2012 年 4 月 「日本の出し」は、古来より最高品位に格付けされた白口浜天然真昆布と優良生産者の鹿児島産鰹枯節のみを原料にした、日本 初のセパレートタイプのだしパックです。 元々は、フランスへの輸出向けに開発した製品ですが、この度国内販売もさせていただくことになりました。国内販売に際し、 開発の動機から製品化までのストーリーを、少しご紹介させていただきたいと思います。 ●フランス人シェフの昆布の評価 かつてホテルニューオータニ大阪のフレンチレストラン「サクラ」で料理長をされていたドミニク・コルビ氏は、日本の食文化 にも非常に理解の深い方で、以前から親しくさせていただいていました。 「サクラ」では、フランスから有名シェフを招いて度々 イベントを開催されていましたが、そのたびにコルビさんはフランス人シェフを連れて私共を訪問して下さっていました。そこ でお見せするのは、当然日本の出しです。美食の国フランスですし、ましてやミシュラン三ツ星をはじめスターシェフ達ですか ら、美味しいものは知り尽くしているはずです。しかし日本人として、フランスに決して負けない素晴らしい食文化として昆布 出しの味を見せなければなりません。当初は、フランス人に昆布の味が理解されるのかとの不安もありましたが、それは見事に 裏切られます。彼らは、その美味しさに心底驚き、非常に高く評価し、フランスのレストランで料理に使う人まで現れてきまし た。私共はこのような経験から、昆布の味は海外の方々にも十分理解していただけるものであることを知るようになります。 ●フランスにおける日本料理の現状 フランスほど、日本文化を愛してくれている国は無いと思います。パリの街を歩けば、数え切れないほどの日本料理屋をそこか しこで見かけます。日本人としてとてもうれしいことですが、店先のメニュー等をよく見てみると、何やら不思議な料理の数々。 どうやら、経営しているのは日本人でない場合がほとんどのようです。日本人が関わっていなくても、日本料理のことが好きで、 きちんと修行した外国人が営業しているのなら全く構わないと思います。しかし、もともと中華料理屋であったものを日本料理 屋の方が儲かりそうだから変えただけ、というようなものは困ります。このような店では、当然まともな料理が出るはずもあり ません。ましてや、きちんと出しを引いているような店はほぼ皆無で、うまみ調味料が主成分の業務用の出しの素が使われます。 このように、日本料理が変質した形でフランスの方々に伝わっている現状を見るのは昆布屋として非常に辛いものです。まっと うな出しがフランスで広く使われるようになって欲しいとの思いから、輸出向けの製品を考えるようになりました。 ●出しパックという形態を取った理由 美味しい出しに質の高い昆布が必要なのは当然ですが、もうひとつ大切なのは良い鰹節です。昆布と鰹節の出しは、言わば日本 料理の王道で、両者が合わさることにより素晴らしい味をつくり出します。つまり、昆布だけが良くても、良い鰹節が無いと片 手落ちだということになります。ところが、EU向けに昆布は問題無く輸出できるのですが、鰹節には少しやっかいな規制があ り、現状としては輸出は難しいのです。このためフランスでは日本以外で生産された鰹節が多く流通しているようです。しかし、 品質を考えれば日本の鰹節に勝るものはありません。そこで目をつけたのは出しパックです。配合割合などに取り決めはあるも のの、鰹節単体での輸出よりはるかにハードルが低く、輸出が可能です。このような経緯から、良い昆布と良い鰹節を使った出 しパックを、輸出向け商品として開発することになります。 [次ページへ] ●出しパック特有の問題点 出しパックを作るにあたり、昆布の品質も鰹節の品質も、どこにも負けない高いクオリティの原料を私共ではご用意できます。 しかし、出しパックには出しパック特有の難しいハードルがありました。 市場には、多くのメーカーが製造した鰹節と昆布の混合出しパック製品が流通しています。鰹節粉末と昆布粉末の混合物が不織 布パックに詰められたものです。しかし、そのほとんどが鰹節の配合割合が主で、昆布は少ししか入っていません。これには理 由があります。昆布のうまみ成分はパック素材から溶出しづらいのです。