2015. 8月号 - 経済広報センター

月刊
第37巻第8号通巻432号2015年8月1日発行(毎月1回1日発行)1980年10月23日第3種郵便物認可
8
2015年
◆マスコミ事情
◆企業広報研究
『週刊東洋経済』の編集方針と今後
『週刊東洋経済』編集長 髙橋由里
「インターナルコミュニケーション」
から
「インターナルマーケティング」へ
〜インナーが変われば業績は上がる〜
(株)電通 マーケティングソリューション局 部長 竹嶋理恵
(株)電通 インターナルマーケティング部 チーフプランナー 小山雅史
◆経済広報センター活動報告
◆メディアに聞く
432
August
エネルギーミックスをどう考えたらいいのか
21世紀政策研究所 研究主幹 澤 昭裕
(株)テレビ朝日 報道局情報センター情報番組統括担当部長 名村晃一
今 月 の 表 紙
NEXCO中日本が2012年にオープンした
「コミュニ
ケーション・プラザ川崎」
様々な施設があり、
“みち”を
「造る・守る・愉しむ」た
めの取り組みを分かりやすく見学できる。写真は高速
道路を管理する
「川崎道路管制センター」
『経済広報』では、裏表紙に関連する写真・イラストを表紙に
掲載しています。
8
月の動き
国内
6日
6月の景気動向指数速報
(内閣府)
6~7日
日銀の金融政策決定会合
10日
6月の国際収支速報
(財務省)
7月の消費動向調査結果
(内閣府)
7月の景気ウォッチャー調査
(内閣府)
17日
4~6月期GDP
(国内総生産)
速報
(内閣府)
19日
7月の貿易統計
(財務省)
28日
7月の失業率
(総務省)
7月の有効求人倍率
(厚生労働省)
海外
4~6日
ASEAN地域フォーラム
(クアラルンプール)
5日
6月の米貿易収支
(米商務省)
7日
7月の米雇用統計
(米労働省)
13日
7月の米小売売上高
(米商務省)
18日
7月の米住宅着工件数(米商務省)
28日
7月の米個人所得・消費統計(米商務省)
2015年8月号目次
マスコミ事情
『週刊東洋経済』
の編集方針と今後
2
髙橋由里(『週刊東洋経済』編集長)
企業広報研究
「インターナルコミュニケーション」から
「インターナルマーケティング」へ
4
~インナーが変われば業績は上がる~
竹嶋理恵((株)電通 マーケティングソリューション局 部長)
小山雅史((株)電通 インターナルマーケティング部 チーフプランナー)
メディアに聞く
気持ちよく通勤・通学してもらえる番組づくり
7
名村晃一((株)テレビ朝日 報道局情報センター情報番組統括担当部長)
経済広報センター活動報告
エネルギーミックスをどう考えたらいいのか
8
澤 昭裕(21世紀政策研究所 研究主幹)
地方創生と日本経済の活性化
10
林 宜嗣(関西学院大学 経済学部教授)
中国メディアが触れた「近江商人」と「おもてなしの心」 12
~中国ジャーナリストにどう映ったか~
日本・台湾連携でグローバル社会を打ち勝つ
日系企業と現地メディアとの関係強化の課題を探る
14
―シンポジウム「インドネシアにおける広報活動のあり方」を開催―
16
ANGLE
地方創生の体験ツーリズム演出家
玉木欽也(青山学院大学 ヒューマン・イノベーション研究センター所長)
18
技術広報研究⑥
実際の現場で技術を伝える
戸田建設
(株)
NEW
企業広報講座ダイジェスト1
広報人材育成プログラムに注力
〜企業広報講座と講演会〜
NEW
19
20
国際プロジェクト紹介①
KKC米国ビジネススクール教授招聘プログラム2015
21
連載
経済広報センター NEWS
企業広報ニュース(広報トピックス/ Book)
企業・団体のCSR活動
(NEXCO中日本
(中日本高速道路(株)))
8月の動き
22
25
裏表紙
表紙裏
発行/一般財団法人経済広報センター 国内広報部
東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館 TEL:03-6741-0021
印刷/三葉株式会社 TEL:03-3294-4751
※本誌掲載の記事・写真・イラスト・図版の無断掲載を禁じます。
2015年8月号〔経済広報〕
1
マスコミ事情
『週刊東洋経済』
の
編集方針と今後
髙 橋 由 里(たかはし・ゆり)
『週刊東洋経済』
編集長
数字から人へ
昨年、編集長を引き継ぐに当たり、
「人の交差点に
なる」
「機動性を高める」
「過去に学ぶ」という3つの
新方針を掲げました。それ以来、ゆっくりとですが
着実に誌面改革を進めているところです。
ました。1人につき8~ 10ページを割いて描くこ
とも珍しくなく、読者からも多くの反応をいただい
ています。
こうした
“人もの”
を始めたことで、思わぬ発見も
ありました。どうもインターネットメディアへの対
人の交差点になるとは、ちょっと格好付けた言い
抗策としても有効に働いているようなのです。8
方かもしれません。要はもっとたくさんの人に誌面
ページというと字数にして9000字近くのボリュー
に登場してもらおうということです。
ムとなります。これを一般的なネットニュースの体
人間というのは、他人のことがどうしても気に
裁で掲載した場合、最終行までたどりつくにはペー
なって仕方がない生き物ではないでしょうか。経済
ジを10回程度クリックする必要があります。不思
誌であろうとも、人が読むものである限り、その欲
議なことに、雑誌で8ページ読むのはそう苦になら
望に応える必要があると思います。人が織りなすス
ないのに、ネットで10ページ読んでくれる人はそ
トーリーやドラマをもっと伝えたい。キャッチフ
う多くないと聞きます。結果的に、人ものは印刷メ
レーズも
「経済はドラマチックだ。」に変えて、新聞
ディアの特性を生かすことになっています。
広告では誌名の脇に並べています。
あえてこう宣言したのには、小社特有の事情もあ
ります。
雑誌ならではの量と深みを
2つ目の方針であります
「機動性」
、これは週刊誌
私たち東洋経済の記者は、全員が『会社四季報』の
として当然必要なことですが、最近はその質が特に
記事を書いています(唯一の例外は編集長です)。3
問われていると思います。スピードだけでいえば
カ月に1度、担当企業について財務分析し、独自の
ネットに雑誌はまったくかないません。ただ、たと
業績予想を立てる訓練を積んでおり、基本的に数字
え一拍遅れたとしても、雑誌ならではの量と深みを
に強い人間の集まりです。これは一朝一夕にはなし
伴えば十分に追いつき追い越せるはずです。
得ない財産だといえるでしょう。
2
ら、
「社長の器」
「ひと烈風録」
といった連載も開始し
小誌は昨年来、第1特集が始まる前の部分に「巻
ただ一方で、四季報でなく小誌に記事を書くとき
頭特集」や「深層レポート」と銘打った短い特集記事
にも、ついつい数字ばかりを並べるような記事が少
を週1~3本掲載しています。ここが、先ほど申し
なくなかったことも事実です。そういう記事はどう
上げた人もの、および機動的な企画の主な収容場所
考えても面白くない。今は、大げさに言えば
「数字
です。最近では、
「マクドナルド絶体絶命」
「家電量販 から人へ」の意識改革の最中でもあります。
終わりの始まり」
「この秋上陸 ネットフリックスが
具体的には、
「さようならミスター牛丼、吉野家・
やってくる!」
「ドローン襲来」
といった話題のテー
安部修仁」「テリー・ゴウ『私はシャープにだまされ
マを、それぞれ10ページ内外のボリュームでお届
た』
」
「負け続けたプリンス、ローソン玉塚新社長の
けしました。
逆襲」「ドン・キホーテ安田会長、わが勇退」「糸井
小 誌 に は さ ら に 前 の 部 分 に「 核 心 リ ポ ー ト 」や
重里激白、僕たち
『ほぼ』上場します」といったロン
「ニュース最前線」といった速報ページがあります
グインタビューや人物ストーリーを随時掲載しなが
が、これらは最大でも1つの記事につき2ページの
〔経済広報〕2015年8月号
マスコミ事情
分量です。もう数段量の多い「巻頭」や「深層」を用意
す。逆に言いますと、定期購読の比率が低い。これ
することで、雑誌に厚みを持たせる戦略です。
には長短あると思いますが、あえてマイナス面を申
雑誌のメインコンテンツである第1特集について
し上げれば、週によって販売部数のブレが大きい構
も例外ではありません。昨年でいえば、秋の日本銀
造であること、書店の相次ぐ閉鎖によるコンタクト
行による電撃追加緩和に際しては、まず8ページの
ポイント減少の影響を受けやすいこと、などがある
巻頭特集を打ち、さらに翌週は第1特集を差し替
でしょう。
え、
「日銀バブルが来る!」と題した38ページを組み
こうした中で、定期購読者を増やしていくことは
ました。それより少しさかのぼる7月には、
「中間層
これまで以上に重要となっています。もちろん、ほ
への警告」と題した第1特集で、トマ・ピケティの
かの消費財同様、雑誌にとってもロイヤルカスタ
『21世紀の資本』を国内の雑誌としては初めて大き
マーあるいはファンの存在はとても心強いもので
く取り上げました。その後、企業経営者をはじめた
す。
くさんの方々に
「東洋経済で初めてピケティの存在
小誌はこれまで第1特集を主体に構成してきまし
を知った」と言っていただいております。今年1月
た。もちろん、これにもちゃんとした理由はありま
には、ピケティ氏の来日に合わせ「ピケティ完全理
した。小誌の定価は690円で、週刊誌としては高額
解」を大特集。同号は2回も増刷がかかるという、
です。それならば1つのテーマをぐっと深掘りし
うれしい誤算となりました。
て、保存するに足りる内容を詰め込もう、ムックや
過去に学ぶ
3つ目の「過去に学ぶ」は、常日ごろ、私個人とし
新書と引けを取らないようにしよう、それならば
きっと手に取ってくださるだろう。私たちはそうし
た仮説をずっと検証してきたように思います。
ても必要だと思っていたことです。特に、昨今の
ただ、定期購読者にしてみれば、そのテーマに
ように安全保障政策や国際情勢不安が大きなテー
まったく関心がない週は、ほかにニュースと連載く
マになっている時代には、歴史についての知見が欠
らいしか読むところがないことになります。今は第
かせないのではないでしょうか。特集としては「ビ
1特集の量は少し減らしても、巻頭や深層でバラエ
ジネスマンのための歴史問題」や「世界史&宗教」と
ティーを持たせる
「多特集」構成に切り替えること
いった第1特集がこれにあたります。前者の「ビジ
で、興味がある号だけではなく毎号注目していただ
ネス……」は、朝日新聞の慰安婦報道が大きな議論
ける方を1人でも増やせればと思っています。
となっていた時期に、小誌としてリベラルな見地か
多特集化に合わせ、表紙の立て付けも変えまし
ら問題提起したもので、後者はIS(イスラム国)な
た。具体的には面の一番上、誌名のさらに上の部分
ど世界の混乱のルーツを歴史に見るという内容でし
に配置している帯見出しです。これまでは約1セン
