不祥事根絶のためのヒヤリハットの取り組み

不祥事根絶のためのヒヤリハットの取り組み
職場でのミスを未然に防ぐ――ハインリッヒの法則ってなんだ?
どのような仕事をしていても、“ひやっ”とする出来事がありま
す。うっかり手順を間違えたり、ぼんやり作業をしていて危うく
大きなミスに繋がったり……。ちょっとした気の緩みで、その後
に大きく発展してしまうようなことはありませんか? それを防
ぐために、今回は職場で行う「安全教育」について考えていき
たいと思います。
●自転車の赤信号無視 どう感じ、考えますか?
自転車の赤信号無視 どう感
じ、考えますか?
あなたの仕事とは少し違うシチュエーションになるかもしれま
せん。先日次のようなことがありました。そのときの状況を下
図にまとめましたので、光景を想像してみてください。
時間は朝の 9 時過ぎでした。遅めの出勤の人、子供の送り迎えの人などで、その交差点は 10
人ほどの歩行者がいました。信号が青に変わったので、一斉に歩行者は歩き始めます。遅刻寸
前なのか、その信号を猛ダッシュする女性もいました。そこに 1 台の自転車がきました。自転車の
後ろ側の荷台には、大手企業のグループ会社の名前が大きく書かれています。自転車を運転し
ているのは、作業着に身を包んだ 70 歳前後の人。どうやらその人も急いでいるようです。自転車
がその信号を速度を落とさずに斜めに走り抜けます。そこへ、走ってきた女性と危うく接触しそうで
したが、女性はうまく交わしました。危険を感じたその女性は、その自転車の過ぎ去る方向を走り
ながら見ていました。
危ない!!
と、心の中で思ったのは間違いないでしょう。側を歩いていた筆者も、 これはまずいな と思い
ました。なぜならその自転車はそのまま赤信号を無視して渡り、目的地に向けて走りぬけていった
からです。さて、この光景を思い浮かべていただいたところで、あなたはどうお感じになったでしょ
うか?
・(a)特に何も問題を感じない
・(b)自分も同じことがないように気をつけよう
・(c)大手のグループ会社に連絡をしたほうがよい
・(d)自分のチームでも同じことがないか、確認してみなければ
いかがですか? (b)と思った人が多いかもしれません。次に(d)も多かったのではないかと思
います。今回は(d)にプラスして具体的な取り組み例をご紹介します。
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●対応のタイミングが結果を左右する
話を分かりやすくするために、問題を自転車に乗っていた人だけに絞って考えていきます。もし
上司と部下で、同じような出来事に居合わせていたら注意ができるでしょう。しかし多くの場合問
題となるのは、
・通報
・事故
の後です。「通報」を受けて問題が浮上した場合、時間や場所から問題の対象者を特定し、その
本人に事情を聞きます。本人やその上司に厳重に注意するとともに、再発防止策を検討した上で、
通報者に回答し、社内的な対応を講じるのが一般的な流れです。「事故」を起こしてしまった場合
は、事故の相手、本人、本人の家族、職場の仲間、その日作業予定が入っていた場合の作業予
定先、知名度のある会社の場合、その影響の範囲は会社全体まで及びます。急いでいるときなど、
誰でも 1 度はやってしまう、
・前方不注意
・信号無視
など、意識しなければ、何かが起きるまでその問題をそのまま放置してしまいます。参考までに、
自転車(軽車両)の交通ルールに関連する条項を記載します。
車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という)に接近する場
合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようと
する歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という)がないことが明らかな場合を除
き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直
前。以下この項において同じ)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この
場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があ
るときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければな
らない。
