 6
99999-
9-
溶解 性:エ タノー ルに やや溶 けや すく、水に 溶けに くく 、ジエ チル エーテ ルに ほ
とんど 溶け ない。
1- 7 吸湿 性:該 当資料 なし
1- 8 融点 、沸 点、凝 固点 :該当 資料 なし
1- 9 酸塩 基解 離定数 :該 当資料 なし
1-10 分配 係数 :該当 資料 なし
1-11 その 他の 主な示 性値 :
pH:1%溶 液は pH3~4.5
1,18)
(JIS 規格 値)純 度(乾 燥物換 算):98.5%以 上
水不 溶分 :0.2%以下
乾燥 減量 (105℃ ):14.0~16.0%
強熱 残分 (硫酸 塩): 0.5%以 下
銅(Cu): 0.05%以下
亜鉛 (Zn):0.01%以 下
ひ素 (As):2ppm 以下
鉄(Fe): 0.02%以下
1-12 原薬 の安 定性( 光及 び温度 )
加熱 する と分解 し、NOX、SOX、Cl-の有毒 フュ ームを 発生 する。
8)
9- 2
製 剤に関 する 項目
未 ファイ ル
9- 2- 1 性状 ・外 観
9- 2- 2 製剤 の組 成(原 薬含 量、保 存剤 、賦形 剤、 安定剤 、溶 媒、溶 解補 助剤、 基剤 等)
9- 2- 3 溶解 時の pH、浸 透圧 比、粘 度、 比重、 安定 な pH 域等
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9- 2- 4
9- 2- 5
9- 2- 6
製剤 の安 定性( 光及 び温度 )
他剤 との 配合変 化
その 他
10.取扱い上の注意、包装
10- 1 有 効期限 ・使 用期限
未 ファイ ル
10- 2 貯 法、保 存条 件
遮 光した 気密 容器で 保存 する。
10- 3 包 装
ビ ン詰め (通 常取引 単位 :25g)
11.分析法
11- 1 血 中濃度 測定 法
未 ファイ ル
11- 2 確 認試験 法、 定量法
11- 2- 1 原薬 の確 認試験 法、 定量法
9)
定 性方法 は赤 外吸収 スペ クトル によ る。
試料の 赤外 吸収ス ペク トルを JIS K 0117(赤 外分光 分析 方法通 則)により 測定 す
ると、波数 3420cm(-1)、1600cm(-1)、1490cm(-1)、1390cm(-1)、1350cm(-1)、
1250cm(-1)、1140cm(-1)、880cm(-1)およ び 670cm(-1)付近 に主な 吸収 を認め る。
11- 2- 2 製剤 の確 認試験 法、 定量法
未 ファイ ル
12.評価
未 ファイ ル
12- 1 有 用性の 評価
12- 1- 1 症例 上の 評価( 症例 報告: 有効 例と無 効例 、転帰 等)
12- 1- 2 その 他の 文献上 の評 価
12- 2 投 与方法 に関 する評 価( 剤形、 投与 方法、 投与 経路等 )
12- 3 そ の他の 治療 法との 比較
12- 3- 1 類似 薬と の比較
12- 3- 2 その 他の 治療法 との 比較
12- 4 そ の他
13.参考文献
1.POISINDEX:METHYLENE BLUE,METHEMOGLOBINEMIA,DRUGS USED IN
TOXICOLOGY, 77TH EDITION 1993
2.Reynolds J.E.F.:Martindale The Extra Pharmacopoeia,29th edition,The
Pharmaceutical Press,1989
3.Haddad L.M.et al:Clinical Management of Poisoning and Drug Overdose,
Saunders 1983
4.Matthew J.E. & Donald G.B.:Medical Toxicology,Elsevir,1988
5.内藤 裕史:中毒 百科,南山 堂,1991
6.日本 医薬情 報セ ンター 編:医療薬 日本 医薬品 集,薬業時 報社 ,1993
7.RTECS,VOL.19,1993
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8.Sax,N.I. & Lewis,R.J.:Dangerous Properties of Industrial Materials 7th
edition,Van Nostround Reinhold,1989
9.日本 規格協 会:JIS K 8897-1992;メチ レンブ ルー (試薬)
10.岡田 芳明:中毒 研究,6:377-381,1993
11.上田 英雄・武内 重五郎 編:内科学 ,第 3 版,1984
*12)USP DI,1997
*13)Treatment Guides,Methemoglobinemia,IPCS INTOX CD-ROM 1999.2.
*14)ロン ドン中 毒セ ンター (Medical Toxicology Unit) 1998 入 手資料
*15)POISINDEX:METHYLENE BLUE, METHEMOGLOBINEMIA, DRUGS USED
IN TOXICOLOGY, 104 th
EDITION 2000
*16)林昭 、血液 毒-メトヘ モグ ロビン 、中 毒研究 1:135-141,1988.
17)Steven CC,Michael WC:Methemoglobinemia:Haddad LM.Winchester JF eds.Clinical
Management of Poisoning and Drug Overdose,3rd ed.Saunders, Philadelphia,
1998,pp226-233
18)RumackBH&SpoerkeDG(eds):METHYLENE BLUE, METHEMOGLOBINEMIA,
DRUGS USED IN TOXICOLOGY, Information System.MICROMEDEX,Inc.,
Colorade,Vol.115,2003
19)内藤 裕史:メト ヘモグ ロビ ン生成 物質 .中毒 百科,南山堂 ,東 京,2001,pp126-130.
20) 清 田和也 :【 急性中 毒の 拮抗薬 最 近の話 題】 メチ レン ブルー (MB).中毒 研究
008;21:367-372.
JPC019105
14.作成日
20021217 Ver.2.00
20101029 Ver.2.02
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全 面改 訂
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