投資額減少も 堅調な需要は継続 ジャパン・キャピタル・フロー 2015年第4四半期 • 日本の2015年通年の投資額は4兆1,100億円、前年比12%(約6,000億円) の減少となった。米ドル建てで コンテンツ は341億ドル、 前年比22%(約95億ドル) の減少となった。 エグゼクティブ・サマリー 1 取得者別分析(Who?) 2 ファクター(Why?) 3 注記および用語説明 4 • 取引金額が500億円以上の大型取引に限定した投資総額は、2014年に約1兆円であったものの、 2015 概要(Overall) 年には約4,000億円に減少しており、 この大型取引の減少が主な投資額減少の原因となった。 ま た、2014年の大型取引のうち、約6,000億円にあたる取引はスポンサー間取引、又は一般事業会社等に よる買戻し取引だったことを勘案すると、実質的な取引金額は減っていないものと考えられる。 • J-REIT市場においては、11月にいちごホテルリート投資法人が資産規模約200億円で上場するという 新規上場の動きがあった。 そのほか、星野リゾート投資法人がスポンサーである星野リゾートおよび その子会社等からホテル6物件を約428億円で取得、 アクティビア・プロパティーズ投資法人がスポン サーである東急不動産等からオフィス・店舗の2物件を約338億円で取得するなどの新規取得の動き があった。一方、 日本リテールファンド投資法人が保有する商業施設5物件を約686億円で売却すると いったREITの売却事例もみられた。 • J-REIT以外のプレイヤーでは、 中国の復星集団の傘下企業が星野リゾート等から星野リゾートトマムを 約184億円で取得、 ラサール不動産投資顧問が横浜のオフィス、 ニューステージ横浜を取得、 シンガポー ルのCroesus Retail Trustが福岡の商業施設Toriusを取得する等、 海外投資家による取得事例もみられた。 • 2015年通年の私募ファンドによる投資額は約1.5兆円となり、前年同期比で17%増加した。私募ファン ドによる投資額割合も前年の27%から36%へと上昇している。海外投資家による投資額は全体の約 22%を占め、 引き続き前年比で増加している。 セクター、 エリア分析(What, Where?) 予測(Outlook) 2 3 4 お問い合わせ先 赤城 威志 リサーチ事業部長 03 5501 9235 [email protected] 伊藤 翔 リサーチ事業部 アシスタントマネージャー 03 5501 9248 [email protected] More information • キャップレートはすでに前回ピークである2007年の水準を下回るセクターも多く、今後の大きな キャップレート収縮を見込むことは難しいと考える。但し、都心のオフィスやリテールを中心とするア http://www.joneslanglasalle.co.jp/japan/ja-jp/research www.joneslanglasallesites.com/gcf セットの賃料上昇は堅調である。 キャップレート収縮に代わり収益改善が価格上昇をけん引すること により物件供給は促され、2016年の投資額は増加することが予測される。 February 2016 2015年第4四半期の代表的取引 取引時点 物件名 セクター 価格 売主 平塚ホールディングス 特定目的会社 買主 2015/10 アークヒルズサウスタワー オフィス 220億円 2015/12 汐留ビルディング オフィス 204億円 東急不動産のSPC 2015/10 イオンモール八千代緑が丘 リテール 約280億円 日本リテールファンド 投資法人 2015/10 Torius リテール 約80億円 Hisayama Property TMK Croesus Retail Trust 2015/12 星野リゾートトマム ホテル 約184億円 Matakite、星野リゾート 上海豫園旅游商城 2015/12 オーク200 (1番街∼3番街) 複合用途 約86億円 大阪市 フォートレスのSPC 新規上場J-REIT オリックス不動産投資法人 アクティビア・プロパティーズ 投資法人 合同会社ダブルオーファイブ 上場 投資法人名 セクター 資産規模 スポンサー 2015/11 いちごホテルリート投資法人 ホテル 約200億円 いちごグループホールディングス 1 Who? Overall 上場リートおよび私募ファンドが 前年比で投資額減少 市場をけん引 日本国内投資額 上場リート・私募ファンドともに投資額は前年比で増加 となった。 米ドル建てでは341億ドル、 前年比22% (約95億ドル) の減少となった。 加傾向にある。 2015年通年の上場REITによる取引額は約1.3兆円となり、前年 日本の2015年通年の投資額は4兆1,100億円、 前年比で12% (約6,000億円) の減少 上場リートおよび私募ファンド等のプレイヤーによる投資額は依然として増 また、 2015年第4四半期の投資額は7,050億円、 前年同期比59% (約1兆円) の減少と 比で6%増加した。