私共が当初試作した際にも、やはり鰹節主体の方が良 いと感じました。しかし、輸出の条件として鰹節の配合割合は半分以下である必要があり、非常に困ってしまいました。 ●ある日の思いつき 前段の問題点には非常に悩まされましたが、意外に簡単なことで解決することになります。パリで私共の製品を販売してくださ っている日本食材販売店の社長さんとこの件について相談している途中、なにげなく「昆布のパックと鰹節のパックを別にした らどうか」と思いつきをお話したところ、強く賛成してくださいました。自分では何気ない思いつきで言っただけだったのです が、このアイディアには出しパックの問題点を劇的に解決する力がありました。 ●本来の姿に戻っただけ 端的に言えば、昆布と鰹節は性質が大きく違うということです。出しを引く際の適切な温度帯、パック詰めの際の適切な粉砕粒 度、それに応じたパック素材など、昆布と鰹節にはそれぞれに応じたアプローチが必要だったわけです。一般的に出しパックは 簡便さを求めた製品ですから混合型ばかりで、色々と探しましたがセパレートタイプにした製品は見つかりませんでした。混合 型は、配合割合にしても、出しを引く際の温度にしても、パック素材にしても、鰹節を基準に考えられたものばかりです。これ では、美味しい昆布出しが出るわけは無いのです。これが、一般的な出しパックの配合割合が鰹節主体になっている理由であり、 別の言い方をすれば昆布の味がしっかり出ている混合出しパックなど、市場には全くと言って良いほど無かったわけです。実際 に製品にするまでは様々な苦労がありましたが、昆布を先に続いて鰹節を使う伝統的な出し取りの手法を踏襲することにもなり、 他には類を見ない昆布のうまみをしっかりと感じられる出しパックが完成することになります。他社に例が無いと言う意味では 画期的な商品であると自負していますが、何のことはない、伝統的な手法に忠実に出しパックを作っただけのことなのです。 ●国内販売にあたり 昆布と鰹節の出しは、日本料理の隠れた主役です。また、世界に誇れる素晴らしい文化です。にもかかわらず、うまみ調味料が 主成分の安価な出しの素に押され、自分できちんと出しを引くご家庭は、どんどん少なくなってきているのではないでしょうか。 この現状を憂慮し、私共でも常日頃から、本物の出しと一般的な出しの素の違いを訴えたり、毎月出しの取り方教室を開いたり、 啓蒙活動に努めてきました。そして同時に、お忙しく時間の無い方にもお使いいただける「便利な本物」の必要性を強く感じて きました。これはまさに「十倍出し」の開発動機でもありました。このたび製品化致しました「日本の出し」だしパックは、濾 す手間がいらないこと、材料の計量の必要が無いこと、昆布の水漬に要す時間が粉砕により大幅に短縮していることなど、とて も簡便にお使い頂けると思います。もともとは輸出のために製品化したものでしたが、非常に品質の高いものが完成したと自負 していますし、多くの方々にお使いいただきたいとの思いから、国内販売をさせていただくことになりました。この製品が、日 本の伝統的な出し文化の衰退を食い止める一助になれば非常にうれしく思います。軽く、かさばりませんので、海外の方向けの お土産などにも最適だと思います。 [次ページへ] 【日本の出し】 内容量:100g (昆布パック 10.5g入×5 ・鰹節パック 9.5 入×5) 税込価格:880 円 ●出しを取った後の昆布と鰹で、手作りのふりかけを作ってみませんか。とても簡単です。 [材料] だしを取った後の昆布・鰹節、各一包分 醤油 みりん 大さじ 2(30cc) 小さじ 2(10cc) [作り方] ①軽く水分を絞った昆布と鰹節と調味料を、耐熱の容器に入れ、混ぜ合わせる。 ②ラップをせずに電子レンジで3分間加熱する。一旦取り出して混ぜ、調味料飛び散り防止のためのペーパータオルをかけ、更 に二分程加熱して水分が少なくなればできあがり。 (お好みで、いりごま、焼海苔、青海苔、パリパリに焼いたちりめんじゃこなどを加えると更に美味しくなります。加熱時間は 電子レンジの出力に応じて調節してください。)
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