※横断歩道等における歩行者等の優先(第 38 条)から抜粋
●“ひやっ”としたことを共有する職場習慣を
「ヒヤリ・ハット」という言葉をご存知でしょうか? ヒヤリ・ハットとは、「重大な災害や事故には至
らなかったものの、直結してもおかしくない、一歩手前の事例=ヒヤリとした、ハッとした事例のこ
と」です(参考:Wikipedia)。このヒヤリ・ハットと関連する重要な法則があります。1 件の重大な事
故、災害の裏には、29 件の軽微な事故、災害があり、さらに 300 件のヒヤリ・ハットがあるとされる
「ハインリッヒの法則」です。
<ハインリッヒの法則>
米国の損害保険会社に勤務していたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ氏の論文による。災害
が発生するメカニズムには、「1:29:300」の割合が存在するとし、さらに数千件の「不安全行動」と
「不安全状態」が存在していることを示した。事故・災害を防ぐには、次の取り組みが有効であるこ
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とを説いた。
・災害を防げば、傷害はなくせる
・不安全行動と、不安全状態をなくせば、災害も傷害もなくせる(職場の環境面の安全点検、整備、
特に、労働者の適正な採用、研修、監督、それらの経営者の責任をも言及すること)
参考:Wikipedia
そこで、少し意識すれば大ごとにならずにすむようなことを、日常的なミーティングで伝えるように
しましょう。ミーティングの機会は、毎週、隔週、月 1 回など、必要性に応じてタイミングを作ってお
きます。担当を決めて、担当に報告することで情報を共有したり、担当を決めずに、発表者を決め
て次のミーティングで数分話をするのもいいかもしれません。その際の発表のポイントは、次の項
目がオススメです。
1. これは危ないなと思った出来事
2. なぜ危ないと思ったか(理由)
3. 最悪の場合に考えられる影響
4. このようなことが起こってしまう背景で考えられること
5. このようなことが起こらないようにする工夫(手順や動作など、行動できることでの提案)
最初のうちは、なかなかテーマが出しにくいかもしれません。その場合は、次のようなカテゴリか
らテーマを選ぶのも一策です。
・会社の中での出来事
・仕事中の出来事
・他部門での出来事、
・電車の中での出来事
・飲食店での出来事
・買い物をしていたときの出来事
・友達から聞いた話
・お客様から聞いた話
・同業者から聞いた話
・新聞や雑誌の記事を見て気づいたこと
・テレビ番組を見ていて気づいたこと
身体的、精神的な問題につながりそうなもの、情報漏えいなど会社の信用に影響があるもの、
納期に影響を与えるようなことなど、テーマは無尽蔵にあると思います。経済団体連合会(経団
連)では 10 月を「コンプライアンス(企業倫理)月間」とし、「従業員の安全確保・衛生管理」の強化
も組織として取り組むテーマの 1 つとして求めています。取り組み強化月間が過ぎてしまっても、
事故を未然に防ぐことで、働く仲間やその家族を守り、会社の信用も築くことができる、ちょっとし
た取り組み、進めてみてくださいね。
多発する不祥事を根絶するため,本校では上述のような考え方に則り,ヒヤリハットの
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取り組みを実施していきたいと考えます。
ヒヤリ・ハットの取り組みの流れ
Ⅰ 各職員がヒヤリ・ハットに該当する事例について自己申告する。
(用紙1)
Ⅱ 出されたヒヤリ・ハットについて不祥事防止委員会(*)による検討委員会を開催する。
Ⅲ
不祥事防止委員会によって作成されたヒヤリ・ハットの内容に関する研修
Ⅳ
研修によってまとめられた内容を教訓とし,新たな取り組みを実施する。
(*)不祥事防止委員会は企画委員会が実質担当する。内容によっては養護教諭も加
わる。事例によっては校長教頭の会でも処理する。
不祥事防止委員会は,出されたヒヤリハットの原因・背景の分析を行い職員研
修の資料を作成する。具体的行動を提起する。
不祥事防止委員会は,年間の活動のまとめを行い,次年度活かすようにする。
不祥事防止委員会はセクハラ相談窓口と緊密な連携のもと組織としての取り組
みを明らかにしていく。
校務運営組織への位置づけは平成22年度から行う。
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