私募ファンドによる投資額は約1.5兆円となり、前年比で17 なった。 米ドル建てでは58億ドル、 前年同期比61% (約91億ドル) の減少となった。 %増加した。私募ファンドによる投資額割合は前年の27%から36%へと上昇 取引金額が500億円以上の大型取引に限定した投資総額は、2014年に約1兆 し、 メインプレイヤーとして存在感を増している。 円であったものの、2015年には約4,000億円に減少しており、 この大型取引の 一方、 その他の割合は昨年の22%から10%へと大幅に減少しており、前述の 減少が主な投資額減少の原因となった。 また、 2014年の大型取引のうち、約 とおり一般事業会社等による企業戦略の一環としての取引が減少している 6,000億円にあたる取引はスポンサー間取引、又は一般事業会社等による買 ことがわかる。 戻し取引だったことを勘案すると、実質的な取引金額は減っていないものと 考えられる。 実際にJ-REITや私募ファンド等による投資額は2014年比で増加していること から、投資需要は依然として堅調な状況が続いているということができるで あろう。 海外投資家による投資額は依然として増加傾向を継続 2015年通年の海外投資家による投資額は約8,960億円となり、前年同期比で 世界の都市別投資額ランキング 0.3%の微増となった。海外投資家による投資額が全体投資額に占める割合 世界都市別に投資額をみると、 東京都内の2015年通年の投資額は約158億ドル は2014年の19%に対し2015年は22%と上昇している。海外投資家からのイン となり世界第5位となった。 2015年第3四半期までは世界3位の座を維持してい バウンド投資も依然堅調に推移しており、 投資意欲も高い状態が続いている。 たが、 第4四半期における投資額の減少及び円安により、 パリ、 ロサンゼルスに 今期においては、中国の復星集団の傘下企業が星野リゾート等から星野 続く5位に順位を落とした。 リゾートトマムを約184億円で取得、 ラサール不動産投資顧問が横浜のオ アジア太平洋地域に限定すると以前東京がトップとなっている。 しかし上海、 フィス、 ニューステージ横浜を取得、 シンガポールのCroesus Retail Trustが福岡 香港が第4四半期に投資額を伸ばし世界トップ10にランクインしている。 の商業施設Toriusを取得する等の海外投資家による取得事例がみられた。 図表 1 日本国内の投資総額推移 (10 図表 3 購入者属性別投資額割合 ) 100% 8,000 9% 7,000 22% 19% 80% 6,000 70% 5,000 60% 4,000 50% 10% 9% 90% 43% 29% 33% 33% 29% 10% 0 2006 2007 2008 2009 2010 1Q 2011 2Q 3Q 2012 2013 2014 18% 30% 7% 4Q 2007 2008 38% 18% 9% 2006 出所 : JLL 16% 19% 25% 10% 36% 27% 2009 38% 45% 31% 26% 17% 2010 2011 2012 2013 2014 2015 出所 : JLL 図表 2 都市別投資総額ランキング (2015年通年) (10 30% 0% 2015 15% 25% 46% 20% 1,000 32% 22% 23% 30% 26% 30% 2,000 39% 26% 14% 40% 3,000 25% 図表 4 海外投資家投資額推移 ) (10 ニューヨーク ) 3,000 ロンドン 35% 2,500 パリ ロサンゼルス 2,000 東京 1,500 シカゴ ワシントンD.C. 19% 20% 1,000 ボストン 10 20 30 40 50 22% 2014 2015 12% 4% 0 0 出所 : JLL 20% 18% EMEA 香港 2 11% 500 上海 19% 60 出所 : JLL 2006 2007 2008 2009 2010 ( 2011 ) 2012 2013 ( ) Why? What? Where? 東京都外に拡大する投資 キャップレート低下による価格上昇が継続 オフィスに対する投資額が前年比で減少 高い水準を維持する東京オフィスのイールドギャップ 状態が続いている。但し、投資額自体に目を向けると、 オフィスに対する投資 りとの差で表されるイールドギャップは2015年12月末で273 bpsとなり、前四 セクター別に投資額をみると、 引き続きオフィスに対する投資額割合が多い 東京Aグレードオフィスにかかる不動産のキャップレートと10年物国債利回 額は2015年通年で約2.4兆円と前年比で18%の減少となった。全体投資額と 半期比で約2bps低下した。前四半期比でキャップレートが10bps低下したもの 同様に、 スポンサー間取引や一般事業会社等による買戻し事例等の大型取 の、 同時に金利も低下したことによりギャップは2bpsの低下となっている。東 引が減少したことが影響したものと考えられる。 