たが、いずれも想定した以上の方々に手に取ってい
チメートル幅の帯に20字強の文章を流していまし
ただけました。
たが、この帯を大幅に拡張。第1特集に加えて、巻
“過去もの”に関していえば、歴史というほど大げ
頭や深層についても紹介できるようになりました。
さなものではないものの、少し前に起きた重要事象
小誌は今年120周年を迎えます。創刊の目的であ
についてあらためて振り返る記事も随時、掲載して
る
「健全なる経済社会の発展」
に貢献するという姿勢
います。やはり新たに始めた不定期連載「シリーズ
は、これまでもこれからも私たちの基本です。ただ
あの時」では、ダイエー再建や地下鉄サリン事件な
し、一見、経済と直接関係なさそうに見えるテーマ
どを取り上げてきました。
でも、社会的重要性がある場合は取り上げることを
さて、先ほど申し上げました巻頭特集や深層リ
いといません。昨夏、久々の増刷となった「実家の
ポートの充実、これもまた一種の誌面改革といえま
片付け」
や、
「クスリの裏側」
「学校が危ない」
などの特
す。第1特集の前に配置しているのも、新しい誌面
集がそれにあたります。業界誌や専門誌が多数存在
を知っていただきたいためのことです。
する分野であっても、普段接触のない私たちがタ
今後の編集方針
ご存じない方も多いと思いますが、小誌は街の書
店や駅の売店における販売比率が比較的高い雑誌で
ブーのない取材をかけることで、問題の本質が明ら
かになることがあります。それもまた経済誌の使命
だと信じ、今後も折に触れ挑戦していきたいと思い
ます。
k
2015年8月号〔経済広報〕
3
企業広報研究
「インターナルコミュニケーション」から
「インターナルマーケティング」へ
~インナーが変われば業績は上がる~
竹 嶋 理 恵(たけしま・りえ)
(株)
電通 マーケティングソリューション局 部長 小 山 雅 史(こやま・まさし)
(株)
電通
インターナルマーケティング部
チーフプランナー 竹嶋理恵氏
なぜ、今「インターナルマーケティング」か
信、企業活動への意識の共有化、ひいては企業と社
皆さんは「インターナルマーケティング」という言
と思う。では、
「インターナルコミュニケーション」
員の関係づくりに励んでいらっしゃるのではないか
葉をお聞きになったことがあるだろうか? マーケ
と
「インターナルマーケティング」は同じことなの
ティングの実務者必携の書である『コトラーのマー
か? という疑問をお持ちなのではないだろうか。
ケティング・マネジメント』でフィリップ・コト
ラーは以下のように述べている。 この疑問にお応えする前に、なぜ今インターナル
マーケティングなのか、その背景をお話したい。
「エクスターナルマーケティングの前にまず、イ
背景の一つ目として、企業を取り巻く「環境の複
ンターナルマーケティングが必要である」
「社内のス
雑化」というものがある。昨今、企業のグローバル
タッフがすばらしいサービスを提供する心構えがで
化やM&A(企業の合併・買収)、機能別の分社化、
きていないのに、そのようなサービスを顧客に約束
アウトソーシング、さらにはスピードアップのため
するわけにはいかないからだ」。
の現場への権限委譲など、企業構造の複雑化が進ん
マーケティングの基本とは言うまでもなく、顧客
でおり、その結果、以前にも増して企業の中の意思
に向き合い、顧客の期待にあらゆる形で応えること
統一も「複雑化」してきた。また一方で、デジタル
で、
「売り」を創ること、である。本来、
「顧客」は外の
やディストリビューションシステムの発達により、
存在であるために、マーケティングと言えば、顧客
チャネルの多様化が進み、顧客接点も複雑化してい
という外部の存在に向き合うエクスターナルマーケ
る。特に購買する顧客の
「期待」
が単なる
「モノ」
への
ティングを指す。一方でコトラーがここで言う「イ
期待ということにとどまらず、そのモノと共に提供
ンターナルマーケティング」とは、企業から見たら
されるサービス
(例えば、販売員の説明、接遇や、
内部
(=インターナル)の存在である社員に注目し、
アフターサービスなど)に差別化を見いだすように
顧客に向き合うための社員と企業の関係づくりを行
なった
「サービス化」
の時代において、この顧客接点
うことを意味している。
の複雑化は、コトラーの言う「社内のスタッフがす
この文章を読んでいただいている多くの皆さん
は、広報のご担当者として、日々社員への情報発
4
小山雅史氏
〔経済広報〕2015年8月号
ばらしいサービスを提供する心構え」がより求めら
れるようになったともいえるだろう。
企業広報研究
もう一つは、「従業員価値観の多様化」である。既
とりが、会社へのロイヤルティーを高め、自ら積極
に日本企業においても生涯雇用システムの崩壊が言
的に顧客に向き合い、業績向上を図るための行動を
われて久しいが、若年層の就業意識が「永続勤続を
起こすグッドスパイラルをつくること、と意味付け
企業に期待しない」
「仕事よりも自分のプライベー
られる。
トを重視」など大きく変化している。また、政府の
振り返ってみると、従前の「インターナルコミュ
ワークライフバランスの重視や、女性活用の推進、
ニケーション」は従業員全体のベクトルを合わせる
企業のグローバル化に伴う国内外での外国人従業員
意識統一に重心が置かれているように感じている。
の増加、フレックス制度やオフィスのフリーアドレ
また、そのプロセスは「ビジョン策定」から始まり、
ス制などにより
「毎日同じ場所で顔を突き合わせな
その
「告知・通達」
が行われ、
「理解・共感」
を従業員
い」就業環境など
「働き方」に大きな変化が出てきて
の中に生み、
「行動」
を期待する、という流れになっ
いる。そのため就業価値観が多様化し、それに対応
ている。多くの企業はインターナルコミュニケー
するための雇用形態の多様化もここ数年進んでい
ションを積極的に行っているものの、それはイン
る。
ナーへの一方的なコミュニケーションにとどまるこ
最後は、メディアの多様化である。ソーシャルメ
とが多く、
「伝えようとしているが、理解されない」
ディアの重要性については言うまでもないが、こと
という問題を生み出している。仮に理解、共感を生
インナーということに限って言えば、従業員一人ひ
んだとしても、今度は行動を喚起したり、サポート
とりが気軽に情報発信をできると同時に、ソーシャ
したりする仕組みが十分でないために
「共感」
から
「行
ルメディアを通じて、従業員一人ひとりが(仮に顧
動」
への循環を生み出せない、という問題がある。
はんちゅう
客と向き合う必要のない部署に勤める人間であって
もちろんこれは広報という範疇を大きく超えた問
も)顧客と関係を持つ可能性が格段に高まった、と
題であり、全社として取り組まなければならない問
いうことである。見方を変えれば、昨今の幾つかの
題であろう。しかし、マーケティングこそマネジメ
事例に見られるように、ソーシャルメディアへの投
ントが中心的に取り組まなければならないものであ
稿によるインナーテロが高まり、それが直接顧客に
り、従業員一人ひとりが顧客に接し、顧客の期待に
簡単に届くというリスクが発生するようになった、
応えること
(=マーケティング)
が求められるのであ
ともいえる。
るならば、インターナルの問題をむしろ広報のみに
これらの3つの変化は、企業と従業員の関係作り
負わせるのではなく、広報も含めた全社横断的な問
において、単に従業員としての意識統一、モチベー
題として取り組み、戦略を持って考えなければなら
ション向上ということにとどまらず、いかに変化の
ないのではないか、と思う。
中で従業員が顧客と向き合い、その生産性を上げる
では、インターナルマーケティングにおいて、
か、といった「売り上げや業績の向上」、さらには社
グッドスパイラルをつくるためにどのように企業と
員一人ひとりが能動的にお客さまに相対する時代に
従業員の関係を考えればいいのだろうか。
対応するための「顧客と従業員の関係性の向上」、就
業意識の変化の中でいかに離職率を低下させ、人材
育成などの「コストを低減」させるか、さらに、従業
員のモラルの向上によるインナーテロの低減など
様々な可能性のある「リスクを低減」させることが求
められるようになった。つまり、
「会社が顧客と同様
に従業員にどう関わってどう関係性をつくり行動を
促すか」ということを企業として検討すべき状況に
なったといえよう。
グッドスパイラルをつくるために
インターナルマーケティングとは、従業員一人ひ
2015年8月号〔経済広報〕
5
企業広報研究
企業と従業員、あるいは従業員同士、さらには従
キルと武器を変える(新しい武器を与える)」、イン
業員を取り巻くステークホルダー(家族や、友人、
ナーの
「役割を変える
(あるいは変わったことを理解
あるいは営業などであれば優良顧客なども含まれ
させる)
」
、インナーの
「環境と行動を変える」
、イン
る)との関係など、企業とインナーがお互いを理解
ナーの
「ターゲットを拡大する」
である。
し合い共感し合う「いい関係」を築ければ、業務効率
1つ目の
「スキルと武器を変える」
であるが、これ
は上がり、業務のクオリティーは向上する。そし
は、社員一人ひとりや販売店などの関係者まで含め
てそれが業績向上や顧客からの評価に繋がり、グッド
た経営方針、マーケティング戦略の理解と共に、そ
スパイラルが出来上がる。このような、インナーと企
れと一貫性を伴ったマーケティングスキルアップや
業が双方に貢献し合う関係
(絆)
づくりがインターナル
実践的なセールスサポートを行うことである。その
マーケティングの目指す姿である。では、どのように
ためには、今までマーケティングとはおおよそ関係
双方に貢献し合う関係をつくり、行動を促すのか。
のなかった部署(例えば研究所や開発セクションな
まずは、インナーと企業の関係性における課題を
ど)へのマーケティングレクチャーや販売店など時
発見し、キードライバーを探ることにある。現在の
間的・地理的制約などで一括で対応するのが難しい
インターナルコミュニケーションのもう一つの課題
状況においてはパソコン、スマホ、タブレットなど
に、インターナル課題の定量化、ということがあ
によるマルチデバイスでのデジタルトレーニングシ
る。現在では、ES(従業員満足度調査)などの定量
ステムの構築や、ソーシャルリスニングを使い顧客
化の手法も存在するが、あくまでも従業員満足度で
の反応をビビッドにセールストークに反映させるサ
とどまっており、関係性を見ることや、将来への行
ポートなどがある。
動意識までの範囲をカバーできていない。インター
2つ目の「役割を変える」であるが、既にSNS
ナルの課題は経営者や個々の担当者の定性的な課題
(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)
などで
意識でとどまっていることがほとんどではないかと
