日本の税関制度について - 特許業務法人 深見特許事務所

日本の税関制度について
特許業務法人深見特許事務所
弁護士 杉本 智則
*4月1日より
日本の税関チェックの根拠・対象
ほぼあらゆる知的財産権が保護対象となっている。
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関税法
(輸入してはならない貨物)
第六十九条の十一 次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
九 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣
接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
∗ 十 不正競争防止法第二条第一項第一号 から第三号 まで、
第十号又は第十一号(定義)に掲げる行為(これらの号に掲げ
る不正競争の区分に応じて同法第十九条第一項第一号 から
第五号 まで又は第七号 (適用除外等)に定める行為を除く。)
を組成する物品
具体的な手段
(認定手続と差止申立て手続き)
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(輸入してはならない貨物に係る認定手続)
第六十九条の十二 税関長は、この章に定めるところに従い輸入されようとする貨物のうちに前条第一項第九号又は第
十号に掲げる貨物に該当する貨物があると思料するときは、政令で定めるところにより、当該貨物がこれらの号に掲げる
貨物に該当するか否かを認定するための手続(以下この条から第六十九条の二十までにおいて「認定手続」という。)を
執らなければならない。この場合において、税関長は、政令で定めるところにより、当該貨物に係る特許権者等(特許権
者、実用新案権者、意匠権者、商標権者、著作権者、著作隣接権者、回路配置利用権者若しくは育成者権者又は不正
競争差止請求権者(前条第一項第十号に掲げる貨物に係る同号に規定する行為による営業上の利益の侵害について不
正競争防止法第三条第一項 (差止請求権)の規定により停止又は予防を請求することができる者をいう。次条から第六
十九条の十八までにおいて同じ。)をいう。以下この条において同じ。)及び当該貨物を輸入しようとする者に対し、当該
貨物について認定手続を執る旨並びに当該貨物が前条第一項第九号又は第十号に掲げる貨物に該当するか否かにつ
いてこれらの者が証拠を提出し、及び意見を述べることができる旨その他の政令で定める事項を通知しなければならな
い。
(輸入してはならない貨物に係る申立て手続等)
第六十九条の十三 特許権者、実用新案権者、意匠権者、商標権者、著作権者、著作隣接権者若しくは育成者権者又
は不正競争差止請求権者は、自己の特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権若しくは育成者権又
は営業上の利益を侵害すると認める貨物に関し、政令で定めるところにより、いずれかの税関長に対し、その侵害の事実
を疎明するために必要な証拠を提出し、当該貨物がこの章に定めるところに従い輸入されようとする場合は当該貨物に
ついて当該税関長(以下この条及び次条において「申立先税関長」という。)又は他の税関長が認定手続を執るべきこと
を申し立てることができる。この場合において、不正競争差止請求権者は、不正競争防止法第二条第一項第一号 (定
義)に規定する商品等表示であつて当該不正競争差止請求権者に係るものが需要者の間に広く認識されているもので
あることその他の経済産業省令で定める事項について、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の意見を求
め、その意見が記載された書面を申立先税関長に提出しなければならない。
手続きの流れ
差止申し立て
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認定手続
の順で進める
税関差止のメリット・デメリット
∗ 権利者のメリット
∗ 費用がかからない
∗ 手続が迅速
∗ 権利者のデメリット
∗ 提出物の期限が短い
∗ 端的に、かつ明確に税関担当者を説得できなければならない
データ紹介①
輸入差止件数は、16,296件
(前年同期比15.8%増)で、上
半期の輸入差止件数としては
過去最多を更新しました。
輸入差止点数は、453,350点
(前年同期比39.8%増)でした。
1日平均で、90件、2,500点
以上の知的財産侵害物品の
輸入を差し止めていることに
なります。
データ紹介②
輸入差止件数は、中国
を仕出しとするものが
15,145件
(構成比92.9%、
前年同期比16.6%増)。
次いで香港が552件
(同3.4%、同12.4%増)、
韓国が217件
(同1.3%、同65.6%増)
でした。
輸入差止点数は、中国
を仕出しとするものが
394,610点
(構成比87.0%、前年同
期比45.1%増)、
次いで、香港が33,017点
(同7.3%、同17.4%増)、
韓国が13,286点