京オフィスは他の主要都市との比較において、依然として高い自己資金利回 ホテルに対する投資額は堅調であり、前年比で増加となった。 また、 リートの りを確保できる状態にあり、 インカム重視のファンド等にとっては魅力的な 上場等により投資対象としての地位を確立しつつあるヘルスケアセクターに 投資対象となっているものと考えられる。 対する投資額増加によって、 その他に区分されるセクターの取引額も前年比 で増加となった。 積極的な金融機関の貸出態度 投資は東京都外に拡大傾向 日本銀行が公表する短観によると、不動産業に対する金融機関の貸出態度 都心5区内の物件に対する投資額割合は昨年比で若干減少し41%となった。 は2009年の前半を底として改善を続けている。特に2015年以降は前回市場 また、5区を除く東京都内の物件に対する投資額割合も16%へと減少した。 ピークである2007年の10を上回る水準で推移しており、金融機関の貸出姿勢 一方で東京都を除く東京圏(神奈川、千葉、埼玉) に存する物件に対する投 は積極的となっていることがわかる。積極的な貸出姿勢と低金利は不動産 資額割合は20%となり昨年比で大幅に拡大している。今期においても神奈川 キャップレートの低下をもたらす要因の一つとなっており、直近において東京 県内でラサール不動産投資顧問が横浜のオフィスビル、 ニューステージ横浜 AグレードおよびBグレードオフィスのキャップレートは前回市場ピークであ を取得する等の取引があった。 る2007年当時よりも低い水準となりさらに低下を続けている。 投資額割合は東京圏で全体の77%、 その他エリアで23%となっており、 2014 但し、 キャップレートはすでに歴史的低水準にあり、今後の大きなキャップ 年と比較すると地方圏への投資が拡大している。 今期においては、 ジャパンエ レートの収縮を見込むことは難しいものと考えられる。 今後はこれまで価格上 クセレント投資法人が沖縄のオフィスビル、沖縄第27大京ビルを13.8億円で 昇をけん引してきたキャップレートの収縮に代わり、主に賃料上昇による収 取得等の動きがあった。 益改善が寄与する形で価格上昇トレンドが継続していくものと予測される。 図表 5 セクター別投資額割合推移 5% 8% 18% 21% 7% 6% 70% 4% 4% 6% 9% 16% 9% 4% 8% 22% 35% 19% 64% 10% 20% 30% 67% (bps) 500 400 300 200 62% 55% 49% 20% 5% 7% 41% 41% 2012 2013 58% 0 -100 10% 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2014 2015 出所 : JLL 出所 : JLL, Thomson Reuters 図表 6 地域別投資額割合 13% 41% 10% 0% 出所 : JLL 2.5% 2006 5 2007 (5 2008 ) 2009 ( 2010 2011 ) 2012 2013 2014 2015 - 30 3.0% Aグレードオフィス利回り 出所 : JLL, 日本銀行 Bグレードオフィス利回り 3Q15 45% 32% 1Q15 38% 3Q14 52% 47% - 20 3.5% 1Q14 49% 20% 60% - 10 4.0% 3Q13 62% 58% 0 4.5% 1Q13 40% 30% 16% 18% 5.0% 3Q12 50% 10 3Q11 60% 7% 12% 5.5% 1Q12 70% 15% 1Q11 80% 20 6.0% 3Q10 3% 図表 8 東京オフィスキャップレートと日銀短観 金融機関の貸出態度 1Q10 90% 2% 1% 3% 4% 3% 1% 4% 5% 6% 8% 0% 3% 8% 3% 1% 3% 5% 1% 2% 3% 2% 2% 3% 3% 3% 4% 12% 1% 3% 10% 3% 9% 12% 9% 13% 13% 14% 7% 14% 9% 13% 22% 8% 14% 12% 24% 20% 21% 26% 25% 19% 14% 3Q09 3% 1Q09 100% 3Q08 0% 1Q08 30% 9% 100 76% 66% 4% 5% 19% 50% 40% 20% 25% 22% 60% 4% 6% 4Q07 1Q08 2Q08 3Q08 4Q08 1Q09 2Q09 3Q09 4Q09 1Q10 2Q10 3Q10 4Q10 1Q11 2Q11 3Q11 4Q11 1Q12 2Q12 3Q12 4Q12 1Q13 2Q13 3Q13 4Q13 1Q14 2Q14 3Q14 4Q14 1Q15 2Q15 4Q15 80% 4% 3% 2% 3Q07 90% 図表 7 主要都市のイールドスプレッド推移(Aグレードオフィスvs10年物国債利回り) 3% 3% 5% 1Q07 100% 1% 7% 5% - 40 金融機関の貸出態度 (不動産・全規模) 3 Outlook 2015年比で投資額の増加を予測 J-REIT、 私募ファンドによる取引は堅調、 大型取引の増加期待 J-REITや私募ファンド等による取引は依然として増加傾向にあり、 今後もこれ らのプレイヤーが市場をけん引していく状況は続くものと考えられる。 