情報を社員が自主的に発信している場合、その人に
考えている。それを定量化するために電通では様々
自分は顧客と接点を持っているという自覚を与え、
なステークホルダーとの関係性を幾つかの切り口で
いわば企業の広報役としての自覚を促すことであ
図る
「インターナルマーケティング診断プログラム」
る。あるいはマルチタスク化することによって新し
というものを開発し、できる限り課題を数値化し
い視点で自社を考えるきっかけを与えるなど、個々
「見える化」するようにしている。これは単に「関係」
の課題を把握するだけではなく、階層や部署間、拠
3つ目の
「環境を変える」
であるが、例えばオフィ
点間などの違いも把握することや、現状の既存プロ
スデザインの変更やイントラネットの再構築なども
グラムの貢献度合いや絆づくりのキードライバーを
これに含まれる。単に管理という視点のみならず、
発見するツールとして提供しているものである。こ
社員同士のコミュニケーションやノウハウの共有、
の結果は、課題発見、原因考察にとどまらず、定期的
創発を促すという視点も含めて行うことで、より生
に把握することによりKPI
(重要業績評価指標)
にも
産性、変革を促す。
なる。
4つ目はインターナルの「ターゲットを広げて考
この課題発見を踏まえ、インターナルマーケティ
える」ということである。いまやインターナルはサ
ングプログラムを構築し、「絆」そのものをどう強化
プライチェーン全体を考える必要があり、全サプラ
するか、さらには行動を促し、サポートするための
イチェーンに対してアプローチをしていくのか、さ
プログラムも検討していく。絆づくりは既に皆さん
らには外部の視点すらも取り込んで活性化させるの
が様々に取り組まれているインターナル施策にも含
か、ということを考えていかなければならない。社
まれる。従って、ここでは、実際に行動を促してい
員だけではもはや
「インターナル」
は十分ではない時
くか、ということにフォーカスを当ててお話したい。
代になっている。
社員の行動を促す4つのポイント
行動を促すキーポイントは4つ。インナーの「ス
6
人の視点の複合化が挙げられる。
〔経済広報〕2015年8月号
電通も1月より
「インターナルマーケティング部」
という専門部署を立ち上げ、この
「新しい課題」
に積
極的に取り組んでいる。
k メディアに聞く
気持ちよく通勤・通学して
もらえる番組づくり
■
「グッド!モーニング」木曜日のコメンテーターを
されているが、何時ごろスタジオ入りされている
のか。
名村 コメンテーターとしてだけでなく、番組を管
理している立場でもあるため、私は毎日午前3時に
名村晃一(なむら・こういち)
(株)テレビ朝日 報道局情報センター情報番組統括担当部長
入り、キャスターを含めた打ち合わせをする。番組
は4時55分に始まり、8時までの3時間の長丁場
けでなく、選手の人間性にスポットを当てたり、珍
だ。どのテーマについてコメントするかは前日夜に
プレー・好プレーだったり、面白い切り口にしてい
ディレクターからメールがくる。もっとも、深夜に
る。
別のテーマに変わることもたびたびある。コメン
■経済部長時代に、印象に残っていることは。
テーターは、そうしたニュースに対し、30秒から
名村 テレビは、映像がものを言うので、事件・事
40秒でコメントする。お昼の番組ではコメントが
故が発生したら、できるだけ早く現場に到着するこ
もう少し長い場合もあるが、朝の番組はテンポが特
とが重要だ。直後に到着すれば、生々しい絵を撮る
に重要だ。
ことができる。私が経済部長時代、若い記者がケン
■どのようなときにテーマが変わるのか。
タッキーフライドチキンの取材をしていたときに、
名村 朝方にかけて起きた事件・事故はもちろんの
以前、阪神タイガースが優勝し、大阪・淀川に投げ
こと、夜に起きた災害で状況が分からなかったが、
込まれたカーネルサンダース像が淀川下流で見つ
明るくなり被害がひどいことが判明した場合や、海
かったとの話を聞き出し、系列局の大阪・朝日放送
外での発生モノで日本の視聴者が寝ている間に起き
のカメラが現場に向かったことがある。その結果、
た事象などだ。新聞が報じていないような最新の
テレビ朝日の系列だけが、川から引き揚げられたば
ニュースで始めることも多い。また、テレビは映像
かりのヘドロにまみれたカーネルサンダース像をい
が重要なので、新聞ではそれほど大きく取り上げら
ち早く映像に収めることができた。このような例は
れない火災であっても、火災の恐ろしさを伝えられ
ほかにもある。
る映像が入れば、それがトップニュースになる。テ
■米国時代は。
レビは「百聞は一見にしかず」である。
名村 私は朝の番組でマーケット情報などを、平日
■夕方のニュースは主婦向けと聞いたことがある
は毎日ニューヨークから中継で伝えていた。新聞の
が、朝の番組は誰をターゲットにしているのか。
朝刊はおおむねニューヨーク市場の午前中の取引状
名村 朝の番組は、出勤する前のサラリーマン、お
況しか入らない。しかし、テレビの朝の番組では、
弁当を作っている主婦、朝早くからテレビを見てい
視聴者が新聞を開く時間に、ニューヨーク市場が取
る高齢者、そして学生など様々だ。若者をかなり意
引を終えた段階での情報を伝えることができる。テ
識している局もあるようだが、「グッド!モーニン
レビの強みをもっと生かした番組づくりに努めた
グ」は大人の層を含めた幅広い層に向けてニュース
い。 を発信している。
朝の番組なので、視聴者に気持ちよく会社や学
校に行ってもらえるようなニュース内容、伝え方
を目指している。スポーツニュースでも時間帯に
よって伝え方を変えている。結果を淡々と伝えるだ
k
(聞き手:常務理事・国内広報部長 佐桑 徹)
1963年生まれ。87年、日本繊維新聞社入社。88年、神奈川
新聞社入社。90年、毎日新聞社入社。98年、テレビ朝日入社、
経済部デスク、経済担当部長、米国総局長兼ニューヨーク
支局長などを経て、2013年から現職。
2015年8月号〔経済広報〕
7
経済広報センター活動報告
エネルギーミックスを
どう考えたらいいのか
澤 昭 裕(さわ・あきひろ)
21世紀政策研究所 研究主幹
経済広報センターは6月10日、「エネルギーミックスをどう考えたらいいのか」をテーマに、21世紀政
策研究所の澤昭裕研究主幹を講師とする講演会を開催した。出席者は、当センターの社会広聴会員や会員
団体・企業の広報・環境担当者など約100名。
「ベストミックス」
の考え方
エネルギー政策を考える上で、大切な軸は3点あ
る。1点目の軸は「安定供給」である。エネルギーは
欧州から日本のエネルギー政策を考える
先進国の認識として、エネルギー政策は国家戦略
である。
生活や経済活動の必需品であり、「安定供給」は最も
軍事・外交戦略とのリンクを考えながら安全保障
大切である。2点目の軸は「経済性」。電気は必需品
の観点からエネルギー政策を考えるのが、先進各国
であるが故に、逆進性が高い。電気料金が高くなる
の一般的な考え方である。例えば、欧州のエネル
と、低所得者は困窮する。さらに、経済活動の産業
ギー自給率に比べて日本の自給率は圧倒的に低い。
競争力にも直結するため、「経済性」は2点目の軸と
その現状にもかかわらず、エネルギーについて全く
して重要である。3点目の軸は「環境性」だ。地球温
危機感がない日本の現状は異様な印象を受ける。常
暖化問題としてCO2
(二酸化炭素)をできるだけ排
に、国家戦略との関係を意識している欧州に対し、
出しないという観点から、考えることも重要であ
日本の審議会では、原子力や再生可能エネルギーを
る。
何%にするかなどの議論しかない。
ベストミックスを考える政策担当者は、この3点
また、風力や太陽光などの再生可能エネルギー
の軸を、いかにバランスよく取るかということに
は、ドイツやスペインから学ぶべき教訓がある。そ
重点を置く必要がある。全てを満たすのは非常に
れは、再生可能エネルギーは一国主義では導入増は
難しく、原子力はこの3点をクリアする電源として
不可能であるということだ。国境間に送電線の連携
重要とされてきたが、福島第一原子力発電所の事
があることが大きなポイントとなる。なぜなら電気
故以降、安全性の観点から疑問視されている。その
はたくさんできればよいというわけではなく、使用
ため、原子力以外のエネルギー源を多様化する必要
する分だけ存在することが重要であるからだ。余っ
があるが、それぞれメリット、デメリットが混在す
た電気は捨てなければならず、逆に、足りないとき
る。
は停電になる。つまり、気候に大きく左右される不
個別のエネルギー源に視点が偏り、全体が見えな
くなってしまいがちだが、政府が発表したエネル
安定な再生可能エネルギーを一国で進めることは不
可能であり、送電線の国境間連携が重要だ。
ギーミックスの見通し案について、様々な角度・観
もうひとつはバックアップ電源の問題である。風
点から、いろいろな批判が同じ程度起これば、ある
が吹いているとき、太陽が照っているときは、先述
意味
「ベストミックス」だといえるのではないだろう
した電気の性質上、バックアップ電源である火力発
か。
電所を止めなければならない。電力会社からすれ
ば、発電できない火力を維持することは経済的に採
8
〔経済広報〕2015年8月号
経済広報センター活動報告
算が取れない。結果的に、燃料費の高い天然ガス発
かし、福島の事故以降、商業化に向け研究を続けて
電所は採算が取れないため廃止し、比較的燃料費が
きた福井県にある高速増殖炉
「もんじゅ」
は停止した
安い石炭の中でも質の悪い石炭を使うことで、ドイ
ままである。また、電力自由化の問題も重なり、今
ツではCO2 排出量が増えた年もあるという問題が
後は電力各社が競争の中で共同事業を進めなければ
生じている。
ならないという問題も顕在化している。さらに、こ
欧州全体の系統運用を担う組織、Entsoのアド
れまでは総括原価主義という料金規制により、安定
バイスによると、再生可能エネルギーの導入におい
した電気を生み出すための巨額な設備投資が、電気
ては、①時間をかける、②段階的に進める、③量的
料金で将来必ず回収できるという枠組みが存在して
制御を厳しくする、④コストを重視する、⑤早めに
いたが、その料金規制を廃止していくという流れもあ
市場に統合する、の5点を重視する必要があり、何
る。その歴史や背景など、複雑な問題が絡み合う中、
より思想哲学で語ることなかれということが大事な
核燃料サイクルの政策、再処理問題の今後について、
考え方である。日本はドイツやスペインなどの失敗
限られた期間で真剣に考えていく必要がある。
を繰り返してはならないのだ。
エネルギーミックスのカギとなる原子力
政府が示したエネルギーミックスで評価できる点
もうひとつは、安全性の問題である。現状、規制
委員会の新しい規制基準に適用すれば再稼働に繋が
るプロセスだ。しかし、誤解してはいけないのは
