学校だより ふうしゃ - アムステルダム日本人学校

学校だより
続々
ふうしゃ
生徒版
平成28年12月2日
アムステルダム日本人学校
No.3
http://www.jsa.nl/
本当に頭がよくなる方法
校長
尾後貫 智
今回で最終になります。今回の話は最初に戻って「思考体力」についてです。〇○先生
のご専門の交通渋滞解消法の研究についての話題にも触れています。また勉強ができるで
きないと研究は関係ないことも話されています。どんな話なのか是非読んでみて下さい。
本当に頭がよくなるたったひとつの方法
T大学先端科学技術研究センター
教授 〇〇〇○
が縮まると警告が出るカーナビ」というのも、
私が監修し、作っています。
「先生、私、将来、研究者になりたいんです
けど、勉強ができないとダメですか?」と聞か
その4面倒くさいときこそチャンス 我慢してや
れることがよくあります。そんなことはありま
ることで「思考体力」が上がります
せん。私の知っている研究者でも、勉強ができ
た人もいるし、まったくできなかった人もいま
そして最後が「ジャンプ力」、発想のジャンプ
す。「勉強」と「研究」は、ほとんど関係あり
力ということです。私はずっと「渋滞を何とか
ません。なぜ関係ないのか? 「とにかく真面
解消する方法はないだろうか?」と思っていた
目にやって覚える」のが勉強ですが、研究はそ
のですが、どうしたらいいか分からず、困り果
うではありません。いくら真面目に続けたとし
ててアリに聞きました。
ても、何も発見できなかったら研究者としては
すると、世界で初めて「アリは渋滞しない」
ことを発見しました。細かい話は省略します
成功しないし、そのためには運も必要です。
「研究で何が一番大切か?」と尋ねられた
が、アリの渋滞解消の戦略は「混んできても前
ら、私はいつもこう答えます。「それは勇気で
に詰めない」でした。アリは必ず車間距離(ア
す」と。 研究の最先端とはつまり、「誰もや
リ間距離)を空けるので渋滞しないということ
っていない」ということですから、今やってい
が分かったんです。それを使って、私は「渋滞
ることが正しいかどうかも分からないのです。
吸収運転」というのを考えました。
それは、地図のない森に入っていくようなも
渋滞になりそうなところで、ある車に「ゆっ
のです。沼地にズブズブとはまってしまうかも
くり走れ」と指示します。そうすると、そこで
しれないし、蛇に噛まれるかもしれないので怖
車間距離が保たれ、後ろの車も止まらなくてよ
いですよね。でもその怖さを乗り越えてさらに
くなり、渋滞が発生しなくなったのです。しか
進んでいける人が研究で成功するのだと思いま
もこれ、コストはゼロでできます。「車間距離
す。だから「勇気」が必要なんです。
しかも研究というものは、ほとんどが失敗ば
脳科学では、関わり合いが深いほど長期の記
かりです。世界中の研究者のほとんどが「うま
憶として残り、逆に簡単に分かることはすぐに
くいっていない」んです。ですから、私はいつ
忘れてしまうということが証明されています。
も学生に言っています。「君たちは、次の言葉
面倒だと思ったら、普通はそれでやめてしまう
をいつも胸に刻んでおきなさい、『ダメだと分
のですが、そこを超えて成功すると、それが長
かって3か月』と」
期の記憶として残ると共に、「思考体力」も一
研究は、「もうこれ以上やってもダメだ」と
段階向上するのです。「面倒くさい」と思った
思う瞬間があります。どうやってもうまくいか
ら、奥歯をグッと噛みしめて我慢して、やって
ないと思える瞬間があるのです。世界中の普通
みてください。
の研究者は、そこであきらめてしまうのです。
でも、そこから3か月間粘り、歯を食いしば
りながら頑張っていくと、初めてそこに成功の
これを習慣付けると、「思考体力」はどんど
ん上がっていきます。
(おわり)
道が待っていて、勝利の女神が微笑んでくれた
りするのです。
3回に分けて、載せてみましたが、いかがでしたか。人間は思考して学習しいくことで進化してい
く生き物です。なぜなのか、どうすればよいのか、そのためにはと考え続けることで頭がよくなるこ
とへつながっていくのですね。具体的な話を通して、説明されているのでわかりやすかったのではな
いでしょうか。1回目では、「思考体力」をつけるには、多段的に思考することが大事で、そのため
には頭を柔軟にして「遠回り」や「損」、「手間」を含めた幅広い発想をしていくこと、また自分の
したことを「疑う」ことで第三者の目で物事を客観的に見ることができるようになると言われていま
した。また2回目では、人生の岐路に立った時どう考え判断したらよいかをご自分が研究者の道を歩
むことになった経験を通して説明されていました。また判断する時に必要な大局的な見方の重要性に
も触れていました。さらにバケツリレーの例を挙げて「科学的ゆとり」をもつことが必要だとも述べ
ていました。そして最後の3回目では、最初の思考体力の話に戻って、考えることを面倒がっていて
は、思考体力がつかない、つまり頭がよくならないということを結論として述べられていました。中
学部のみなさんも、知識を「憶える」だけでなく、考える、考え続けることで「思考体力」を付けて
いってほしいと思います。
人がものを考える時に、そのベースとなるのは知っていること(知識)です。それを脳の貯蔵庫に
しまっておくだけでは、ただ知っているだけにすぎません。それだけではテストで点数をとることは
できても人生の局面で発揮する「生きた知識」とはなり得ないものです。人生はすべて問題解決だと
私は思っています。直面した問題を解決するにあたり、自分の持っている知識や経験を総動員して比
較・検討して、最良の方法を見出していく一連の作業が「考えること」になると私は思っています。
そして考えたことをもとにして、判断し、行動していくことが人生を歩んでいく基本的スタンスだと
思っています。