コントロール装置の操作イメージに関する研究

千葉大学人間生活工学研究室卒論概要(2004)
卒業研究区分:論文
コントロール装置の操作イメージに関する研究
−量、温度などの調節系における操作イメージ−
キーワード:コントロール装置、操作イメージ、スライド式
人間生活工学教育研究分野
99T0120M
大橋
■研究の背景
美和
掛かりとして、
「グラデーション・矢印・三角形・幾何グラ
コントロール装置において、可視的なものの省略による
デーション・正三角形」のオブジェクトの内から1つを提
使用の際の手掛かりが消失してしまうことや、1 つのコン
示したところ、操作イメージに及ぼすオブジェクトの影響
トロール装置で複数の操作を可能にしようとして複雑さが
力は、
「矢印≧三角形>幾何グラデーション>正三角形≧グ
増すことがある。コントロール装置と操作方法の対応付け
ラデーション」の関係にあることが明らかとなった。
が上手く言ってないことで誤作動を招き、大事故へつなが
研究2ではボタンの形状を、
「円形・三角形・四角形」と
ることも考えられるが、ユーザーがコントロール装置を見
し、操作を促す手掛かりとして「グラデーション・三角形・
た際の操作イメージに関する研究はまだ少ない。
幾何グラデーション・正三角形」のオブジェクトとボタン
の形状とを組み合わせて提示した。その結果、操作イメー
■研究の目的
コントロール装置の形状や操作方法の提示の有無、その
位置関係などにより、ユーザーの操作イメージがどのよう
ジに及ぼすオブジェクトの要素の影響力は、
「三角形>幾何
グラデーション>グラデーション>正三角形」のような関
係となり、研究1と同様の結果が得られた。
に変化するのかを調査し、操作方法を分かりやすくする要
因について調査する。
■ 考察
また、コントロール装置の操作イメージについてのより
「上げる」という操作では、
「上・右・時計回り」への操
幅広い情報の収集を考え、先行研究である、
「コントール装
作に行いやすいが、研究1、研究2の結果から、オブジェ
置の操作イメージに関する研究」
(山中大輔・千葉大学デザ
クトを提示した場合と提示しない場合では、操作イメージ
イン工学科卒業論文・平成 13 年度)では調査されていなか
が大きく変わることがいえる。オブジェクトの要素を組み
ったスライド式のコントロール装置について調査を行うこ
合わせた場合、その要素が同方向を指し示していれば、操
とにした。
作を促す手掛かりとしての影響力は大きくなるが、異方向
を指し示す場合や、今回用いたグラデ-ションオブジェクト
■研究の方法
アンケート用紙による調査を行った。図 1 のようなコン
が白黒表示であったように、オブジェクトの意味が曖昧な
場合には、逆に被験者の迷いを生じさせやすくなる。
トール装置を見た時、
「火力・音量・水量・光量・水量」を
また、複数の要素を持つオブジェクトを見た場合、その
「上げる」という5つの操作状況において、
「上・下・右・
要素の中からより影響力のある要素を無意識に選び出し、
左・時計回り・反時計回り」の6つの内、どの方向に操作
それを操作イメージの手掛かりとしていると言える。
すると思うか1つを選んで丸印を付けてもらう。更に、そ
の操作を行う自信(確信度)がどの程度かを評価してもら
■ まとめ
った。確信度は、「自信がある→5」「やや自信がある→4」
コントロール装置の操作におけるユーザーの迷いを減ら
「どちらでもない→3」「やや自信がない→2」「自信がない
すには、オブジェクトを提示する際に、より影響力の大き
→1」の5段階の数値による評価とした。
い要素を持つオブジェクトを使用するなどして、曖昧さを
できる限り省く必要がある。また、同じ方向を指し示す要
素を組み合わせ、意味の重ね掛けを行うことも有効である
と考えられる。
逆に、誤操作を防ぐためにユーザーが考えにくい操作方
法をわざと用いるのも有効な手段といえるが、その際もオ
■結果
研究 1 ではボタンの形状を円形のみとし、操作を促す手
ブジェクトの曖昧さを省き、ユーザーの迷いをできる限り
減らす必要がある。