「安全」はやはり電力事業者に第一義的責任があり、
がある。一番のポイントは、数量的政策目標を明示
規制委員会の役割は原子力の
「安全」
な利用を図るた
したことである。具体的には、①エネルギー自給率
め、安全確保の基準をつくり検証することである。
を震災前の20%を上回る25%程度までに引き上げ
例えると、公道を走る車にアクセルやブレーキ、タ
たこと、②電力コストを現状よりも引き下げたこ
イヤなどがついているかどうか、運転する人が正常
と、③温室効果ガスは欧米に遜色ない削減目標を定
であるかどうかを確認する機関が規制委員会で、車
めたこと。この3つの目標を定量的に明示したこ
を動かすのは事業者である。
とは評価できる。結果的に、電源構成は再生可能
そして、一番の問題は原子力だけでなく、技術分
エネルギーが22 ~ 24%、原子力が20 ~ 22%、L
野においてゼロリスクはあり得ないにもかかわら
NGが27%、石炭が26%という数字にまとまった。
ず、安全神話の考え方が浸透していたことである。
ちなみに原子力を含むベースロード電源の比率は
本来、リスクの総トータルを低くするために、どの
56%程度となった。
ような規制をどのように組み合わせていくかという
しかし、この数値を具現化していく上での根本的
な問題は原子力だ。この数値目標は、原子力発電所
ことが安全規制の考え方である。
その状況で、何が一番大切なのか。それは、地元
の再稼働はもちろん、新設やリプレースは行わず、
住民にとって「安全」を信頼することではなく、「安
運転期間を40年から60年に延ばすことを見込んで、
心」が何よりも大切なのだ。つまり、地元事業者が
ぎりぎり達成し得る数値である。
プラントを安全に運転するために誠心誠意尽くし、
そして、意思決定の重みが一番強いエネルギー基
福島の事故を真摯に受け止め、ハード面、ソフト面
本計画では、原子力発電所の新設やリプレースなど
含めて、自らの頭で考えPDCAを回しながら、対
は一切触れられておらず、将来的な方向性を決める
策を工夫して繰り返し実行している姿勢が地元住民
に当たっての大きな課題は全く解決していない。
に伝わっているかどうかである。今後、中長期的に
ひとつは核燃料サイクルをどのように考えるかと
原子力の新設・リプレースを検討していくに当た
いうこと。原子力のアキレス腱といわれる最終処分
り、原子力の
「安全」
をどのように守っていくかを事
場の話、バックエンドといわれる核燃料サイクルは
業者として自信を持って、断固たる決意と意志を示
重要な問題だ。発電所で燃やした使用済み核燃料の
し、そしてそれを分かりやすく説明できなければ、
再処理を行い、プルトニウムとウランを分離し、プ
国民からの理解、信頼を得ることは難しいのではな
ルトニウムを高速増殖炉で燃やすことで、エネル
いだろうか。
ギー自給率を高くするという構想を抱いてきた。し
k
(文責:前 国内広報部主任研究員 金子雄太)
2015年8月号〔経済広報〕
9
経済広報センター活動報告
地方創生と
日本経済の活性化
林 宜 嗣(はやし・よしつぐ)
関西学院大学 経済学部教授
経済広報センターは、地方経済の発展・活性化に繋がる地方創生を広く考えてもらう機会として、関西
学院大学の林宜嗣経済学部教授を講師に招き、
「地方創生と日本経済の活性化」と題する講演会を東京(6月
25日)と大阪(7月2日)で開催した。参加者は社会広聴会員を含め東京55名、大阪32名。
東京一極集中化と地域間格差の拡大
ている。日本では東京一極集中が日本経済の高コス
地価は土地需要のバロメーターである。2014年
ト体質になっている。東京では交通機関が非常に混
のデータによると、東京以外の地方圏の地価は下落
雑しているが、東京以外の地域では資産の遊休化や
傾向が続いており、地方の経済活動の回復が遅れて
居住地選択に制約があり、東京一極集中は社会的、
いることを示している。また、人口増減予測から、
経済的、財政的なロスの増大に繋がっている。しか
2035年までに地方によっては労働人口が40%以上
し、東京一極集中を抑えるために国民に地方への居
減少するとの見方もある。このように東京一極集中
住を単純に勧めるだけでは状況は良くならない。ま
には歯止めがかからず、今後も続くと予測されてい
ず、地方中枢都市の戦略的な育成が必要である。す
る。
なわち地域の広域的なエリアの中に中枢となる役割
一方、労働生産性の観点から、日本の生産性は欧
を担うことができる核都市を育て、戦略的連携を図
米諸国と比較して高くない上、国内においても東京が
ることを考えなければならない。そのために地域、
突出し、地方圏でも地域間格差が大きくなっている。
そしてその核を成す大都市を強化することが国民経
地域活性化の両輪
済の再生に繋がるといった国の認識が不可欠であ
る。欧州では既に首都以外の大都市の強化が進行中
地域間格差をなくすためには地域を活性化させる
であり、そのための地方分権化が積極的に進められ
必要がある。地域活性化には、
「地方創生のための環
ている。地方分権は地方に対してより大きな自治と
境づくり」と
「地方の取り組み」の両輪が機能しなけ
政治的な裁量を与え、多くの欧州の都市や地域にお
ればならない。
「地方創生のための環境づくり」では
いて、新たな成長戦略が展開できるようになった。
東京一極集中の抑制と地方分権改革がキーである。
「地方の取り組み」では抽象的なプランではなく、地
域の現状や課題の分析・調査、そして政策プランニ
ングの転換が重要である。次にこれら両輪について
詳しく述べる。
地方創生のための環境づくり
●地方中枢都市の強化と地方分権
10
も有利な地域に本社を置くスタイルが一般的になっ
地方の取り組み
●地域政策の問題点
従来の地域政策の第1の問題点は、政策目標が抽
象的で網羅的なことである。これは、地域経済の強
みや弱みが把握できていないなど、現状分析が不十
分なことに起因している。第2は、政策プログラム
が総花的なことである。事業効果の分析が不十分な
世界的に見ても東京のような首都への一極集中は
ため、どの事業を進めればどのような影響があるか
むしろ例外である。米国でもニューヨークに本社を
不明である。さらに財政状態が悪いので、住民に直
置くのは大企業の1割強であり、ビジネス戦略上最
接影響の少ない部門の職員やサービスから削減して
〔経済広報〕2015年8月号
経済広報センター活動報告
いるので、将来への重大な影響が懸念される。第3
は、単なる管理委託の枠を超えて、民間企業の業務
は、リスクが伴う政策は受け入れられにくく、成功
も認めている。これは、顧客である市民満足度を尺
事例に飛びつく傾向である。重視すべきは成功した
度にすることで、武雄市の活性化を含めた先進的な
プロセスであり、失敗事例も含めて、なぜ失敗した
取り組みであると評価したい。
かも十分研究する必要がある。
●自治体の役割と行政運営の発想転換
一方、自治体連携を成功させるには、政策の選択
と集中によるクリティカルマス(ある商品やサービ
従来の自治体の行政運営では財政収支バランスに
スの普及率が一気に跳ね上がるための分岐点)を突
注意して行政サービスを供給していた。財政が厳し
破する必要がある。その際、単独の自治体が経済的
くなると自治体経営という発想の下、最小の経費で
な多様性をフルセットで担うのでなく、各自治体が
最大の効果(ベストプラクティス)を考えるようにな
それぞれの得意なところを担いながら自治体同士が
る。しかし、地域経済の活性化を政策目標に掲げる
協力し合い、連携全体で経済的な多様性を実現する
と、自治体は民の役割であった分野へ関与を拡大す
ことが重要である。
ることが必要となり、自治体経営から地域経営の発
地方創生のための環境づくり
想に転換せざるを得ない。
●地域政策の基本的考え方
地域の活性化を目標とした場合、政策の基本は、
●これからの広域連携
従来の広域連携は基礎的・必需的生活関連を中心
まちの状態を「生き残り」の可能性という物差しで測
とした行政サービス供給の効率化を目指していた。
り、どの程度の危険度にあるか、を正しく認識する
これからの広域連携は地域経営に必要な戦略的政策
ことである。そして「そのまちは何によって生き残
を策定し、経済開発と社会開発を中心にした政策効
ろうとしているのか?」を判断することが重要とな
果の最大化を実現するために連携と役割分担を目指
る。例えば人口が少なく、消滅しそうなまちにおい
すべきである。よって連携の形態も、かつては技術
て産業を興すのは非常に困難であり、むしろ経済的
的側面が中心であったが、これからは政治的側面で
に中心的な役割を果たしているまちと一体となるこ
の連携が必要になる。というのも、行政区域の枠を
とを考えるべきである。すなわち、まちの強みを生
超えて連携が進むと、利害の対立が発生する場合が
かすのか弱みをなくすのかを検討すべきであり、同
あり、調整の必要が生じるからだ。
時に政策の費用対効果も分析する必要がある。
●管理者主義から企業家主義への転換
都市圏においても、連携を行うべき圏域は重層的
であり、単一ではない。圏域を超えて各種政策を一
地域活性化の政策プランニングを考える上で最も
体的に進める際には、従来のような通勤圏、生活圏
重要な点は、企業家主義への転換である。従来のよ
だけではなく事業者が展開している企業活動圏も調
うな行政サービスをいかに効率よく低コストで提供
査した上で設定し、一体的政策の対象とする必要が
できるかを目標とした管理者主義から、リスクを覚
ある。
悟してでも、経済成長戦略アプローチ、つまり、リ
●連携実現に向けた課題、必要な取り組み
スクテーキング、イノベーションといった民間部門
地域連携を実現するにはビジョンの共有化が不可
志向によって強く特徴付けられる企業家主義へ転換
欠である。東京一極集中やグローバル化が進み、地
しなければならない。また、企業家主義を強めるに
域経済の衰退が続く中で、危機意識を背景とした地
は公民連携と地域連携を強めざるを得ない。すなわ
域経済の活性化は共通のビジョンとなりやすい。連
ち、企業家主義により、以前は自治体が担う仕事は
携に伴う大きな制度改革などには副作用が課題とな
全て税金で賄うとの考えがあったが、これからは公
る場合もあるが、副作用があるからやめるのではな
と民が連携する、さらには地域同士が連携して仕事
く、副作用の解消に向けた検討をすべきである。
を進めるといった考え方に転換すべきである。 地域経済の活性化のビジョンを共有し、課題の解
自治体と民間企業が利益とリスクを共有するとい
決に取り組むことで、公民連携・地域連携・広域連
う企業家主義的な行政運営が成功した例がある。佐
携が深まり、地方創生ひいては日本経済の活性化に
賀県武雄市は企業に公立図書館業務を委託し、来館
繋がると考えられる。
者数を増加させたケースである。しかしその背後に
k
(文責:国内広報部主任研究員 磯部 勤)
2015年8月号〔経済広報〕
11
