ヨーロッパとドイツの 現在と課題

経済広報センター活動報告
経済広報センター活動報告
ヨーロッパとドイツの
現在と課題
電技術や、エネルギー効率向上技術、発電所のバー
慢との批判を受けることなく欧州統合の完成に貢献
チャルネットワーキングによる安定供給技術などへ
できるだろう。
の参入だ。
受けており、課題を一つひとつ克服し、計画通り稼
①ドイツ新連立政権の政策
働停止が実現できるだろう。
クリュワ 政策においては対欧州より内政面で変化
経済広報センターは、2013年12月2日にドイツの有力ジャーナリストによるシンポジウム「ヨーロッパ
とドイツの現在と課題」を開催した。日本放送協会の二村伸解説主幹がモデレーターを務めた。参加者は約
80名。
ドイツの輸出力-他国を犠牲にした成長?
EU中核メンバーとしての課題
ザシャ・クァイザ
ドイッチェ・ヴェレ(ドイツ国際放送)
ビジネス・エディター
米国財務省は最近、ドイツの輸
出依存がユーロ圏のリバランスの
障害になっていると厳しく批判し
かくらん
も伸びる一方、輸出の勢いはさほど大きくない。新
政権下で賃金上昇や国内投資が進めば、リバランス
傲慢?支配的?権威主義的?
欧州におけるドイツ観と、
ドイツ新連立政権のなすべきこと
ライマ・クリュワ
『南ドイツ新聞』 外交問題担当シニア・ライター
ドイツのエネルギー転換
-課題と可能性
ダナ・ハイデ
た。米国の盗聴事件からの撹 乱と
会的負担の調整(年金の追加給付など)による雇用者
負担増などは、長期的な観点からこれらがドイツの
成長に合致するのか、注視が必要だ。
クァイザ これまでの痛みを伴う改革については、
失業率が改善する中、抵抗勢力も失速し、選挙の結
ドイツは欧州の中で、
「ドイツがい
果から見ても国民は満足している。ドイツ全体の空
なければうまくいくのでは」ともい
気も良好だ。メルケル首相は賛否両論に対するバラ
われる。また、各地で反欧州の動き
ンスの取り方がうまく、国民を満足させる術に長け
があり、ドイツでも反EU・反ユー
ている。
ロを掲げるAfDが選挙で票を伸ば
②ドイツ産業の国際競争力と日独協業
すなど、欧州自体への信頼も揺らいでいる。
クァイザ ドイツでは中小企業が専門分野で品質・
当社を含む各国新聞社連盟が実施したアンケート
スピード・技術を高めニッチで成功している。地方
も見えるが、EU(欧州連合)やI
ドイツは、福島の原発事故後エ
では、ドイツ人は傲慢で支配的で権威主義的だと見
での産業クラスターの成功もある。日独企業の協業
MF
(国際通貨基金)
、OECD(経済協力開発機
ネルギー政策を転換し、2022年ま
られる一方、必要不可欠の強国として強いリーダー
は、蓄電技術などで既に進んでいる。太陽光発電で
構)
、FRB
(米連邦準備制度理事会)、G20も同じ
でに原発を全面停止することとし
シップを求められている、ということも判った。
は中国市場での日独の協業が大きな利点となろう。
論調だ。
たが、チェルノブイリ事故以来、
南欧では特に、
「ドイツの手法の押し付けだ」
「南欧
③ドイツから見た英国
確かにこの20年間で、ドイツの輸出はGDP(国
国民の原発への恐怖心や疑念はも
を安い労働力の倉庫にしている」
「ドイツの利益のた
クリュワ 英国は、政治・経済両面で大陸側と考え
内総生産)比で2倍以上に増えたが、輸出の57%は
ともと大きかった。既に2000年に再生可能エネル
めに他国を犠牲にしている」などの見方もある。南
を異にするようだが、それでもなお英国はEUの動
EU域内向けだ。ドイツの輸出超過は7%とEUの
ギー(再エネ)の促進を法制化し、2002年には原発
欧はドイツが提案した徹底的緊縮財政により救われ
きから離れることはできない。
上限6%を超えており、EUは、ドイツが財政支出
からの撤退、2010年には2036年の原発稼働完全停
た、という見方もあるが、援助金の見返りに緊縮財
クァイザ 英国は欧州第三の経済国として、フラン
による景気の後押しもせず輸出を増やして域内不均
止を決定した。
政を強要された不快感から、ドイツの貢献が忘れ去
ス同様無視できない存在だ。金融政策などで英国の
られている。
抵抗は大きいが、欧州は英国の離脱を看過はできな
衡を招いている、としている。
しかし、ドイツは輸出超過だが域内他国の製品を
排除してはいない。また、ドイツ製の機械製品の4
現在のエネルギー構成比は、原子力は著しく減り
16%、45%が石炭、再エネは太陽光を中心に増え
23%となった。
ガウク大統領は、
「ドイツは島国でなく、政治・経
い。
済・環境・軍事面の欧州からの影響は不可避だ」と
④少子高齢化と移民受け入れ
言う。また、「ドイツは他国への押し付けはしない」
クァイザ ドイツは、特に能力の高い外国人移民を
分の1もの材料・部品が国外製だし、元来ドイツ製
エネルギー転換の課題は、風力は北部、太陽光は
品の需要が高いのはその製品・製造技術が優れてい
南部に偏在する一方、送電網の問題で電力が融通し
が、
「自らを小国だと主張し連帯を逃れることもしな
歓迎している。ドイツでは、育児離職のための補助
るからだ。さらに、単一通貨圏では自国通貨高によ
にくい点だ。また、再エネの買取コスト高により電
い」と言っており、これがドイツの欧州に対する姿
金や保育所増加の両面に予算を注入しているが、少
る輸出抑制もできない。
力料金は年々上昇している。再エネのバックアップ
勢だ。
子高齢化の最終的な解決策はまだない。
ドイツは、この数年間で賃金や社会保障負担を抑
のため従来型の発電も必須だが、例えばガスタービ
ドイツがなすべきことは、各国の利害調整に当た
ハイデ ドイツでは保育施設に関する法的請求権も
えて競争力を強化してきた。優等生的で不人気なや
ン発電では採算が合わず稼働停止も起きている。さ
りドイツ単独でなく常にフランスと協力すること
あるが、現実がそれに追い付いていない。女性が要
り方だが、優等生に勉強をするなと言うのでは本末
らに、供給が非常に不安定な再エネに依存すること
だ。社会・福祉面での改革、欧州共通の失業保険制
職につくためにも保育施設の拡充が必要だ。
転倒だ。特に危機国は、ドイツと同様の改革プロセ
自体もリスクだ。
度の創設、被支援国・地域の底上げによるユーロ圏
スを踏む必要がある。また、ドイツは近年国内消費
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があるだろう。内政面では、最低賃金の導入や、社
はさらに進むだろう。
ハンデルスブラット・オンライン
企業・市場部門エディター
ディスカッション
エネルギー転換は全体として国民や政界の支持を
〔経済広報〕2014年2月号
逆にビジネスチャンスもある。水素蓄電などの蓄
全体の強化などの課題に独仏共同で取り組めば、傲
k
(文責:国際広報部主任研究員 田中 勲)
2014年2月号〔経済広報〕
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