ダウンロード - ビール女子

2013 年夏
茶会の形を借りたビアパーティー【ビアチャ】
カジュアル納涼ビア茶会(2013 年 8 月 24 日 於 神楽坂 某料亭)
主宰:平田亜矢子
茶事:水田宗翠
料理:小宮太郎
アドバイザー:小泉奈津子
紙面制作:富江弘幸
Vol. 001
茶
を
点
て
る
長野の生のあんずを使った「あんず
」をいただき、自分でお茶を点て
る。器を鑑賞する時は、身を屈めて
低い位置で。思い入れのある器は大
事に大事に。
水
田
宗
翠
敷居が高いと思われがちな
茶会をもっとカジュアルに
みたら…というのが今回の「ビア茶会」。
茶の席に招かれたことのある人は多くな
の後、濃茶をいただいて、薄茶が最後とい
いはず。茶の席は大きく分けて茶事と茶会
う流れ。でも、やっぱり堅苦しいかもしれ
がありまして、濃茶と薄茶がありまして、
ないので、「ビア茶会」では最後の薄茶を
と言われても、「?」な人も多いでしょう。
先にいただいてしまい、その後は楽しく
茶の席は堅苦しくて敷居が高いという先入
ビールを飲みましょうよ、と。
観が「?」につながっているのかも。
そんなビア茶会で、茶の点て方などを教
実は、茶会ではお茶だけではなく、アル
えてくださったのが水田宗翠先生。凛とし
コールも振る舞われます。もちろん日本酒。
た振る舞いに一同やや緊張気味でしたが、
でも、茶会は英語で言ってみればティーセ
簡単な作法を教わるうちに和やかな雰囲気
レモニー。じゃあ、茶会というイメージで
に。茶筅でシャシャシャッと泡立てている
はなく、パーティーのようなカジュアルな
となぜか気持ちも落ち着いてきます。そう
会でもいいんじゃないの? ということ
やって自分で点てたお茶はまた格別…と
で、日本酒をカジュアルなビールに変えて
思ったアナタ、もう敷居は高くないかも。
本物の茶会の流れを簡単に説明すると、
挨拶の後にまずいただくのは懐石料理。そ
トロトロにとろける古代豚と「山伏
弐」は本日のベストマッチ。果たし
て今後これを超えるペアリングは出
てくるのか? ということを話して
いるとかいないとか。
和のクラフトビールを
和の料理と合わせて
飲んでいただいたら、前菜と刺身に富士桜
茶事の懐石料理で振る舞われる日本酒
せるのが、ペアリングの第一歩です。
を、ただビールに変えただけでは面白くな
お吸い物は、「とうもろこし・塩・水だ
い。そこで、おいしい料理にスタイルの違
けで作ったポタージュ」。ビールとのペア
うビールを合わせ、ビールと料理のペアリ
リングはありませんが、焼きとうもろこし
ングを楽しんでもらえるようにしました。
がモチーフのシンプルな味わいは絶品。
料理を担当するのは出張料理人の小宮太
そして、今回の最強ペアリングが「麦麹
郎さん。今回の料理は、ブイヨンやフォン
味
ドヴォーなどの西洋的な出汁は一切使って
ビールの「山伏 弐 saison noir」。煮込みに
いません。味わいは和、でも洋風の装い。
黒ビールを使っていることもあり、もう何
そんなステキな料理に 4 種のビールを合わ
も言うことはありません。珍味とこぶし花
せます(献立とビールリストは次ページ)。
ビールの「グランクリュ」も言わずもがな。
まずは、食前酒として金しゃちビールの
参加された皆さん、次ページの献立を見
「フルーツドラフト・アップル」。クイッと
ながら、あの味わいを思い出してみては。
ビ
ー
ル
と
料
理
の
ペ
ア
リ
ン
グ
高原麦酒の「ヴァイツェン」を。白いビー
ルと白身魚。ビールの色と料理の色を合わ
に漬けた古代豚の煮込み」と志賀高原
小
宮
太
郎
お料理について
今の東京ではさまざまな食材を入手できます。そして、現代の調理
器具があるからこそできる料理もあります。今回の料理は、見た目は
洋風ですが、和風あるいは万国共通的な味わいに仕上げてみました。
また、ビールも世界中で造られており、さまざまな個性を持ったビー
ルがあります。それは現代の醸造器具があるからこそできる味わいで
もあります。そこにビールと料理の味わいだけではない、概念的なつ
ながりも持たせたいと考えました。
特に、今回は日本のクラフトビールを えているので、ブイヨンや
フォンドヴォーなどの洋風出汁は一切使用していません。日本人が強
く意識する「旨み」を味わってください。
なお、今回の料理には、滋養強壮効果が期待できる食材を多く使用
しています。料理を味わっていただくとともに、少しでも栄養をつけ
ていただければと思います。
前菜
枝豆のムース・炙った赤海老・海老のパウダー
テーマ食材としてよく使われる枝豆を口溶けの良いムースにしまし
た。出汁 は昆布出汁です。海老のパウダーが海老の風味とドライ感を
プラスしています。
刺身
白身魚の自家製セミドライトマト〆め
トマトジュレと共に
自家製のセミドライトマトで〆めた鯛のお造りです。トマトジュレ