経済広報センター活動報告
中国メディアが触れた
「近江商人」と
「おもてなしの心」
~中国ジャーナリストにどう映ったか~
「三方良し」と「おもてなしの心」
を体感
経済広報センターは5月14、15日の両日、中国
メディア8社
(人民日報、新華社、中国新聞社、北
京日報、科技日報、法制日報、中国日報、CCTV
ビジネスチャンネル)の日本支局長など10人の参加
を得て、「『近江商人』と『おもてなしの心』を知る」と
題する中国人ジャーナリストと日本企業との交流事
業を実施した。
古来、近江
(現在の滋賀県)は、中国の文化、風
習、産物が日本にもたらされたシルクロードの東の
築地玉寿司の中野里陽平社長から「おもてなしの心」の講話
最終地点であり、また日本の東西を繋ぐ要衝として
「近江を押さえた者は天下を押さえる」ともいわれて
中国メディア一行は、
「近江商人」
と
「おもてなしの
いた。この地で活躍する近江商人は中国大陸や朝鮮
心」を体感すべく、ツカキ・グループ本社、近江商
半島の物産を各地に転売するとともに、全国の産品
人博物館、渓山閣、立命館孔子学院、築地玉寿司を
を近江に持ち帰り、大きな成功を収め、大坂、京
訪問した。ツカキ・グループの塚本喜左衛門社長か
都、そして江戸へと活躍の場を広げていった。この
らは、代々伝承している家訓と近江商人の「三方良
ような近江商人の成功を支えたとされるのが、
「三方
し」の理念についての講話を聞き、併せて近江商人
良し」という理念であった。
「買い手良し、売り手良
発祥の歴史と現在まで伝承される理念の説明を受け
し、世間良し」という考え方は、得意先、取引先、
た。京都・亀岡の旅館、渓山閣では上村礼子女将か
地域社会の発展を同時に達成してこそ、真の企業の
ら、東京・築地の築地玉寿司では中野里陽平社長か
発展に繋がると考えるものであり、今でも日本企業
ら、それぞれ
「おもてなしの心」
の実践につき、話を
に広く根付いている。
聞くとともに、おもてなしを体感した。また、立命
また、「おもてなしの心」は、小売業、観光業など
のサービス業が特徴的であるが、
「お客さまの立場・
日中の伝統文化の違いをテーマにディスカッション
目線でものを見る」
「さりげない心配り」
「お客さまが
した。
喜ばれるサービスを提供する」に代表される日本人
固有の行動様式が外国人の心を強く打っているもの
である。
12
館孔子学院では中国人留学生と日本人学生と共に、
〔経済広報〕2015年8月号
中国メディアの反応
中国人ジャーナリストからは、
「日本企業は目先の
経済広報センター活動報告
利潤を追求するのではなく、中長期的な視野を持
ち、その根底に『三方良し』の理念が広く企業に浸透
しているということが伝わってきた」
「日本企業は理
念・哲学を守りながら、お客さまが喜ぶための商品
開発、サービスレベルの向上に常に努めていること
に心を打たれた」
「日本企業は常にお客さまの立場で
物事を捉える。中国の国有企業、民間企業関係者は
もとより、国民全体が自らを見つめ直すひとつの示
唆を与えてくれた」との評価を得た。
その後、中国日報は5月18日付けで、中国新聞
社が5月25日付けで、それぞれ中国国内向けに今
回の交流事業に関する記事を配信した。加えて、中
国日報は、5月29日付けの英字新聞で、「日本企業
長寿の秘密」と題する特集記事を掲載、近江商人の
「三方良し」の理念に沿った経営理念と「おもてなし
の心」が脈々と引き継がれていることが、日本企業
中国商務部ホームページ画面
の強みであるとした。さらに、5月25日には、日
http://cccfna.mofcom.gov.cn/article/i/dxfw/
本の経済産業省に相当する中国商務部のホームペー
cj/201505/20150500984264.shtml
ジに、中国新聞社の配信記事を掲載するという異例
の対応がなされた。 k
(文責:国際広報部主任研究員 藤原慎二)
2015年8月号〔経済広報〕
13
経済広報センター活動報告
日本・台湾連携で
グローバル社会を打ち勝つ
経済広報センターは、6月24日、経団連の東亜経済人会議日本委員会の協賛を得て、台湾経済研究院
の江丙坤董事長(会長に相当)、林建甫院長を招き、「日本・台湾連携でグローバル社会を打ち勝つ」をテー
マに講演会を開催した。
台湾経済研究院は、台湾最大の民間シンクタンクのひとつで、江董事長は日本と台湾の経済交流への多
大な貢献により、今年春、旭日重光章の叙勲を受けた。また、林院長は、経済・金融と中国との両岸交流
の専門家として知られている。
当日は、ASEAN地域などにおける日台企業の連携の可能性について、発言があった。
挨拶
既に多くの企業が
日本・台湾企業の
ウイン・ウイン関係強化を
槍田松瑩(うつだ・しょうえい)
連携し成功を収めて
いるが、本日はあら
ためて日本と台湾の
経団連 東亜経済人会議日本委員会 委員長
企業がウイン・ウイ
今年春の叙勲で江丙坤董事長が旭日重光章を受け
ンの関係を強化して
られたことをお祝い申し上げる。日本と台湾は強い
いく上で、有意義な
信頼の下、極めて良好な関係を築いており、経済関
お話が伺えるものと
係も順調である。
期待している。
講演
日台中経済関係と台湾経済
江 丙坤(コウ・ヘイコン)
台湾経済研究院 董事長
日本、台湾、中国の関係
14
●台湾の経済発展と日本の役割
1953年 か ら2000年 の 台 湾 の 年 率 平 均 成 長 率 は
8.2 % で あ り、 日 本、
韓国、フィリピンを
凌ぐ。台湾の経済成
1890年代から現在に至るまでの歴史的・地理的
長 に 関 し て は、 日
な関係から日本、台湾、中国は切っても切れない関
本の役割が特に大き
係にある。また貿易に関して、長年、日本から台湾
い。 例 え ば、1952年
に部品を輸出し、台湾で加工、中国で組み立てた
から1995年の各国か
後、日本に輸出するという三角貿易が三者の経済成
らの技術提携許可件
長を支えてきた。
数 を 見 る と、 全4196
〔経済広報〕2015年8月号
経済広報センター活動報告
件のうち、日本からの技術導入は2483件と全体の
期 間 で の 投 資 累 計 金 額 は24億5700万 ド ル、 件 数
日台産業の相互補完による
東南アジア新興市場共同開発の
ビジネスチャンス
では2772件となっている。さらに、JETROの
林 建甫(リン・ケンポ)
2014年度調査では、台湾の日系企業の81.8%が黒
台湾経済研究院 院長
59.2%を占める。また、2009年から2014年までの
字となっており、国別に外資系企業を比較した場
日台産業界が抱える課題
合、黒字企業の比率が最も高い。外資系企業の原材
料・部品の現地調達率を見ると、日系は54.2%で中
日本では、重要な技
国系企業に次ぎ、第2位となっている。
術を保有する中小企業
●中台の経済関係
が後継者不足に悩んで
1979年から2014年の間、台湾の中国に対する投
いる。その上、国際的
資は4万1397件を数え、総投資額は1473億ドルで、
な経験が不足している
台湾の全対外投資の61.4%を占める。
中小企業も多く、生産
台湾の活発な対中投資の背景には、1987年の蒋
拠点の海外展開に課題
経国総統による台湾老兵たちの中国大陸への親族訪
を抱えている。
問解禁、1992年に行われた海峡交流基金会(台湾側)
一方、台湾の場合も、
と海峡両岸関係協会(中国側)による経済・文化交流
OEMで成長を続けて
の合意がある。その後、両岸間の正式ルートの接
きた企業は、今日の国際競争激化の中で、付加価値
触・対話が中断された時期もあったが、2005年以
を高める必要性に直面している。加えて、台湾は、
降は頻繁な接触がなされ、2010年にはECFA(両
岸経済協力枠組協定)を締結するに至った。
日台関係の現状と経済面での連携の可能性
2008年5月に就任した馬英九総統は、同年9月、
日本との関係を「特別パートナーシップ」と位置づ
RCEP(東アジア地域包括的経済連携)
、TPP
(環太平洋経済連携協定)
といった地域の重要な経済
統合の動きに参加できていない。日台の協力は、そ
れぞれがこのような課題をクリアにするチャンスを
与えてくれる。
●日台協力の可能性
け、日本との友好関係や経済・貿易関係などをさら
台湾企業は、近年ASEAN諸国を域内ならびに
に発展させる考えを表明した。これを背景とし、現
第三国向けの重要な海外生産拠点として位置づけて
在の日台は過去40年間で最良の関係にある。事実
いる。現地生産品は、域内市場で特に韓国企業と競
として、東日本大震災後には、台湾から日本への義
合関係にある。
ASEAN主要国は、概して右肩上がりの経済成
援金・救援物資の提供や救援隊の派遣がなされ、こ
れを契機に日台の友好感情が国民の間で高まった。
長を実現しており、今後、ポテンシャルの大きな内
また、「台北国立故宮博物院展」が日本で初めて開催
需消費市場に転換する可能性がある。そして、RC
された。加えて、政府間では日台間でのオープンス
EPやTPPは、ASEAN域内の産業分業モデル
カイ協定や民間漁業取り決めなどが締結された。
に影響を与えるものと見られる。この中で、相互補
日本企業が中国やASEANに進出する場合に
完性の高い日台の企業が、協力体制を強化できれ
は、台湾企業との連携が有効だ。台湾企業は豊富な
ば、大きな成功を収めることができよう。また、A
海外ビジネス経験を有し、様々なノウハウを保有し
SEAN以外にも、国際的に大きなインフラ需要が
ている。
あり、ここにも日台協力のチャンスが存在する。 k
(文責:国際広報部主任研究員 藤原慎二)
2015年8月号〔経済広報〕
15
経済広報センター活動報告
日系企業と現地メディア
との関係強化の課題を探る
―シンポジウム
「インドネシアにおける広報活動のあり方」を開催―
経済広報センターは、6月15日、インドネシアにおける日系企業の広報活動の課題に関するシンポジ
ウムを開催した。東南アジア最大、世界第4位の人口を有するインドネシアは、近年、わが国の企業に
とって、市場ならびに投資先として、ますます重要となっている。
今後、日系企業が事業活動を円滑に展開していくためには、インドネシア国民の理解が不可欠であり、
そのためにも、現地メディアと適切な関係を発展させていく必要がある。
そこで、このシンポジウムでは、LSPP 注1 のイグナティウス・ハルヤント代表、立命館大学国際関
係学部の本名純教授、『ジャカルタ・ポスト』紙のコーネリアス・プルバ副編集長から、日系企業が現地メ
ディアとの関係を深めるための課題を聞いた。
「 他国企業と比べて、日系企業はインドネシア・メディアへ
の関わりに消極的」
「雇用確保やCSR(企業の社会的責任)などの一般情報を、個々のジャーナリストに定
期的に情報提供するべき」などの発言があった。加えて、インドネシアでもソーシャルメディアが存在感
を高める中、現地ジャーナリストと関係を深める上で、その活用の必要性も指摘された。