2015年 投資額は再び増加傾向へシフト JLLは、 2016年の世界の商業用不動産投資額の見通しを前年比0-5%増加の7,2007,300億ドルとみている。 アジア太平洋地域については前年比5-10%増加の1,300億ド 通年でみると総額500億円を超える様な大型取引が前年比で減少したものの、 ルとみている。 直近および今後の不動産価格上昇も追い風となり、 大型案件の市場供給は続 日本の商業用不動産投資額は、 2015年に前年比で減少したものの、 2016年の投資 いていくものと予測される。 すでに複数の大型案件が取引進行中であり、 また 額は増加することが予測される。 JLLでは2016年の日本国内商業用不動産投資額 2016年2月に上場予定のラサールロジポート投資法人をはじめ、 年明け以降、 を10%増の4.5兆円程度になるものと予測している。 各種プレイヤーの積極的な資産取得の動きもすでにみられている。 図表 9 大陸ごとの投資額推移および予測 (10 ) 800 0-5% 700 賃料上昇がドライバーとなり価格上昇が継続 600 金融緩和による資金の供給、 金利の低下により、 投資不動産の利回りは低下 500 を続けており、 多くのセクターが前回ピークである2007年を下回る水準となっ 400 ている。 現状のキャップレート水準および将来的に予測される金利水準の上 5-10% 0-5% 300 昇を勘案すると、 今後の大きなキャップレート収縮を見込むことは難しく、 賃料 5-10% 200 上昇による収益改善が寄与し価格上昇が続いていくことが予測される。 100 0 出所 : JLL 注記および用語説明 EMEA 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (予測) 個別の商業用不動産あるいは資産ポートフォリオ(あるいは資産を保有する特別目的会社の株式) の取得商業用不動産への直接投 資に含まれるもの • 500 万米ドルを超えるすべての取引 • カバーしているセクターは、オフィス、リテール、ホテル(カジノを含む)、インダストリアル、複合用途、 その他(介護施設、学生寮を含む) データにはREIT 組成を含む、以下の条件を満たした不動産会社のM&A が含まれる 不動産の直接投資 • 実質的に不動産取引である • 不動産以外の主要資産(労働力、知的所有権、のれん代など) が譲渡されない • 収入の70% 以上を直接的な賃料収入から得ている • 取引により、所有権の大幅(30% 以上) な変更が生じる • 取引は「市場価格」で行われる • IPO 価格で新たな投資家に売却した比率のみが含まれる 商業用不動産への直接投資に含まれないもの • 法人単位の取引、開発案件、集合住宅への投資 法人単位の取引 開発案件 アジア太平洋地域 欧州 中東およびアフリカ アメリカ大陸 日本国内地域分類 4 企業による資産取得で、不動産資産以外の主要資産(労働力、知的所有権、のれん代など) が譲渡される場合のことを指す。 例えば、REITの非公開化や「グループ企業間での取引」- 企業が株式の過半数を保有する子会社に不動産を売却する場合など 「将来の」開発計画や「土地」取引として分類される取引を指す オーストラリア、中国、香港、インド、インドネシア、日本、マカオ、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポー ル、韓国、台湾、ベトナム、タイの不動産への直接投資をカバー ベルギー、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、 ルクセンブルク、オランダ、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、ト ルコ、英国の不動産に対する直接投資をカバー バーレーン、イスラエル、クウェート、レバノン、カタール、サウジアラビア、UAE の不動産に対する直接投資をカバー アフリカでは、エジプトと南アフリカをカバー カナダと米国の不動産に対する直接投資をカバー。アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、メキシコ、パナ マ、ペルーへの直接不動産投資については部分的にカバー 東京都5区:千代田区・中央区・港区・渋谷区・新宿区、 東京圏:東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県、 大阪圏:大阪府・京都 府・兵庫県・奈良県、 名古屋圏:愛知県・岐阜県・三重県、 福岡圏:九州各県 為替レート 取引額を米ドル建てに換算する上では、取引が行われた四半期の平均為替レートを用いている グロスアップ 市場カバレッジを反映させるため、取引額はグロスアップしている
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