が前菜「枝豆のムース」に添えた海老のパウダーとは逆のスムーズな
食感を演出。一皿に「乾」と「潤」の対称的な意図を込めています。
お吸い物 とうもろこし・塩・水だけで作ったポタージュ
使う食材は極力シンプルに、しかし、手間をかけて食材の持ってい
る味を引き出しました。まず、とうもろこしの身を削ぎ落として残っ
た芯をざく切りにし、鍋で軽く火を通したところで水を加えて煮詰め
ます。とうもろこしの香りが水に移ったら漉し、軽く火を通したとう
もろこしの身とともに鍋へ。煮詰まったらブレンダーにかけ、目の細
かいシノワで2回漉します。
ポタージュの身は、乾燥させて醤油で和えたとうもろこしの皮を使っ
て薫製したとうもろこし。醤油の味はありませんが軽く醤油の香りが
します。焼きとうもろこしがモチーフです。
ビールについて
ビールの種類は多種多様。分類の方法によっては百種類以上のスタ
イルに分かれ、甘いビールや苦いビール、酸っぱいビールなど、味わ
いもビールスタイルによって大きく異なります。今回はスタイルが異
なる日本のクラフトビールを4種 えました。
ペアリングについて
ビールとそれに合わせる料理の組み合わせをペアリングといいます。
相性のよい組み合わせ方をふたつご紹介しましょう。
まずは、ビールと料理の色を合わせる方法。ヴァイツェンのように白
く濁ったビールは、白い色の料理とよく合います。濃い色のビールは、
色の濃い料理を合わせてみましょう。
さらに、ビールの中にある味と料理の中にある味を合わせる方法。
甘味と甘味、酸味と酸味といったように同じ味を合わせます。例えば、
ヴァイツェンには小麦由来の酸味がありますが、これはドライトマト
の酸味と合います。また、同じ味でなくても、甘味と酸味といったよ
うに、相性のいい味の組み合わせもあります。相性のいい組み合わせ
を見つけて、楽しんでみてください。
金しゃちビール フルーツドラフト・アップル
原材料
アルコール度数
大麦麦芽、ホップ、国産りんご果汁
5%
金しゃちビールは、愛知県犬山市のクラフトビールメーカー。この
フルーツドラフト・アップルは限定醸造で、りんご果汁を使用しており、
シードルのようにさっぱりしたビール。食前酒としてどうぞ。
富士桜高原麦酒 ヴァイツェン
原材料
アルコール度数
大麦麦芽、小麦麦芽、ホップ
5・5%
富士桜高原麦酒は山梨県河口湖町にある醸造所。ヴァイツェンとはド
イツのビールスタイルのひとつで、小麦麦芽と上面発酵酵母を使った
フルーティーな香りが特徴。バナナやクローブの香りがあり、甘みの
後には酸味が感じられます。アルコール度数もそれほど高くないため、
華やかですっきりした印象のビール。前菜とのペアリングに最適です。
志賀高原ビール 山伏 弐 saison noir
焼き物・煮物
麦麹味
に漬けた古代豚の煮込み
「麦」をテーマにした豚との組み合わせ。麦麹味 ・黒ビール・麦茶・
野菜で古代豚の肩ロースと三枚肉を煮込みました。古代豚は中ヨーク
シャー種という、猪が家畜化されていく過程のかなりルーツに近い豚
です。生育期間は九∼十カ月(通常の豚は約半分)。良い意味で豚のワ
イルドな部分があり、脂の香りの良さ、赤味の味の繊細さが特徴です。
私の友達一家が生産しています。
珍味
フランス・ペリゴール産・ガチョウの
フォアグラのローストマリネ
くるみ小女子
「フォアグラ」は私のスペシャリテです。フォアグラを丸でローストし、
赤ワインとポートワインを煮詰めたマリナードで一日マリネ。
「くるみ小女子」は木更津の老舗佃煮屋「岩崎物産」が製造しています。
佃煮にくるみを加えることで風味が加わり、さくっとした食感です。
「フォアグラ」のぬめっとした食感との対比も意識しています。
原材料
アルコール度数
大麦麦芽、小麦麦芽、米、糖類、ホップ
8%
「山伏」とは志賀高原ビールがベルギービールにインスパイアされつつ
も、日本独自の味を追求するプロジェクトです。その第二弾がこのビー
ル。自家栽培のホップと酒米を使い、ドライに仕上げてあります。飲
み口は男性的ですが、香りは女性むけ。古代豚とのペアリングが絶妙。
こぶし花ビール グランクリュ
原材料
アルコール度数
大麦麦芽、ホップ
8%
埼玉県羽生市にあるクラフトビールメーカー、こぶし花ビール。ビー
ルのスタイルはベルジャン・トリペルで、ベルギーのトラピスト修道
院ウェストマールが造ったビールが起源となっています。こぶし花ビー
ルのグランクリュは、濃厚で、青リンゴのような香りが特徴。熟成に
半年以上かけた味わいをフォアグラとともに味わってみてください。
編集後記: 現場は机上で考えていた通りにはいかないものですね。当日現場に行ったら私が受付担当になっていたとか、取材担当なのになぜか配膳
もやっているとか、小さな「えっ?」がいくつかありました。が、皆さまに楽しんでいただけたようでよかったです。ありがとうございました。(T)