このシンポジウムは、東京とインドネシアをインターネット回線で結び行われた。
メディアと、州レベルのローカルメ
ディアがある。ナショナルメディア
は企業広報において重要だが、実際
に事業を行っている地域のローカル
メディアとの関係構築も大切だ。地
方においては、ローカルメディアの
影響力がナショナルメディアを凌ぐ
こともある。
インドネシアのローカルメディア
は一般に、苦しい運営を強いられて
いる。経営が健全なのは、3割程度
といわれ、ジャーナリストの賃金は
総じて低い。
ローカルメディアのジャーナリス
インドネシア・メディアの構造
イグナティウス・ハルヤント
LSPP エグゼクティブ ディレクター
インドネシアには、全国をカバーするナショナル
16
〔経済広報〕2015年8月号
トと良好な関係を構築するためには、定期的に情報
提供を行うことが必要だ。また、ジャーナリストを
対象としたジャーナリズムのトレーニングや、地元
住民対象の健康診断や学校への支援など、地域での
CSR活動などは、ローカルジャーナリストに高く
経済広報センター活動報告
評価される。これらは、ローカルジャーナリストと
規模集会への参加の呼び掛けが行われた。これによ
良好な関係を築く上で有効だ。
り、無党派層がより積極的に政治に関与することと
インドネシアは、誤報などの問題を解決する制
度がよく整っている。報道された側には、「right to
なり、ボランティアとして戸別訪問などの活動を行
うようになった。
reply」
、すなわち、報道機関へ報道内容に関する問
ソーシャルメディアを生かした新しい政治運動の
い合わせを行い、その回答を得る権利が法的に保
成功は、インドネシアの民主主義にとって大きな転
証されている。報道機関が回答しない場合や、双
換点になったといえよう。
方が同意に至らない場合には、
「Press Law(プレス
インドネシアと日本-現地メディア
の視点
コーネリアス・プルバ
法)
」に基づき設立された独立機関「Press Council」
に、調停を仰ぐことができる。誤報などに対して
は、メディアを責めるのではなく、この制度を活用
して報道そのものを正していくべきである。
大統領選挙に見るソーシャルメディア
本名 純(ほんな・じゅん)
立命館大学 国際関係学部教授
『ジャカルタ・ポスト』
紙注2副編集長
日本企業は一般にインドネシアのメディアと関わ
ることに消極的である。他国企業はもっとオープン
で、例えば、サムスンがインドネシアでのメディア
発表した際には、本社社長が出席した。また、ほか
のアジア諸国の企業は、ジャーナリスト個人に対し
て、eメールで情報を提供するとともに、頻繁に記
者会見やブリーフィングを開催している。しかし、
ほとんどの日本企業は、このような活動を行ってい
ないため、インドネシアのメディアが日本企業関連
の情報を得るためには、日本企業に問い合わせなけ
ればならない。
企業関連情報で関心が高いのは、CSR活動、雇
用の創出といった経済効果、現地従業員の待遇(給
東京会場でモデレーターを務めたロス・ローブリー氏
(エデルマン・ジャパン社長)
㊧と、本名氏㊨
与水準など)などだ。インドネシア人の読者は、専
門的で細かな情報を退屈に感じる傾向があるため、
平易な情報の提供を望みたい。
ジョコ大統領は、早くからソーシャルメディアの
最近は、インドネシアのジャーナリストも、ソー
重要性を強く意識していた。例えば、2012年のジャ
シャルメディアを重要なニュースソースと考えてい
カルタ州知事選においては、ジョコ氏が平服で市民
る。日系企業も、これらの活用を考えるべきだ。 と交流する姿が、「新しいジャカルタ」というキャッ
チフレーズと共に、ソーシャルメディアに流れ、
ジョコ氏の庶民的なイメージが浸透することとなっ
た。
州知事時代には、ジョコ氏が屋台でご飯を食べた
り、村人と洗濯したりする姿がソーシャルメディア
で発信された。この結果、市民の間には、庶民派の
k
注 1: L S P P(Lembaga Studi Pers dan Pembangunan、
英語名Institute for Press and Development Studies)
は、インドネシアのメディアに関する調査研究機関
注2:『ジャカルタ・ポスト』紙は、1983年創刊のインドネ
シア最大の日刊英字紙
コーネリアス・プルバ氏は、2010年10月に、経済広
報センターの招聘で来日
新しいタイプの大統領への期待が高まっていった。
2014年の大統領選では、ソーシャルメディアで大
(文責:国際広報部主任研究員 長谷川正彦)
2015年8月号〔経済広報〕
17
ANGLE
地方創生の
体験ツーリズム演出家
現
在、2020年TOKYOオリンピッ
を志向した国際交流・人材交流の促
ク・パラリンピック招致の準
進に向けて、異宗教・多文化・多国
備に向けて国際交流・人材交流の促
籍に対応したコミュニティづくりを
進が期待されているが、将来に向け
実現し、そのコミュニティに向けた
た社会的な諸問題を鑑みると、オリ
『おもてなし総合サービス産業』の企
ンピック・パラリンピック開催後
画、体験型ツーリズムの全プロセス
にも、世界各国の体験型のツーリ
の総合的な演出、運営プロジェクト
ストたちに、継続的に国際文化交
のマネジメント[ヒト、モノ、カネ、
流をしてもらえるように、GlobalCEP【Global Cultural Experience
Professional】事業構想を提唱するこ
とにした。
●Global-CEPの人材像
図にGlobal-CEP事業構想の全体イ
メージを示した。Global-CEPの新た
な人材像を次のように仮定義するこ
とにした:
「日本の文化・芸術・コ
ンベンションの体験型ツーリズム
玉木欽也
(たまき・きんや)
青山学院大学 ヒューマン・イノ
ベーション研究センター所長
青山学院大学経営学部教授、ヒュー
マン・イノベーション研究センター所
長。国際戦略経営研究学会、および
イノベーション融合学会の理事。
早稲田大学理工学部工業経営学科助
手、青山学院大学経営学部専任講師、
同助教授を経て、現職。専門分野は、
事業創造戦略、グローバル製品戦略、
ソーシャルコミュニティデザイン、
地域・地方創生、ICTを活用した
人材育成プログラムの研究開発など。
情報、スケジュール]などを総合的
にプロデュースができる人材」
。
●おもてなし総合サービス
それぞれの地域・地方拠点におけ
る「おもてなし総合サービス産業」の
ビジネスモデルを構成するステーク
ホルダー(利害関係者)は、日本文
化・地方文化の衣食住を体験的な
サービスとして、滞在型の旅行・観
光プロセスを演出することを想定す
ると、以下のような様々な機関が社
会システムとして統合化されて実現
できるものと考えられる。
すなわち、体験型ツーリズムの全
プロセスに対応した旅行・観光サー
ビス活動、滞在型ライフスタイルに
関わる衣食住サービス、社会・交通
システム、情報メディア、地元商工
会や地方自治体などを、一貫性のあ
る「地方ブランド」として対外的にア
ピールして、各ステークホルダーが
そのブランディングに調和している
ことが理想といえる。
図 Global-CEP事業構想の全体イメージ

〔経済広報〕2015年8月号
k
技 術 広 報
研 究
6
戸田建設(株)
実際の現場で技術を伝える
技術広報について
戸田建設広報・CSR部には技術広報専門の理系
術の説明だけでは不十分であり、記者の目の前で模
型を用いた破壊実験を行い、壊れた状態を見てもら
うのが効果的である。
担当者を置いていない。部員は全員文系である。建
同社が五島列島で実証を進めている風力発電施設
設業では、技術が多くの分野にまたがっており、技
は、通常の広報戦略からするとホームページでの詳
術広報の担当をひとり置いたとしても、全ての分野
しい説明や動画共有サービスなどで動画を配信すれ
の技術を理解して伝えるのは非常に困難である。同
ば、視聴者の理解に繋がると思われるが、同社では
社では、技術に関するリリースは、そのリリース内
どちらも実施していない。
容の担当セクションが原案を作っている。広報・C
現場で説明することが最も正確な理解に繋がるか
SR部は、原案を作るに当たって、少なくとも部員
らであり、実際に見てもらうことで、巨大な風車が
が理解できる平易な表現をするよう担当セクション
倒れない・沈まないといった安心感を明確に伝える
に依頼している。
ことができるからである。
原案は広報・CSR部がチェックし、一般の人が
見て理解しやすい表現に整えている。
また、同社では、専門家向けの業界紙にも一般紙
五島列島と遠方ではあるが、現地に行って見学し
た人の感想がネットなどを通じて広がっている。
その風力発電は風車が洋上に浮かぶ「浮体式洋上
と同じ内容のリリースを配布している。このため、
風力発電」であり、世界的にも先導的な発電技術で
一般紙を意識してあまりに平易な言葉だけで表現す
ある。当初は風車の存在など全く知られていなかっ
ると、専門的な知識を持つ読み手に必要な情報が伝
たが、ここ2、3年で急速に広まった。これは、実
わらなくなることもあるので、理解しやすさと正確
証機(風車)が完成した2013年10月から実施してい
性のバランスを取るよう心掛け、ある程度は専門用
る見学会によるものである。すでに見学者は1000
語を用いた表現をしている。
人を超えている。
また、日本理科教育支援センターの小森栄治氏
戸田建設の技術広報の特徴
同社は取材で技術的な説明をするときは、実際の
建造物の見学会をできるだけ行うようにしている。
は同社の風車見学後、学校の教師約50名に風車を
テーマにした摸擬授業を実施。戸田建設はこのよう
な取り組みを通じて、多くの子どもたちに理学・工
学の面白さを伝えたい、としている。
特に新規の構造形式を有する建造物を説明する際
同社の価値創造推進室技術開発センターエネル
は、災害などにより万が一壊れた場合を想定するこ
ギーユニットの佐藤郁次長は、
「技術を深く理解して
とが重要となっており、壊れた物を見せないと技術
いる担当者自身が、風車を前に見学者に説明するこ
の理解に繋がらないことが多い。
とが、理解度の向上に繋がっている。また、地元の
建造物にとっては、壊れる際も機能をある程度維
人に対しても担当者が平易な言葉で具体的な数字を
持することで周囲に対して一定の安全性を担保で
示して説明することが重要である。このような広報
き、また壊れる箇所を限定することで修理を容易に
活動が地元を含めた社会への安全・安心の理解に繋
できる設計にすることが非常に重要な技術となって
がり、ひいては風車の実証実験の成功にも繋がって
いる。
いる」
と語る。 このような技術を記者に理解してもらうには、技
k
(文:国内広報部主任研究員 磯部 勤)
2015年8月号〔経済広報〕

1
企業広報講座ダイジェスト
広報人材育成プログラムに注力
〜企業広報講座と講演会〜
