CFA 協会ブログ 2013 年 12 月 2 日 No.165 恐怖と不安:現在 恐怖と不安:現在の投資 現在の投資環境 の投資環境 Fear and Anxiety: Investing in Today’s Marketplace リンダ・リッテンハウス, リンダ・リッテンハウス JD 今年のバージニア大学投資カンファレンスにおける マークス氏は将来の投資機会を探し出すために次の 話題は、世界経済と金融市場の将来に関して暗い全体 ような戦略を示唆しました。 像が描かれた前年と比べ、心持ち明るいものとなりま した。「予測不能な世界における投資機会の発見」と 題した最近のカンファレンスでは、2007 年以前に遡る • 企業の投資を重要視する • 警戒すべき理由を忘れない(彼が言うところ の「起こりそうもない大惨事」に対して) 市場の熱狂の時代への回帰が望み薄であることを認 めつつも、前向きな発言をいくつか聞くことができま した。 市場心理の変化 • 賛否両論のバランスをとる 彼はまた「市場は効率的だが正しいわけではない」と 指摘し、我々が注意深く行動するべきだと主張しまし た。 オークツリー社会長で CFA 協会認定証券アナリストの ハワード・マークス(Howard Marks)氏は、金融市場 期待の均衡を取り戻す 期待の均衡を取り戻す必要性 の均衡を取り戻す必要性 に対する我々の認識が過去6年の間に著しく変化し こうした不確実な時代において投資機会をいかにし てきたことを指摘しました。第一に、我々は自信と将 て発掘するかを考慮する上で、パネリストたちが共通 来に関する確信をいくらか失いました。我々は、何が して表明したテーマは、期待とアプローチをバランス グローバルな市場経済を動かしているかを知ってお させることの必要性でした。あるコメンテーターは、 り、次の 5 年から 10 年の間にどうなるかを、ある程 市場における確信がどれだけ強いかをバロメータと 度正確に予見できるばかりでなく、その間に市場に問 して用いることを主張しました。つまり、価格が現在 題が生じても解決方法がわかると考えていました。第 の確信度を過小評価しているときに買い、価格に織り 二に、我々は中国から流動性流入の波が絶え間なく続 込まれた確信度が強すぎれば買いを控えるというこ くと予測していました。第三に、我々はウォールスト とです。不透明な金融政策(デフレリスクを含む)、 リートが「リスクを征服した」と信じていました。デ 失業、雇用不足の期間においては、テクノロジーセク リバティブやトランシェなどを通じたリスクの細分 ターやエネルギーセクターなど、成長をもたらす分野 化と標準化により、リスクは実質的に存在しないと考 に注目することが重要だと指摘するパネリストもい えられていたのです。そして、こうした自信過剰で過 ました。何人かの参加者は、投資機会がどこにあるの 度に楽観的な心理が、危機につながる行き過ぎた行動 か自らの見解を述べましたが、そこに至る戦略は異な の土台を形成したのであり、「もっともリスキーなこ るものでした。 とはリスクがないと考えることだ」とマークス氏に言 わしめたのです。 日本 CFA 協会 ストラテガス・リサーチ・パートナーズ社の執行パー トナーであるジェイソン・トレナート(Jason 1 Trennert)氏は、リターンが見いだせる場所として、 つつも行動し続けるということがその助言です。とは 上場株式市場を示唆しました。しかし、将来の予測不 いえ、この「引き延ばされた不確実性の時代」は、昨 可能性につながる矛盾した力についても言及しまし 年のカンファレンスに満ちていた暗く悲観的な論調 た。我々は市場の均衡を回復するために、金融政策に よりもはるかに楽観的です。 あまりに多くを求める一方、企業行動と市場のイノベ ーションを抑制することになる規制政策(ドッド-フ ランク法における多くの規制のような)を採用してい ます。同氏は 2014 年がレバレッジド・バイアウトの 執筆者 リンダ・ロッテンハウス(Linda Rottenhouse) CFA協会の資本市場政策ダイレクター。投資プロダク トや投資規制問題を担当。法学博士。 年になるだろうと予想しました。 (翻訳者:清水 英佑、CFA) チルトン・インベストメント・カンパニー社 CEO のリ チャード・チルトン(Richard Chilton)氏は、市場 英文オリジナル記事はこちら: は恐怖と不安で成り立っていると述べました。同氏は http://blogs.cfainstitute.org/marketintegrity/2013/12/02/f 投資判断において、「役員室の DNA」―有能な経営陣 ear-and-anxiety-investing-in-todays-marketplace/ と一貫して優れた意思決定―に注視するよう助言し ました。 また、エレン・シュルマン(Ellen Shulman)氏(エ ッジヒル・エンダウメント・パートナーズ社執行パー 注) 当記事は CFA 協会(CFA Institute)のブログ記事 を日本 CFA 協会が翻訳したものです。日本語版および 英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の 内容が優先します。 トナー、CFA)、ドン・リンゼイ(Don Lindsey)氏(ジ ョージ・ワシントン大学 CIO)、スコット・マルパス (Scott Malpass)氏(ノートルダム大学副学長で CIO) らの基金専門家は、投資機会のありかについて、異な る観点を示しました。シュルマン氏は、市場の非効率 性を追求しており、現在は苦しんでいるものの鉱業が 「興味深い」と指摘しました。小売業界にも多くの混 乱があり、新興国市場の消費者パワーの成長が向こう 10 年から 20 年にわたって注目すべき領域であるとし ました。一方、リンゼイ氏は資産配分アプローチを信 用しておらず、グローバル市場における個別の投資機 会を求めるよう助言しました。特に言及したのはコン テナ船や、米国株式市場の強さについてでした。マル パス氏はトップダウンアプローチを好み、保護主義と 中央銀行による巨額の刺激政策によって市場全体に 人為的なバブルが産み出されていることへの懸念を 表明しました。 こうした議論のすべては、投資機会を追い求めている 投資家たちに何を示唆しているのでしょうか。警戒し 日本 CFA 協会 2
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