(同2.9%、同16.0%増)
でした。
データ紹介③
輸入差止件数は、偽
ブランド品などの
商標権侵害物品が
16,180件
(構成比97.3%、前年
同期比15.7%増)で、
全体の大半を占め、
次いでキャラクター
グッズなどの著作権
侵害物品が382件
(同2.3%、同163.4%
増)でした。
データ紹介④
輸入差止点数に
ついても、商標権
侵害物品が
390,032点(構成
比86.0%、前年同
期比25.8%増)で
大半を占める傾向
は変わらないもの
の、意匠権侵害物
品が58,928点(同
13.0%、同
1,225.4%増)となり、
急増しました。
データ紹介⑤
輸入差止件数は、
財布やハンドバッ
グなどのバッグ類
が5,711件(構成比
31.7%、前年同期
比27.6%減)と最
も多く、次いで衣
類が4,732件(同
26.3%、同
123.5%増)、靴類
が1,841件(同
10.2%、同14.3%
増)でした。
データ紹介⑥
輸入差止点数は、
携帯電話及び付
属品が59,455点
(構成比13.1%、
前年同期比
64.5%増)と最も
多く、次いで衣
類が43,391点
(同9.6%、同
8.7%増)、文具
類が33,463点
(同7.4%、同
5.4%減)でした。
データ紹介⑦
輸入差止件数は、郵便物
が大半を占めており、郵便
物が15,465件(構成比
94.9%、前年同期比
16.8%増)、一般貨物が
831件(同5.1%、同1.0%
増)でした。
輸入差止点数は、郵便
物が301,380点(構成比
66.5%、前年同期比
79.3%増)、一般貨物が
151,970点(同33.5%、同
2.7%減)で、郵便物が多く
なっています。
認定手続の流れ
認定手続の流れ ~名称等通知
∗ 輸入申告貨物又は国際郵便物で提示されたもののうち、税
関で検査を実施し、知的財産侵害疑義物品を発見した場合
に犯則調査を行わないものについては、知的財産侵害物品
に該当するか否かの認定手続を開始します。
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∗ 知的財産侵害物品の疑いがある貨物(疑義貨物)を発見し
た場合には、輸入者及び権利者に対して認定手続を開始
する旨を通知するとともに、これに併せて、輸入者及び権利
者双方にそれぞれの名称又は氏名及び住所を通知します。
認定手続について~自発的処理
∗ 「認定手続開始通知書」の日付の日の翌日から起算して10
執務日(生鮮疑義貨物については3執務日)以内に、権利者、
輸入者双方が、当該疑義貨物について、意見・証拠 を税関
に提出することとなります。
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∗ 輸入者は、権利者と争わず、当該疑義貨物について滅却、
廃棄、任意 放棄、積戻し、輸入同意書の取得、切除等の修
正などのいわゆる「自発的処理」を行うことができます。輸入
同意書の取得、切除等の修正の場合は非該当認定を行い、
輸入許可され、その他の場合については、認定手続を取り
やめます。
認定手続について ~認定通知
∗ 権利者の意見・証拠等については、輸入者に開示でき
る範囲で開示し、輸入者の意見・証拠等についても同
様に権利者に開示し、それぞれから反論を求めます。
その内容に基づき、税関において当該疑義貨物が侵
害品に該当するか否かの認定を行います。
(認定については、1ヶ月以内を目途に行います)
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∗ 認定結果については、「認定通知書」を権利者、輸入
者双方に交付し、通知します。
差止申し立て手続きについて
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差止申し立ての要件
①申立人が権利者であるかどうか
*無効の主張は税関ではできない。
②権利の内容に根拠があるかどうか
*不正競争防止法に基づく請求は要注意
③侵害の事実があるか
*現に輸入されているか、将来輸入されるおそれがある
④侵害の事実等を確認できるか
*証拠が十分か
⑤税関で識別可能な情報が提供されているか
並行輸入について
∗ 並行輸入とは・・
∗ 海外の有名ブランド品等を、正規代理店以外
の第三者が、外国で合法的に製造・販売され
た商品を外国で購入し、日本の総代理店契約
者等の許諾を得ずに、正規代理店ルート以外
のルートで輸入する行為
並行輸入の疑いがある際は・・
∗ 日本は、並行輸入を認めてますが、要件が大変厳しい
ので、専門家にご相談ください。
∗ ・商標
∗ フレッドペリー事件判決(最判平15・2・27)
∗ ・特許
∗ BBS事件判決(最判平9・7・1)
まとめ
日本の税関で差止を受けた場合、すぐに専門家に相談を!
→提出物の期限が非常に短い
できれば、商標に詳しい弁護士・弁理士を予め決めておき、
そこに依頼する
相手の弱点(主張・証拠の弱いところ、企業の弱いところ)を
みつけ、徹底して叩く
ご清聴 ありがとうございました。
特許業務法人深見特許事務所
弁護士 杉本 智則
*4月1日より