新任担当者向け
「企業広報講座」
「企業広報講演会」
を随時、開催しています。この講
経済広報センターは、会員企業・団体の広報担当
は何を語るべきか、テレビの著名な経済番組に取り
者を対象とする「広報人材育成プログラム」を実施し
上げられるにはどうしたらよいかといった、より実
ています。
践的で高度なテーマで開催しています。
「企業広報講
最も多く開催しているのが「企業広報講座」です。
座」
が基礎編なら、
「企業広報講演会」
は応用編といえ
これは、役職に関係なく、新たに広報担当になられ
ます。今年度は4月28日に、テレビ東京の名倉幸
た新任広報担当者を対象にしています。このため、
治経済部長兼WBSプロデューサーと相内優香アナ
「広報の基本」
「マスコミ対応」
「インターナルコミュ
ウンサーによる
「ワールドビジネスサテライト
(WB
ニケーション」
「危機管理広報」
「ウェブ広報」
「グロー
S)
の作り方」
を開催しました。7月には電通PRが
バル広報」「トップ広報」などの基礎的な企業広報に
実施した調査に関する講演会を開きました。
ついての講義を行います。今年度は東京で7回、大
阪で4回、名古屋で2回開催する予定です。講師
若手広報担当者の交流を支援
は、マスコミ編集局幹部や学者、PR会社、企業の
また、若手広報担当者の横の繋がりを希望する声
広報関係者と様々です。新任担当者が実務を行う上
もしばしば聞かれることから、3年前から「実務担
で必要な知識の習得や頭の整理に役立つような内容
当者の研修・交流会」を始めました。この会合は、
を目指しています。
参加者同士がグループで協力し合い、実際に手を動
既に5月18日に東京でPR総研の篠崎良一所長
かしプレスリリースを作成するなど、交流と実務を
を講師に、そして5月29日には大阪でハーバーコ
意識したワークショップ形式としています。さらに
ミュニケーションズの五十嵐寛代表取締役を講師
休憩時間を計1時間設け、若手広報担当者同士、会
に、広報の基本のテーマで開催しました。7月に
場を自由に歩き回り、名刺交換できるようにしてい
は、大阪と名古屋で、マスコミ関係者(大阪は産経
ます。今年度は、7月1日に山見インテグレーター
新聞、名古屋は中日新聞)を講師にマスコミ事情や
の山見博康代表取締役による「プレスリリース作成
マスコミ対応について学びました。
から記事化までの実践演習」
を開催しました。
「企業広報講演会」
を随時開催
このほか、その時々の最新の広報テーマを扱う
18
座は、ソーシャルメディアを活用した広報や経営者
〔経済広報〕2015年8月号
本誌では、次号から
「企業広報講座」
の講演概要に
ついて報告してまいります。 k
(文:常務理事・国内広報部長 佐桑 徹)
国際プロジェクト紹介①
KKC米国ビジネススクール
教授招聘プログラム2015
「KKC米国ビジネススクール教授招聘プログラム2015」では、6月1日から5日にかけて、4名のビジ
ネススクール教授が東京、京都、名古屋を訪問し、企業経営者、学者、政府・政党関係者などと面談した。
アベノミクスに関する国際的な関心が高まる中、日本経済の現状と展望、企業の競争力・グローバル戦略
などについて、活発な議論が行われた。プログラム最終日のシンポジウム
「グローバルな視点での企業競争
力」では、一橋大学のクリスチーナ・アメージャン教授を交え、熱心なディスカッションがなされた。
【招聘者】
ピーター・ゴールダー(Peter Golder)
ダートマス大学タック・ビジネススクール教授
ブルース・コグット(Bruce Kogut)
コロンビア大学ビジネススクール教授
ヤン A・ヴァン・ミーゲム(Jan A. Van Mieghem)
ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院教授
ジウン・シン(Jiwoong Shin)
イェール大学マネジメント・スクール教授
6/3 ファーストリテイリング 柳井正 会長・社長と
【主要日程】
6 / 1(月)
岡崎哲二
久米郁男
藤本隆宏
東大大学院教授「日本の経済」
早大教授「日本政治」
東大大学院教授「日本の製造業の競争力」
6 / 2(火)
冨田雅彦
中田喜文
藤野 寛
オムロン執行役員・経営戦略部長「オムロ
ンのグローバル戦略」
同志社大教授「日本企業の競争力-人的資
源管理の観点から」
島津製作所常務執行役員
「島津の成長戦略」
6 / 3(水)
江尻 良
小暮圭一
柳井 正
内田 章
6 / 4(木)
越智隆雄
石川祝男
藤村修一
曽山哲人
6 / 5(金)
朝倉 啓
IHI常務執行役員・経営企画部長
「IHI の成長戦略」
シンポジウム「グローバルな視点での企業競争力」
東海旅客鉄道執行役員・広報部長
「JR東
海の成長戦略」
大同メタル工業上席執行役員「大同メタル
6/4 越智隆雄 内閣府大臣政務官と
工業のグローバル戦略」
ファーストリテイリング会長・社長
「FRの成長戦略」
東レ常務「東レグループの成長戦略」
内閣府大臣政務官・自民党衆議院議員
「日本経済と成長戦略」
バンダイナムコホールディングス社長
「バンダイナムコのIP軸戦略」
全日本空輸執行役員「ANAの成長戦略」
サイバーエージェント執行役員・人材開発本部長「サイバーエージェントの成長
戦略」
【コーディネーター】
本山 明
6/4 バンダイナムコホールディングス 石川祝男 社長と
経済広報センター
国際広報部主任研究員
「KKC米国ビジネススクール教授招聘プログラム」について
米国ビジネススクール教授の対日理解促進と、政界、経済界、学
界、言論界関係者との意見交換促進を目的に1994年にスタート。
これまでの招聘者は約200名。
k
2015年8月号〔経済広報〕
19
5月17日~6月15日
4月23日~5月25日
NEWS
Keizai Koho Center News
電力中央研究所(千葉県
ンサーを迎え、経団連会館で、企
4 同志社大学経済学部で
/
28「企業人派遣講座」を実施
我孫子市)で「企業と生活
業広報講演会「『ワールドビジネス
し た。
( テ ー マ:「 科 学 と 技 術 ~
者懇談会」を開催し、生活者17名
サテライト(WBS)
』
の作り方」を
人々の安心・安全を守るための企
が参加した。
開催した。
業の取り組み~」、講師:竹林 一
参加者は、電力中央研究所か
人気経済ニュース番組
「WBS」
ドコモ・ヘルスケア 代表取締役
ら、研究所と我孫子地区の概要に
の制作スケジュール、制作体制
社長)
ついて説明を受けた後、我孫子地
などに加え、「取り上げたくなる
区内の地球工学研究所や環境科学
ニュース」
「頼りたくなる広報担当
研究所にある7つの実験設備を見
者」「選ばれるニュースリリース」
4
/
29
学し、同研究所が取り組む電力施
といった企業広報担当者の関心事
マ:「日本の産業とイノベーショ
設に関わる自然災害対策や環境問
についてトークショー形式で進行
ン~デジタル社会における新ビジ
題対策について学んだ。
した。
( 詳細は、本誌6月号を参
ネス開発」
、講師:緒方 宏俊 凸
照)
版印刷 情報コミュニケーション
プロデューサーと相内優香アナウ
4
/
23
4
/
24
講 座 」を 実 施 し た。
(テー
事業本部ビジネスイノベーション
富士通総研経済研究所
推進本部本部長)
に迎え、講演会
「中国経済の実態
4
/
28「企業人派遣講座」を実施
~中国との向き合い方~」を開催
した。
( テーマ:「企業の成長戦略
した。
と国民の経済的繁栄」、講師:山
4
/
29
口 力 みずほフィナンシャルグ
実施した。
( テーマ:「日本企業論
テレビ東京の名倉幸治
ループ コーポレート・コミュニ
~日本企業の国際戦略とその経営
報道局経済部長兼WBS
ケーション部長)
理念~日本の航空産業と国際戦
4
/
28
の柯隆主席研究員を講師
慶應義塾大学商学部で
PR・IR・危機管理
9月号
定価:1300円(税込)
編集・発行
株式会社宣伝会議
購読申込
http://sendenkaigi.com/
〔経済広報〕2015年8月号
早稲田大学国際教養学
部で「企業人派遣講座」を
[巻頭特集]組織も働き方も多様化 変わる
「従業員向け広報」
社内コミュニケーション改革
[レポート]
イントラネットの導入と活用
月刊「広報会議」読者サービスセンター [海外トレンド]
TEL: 0 3 - 3 4 7 5 - 3 0 1 0
インターネットからもお申し込みいただけます。
20
上智大学で「企業人派遣
カンヌライオンズ P R 部門レポート
略」
、講師:水野 徹 日本航空 国
締役相談役))
るが、一番重要なのは、女性活躍
を含めた、その先にある視点のダ
際提携部部長)
5
/
13
上智大学で「企業人派遣
イバーシティである」
と強調した。
5 慶應義塾大学商学部で
/
12「企業人派遣講座」を実施
マ:「日本の産業とイノベーショ
した。
( テーマ:
「企業の成長戦略
ン~バイオ医薬品開発について」
、
と国民の経済的繁栄」、講師:柏
講師:設楽 研也 協和発酵キリン
5
/
18
木 茂介 野村ホールディングス 執
執行役員・法務・知的財産部長)
R総研の篠崎良一所長が
「企業広
講 座 」を 実 施 し た。
(テー
(詳細は、本誌7月号を参照)
「企業広報講座
(第1回
東京会場)
」を開催し、P
報の基本とメディアリレーショ
行役財務統括責任者)
5
/
13
早稲田大学国際教養学
ン」をテーマに講演した。篠崎氏
5 同志社大学経済学部で
/
12「企業人派遣講座」を実施
部で
「企業人派遣講座」を
は、パブリシティーは信用度・組
実施した。
( テーマ:「日本企業論
織の活性化・財務・マーケティン
した。
(テーマ:
「科学と技術~人々
~日本企業の国際戦略とその経営
グ・リクルーティングの5つに効
の安心・安全を守るための企業の
理念~日本の自動車産業と国際戦
果をもたらすものであると述べ
取 り 組 み ~」
、 講 師: 堀 池 俊 介
略
(1)
」
、講師:橋本 博 トヨタ自
た。メディアリレーションについ
キユーピー 品質保証本部品質リ
動車 広報部企画室長 担当部長)
ては、日本の各マスメディアや記
者の特性、インタビューの仕組み
スク担当(兼)お客様相談室室長)
5
/
12
日本経済新聞に「『企業
5 14 ~ 15日 の 日 程 で、
/
14「『おもてなし文化』と『近
人派遣講座』がスタート」
江商人の心』を知る」をテーマに、
と題する「意見広告」
を掲載した。
5
/
13
横浜国立大学大学院都
について説明した。参加者は約
90名。
実施した。
( 詳細は、本誌12ペー
5 慶應義塾大学商学部で
/
19「企業人派遣講座」を実施
ジを参照)
した。
( テーマ:
「企業の成長戦略
「在京中国メディアの企業訪問」を
と国民の経済的繁栄」
、講師:勝
市イノベーション学府(横
を実施した。
( テーマ:「都市マネ
5
/
