平和への一歩 田辺中学校 2年 渡部 もも

平和への一歩
田辺中学校
2年
渡部
もも
8月20日。あるニュース番組から目が離せなかった。衝撃を受けた。恐らくこの日
のニュースによって日本中に「山本美香」という名が知れ渡っただろう。山本さんは世
界の紛争地を取材し、何も知らない私たち日本人に紛争の恐ろしさ、そこに生きる子供
達の姿を伝える仕事をされていた。だが、その取材中、シリアの政府軍の銃撃により殺
害された。私はこの事がきっかけで山本さんに興味を持った。
本屋で見つけた1冊の本。迷う事なく手に取った。山本さんの本だ。読み進めるとそ
こにはたくさんの写真が載せられていた。今の日本ではありえない光景。私はその事実
を受け入れるのに少し時間がかかった。読み進めるのが少し恐くなった。
皆さんは、
「戦争を想像してみて下さい。」と言われて想像出来るだろうか。無差別に
人を苦しませ、悲しませる争いを。紛争地にはキノコ雲が昇るのだ。日本では幸せなこ
とにそんな雲はもう昇らない。日本がどれだけ平和な国が思い知らされた。
ところでみなさんは、「悪魔の兵器」と呼ばれるものを知っているだろうか?それは
地雷だ。「悪魔の兵器」という呼び名が、地雷の恐怖を物語っているのがわかる。本に
は地雷のせいで脚を失った少年の写真が載せられていた。私は地雷に恐怖を覚えた。そ
してその恐怖の中に命をかけて足を踏み入れる筆者の勇気に驚きを隠せなかった。
世界には人を撃ち、殺し合っている子供兵が30万人以上もいるのが現実だ。日本で
は子ども達は当たり前のように学校へ通い、友達と遊び、家に帰って温かいご飯を食べ
る。私は信じられなかった。信じたくなかった。本当に戦争は恐ろしいものだと改めて
感じた。
戦争の始まりは土地の奪い合いからだと言う。第二次世界大戦までは国境を書き換え
る戦争が何度も起こった。今でも世界のどこかで戦争が起こっている。本には子ども達
が苦しんでいる姿が写し出されていた。写真を撮り続け、目の前にある真実を伝えよう
とする筆者は「伝えたい」という気持ちが強かったのだろう。
子供兵、難民の多くは貧しく、苦しい生活を送っている。わずかな食料が命をつない
でいるのだ。配給所で配られた一つのパン。自分もお腹が空いているのに友達4人で分
けるというのだ。子ども達はこんな状況下でも「思いやり」を忘れてはいなかったのだ。
そんな行動を知ったとき、私の心は優しく、そして温かくなった。
戦争が終われば、すぐに平和な暮らしが戻るのかというと、私は違うと思う。戦争以
外にも、貧しい人がいたり、犯罪が絶えなかったりと、平和で安全な世界になるために
は、様々な支援も必要だし、まだまだ遠いと思う。
戦争は一度始めてしまうとなかなか終わらせる事はできない。戦争が始まってから後
悔しても、一度動きだした戦争の歯車は簡単には止められないのだ。気づいた時にはも
う遅い。だからこそ戦争を始めてはならないのだ。戦争は自分達で始めておいて自分達
で止めることのできない、おろかな行為だ。そんなことでかけがえのない命を無駄にす
るなんてことは決してあってはならない。
「世界は戦争ばかり。」と悲観している時間はないのだ。この瞬間にもまたひとつ、
ふたつと大切な命が奪われているかもしれない。目をつむって寝る前にでも、そんな事
を少し考えてみよう。そんな小さな一歩が平和への一歩につながるだろう。私はそう思
いたい。そして信じたい。写真の中の子ども達の心にあった「思いやり」の心が、世界
中の人々の心にもまだあることを。