二酸化塩素の基礎知識

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二酸化塩素の基礎知識
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1.基本性質
日本語名
二酸化塩素
英語名
Chlorine dioxide
分子式
ClO2
分子量
67.5
CAS 番号
10049-04-4
◇ 沸点:11℃
◇ 融点:-59℃
◇ 比重(水=1):1.6(0℃)(液体)
物理的性質
◇ 水への溶解度:0.8g/100ml(20℃)
◇ 蒸気圧:101kPa(20℃)
◇ 相対蒸気密度(空気=1):2.3
◇ 爆発限界:10vol%(空気中)
許容濃度
TLV:0.1ppm(TWA) 0.3ppm(STEL) 【ACGIH 2001】
臭味の閾値
0.4mg/L
臭い
刺激臭
色(気体)
赤~黄色
2.安全性と使用例
厚生労働省
WHO(世界保健機関)
JECFA(国連食品添加物専門委員会)
FDA(米国食品医薬品局)
EPA(米国環境保護局)
USDA,FSIS
水道水の殺菌、プール・公衆浴場の消毒、
小麦粉の漂白
A1クラス認定
ADI(人体摂取許容基準)A1クラス認定
食品添加物、医療用消毒許可
飲料水、工業排水処理、環境浄化用に使用許可
食品・食肉消毒使用許可
(米国農務局、食品安全検査局)
NASA(米国航空宇宙局)
HACCP(米国食中毒予防計画)
諸外国
スペースシャトル内及び宇宙食の完全滅菌に採用
食中毒発生危険度の高い食肉消毒に採用
多国が水道水の消毒・医療用・食品添加物として
使用許可
3.特長
1
2
3
4
殺菌(酸化)力が強い。
塩素の約 2.6 倍。
反応が早い。
塩素の約3倍。
pH に左右されない。
pH10 程度まで安定した除菌効果を示します。
トリハロメタン類(発ガン性物質)がほとんど発生しない。
塩素の場合は、フミン質と反応してトリハロメタン類を生成してしまう。
消臭力が極めて高い。
5
メチルメルカプタン(野菜の腐敗臭)、硫化水素(トイレ臭)、トリメチルアミン(魚の腐敗
臭)、アセトアルデヒド(タバコ臭)などの酸化できる成分であれば、ほとんど消臭可能
です。 香水やお香などの香料には効果が期待できません。
抗菌スペクトルが幅広い。
6
レジオネラ菌、緑膿菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、乳酸球菌、乳酸桿菌、セレウス、
クロストリジウム、カンピロバクター、クラドスポリウム、フザリウム、くものすカビ、
青カビ、大便連鎖球菌、白癬菌などが殺菌試験で効果が確認されております。
4.純粋二酸化塩素による殺菌試験データ
■ 2.5 分後の殺菌性比較試験結果
試験試薬
108CFU
108CFU
108CFU
108CFU
106CFU
大腸菌
黄色ブドウ球菌
MRSA
枯草菌
黒麹カビ
グルタルアルデヒド
100,000
100,000
100,000
100,000
100,000
フェノール
10,000
>10,000
>10,000
>10,000
>10,000
無水エタノール
500,000
500,000
500,000
>500,000
>500,000
グルコンサンクロルヘキシジン
100
10
1,000
1,000
>10,000
塩化ベンザルコニウム
100
10
100
1,000
10,000
ポピヨンヨード
10
100
100
>1,000
1,000
次亜塩素酸ナトリウム
10
10
10
>1,000
1,000
純粋二酸化塩素水溶液
1
1
1
100
10
※上記試験データ:(財)日本食品分析センター名古屋支所 試験報告より。
※>はその濃度においても殺菌性のないことを表しています。
※MBC(最小殺菌濃度):ppm
■ 11 種類の試験菌株に対する測定結果
試験菌株
2.5 分
15 分
試験菌株
2.5 分
15 分
緑膿菌
10
1
クロストリジウム
100
100
サルモネラ
1
0.1
青カビ
10
10
腸炎ビブリオ
1
0.1
クラドスポリウム
10
10
乳酸球菌
10
1
フザリウム
10
1
乳酸桿菌
1
1
くものすカビ
10
10
セレウス
1,000
100
※上記試験データ:(財)日本食品分析センター名古屋支所 試験報告より。
※MBC(最小殺菌濃度):ppm
■ 純粋二酸化塩素希釈水によるレジオネラ菌の生菌数測定結果
試験菌
レジオネラ
生菌数(/ml)
試験液
開始時
1 分後