15
ジメント~環境未来都市の実現へ
ワード~」と題する「女性の活躍
~産業界の挑戦と都市マネジメン
推進に関する講演会」を開催し、
ト~ホテル業から世界の都市を
イー・ウーマンの佐々木かをり社
5 同志社大学経済学部で
/
19「企業人派遣講座」を実施
考える」、講師:梅原 一剛 THE
長が講演した。佐々木氏は「ダイ
し た。
( テ ー マ:「 科 学 と 技 術 ~
F.U.N. 理事(元東急ホテルズ 取
バーシティとは多様性のことであ
人々の安心・安全を守るための
浜市と共催)で
「企業人派遣講座」
「女性の活躍とダイバー
俣 宣夫 経団連 副会長/丸紅 相談
シティ~経済成長のキー
役)
(
。詳細は、本誌7月号を参照)
2015年8月号〔経済広報〕
21
4月23日~5月25日
NEWS
Keizai Koho Center News
マ:「日本の産業とイノベーショ
北川氏は、ASEAN進出に成功
企業の取り組み~」
、講師:高畠
ン〜世界をリードするキヤノンの
した小売業などの事例を紹介した
培栄 凸版印刷 情報コミュニケー
画像入出力技術~不可能を可能に
上で、日本の非製造業のサービス
ション事業本部セキュア開発本部
する技術者の思い~」、講師:中
やノウハウは付加価値が高く、海
本部長)
島 一浩 キヤノン インクジェット
外でも競争力を有すると発言し
事業本部インクジェット技術開発
た。参加者は約50名。
5
/
20
カーリットホールディ
センター担当部長)
早稲田大学国際教養学
5
/
22
ングス
(群馬県渋川市)で
生活者7名が参加した。参加者
5
/
20
部で
「企業人派遣講座」を
シアCIS課長を招き、講演会
は、日本カーリット赤城工場で、
実施した。
( テーマ:「日本企業論
「 中・ 東 欧 の 最 新 経 済・ ビ ジ ネ
自動車用発炎筒や含水爆薬の製造
~日本企業の国際戦略とその経
ス事情」を開催した。前田氏は、
現場を見学し、爆薬の製造過程や
営理念~日本の電子機器産業と
ポーランドなどの主要国が経済・
同社が行う安全に対する取り組み
国際戦略」、講師:シッピー・光
財政的に安定し、産業集積や日系
について学んだ。また、緊急時に車
ソニー 広報・CSR部CSRグ
企業の進出が進んでいることを説
から脱出するためのシートベルト
ループシニアマネジャー)
明した。労働者保護重視や頻繁な
「企業と生活者懇談会」を開催し、
体験や発炎筒点火体験に参加した。
5
/
20
5
/
21
第一生命経済研究所の
況を紹介し、同地域への進出の留
西濵徹主席エコノミスト、
意点を説明した、参加者は約90名。
横浜国立大学大学院都
日本貿易振興機構の北川浩伸総務
市イノベーション学府(横
部総務課長を講師とする講演会
浜市と共催)で
「企業人派遣講座」
田篤穂海外調査部欧州ロ
税制変更など、旧共産圏特有の状
カッター体験、サイドガラス割り
「日本の小売関連産業のASEA
5
/
25
「第109回事業企画委員
会」(委員長:内田章 東レ
を実施した。
( テーマ:「都市マネ
N進出」を開催した。西濵氏は、
常務取締役)を開催し、第9回理
ジメント~環境未来都市の実現へ
今年末の経済共同体の発足を控
事会・第4回評議員会の付議事項
~産業界の挑戦と都市マネジメン
え、ASEAN域内関税撤廃やイ
について説明した。また、北米社
ト」
、講師:那須田 哲司 ANA
ンフラ整備が進んでおり、特に、
会科教育関係者招聘プログラムの
ホールディングス グループ経営
第2次産業発展と給与労働者の増
実施など4件について検討し、了
戦略部主席部員)
加によって、消費市場が一層拡大
承 さ れ た。 さ ら に、2015年 度 上
する可能性が高いことから、AS
半期政策広報の実施など3件につ
上智大学で「企業人派遣
EANは日本企業の進出先として
いて報告した。
講 座 」を 実 施 し た。
(テー
引き続き魅力的であると述べた。
5
/
20
22
日本貿易振興機構の前
〔経済広報〕2015年8月号
k
(国内広報部 鈴木陽子)
企業広報ニュース
日本パブリックリレーションズ(PR)
協会は、
「日本のPR市場」
推計調査、2015年PR業実
広 報
トピックス
態調査を実施した。PRを取り巻く環境が大きく変化している中で、PR市場の全体像を正し
く把握するため、広くPR業務を実施していると思われる業界・領域(イベント、ウェブ、出
「日本のPR市場」
の総売上高の推計は4351億円
版・雑誌編集、リスクコンサルティング、行政広告の5業界)の売上高を推定し、PR業実態
調査に基づく「PR業売上」の推計値に合算した。この調査では、<PR=広報><PR=パ
ブリシティ>というように、PRの意味や領域を狭く捉えるのではなく、PR本来の<社会
とのより良い関係づくり>の観点から広義に捉えている。それによると、
「日本のPR市場」
の
総売上高は4351億円と想定され、そのうち「PR業売上」は948億円(前年比105.2%)で全体の
21.8%を占める結果となった。
調査では、「ブランディング」
「マーケティングコンサルティング」
の項目が取り扱い業務で増
加傾向である一方、「リテナーでのPRコンサルティング」
「記者発表会の実施・運営」
「情報収
集」「モニター・クリッピング」は減少傾向であることが判明した。今後ニーズが増加する業務
は「マーケティングコンサルティング」
「オウンドメディアやソーシャルメディアの企画・運営」
「危機管理広報」がトップ3となった。業務上の課題は、
「人材育成・確保」
(79%)
、
「新しい広
報・PR手法の開発」
(68%)が上位となっている。 Book
k
(国内広報部主任研究員 西田大哉)
『社員をホンキにさせる
ブランド構築法』
同書では、日本で唯一「ブランド・マネージャー」を養成す
る専門機関であるブランド・マネージャー認定協会が、チー
ムブランディングの考え方と実践方法について解説してい
る。
「チームブランディング」とは、ブランディングとチームビ
ルディングを組み合わせた造語であり、社員がグループワー
クを通して自分たちで考え、意見を交換することで自社の価
値観や他者(顧客・スタッフ)の価値観を理解し、共通点を発
見しながら自社の経営戦略に基づきブランドを築き上げる手
法である。
これまでブランディングといえば、コンサルタントや広告
代理店などが外部で築いたものを導入することが多かった
が、チームブランディングがうまくいくと、社員自身が経営
(一財)
ブランド・マネージャー
に参画しているという意識が高くなり、強い組織づくりがで
認定協会 著、同文舘出版
きると同協会は主張する。
2015年2月発行、
同書では、ブランドの目的と定義、多くの人が関与する
2000円
(税別)
チームブランディングとはどういうものか、どうすればブラ
ンドを構築でき、どのような成果を獲得できるのかを事例を絡めながら解説している。実際に
ブランディングを進める作業を「PEST分析/3C分析」
「セグメンテーション」
「ターゲティ
ング」など8つのステップに分けて説明しているので、これまでブランディングに取り組んだ
ことのない企業や、かつてブランディングを取り入れながら組織に根付かなかった企業にも取
り組みやすい内容になっている。 k
(国内広報部主任研究員 大野祥子)
2015年8月号〔経済広報〕
23
2015
8
企業・団体のCSR活動
「コミュニケーション・プラザ川崎」
「コミュニケーション・プラザ富士」
NEXCO中日本(中日本高速道路(株))
お問い合わせ先
コミュニケーション・プラザ川崎
TEL:044-866-8730 お問い合わせ先
コミュニケーション・プラザ富士
TEL:0545-71-0025 http://www.c-nexco.co.jp/corporate/prkan/fuji
55 27
年 月 日発行
(毎月 回 日発行)
第
年 月 日第 種郵便物認可
HP
http://www.kkc.or.jp/
http://www.c-nexco.co.jp/corporate/prkan/kawasaki
平成
昭和
HP
10 8
23 1
3
1
1
身近に感じてもらうために、NEXCO中日本の
制、サービスエリアの運営まで、高速道路を支え
事業などを紹介する施設「コミュニケーション・プ
る人々の24時間365日を映像で紹介する
「NEXC
ラザ川崎」と
「コミュニケーション・プラザ富士」を
O中日本シアター」や、高速道路を常にベストコン
2012年4月にオープン。今年で3周年を迎えた。
ディションに保つために行われる保守・管理の様子
東名高速道路の玄関口である東京料金所に隣接す
を再現する
「高速道路体感ジオラマ」
など、充実した
る
「コミュニケーション・プラザ川崎」では、日本の
展示で高速道路を身近に感じることができる。敷地
高速道路の歴史を振り返りながら、“みち”を「造る・
内にある、新東名高速道路や東名高速道路を管理す
守る・愉しむ」ための様々な取り組みや安全を最優
る
「川崎道路管制センター」
の見学も目玉のひとつで
先とする同社の姿勢を知ることができる。
ある。道路に設置されたカメラや車両検知器からの
エントランスで出迎えてくれるのが、高速道路で
情報が大型モニターにリアルタイムで表示され、刻
見かける大きな緑色の案内標識板だ。大人の身長ほ
一刻と道路状況が変化していく様子を間近で見学で
どもある大きさだが、実物はこの1.5倍の大きさだ
きる。
また、新東名高速道路 新富士IC内に併設され
た
「コミュニケーション・プラザ富士」
では、
「世界を
リードする高速道路システム」を取り入れた新東名
高速道路の建設手順や技術を分かりやすく紹介して
おり、映像
「新東名ができるまで」
や、橋梁、トンネ
ル工事で活用した先端技術の仕組みが分かる模型な
ど、貴重な展示を目にすることができる。
同館は「多くの方にご来館いただいて、高速道路
の安全への取り組みや、最先端のみちづくりの技術
NEXCO中日本オリジナルキャラクターの
“みちまるく
ん”
もお出迎え
(営業活動で留守の時も)
発行:一般財団法人 経済広報センター
などを体験してほしい」
と話している。
k
(国内広報部主任研究員 西田大哉)
Printed in Japan
432
発行人/渡辺 良 編集人/佐桑 徹 [ ISSN 0918–4600
]
東京都千代田区大手町一 三
(本体価格三〇〇円+税)
- 二
- 経団連会館 電話〇三 六
- 七四一 〇
- 〇 二 一 〒一〇〇 〇
- 〇〇四 ( 送料別、賛助会員の購読料は会費に含む)
という。中に入ると、高速道路の建設から道路管
8
号
NEXCO中日本は、お客さまに高速道路をより
37
号通巻
高速道路管理の様子や様々な設備を再現する長さ10メートル、
幅3メートルの「高速道路体感ジオラマ」
巻第
親子連れで一緒に楽しみながら高速道路の施設や管理、サービ
スエリアの運営などを学ぶことができる