5 分後
15 分後
100 倍希釈液
3.7×105
<100
<100
<100
1,000 倍希釈液
3.7×105
<100
<100
<100
10,000 倍希釈液
3.7×105
4.2×105
<100
<100
対 照
3.7×105
***
***
3.5×105
<100 :検出せず
検
体:純粋二酸化塩素水(2,000ppm)
対
照:滅菌精製水
作用温度:20℃
■ 純粋二酸化塩素希釈水による白癬菌の生菌数測定結果
試験菌
白癬菌
<10
生菌数(/ml)
試験液
開始時
5 分後
100 倍希釈液
2.0×105
<10
1,000 倍希釈液
2.0×105
<10
対 照
2.0×105
1.9×105
:検出せず
検
体:純粋二酸化塩素水(2,000ppm)
対
照:滅菌精製水
作用温度:20℃
※レジオネラ菌および白癬菌の試験データは、(財)日本食品分析センターに依頼して取得したものです。
■ ウィルス不活化効果
インフルエンザウィルス、ネコカリシ(ノロ)ウィルス、エイズウィルス、B 型肝炎ウィルス、
ロタウィルス、イヌパルボウィルスに対する不活化が確認されています。
■ 二酸化塩素による腐食性試験
試験方法:上水+0.25ppm の二酸化塩素ガス通気
試験液(ClO2):気相 0.7ppm、液相 9.0ppm、pH6.92
サンプル
相
期間
消耗量
(日)
(μ/Y)
判定
腐食状況
材料
接点
気相
48
0
光沢なし
A
B
液相
48
0
光沢あり・変色あり
A
B
気相
14
105.9
腐食大
A
D
液相
14
248.0
腐食大
B
D
気相
48
21.0
光沢なし・腐食あり
A
C
液相
48
91.0
光沢あり・腐食あり
A
C
気相
48
0
光沢なし
A
B
液相
48
8.4
光沢なし・変色あり
A
B
気相
48
0
光沢なし
A
B
液相
48
0
変色あり
A
B
ステンレス
気相
48
0
変化なし
A
A
(SAS304)
液相
48
0
変化なし
A
A
ステンレス
気相
48
0
変化なし
A
A
(SAS316)
液相
46
0
変化なし
A
A
気相
48
1.93
良
A
A
液相
14
172.0
腐食あり
B
C
銅
鉄
ブリキ
トタン
アルミ
【参考:上水のみ】
鉄
※判定の材料
A:<125μm/Y
※判定の接点
A:問題なし
B:125~1250μm/Y
B:表面多少劣化
C:>1250μm/Y
C:表面劣化
D:使用不可
■各種素材変質試験
試験方法: 二酸化塩素濃度 100ppm の液をハンドスプレーにて下記素材に2時間あたり5回の噴霧を
30日間に亘っておこない、各素材の変化を目視および触手により判定した。
素 材
ステンレス
鉄
結 果
変化なし。
赤錆びが発生した。
素 材
ウレタン
木
結 果
外観に変化なし。少し硬化した。
少し漂白された。
ゴム
外観に変化なし。少し硬化した。
モルタル
変化なし。
塩ビ
変化なし。
スポンジ
変化なし。
ポリエチレン
外観に変化なし。少し硬化した。
たわし
変化なし。
ビニール
外観に変化なし。少し硬化した。
木綿
変化なし。
プラスチック
変化なし。
※腐食試験ならびに変質試験については、協力会社にて実施致しました(参考資料)。
5.安全性試験
■ 経口毒性 : マウス LD50 5,000mg/kg (参考: 食塩 4,500mg/kg、 カフェイン 1,950mg/kg)
■ 吸入毒性 : マウス LC50 12,000mg/kg
■ 皮膚一次刺激性 : ラビット 認められず
■ 眼粘膜刺激性 : ラビット 認められず
※純粋二酸化塩素製剤 500ppm での結果
6.濃度測定方法
◆DPD 比色法 (一般的に使用されている)
◆ヨウ素滴定法
◆イオンクロマトグラフ法
◆隔膜電極法
など
7.中和方法
亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの還元性物質を使用します。
最後に・・・
二酸化塩素は、塩素系及びアルコール系の製剤と比べてコスト的には到底かないませんが、
耐性菌の出現により代替品として注目されています。
どの化学薬品も同じなのですが、人体に対して全く害がないというものではありませんので、ご使
用の際には注意事項を必ず守ってご使用下さい。
二酸化塩素に関する事でご不明な点がございましたら、是非一度、ご相談ください。
株式会社リンクス 環境衛生事業部 藤田まで
TEL:03-3971-1175
E-mail:[email protected]